コウモリは、ヒトと同じ哺乳類です。鳥とは別の系統に属していますが、どちらも翼を羽ばたかせて空を飛びます。翼を広げた写真を見ると、鳥には羽毛が、コウモリには長い指に支えられた薄い膜があります。同じ「飛ぶ」という働きを、異なるつくりで実現しているのです。
生き物が祖先から枝分かれしてきた道筋を「系統(けいとう)」と呼びます。異なる系統で、似た特徴がそれぞれ独立に進化することがあります。これが「収斂進化(しゅうれんしんか)」です。
ミミズク先生生き物は多様なのに、なぜ似た特徴が現れるのでしょうか。そして、一部が似ていることは、生き物全体の違いが小さいことを意味するのでしょうか。
翼、植物の茎、魚の発電器官を見比べながら、「似ている」の中身を確かめていきましょう。


同じように飛ぶ、異なる翼


出典:iNaturalist – カザリキヌバネドリ Pharomachrus mocinno(rekursiv)
鳥とコウモリの翼は、どちらも前肢が変化したものです。前肢とは、ヒトでいえば腕と手に当たる部分。まずは翼の表面を比べ、次に、その内側にある骨をたどってみます。
羽毛の翼と、膜の翼


出典:iNaturalist – マダラコウモリ Euderma maculatum(svaldvard)
鳥の翼では、前腕や手に当たる部分に沿って、長い羽毛が並んでいます。これらは「風切羽(かざきりばね)」と呼ばれ、一枚ずつ重なり合って、空気を受ける広い面をつくります。この面が「翼面」です。
コウモリでは、長く伸びた指の骨が、薄い皮膚の膜を支えています。この「皮膜(ひまく)」は、指の間だけでなく、腕と体の側面などにも広がります。膜には細い筋肉や、伸び縮みする性質をもつ弾性繊維もあり、しなやかな翼面を形づくっています。
翼を開いた写真を並べると、鳥では羽毛の列が、コウモリでは膜を支える指が目を引きます。どちらも飛ぶための翼ですが、広い面をつくる材料と、その支え方は違います。
飛んでいる姿に注目すれば、共通する働きが見える。翼をつくる部品に注目すれば、構造の違いが見える。同じ二つの翼でも、見る場所によって、読み取れることが変わります。
前肢として見る、翼として見る


出典:iNaturalist – トキイロコンドル Sarcoramphus papa(heuvelyoup)
羽毛と皮膜という違いの内側には、共通する骨の並びがあります。鳥にもコウモリにも、肩から続く上腕骨(じょうわんこつ)、前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)、さらに手の骨があります。


骨の長さや形、骨どうしの融合のしかたは異なります。それでも対応する骨をたどれるのは、両者が共通祖先の前肢を受け継いでいるからです。このような由来の共通性を「相同(そうどう)」と呼びます。単に見た目がそっくりという意味ではなく、祖先の構造から受け継がれた関係を表しています。


出典:iNaturalist – フィリピンオオコウモリ Acerodon jubatus(joachimbertrands_ornis_birding)
では、飛ぶための翼も、その祖先から受け継いだのでしょうか。鳥とコウモリの最後の共通祖先は、翼を羽ばたかせて飛ぶ動物ではありませんでした。前肢を使う飛翔は、二つの系統で独立に進化しました。
このように、独立に成立した特徴の形や働きが似ている関係を「相似(そうじ)」と呼びます。整理すると、次のようになります。
- 前肢の骨格として比べると、共通祖先に由来する「相同」の関係。
- 飛ぶための翼として比べると、独立に成立した「相似」の関係。
少しややこしく感じたら、骨格図で肩から手までをたどり、次に羽毛や皮膜へ目を移してみてください。翼には、前肢を受け継いだ歴史と、飛翔が成立した歴史が重なっています。



「どの部分の由来を比べているか」を決めると、二つの歴史を分けて考えられます。


「似ている」は見た目だけじゃない――植物の姿から魚の発電まで


出典:iNatturalist – Cereus repandus(stefanelena)


出典:iNaturalist – チュウテンカク Euphorbia ingens(sulaimaninuwa)
翼では、飛ぶ働きと、その仕組みや由来を分けて比べました。この見方を、ほかの生き物にも使ってみましょう。次は姿の似た植物から、外見よりも器官の働きに共通点がある魚へと進みます。
サボテンに似た植物の、茎を読む


出典:iNaturalist – Astrophytum asterias(christopherbentley04)
植物園の多肉植物コーナーで、丸く膨らんだ茎や、柱のように伸びた茎を見つけたとします。「これもサボテンかな」とラベルを見ると、トウダイグサ科と書かれていることがあります。
トウダイグサ科トウダイグサ属(ユーフォルビア、Euphorbia)の一部には、サボテンによく似た多肉質の茎をもつものがあります。「多肉質」とは、水を蓄える組織が発達し、厚みのある状態です。別の系統に属する植物が、似た形の茎をもつようになっています。


出典:iNaturalist – Euphorbia obesa ssp. symmetrica(andrew_hankey)
ただし、トウダイグサ属のすべてがサボテンに似ているわけではありません。比べるのは、丸い形、柱状の形、縦に盛り上がった筋である「稜(りょう)」をもつ形など、特定の特徴を備えたもの同士です。
こうした形は、水を保つ働きと結びつけて考えられてきました。同じ体積なら、球は表面積が最も小さくなります。内部に水を蓄えながら、水を失う表面を小さくできることが、丸い形の進化を説明する要因として論じられてきたのです。
全景で似ていると感じたら、次は茎の表面や花へ目を移してみましょう。稜はどこを通るのか、刺や葉はどこにつくのか。「何となく似ている」を「茎のこの部分が似ている」に変えると、図鑑で調べたいことも具体的になります。
姿が違っても、電気をつくる


出典:iNaturalist – デンキウナギ Electrophorus electricus(park10108)
植物の茎の形は、写真でも見比べられます。では、外から見えない働きの類似は、どう調べるのでしょうか。その一例が、自分で電気を発生させる「電気魚」の研究です。
2014年、Gallantらは、別々に進化した発電器官に、共通する遺伝子の働き方があるかを調べました。対象は、発電器官が独立に進化した三つの系統群を代表する5種です。
調べられた発電器官は、筋肉に由来する特殊な細胞からできています。研究者は発電器官と、体を動かす骨格筋を比べ、どの遺伝子がどれくらい使われているかを調べました。こうした遺伝子の情報の使われ方を「遺伝子発現」と呼びます。


出典:iNaturalist – Eigenmannia virescens(jev_1874)



Eigenmannia virescens (グラスナイフフィッシュ)は、南米の淡水域に暮らす電気魚です。薄く細長い半透明の体をもち、お腹側に続く長いひれを波打たせて泳ぎます。
夜行性で、自ら発する弱い電気を周囲の探知や仲間との情報交換に利用します。


出典:iNaturalist – Brienomyrus brachyistius(rob_palmer)



上のBrienomyrus brachyistius は、アフリカの河川に暮らすモルミルス科の電気魚です。弱い電気を発生させる魚で、この2014年の研究では、発電器官と骨格筋での遺伝子の働き方が比較されました。
発電細胞の形には違いがありました。一方、細胞の大型化、電気的に反応する性質、筋肉の収縮を抑えることに関わる遺伝子発現には、共通点が報告されました。
器官の進化は別々でも、その成立に共通する仕組みが使われる場合があります。「独立に進化した」とは、材料も仕組みもすべて別々に生まれたという意味ではありません。外見を眺めるだけでは分からない類似が、細胞や遺伝子の働きを調べることで見えてきます。
なぜ似たのかは、別に確かめる
ここまで、翼、茎、発電器官の共通点を見てきました。では、なぜ似た特徴が進化したのでしょうか。「似ていると分かった」ことと、「似た理由が分かった」ことは、分けて考える必要があります。
その説明の一つが、似た条件のもとで自然選択が働くことです。たとえば、水を失いにくい特徴が遺伝し、その特徴をもつ個体が乾燥下でより多く子孫を残せば、世代を重ねるうちにその特徴が集団の中に広がることがあります。環境が必要な形を直接つくるのではなく、遺伝する違いと、生存・繁殖の差が関わります。



ただし、「同じような場所に生えているから、同じ理由で似た」とは、すぐには言えません。先ほどの多肉植物に戻り、形と生育環境を別々に比べた研究を見てみましょう。
2013年の研究では、球状の多肉植物が多いメキシコの2地域と南アフリカの3地域について、気温や降水の条件が比較されました。対象にはサボテン科やトウダイグサ科のほか、キョウチクトウ科やハマミズナ科も含まれます。丸い姿でも、膨らんでいる部分は茎の場合もあれば、葉の場合もあります。
解析では、多くの比較で地域間の気候の違いが見つかりました。「どちらも乾燥地」と見ることと、「雨の降る季節や気温まで似ている」と判断することは別だったのです。生き物の形と同じように、環境についても、何をどこまで比べるかが問われます。
さらに、進化による変化は、祖先から受け継いだ体のつくりを土台に起こります。鳥とコウモリは、どちらも前肢を使っていますが、そこから成立した翼面は羽毛と皮膜で異なります。



似た特徴を見つけたら、その特徴がどんな条件で役立つのか、祖先はどんな構造をもっていたのかを調べる。「なぜ似たのか」という問いには、形の比較だけでなく、機能、環境、系統の情報も必要になります。


「そっくり」の先に、違いが見えてくる


出典:iNaturalist – ホンドタヌキ Nyctereutes viverrinus ssp. viverrinus(poikljd)
多様性と収斂進化は矛盾しません。ある特徴が似ていても、別の特徴や進化の歴史は異なります。「同じか、違うか」の二択にせず、どこが似ているのかを具体的にすると、両方を読み取れます。
一つの特徴の外側にある違い


出典:iNaturalist – アライグマ Procyon lotor(yetikat)
ここまでの三つの例では、「似ている」と判断する手掛かりが少しずつ異なっていました。
| 比較対象 | 似ている特徴 | 違いが見えるところ | 判断の根拠 |
|---|---|---|---|
| 鳥・コウモリ | 翼を使う飛翔 | 羽毛と皮膜、骨や指の形。前肢は共通由来、飛翔は独立に成立 | 解剖・系統 |
| サボテンと一部のトウダイグサ属 | 多肉質の茎、丸い形や稜のある形 | 属する系統、茎以外の部位、生育条件 | 形態の記載・系統・環境比較 |
| 電気魚の研究例 | 発電、遺伝子発現の一部 | 発電細胞の形など | 解剖・遺伝子発現の比較研究 |
「同じ働きをする」「同じ構造をもつ」「同じ由来をもつ」は、別々の問いです。鳥とコウモリの翼では、飛ぶ働きに共通点があり、翼面をつくる材料には違いがあり、その内側の骨格には共通の由来があります。
一つの特徴が似ていても、ほかの違いが消えるわけではありません。収斂進化を調べることは、多様な生き物の間に生まれた共通点と、その周囲にある違いを一緒に読むことでもあります。
写真と標本を、三つの問いで読む
次に「そっくりだ」と感じる生き物を見つけたら、その印象を三つの問いに分けてみましょう。
- どこが似ている?
全身の輪郭なのか、特定の部位なのか。それとも、動きや働きなのか。 - どこが違う?
別の部位や、体の内側へ目を移すと、どんな違いが見えるのか。 - その判断の根拠は?
写真で確かめられるのか。標本や解剖図、研究資料も必要なのか。
写真では、全体の姿から翼や茎の表面へと、拡大しながら見ていけます。植物園では、全景や気になった部分に加えて、ラベルも撮影しておくと便利です。見たときの印象と、あとで調べた名前を結びつけられます。骨格展示なら、肩から手へ、対応する骨をたどってみましょう。
そこから特徴の由来を知るには、もう一歩、資料を開く必要があります。共通祖先から受け継いだのか、独立に成立したのかは、系統の情報や、ほかの生き物にもその特徴があるかを組み合わせて判断します。科名や分布が違うと分かっただけでは、収斂と確定できません。
目の前の形をよく見ることと、資料で歴史をたどること。その往復によって、一枚の写真や一つの標本から読める情報が増えていきます。
「そっくり」は、観察の終わりではなく始まりです。その驚きを残したまま、似たところを一つ、違うところを一つ探してみてください。



そっくりな二つが並んでいたら、違いを一つ探すところまでお付き合いください。骨格なら、まず肩から指までたどってみましょう。名前を確かめるだけでは、少々もったいないですから。






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参考・引用文献
同じように飛ぶ、異なる翼
- NCBI PMC ‐ Inspiration for wing design: how forelimb specialization enables active flight in modern vertebrates(2017年6月)
- カリフォルニア大学古生物学博物館・Understanding Evolution ‐ Homologies and analogies(更新日記載なし)
- ミシガン大学・Animal Diversity Web ‐ Bat Wings and Tails(更新日記載なし)
似ている場所を変えてみる
- NCBI PMC ‐ To converge or not to converge in environmental space: testing for similar environments between analogous succulent plants of North America and Africa(2013年6月)
- NCBI PMC ‐ Genomic basis for the convergent evolution of electric organs(2014年6月)
- NCBI PMC ‐ What does convergent evolution mean? The interpretation of convergence and its implications in the search for limits to evolution(2015年12月)
- カリフォルニア大学古生物学博物館・Understanding Evolution ‐ Natural selection(更新日記載なし)
- NCBI PMC ‐ Inspiration for wing design: how forelimb specialization enables active flight in modern vertebrates(2017年6月)
「どこが似ている?」から自然を見る
- カリフォルニア大学古生物学博物館・Understanding Evolution ‐ Homologies and analogies(更新日記載なし)
- NCBI PMC ‐ Inspiration for wing design: how forelimb specialization enables active flight in modern vertebrates(2017年6月)
- NCBI PMC ‐ To converge or not to converge in environmental space: testing for similar environments between analogous succulent plants of North America and Africa(2013年6月)
- NCBI PMC ‐ Genomic basis for the convergent evolution of electric organs(2014年6月)
- NCBI PMC ‐ What does convergent evolution mean? The interpretation of convergence and its implications in the search for limits to evolution(2015年12月)

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