カブトムシやクワガタムシ、タマムシ、カミキリムシ…。昆虫展でひときわ目を引く甲虫たちは、硬い前翅「エリトラ(さや翅)」に守られながら、森、草地、水辺、そして私たちの身近な町まで、多様な環境で暮らしています。角や大顎、光沢のある体の奥には、食べ物やすみかに応じて磨かれてきた、長い進化の工夫が隠されています。
メンフクロウ職員みなさん、お待たせいたしました! 鱗翅目のチョウ・ガ編に続く昆虫展サポートガイド第2弾、甲虫目編をお届けします。



甲虫は、昆虫展でもスター揃いですね〜。



日本で記録されている甲虫だけを見ても、森の枯れ木、草花、水辺、土の中など、実にさまざまな場所に仲間が暮らしています。それぞれの姿を丁寧に見ると、その甲虫が暮らす環境との結び付きも見えてきますよ。



大きな角や大顎はもちろんカッコいいですが、触角の形、脚のつくり、さや翅の模様、生活まで見ていくと、小さな甲虫にも驚くほどの個性があり奥が深いんです。



それでは、甲虫の世界をもっと楽しむために、まずは「そもそも甲虫とは?」で、共通する特徴から見ていきましょう。


そもそも甲虫とは?


出典:iNaturalist – Chrysochroa castelnaudi(ayim)
私たちが日常の中で目にする昆虫の中でも、ひときわ頑丈で「固そう」に見えるグループが甲虫(こうちゅう)です。甲虫は、昆虫綱( Insecta)の中で「コウチュウ目(鞘翅目:しょうしもく Coleoptera Linnaeus, 1758)」というグループに分類されます。
世界の昆虫多様性を理解する上で、この仲間を知ることは必須と言っても過言ではないでしょう。



ここでは、甲虫を特徴づける基本的な定義と、多様性のスケール、生態や成長の仕組みを、展示を楽しむための視点から見ていきましょう。
前翅が硬い「鞘翅」に変化したコウチュウ目の構造





イラストの部位を上から順に並べると、次のようになります。
- 角(つの・Horn):頭部から伸びる突起で、争いや威嚇などに使われる。
- 頭部(とうぶ・Head):複眼や触角、口などが集まる「顔」にあたる部分。
- 触角(しょっかく・Antennae):匂いや風、周囲の様子を感じ取るための重要な感覚器官。においをかぎ分けたり、ものに触れて位置を確かめたりする「センサー」の役割を果たす。
- 複眼(ふくがん・Compound eye):たくさんの小さな眼が集まってできた目で、動きや光の変化をとらえる。
- 前胸(ぜんきょう・Prothorax):頭部のすぐ後ろにある胸の前の部分で、前脚が付く。
- 小楯板(しょうじゅんばん・Scutellum):前翅の付け根近くにある小さな三角形の板状の部分。
- 前翅(ぜんし・エリトラ・Elytron):硬くなった前の翅で、体や後翅を守る鞘翅。
- 後翅(こうし・Hind wing):薄くて柔らかい翅で、実際に空を飛ぶときに使われる。
- 前肢(ぜんし・Fore leg):一番前の脚で、歩行や地面をつかむときに使う。
- 中肢(ちゅうし・Middle leg):真ん中に位置する脚で、歩いたり踏ん張ったりする。
- 後肢(こうし・Hind leg):一番後ろの脚で、体を支えたり、踏ん張ったり、場合によっては跳躍にも関わる。
- 跗節(ふせつ・Tarsus):脚の先端の節で、地面をつかんだり、ものにしがみついたりする部分。
- 腹部(ふくぶ・Abdomen):体のいちばん後ろの部分で、消化や呼吸、生殖などを受け持つ器官が収まっている。



甲虫の最大の特徴は、体を覆う「かたい前翅(ぜんし)」にあります。この前翅は鞘翅(さやばね)とも呼ばれ、英語ではエリトラ(elytra)と言います。



日本の甲虫研究者の学会が出している甲虫専門誌のタイトルも「Elytra」ですから、いかにこの構造が重要視されているかが分かりますね。


出典:iNaturalist – ヨーロッパミヤマクワガタ Lucanus cervus(outdoorman1982)
甲虫の体では、本来は飛ぶための前の羽が「鞘翅(しょうし・さやばね)」と呼ばれる硬い殻へと変化し、柔らかい腹部や薄い後翅(こうし:後ろの羽)を、鎧のように守っています。飛ぶときには、この鞘翅を大きく開き、その下から扇のように折りたたまれていた後翅を広げて空中を移動します。



甲虫の中でもひょうたん型の体つきのものは、飛行能力を失っている傾向があります。



カタゾウムシ属 Pachyrhynchus がわかりやすい例ですね!


出典:iNaturalist – クロカタゾウムシ Pachyrhynchus infernalis(orthoptera-jp)



飛ぶことをやめた甲虫では、胸部の飛翔筋が大きく退化・消失している例が多く報告されています。
その結果、胸部はコンパクトになり、腹部が相対的に丸く目立つ体型の種類も増え、ひょうたん型の体型になりやすいのです。



カタゾウムシの仲間に至っては、クチクラ(外皮)の強度と引き換えに、飛翔能力を失っており、左右の前翅が癒合して開かなくなり、後翅も退化しています。
地球上の生物の多様性を体現する圧倒的な種数



甲虫は、現在知られている昆虫の中でもとりわけ種数の多いグループです。
現在、地球上で名前が付けられている生物のうち、およそ4分の1、昆虫に限れば約4割が甲虫の仲間だとされています。確認されている種数は世界で数十万種に達し、日本国内だけでも1万種を大きく上回る多様性が記録されています。



昆虫って、明らかに他の生き物と体の作りが違いますよね。足が6本で、翅があるとか…。他の外骨格の生き物は自分の翅で飛んだりしませんよね?



たしかに他の外骨格の生き物(エビやカニ、クモなど)と比べると、昆虫は“体の設計図の応用の仕方”がだいぶ違いますね。



エビやカニ、クモ、ダンゴムシなど、外骨格を持つ節足動物の中で、背中の一部を翅に変えて“空を制した”のが昆虫の系統で、そこがとても特別な点です。
熱帯雨林から高山帯、砂漠、淡水環境に至るまで、さまざまな場所に進出していることが、甲虫の多彩な形態や暮らし方を生み出してきました。博物館や昆虫展で標本を観察する時には、この「同じ甲虫なのに、どうしてこんなに姿が違うのか」という驚きも、大きな楽しみの1つです。
完全変態を行う成長サイクルと生態系での役割


出典:竜洋昆虫自然観察公園 ‐ ヘラクレスオオカブト展示の舞台裏(2023年5月15日)
甲虫は、卵・幼虫・蛹(さなぎ)・成虫と姿を大きく変えながら成長する「完全変態」※を行う昆虫です。幼虫と成虫で生活場所や食べ物が異なる場合も多く、これによって同じ種の中での食物や空間をめぐる競争を避ける工夫が見られます。
生態系における役割も非常に幅広く、植物の葉や木を食べるもの、他の生き物を捕らえるもの、動物の糞や死骸、枯れ木などを分解して土に還すものなど、物質循環を支える重要な存在です。



甲虫標本を見るとき、「この種類は自然の中でどんな役割を担っているのだろう?」と想像してみてください。きっと標本が生き生きと感じられます。
完全変態🐛🦋
完全変態は、卵→幼虫→蛹→成虫という4段階を経る昆虫の生活史で、チョウ、カブトムシ、ハチ、ハエなど現生昆虫種の約80〜85%がこの方式を採用しており、昆虫の繁栄の最大の要因とされています。



反対にバッタ、カマキリ、トンボなどは「不完全変態」の昆虫で、蛹にならず羽化します。
羽化は昆虫が成虫になることを意味します。
(一部、ミノムシのメスのように成虫になっても幼虫の姿のままのものも存在しますが…)
完全変態の最大のメリットは、幼虫と成虫が異なる環境や食料を利用できることで、親子間の競合を避けられる点です。例えば、チョウの幼虫は葉を食べて成長に専念し、成虫は花の蜜を吸って繁殖活動に集中できます。


出典:Wikipedia ‐ 完全変態
一方、蛹の段階では動けず、外敵への防御力がほぼゼロという大きなリスクを抱えます。また、多くの組織で古い細胞が分解され、新たな細胞や構造が分化するため、膨大なエネルギーと時間が必要です。


出典:オオムラサキセンター ‐ オオムラサキを知ろう オオムラサキの一生
不完全変態(バッタやトンボなど)は蛹期がなく、幼虫の期間も常に動いて食べられるため、リスクは低いものの、親子で同じ資源を奪い合う可能性があります。化石記録や分子時計解析から、完全変態は古生代後期に起源を持つ可能性が示唆されており、この戦略が昆虫の多様化と繁栄の鍵となりました。
参考・引用文献


オサムシ科 Carabidae


出典:iNaturalist – Anthia thoracica(wynie)
オサムシ科 Carabidae は、世界の森や草地、砂浜、農地、市街地の緑地まで、地面のあるところならほとんどどこかに顔ぶれが見つかる、大きな甲虫のグループです。アオオサムシやマイマイカブリのような人気種から、砂浜にすむヒョウタンゴミムシ、アリの巣にくらすヒゲブトオサムシ類まで含まれており、形や色、暮らし方のバリエーションはたいへん豊かです。



オサムシ科に共通する主な特徴と生態をまとめると、次のようになります。
- 地上徘徊性のハンター:
多くの種が地表を歩き回って生活する「走行型プレデター」で、幼虫・成虫ともに他の昆虫やミミズ、カタツムリなどを捕食する肉食性の種が主体です。 - 飛ぶより歩く生活:
カタビロオサムシ類など一部の例外を除き、後翅が退化して飛べない種が多く、移動はもっぱら歩行に頼っています。 そのため、大きく広い移動が難しく、地域ごとに体色や体形が細かく分かれて亜種や地方型が生まれやすいのも特徴です。 - 顎と化学防御:
多くの種が大きく発達した顎で獲物をつかまえ、危険が迫ると腹端から刺激臭のある化学物質を噴射して身を守ります。 メタアクリル酸などを含むこの液体は、皮膚や目に付くと激しく痛むほど強力で、鳥や小型哺乳類に対しても効果的な防御手段になっています。
オサムシ科の化学防御の例



化学防御で特に有名なのがミイデラゴミムシ Pheropsophus jessoensis ですね!


出典:iNaturalist – ミイデラゴミムシ Pheropsophus jessoensis(miyrumiyru)



ミイデラゴミムシの腹部の中には「ヒドロキノン」と「過酸化水素」が別々の部屋に貯蔵されており、危険を感じるとそれらを反応室に送り込み、酵素の力で一気に化学反応を起こします。その瞬間、約100℃の水蒸気とベンゾキノン類からなる高温ガスが発生し、強い音と悪臭を伴ってお尻の先から噴射されます。



噴射方向を自在に変えられるうえ、数発続けて発射することもできるため、カエルや鳥などの天敵にとっては「一度くらうと二度と近づきたくなくなる」ほど強力な防御手段になっています。
このように、地上徘徊性・強い顎・化学防御という共通の「型」を持ちながら、森、河原、砂浜、農地、都市の緑地など、さまざまな環境に合わせて細かく姿や暮らし方を変えてきたのがオサムシ科の面白さです。



それでは、昆虫展などでよく展示される顔ぶれを中心に、オサムシ科の代表的なグループを亜科・属ごとに整理して見ていきましょう。
オサムシ属 Carabus


出典:iNaturalist – Carabus marginalis(nikola_rahme)


出典:iNaturalist – ヘッケリークビナガオサムシ Carabus haeckeli(geigei)
オサムシ属 Carabus は、コウチュウ目オサムシ科に属する、地表を歩き回って暮らす肉食性の甲虫グループです。世界に約900種、日本にも数十種が知られる大所帯で、和名は機織り機の部品「筬(おさ)」に似た体形が由来とされ、漫画の神様・手塚治虫氏のペンネームの元になった昆虫としても親しまれています。
最大の特徴は、左右の前翅がぴったり融合し、飛ぶための後翅が退化していることです。空を飛べないので、川や山脈に隔てられた集団どうしが行き来できず、地域ごとに独自の色や姿へと分かれてきました。夜になると森や河原の地面を歩き回り、ミミズや昆虫の幼虫を鋭い大顎で捕らえる「ハンター」として生態系を陰で支える一方、危険を感じると腹部から刺激臭の強い液体を噴射する、したたかな防御力の持ち主でもあります。
オオオサムシ Carabus dehaanii


出典:iNaturalist – オオオサムシ 基亜種 Carabus dehaanii ssp. dehaanii(tabi-vet)
和名:オオオサムシ
学名:Carabus dehaanii
分類:コウチュウ目 オサムシ科 オサムシ亜科 オサムシ属
分布:本州〜九州・一部離島(亜種により分布域が異なる)
保護状況:地域・亜種ごとにレッドリスト指定あり
オオオサムシ Carabus dehaanii は主に東日本の森や河川敷に生息する、日本を代表する美しい地表性甲虫です。昆虫展や博物館の標本箱の中でもひときわ目を引く鮮やかな緑色の金属光沢(構造色※)は、光の当たり方によって微妙に表情を変え、見る人の心を一瞬でつかみます。



オオオサムシの特徴の1つは、前翅が左右でぴったりと融合し、飛ぶための後翅が退化していることです。
空を飛べないために地域ごとに独自の姿へ進化しやすく、分類学や進化生物学の教材としても重要な存在です。夜になると地表を俊敏に歩き回り、ミミズや他の昆虫の幼虫を捕食する「森のプレデター」としての風格も備えており、身近な自然の中にこれほど完成された造形美と生態を持つ生き物が暮らしていることに、深い驚きと敬意を感じさせてくれます。
構造色🦋🌈
構造色とは、物質の中にあるとても細かい“ならび方・形”が、特定の波長の光だけを強く反射して生まれる色です。
色素のように光を吸収して残りを返すのではなく、光が薄い膜や規則正しい微細構造で干渉・回折・散乱されることで、鮮やかな色や角度によって変わる色が現れます。


この構造は光の波長と同じくらいのサイズで秩序正しく並んでいるため、物質自体にほとんど色がなくても強い発色が可能で、構造がこわれない限り色あせにくいという特徴があります。
クジャクの羽やモルフォチョウの翅、玉虫色の昆虫、魚の銀色、シャボン玉やCDの虹色など、多様な生物・無生物で同じ物理原理が働いており、フォトニック結晶材料やインクを使わない印刷、環境応答センサーなどの応用研究も進んでいます。


出典:iNaturalist – タマムシ Chrysochroa fulgidissima(zongweijiang)
参考・引用文献
アオオサムシ Carabus insulicola insulicola


出典:iNaturalist – アオオサムシ 基亜種 Carabus insulicola ssp. insulicola(m_sato)
和名:アオオサムシ
学名:Carabus insulicola insulicola
分類:コウチュウ目 オサムシ科 オサムシ亜科 オサムシ属(Carabus、亜属 Ohomopterus )
分布:日本固有種。アオオサムシ全体は東日本を中心に広く分布(そのうち神奈川周辺の個体群が「基亜種 insulicola」として標準形に位置づけられる)
保護状況:全国的な指定はないが、地域によっては環境変化による減少が懸念されている
アオオサムシの中でも「基準」となる代表的なタイプが、この基亜種 Carabus insulicola insulicola です。東日本の雑木林や河川敷に生息する地表性甲虫で、この種も前翅が左右でぴったり癒合し、飛ぶための後翅が退化しているため空を飛べず、森や河原の地面を俊敏に歩き回って生活します。
この種も地域ごとに色や模様が少しずつ違う亜種へ分かれていることから、地形や環境の違いが姿かたちにどう影響するのかを学ぶ、進化・分類学の教材としても重要な甲虫と言えるでしょう。
カブリモドキ亜属 Coptolabrus


出典:iNaturalist – イボカブリモドキ Carabus pustulifer(liuye)


出典:iNaturalist – ツシマカブリモドキ Carabus fruhstorferi(ninaendlesseive)
和名:カブリモドキ亜属
学名:Coptolabrus
分類:コウチュウ目 オサムシ科 オサムシ亜科 オサムシ属(亜属 Coptolabrus )
分布:中国本土〜朝鮮半島を中心とする東アジア
保護状況:国際的な絶滅危惧指定はないが、生息地の開発や乱獲により地域的な減少が懸念されている
カブリモドキ亜属 Coptolabrus は、緑・青・赤銅色など光り輝く大型の甲虫が多く知られる、中国大陸を中心に朝鮮半島まで分布するグループです。緑地に赤い縁取りが入るような派手な色彩の種が多く、標本コレクターを魅了するオサムシ属の「東アジア版・宝飾品」ともいえる存在です。



日本では長崎県の対馬に生息するツシマカブリモドキ Carabus fruhstorferi がこの仲間として唯一知られています。
マイマイカブリと同じくカタツムリを主食とする「貝食性」のオサムシで、殻の奥まで頭を差し込んで肉を溶かしながら食べるため、頭部が細長く伸びた独特の姿をしています。
ここではオサムシ属 Carabus の一亜属 Coptolabrus として扱っていますが、文献によってはマイマイカブリと同じDamaster 属として扱われることもあり、カブリモドキ類とマイマイカブリ類の近縁関係は今も分類学者の間で議論が続く興味深いテーマです。



亜属(subgenus)は、生物分類の階級で「属」と「種」の間に置かれる区分です。オサムシ属のように含まれる種数が多い属で、近縁な種どうしをさらに小さくまとめる際に使われます。
クビナガオサムシ亜属 Acoptolabrus


出典:iNaturalist – シュレンククビナガオサムシ Carabus schrencki(andrey19780619)


出典:iNaturalist – オオズクビナガオサムシ Carabus mirabilissimus(jyobs_6z)
和名:クビナガオサムシ亜属
学名:Acoptolabrus
分類:コウチュウ目 オサムシ科 オサムシ亜科 オサムシ属
分布:日本(北海道)、サハリン、千島列島、ロシア極東など
保護状況:全国的な指定はないが、北海道内の一部地域では生息環境の変化による減少が懸念されている。
クビナガオサムシ亜属 Acoptolabrus は、前胸部と頭部が細長く伸び、「首」がきゅっとすぼまったような独特のシルエットを持つ、大型で美しい金属光沢のオサムシの仲間です。ロシア極東から中国東北部、朝鮮半島にかけての大陸部に主に分布し、サハリンを経て北海道まで生息域が広がっています。
遺伝子解析によると、この仲間は約2,000万年前に大陸に残ったグループと、サハリン・北海道へ渡ったグループへと大きく枝分かれし、それぞれの中でさらに現在の姿へと種分化したのは約400万年前以降とされています。この結果、北海道のオオルリオサムシに最も近縁なのは、遠く離れた大陸の種ではなく、お隣サハリンのカラフトクビナガオサムシ Carabus lopatini であることも判明しています。


出典:iNaturalist – カラフトクビナガオサムシ Carabus lopatini(kordyukov)
- オオルリオサムシ Carabus (Acoptolabrus )gehinii


出典:iNaturalist – オオルリオサムシ 基亜種 Carabus gehinii ssp. gehinii(al_terf)


出典:iNaturalist – オオルリオサムシ 道北亜種 Carabus gehinii ssp. aereicollis(geofuruko)
オオルリオサムシ Carabus (Acoptolabrus )gehinii は、深い青色から紫色に輝く美しい金属光沢をまとい、名の通り「瑠璃色」の装甲を持つ北海道固有の大型オサムシです。冷涼な森林の林床でカタツムリやミミズを捕食し、飛べないために北海道内でも地域ごとに細かく亜種が分かれる、北の大地を象徴する存在です。
マイマイカブリ属 Damaster (マイマイカブリ亜属 Damaster )


出典:iNaturalist – マイマイカブリ 関東・中部地方亜種 Carabus blaptoides ssp. oxuroides(renshuchu)
マイマイカブリ属(マイマイカブリ亜属)Damaster は、日本列島だけに自然分布する、日本固有のグループです。現在知られている構成種はマイマイカブリただ一種のみですが、頭部と前胸部が細長く伸びたユニークな体形をもとに、北海道から九州、離島まで実に10前後の亜種へと枝分かれしました。
海外に自生地を持たない分、日本列島の成り立ちそのものを映し出す、貴重な生きた記録ともいえる存在です
マイマイカブリ Damaster blaptoides


出典:iNaturalist – マイマイカブリ 基亜種 Carabus blaptoides ssp. blaptoides(coleoreteh)
和名:マイマイカブリ
学名:Damaster blaptoides
分類:コウチュウ目 オサムシ科 オサムシ亜科 オサムシ属(Damaster)
分布:本州〜四国・九州の山地〜里山(亜種により分布が異なる)
保護状況: 特になし(佐渡島などの特定亜種は地域的な保護対象となる場合があります)
マイマイカブリ Damaster blaptoides は、その名の通りカタツムリ(マイマイ)を専門に捕食することから名づけられた、日本を代表するオサムシです。飛べないぶん地域ごとに独自の進化を遂げ、体色や頭部の長さの異なる多くの亜種が全国に分布しています。



危険を感じると腹部から刺激臭の強い酸性の液体を噴射するため、野外で見つけても素手で強く握らないよう注意しましょう


出典:iNaturalist – マイマイカブリ 北海道亜種 Carabus blaptoides ssp. rugipennis(kks1226)


出典:iNaturalist – マイマイカブリ 東北地方南部亜種 Carabus blaptoides ssp. babaianus(gomidama_tv)
体色は黒〜青緑の金属光沢を帯びたものまで変化に富み、地域ごとに形や色が違う多くの亜種が知られています。
台湾に人為的に持ち込まれたマイマイカブリ
台湾にはアフリカマイマイ Achatina fulica という殻高20cm近くに達する世界最大級のカタツムリが、食用目的で1930年代初頭に持ち込まれていました。この貝は非常に旺盛な食欲を持ち、農作物の柔らかい葉や茎を食い荒らす深刻な農業害虫として、たちまち問題になってしまいます。
そこで、アフリカマイマイなどの大型陸産貝類を天敵によって抑え込もうと、日本原産のマイマイカブリが台湾へ導入されたのです。台湾で定着したマイマイカブリは、日本の個体群とは異なる特徴を示すようになり、台湾中部・八仙山の個体群はタイワンマイマイカブリ Damaster blaptoides hanae として新亜種に記載されました。
人の手によって移入された昆虫が、新たな土地で地域的な特徴を獲得した興味深い例として知られています。
ヒョウタンゴミムシ属 Scarites


出典:iNaturalist – Scarites subterraneus(huttonia)
和名:ヒョウタンゴミムシ属
学名:Scarites
分類:コウチュウ目 オサムシ科 ヒョウタンゴミムシ亜科 ヒョウタンゴミムシ属
分布:ヨーロッパ・アフリカ・アジア・南北アメリカなど世界各地の海岸・草地・畑地
保護状況:国際的な指定はないが、野生個体の採集圧や生息環境の変化による局所的な減少が懸念されている
ヒョウタンゴミムシ属 Scarites は、前胸部と上翅(背中側の翅)の間が細くくびれた、まさに「ひょうたん」を思わせる独特のシルエットを持つ、地表・地中性の肉食甲虫です。長い脚で地表を走り回る一般的なオサムシとは異なり、幅広く発達した前脚の脛節(すねに当たる部分)を天然のショベルのように使い、砂地や土壌を掘り進んで暮らす「掘削型のハンター」として独自の生存戦略を築いています。



この仲間の多くも、他のオサムシ類と同じく後翅が退化する傾向にあり、地表や地中での暮らしに特化しています。
オオヒョウタンゴミムシ Scarites sulcatus


出典:iNaturaslist – オオヒョウタンゴミムシ Scarites sulcatus(garlicia)
オオヒョウタンゴミムシ Scarites sulcatus は、本州から九州にかけての海岸や河川敷の砂地に生息する、体長30〜40mmに達する日本最大級のゴミムシです。前脚のすねを幅広いシャベル状に変化させて砂に深い巣穴を掘り、出入り口をアリジゴクのようなすり鉢状に整えて、鋭い大顎を開いたまま獲物を待ち伏せる巧みなハンターです。
海岸開発による生息地の減少で、国の準絶滅危惧種に指定されています。
オサムシモドキ属 Craspedonotus


出典:iNaturalist – オサムシモドキ Craspedonotus tibialis(miragin)
オサムシモドキ属 Craspedonotus は、世界でただ一種、オサムシモドキのみが知られる珍しいグループです。名前も姿もオサムシの仲間によく似ていますが、分類上は別系統のオサムシモドキ亜科 Broscinae に属し、いわば「他人の空似」を体現する存在です。
前胸部と上翅の間が強くすぼまった独特の体形を活かし、海岸の砂浜や河川敷の砂地という限られた環境に特化して暮らす「好砂性」で、砂粒の隙間に潜り込んで日中の乾燥や熱気をやり過ごします。かつては普通に見られましたが、近年は多くの都道府県でレッドデータブックに掲載されるほど数を減らしており、健全な砂浜環境が残っているかどうかを教えてくれる、静かな指標役も担っています。
オサムシモドキ Craspedonotus tibialis


出典:iNaturalist – オサムシモドキ Craspedonotus tibialis(dadedont)
和名:オサムシモドキ
学名:Craspedonotus tibialis
分類:コウチュウ目 オサムシ科 ホソクビゴミムシ亜科 Craspedonotus 属
分布:日本各地の海岸砂地を中心に、河川敷など内陸の砂地にも生息
保護状況:全国的な指定はないが、海岸の開発や護岸工事による砂浜の減少に伴う生息数の減少が懸念されている
オサムシモドキ Craspedonotus tibialis は、名前のとおり大型のオサムシを思わせる姿をしていますが、より華奢な体つきと長く伸びた首(前胸部)が特徴です。体長20〜24mmほどで、光沢の鈍い黒色の体に、脛節と触角の第一節だけが黄褐色に色づくのが見分けのポイントです。
海岸や河川敷の砂地に自ら穴を掘って昼間の乾燥をやり過ごし、夜になると地表を俊敏に走り回って小さな昆虫を捕食します。後翅が退化していると考えられ、空を飛んで新しい砂浜へ移動することはほとんどありません。
そのため、海岸線の開発や護岸工事で砂浜が減ると、簡単に生息地が分断されてしまいます。環境省のレッドリストで準絶滅危惧(NT)に指定されているほか、沿岸部を持つ多くの都道府県でも同様に絶滅危惧種・準絶滅危惧種として掲載されている、身近な海岸環境の変化を映し出す存在です。
バイオリンムシ属 Mormolyce


出典:iNaturalist – Mormolyce borneensis(oliverben92)
和名:バイオリンムシ
学名:Mormolyce
分類:コウチュウ目 オサムシ科 レビウス亜科 バイオリンムシ属
分布:東南アジアの熱帯雨林(インドネシア、マレーシア、スマトラなど)
保護状況:国際的な絶滅危惧指定はないが、熱帯雨林伐採や採集により一部地域での減少が懸念されている
バイオリンムシ属 Mormolyce は、東南アジアの熱帯雨林にひっそりと暮らす、オサムシ科のなかでも極めて異彩を放つグループです。上翅の両脇が薄い板状に大きく広がり、まるで弦楽器のバイオリンを思わせる独特のシルエットをしています。
この極端に薄く押しつぶされたような体は、巨木の樹皮の隙間や、大型のサルノコシカケというキノコが作るわずかな空間へ潜り込むための、洗練された形態適応と考えられています。現在7種ほどが知られ、いずれもマレー半島やスマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島などの森だけに分布し、暗い林床で他の小さな昆虫を捕食して暮らします。


出典:iNaturalist – Mormolyce phyllodes ssp. engeli(frank-deschandol)
捕食者から身を守るため、腹端の腺から刺激臭のある酸性の液体を噴射することも知られており、「見た目は楽器、中身は爆撃機」という表現がぴったりの甲虫です。 展示では、一目で忘れられない姿をしているため、「世界の変わり種オサムシ」の代表として強いインパクトを与えてくれます。



「バイオリンムシ」という和名の命名者は、昆虫写真家として知られる海野和男先生で、団扇のような形にも見えることから「ウチワムシ」という愛称でも親しまれています。



英語圏では「Violin Beetle(バイオリン甲虫)」をはじめ、「Fiddle Beetle(フィドル甲虫)」や「Guitar Beetle(ギター甲虫)」といった名で親しまれています。
バイオリンムシ Mormolyce phyllodes


出典:iNaturalist – バイオリンムシ Mormolyce phyllodes(liuye)
バイオリンムシ Mormolyce phyllodes は、体長6〜10cmに達する、バイオリンムシ属を代表する種です。艶やかな飴色の体と、楽器を思わせる優美な曲線を持ちながら、厚みはわずか5mm程度しかない極端な扁平ボディの持ち主でもあります。
この平たい体を活かして樹皮の裏やキノコの隙間に密着して暮らし、危険を感じるとお尻からアンモニア臭のする刺激臭の強い液体を噴射して身を守ります。
ヒゲブトオサムシ亜科 Paussinae


出典:iNaturalist – Heteropaussus hastatus(rion_bio)


出典:iNaturalist – Platyrhopalus tonkinensis(gd6)
和名:ヒゲブトオサムシ亜科
学名:Paussinae
分類:コウチュウ目 オサムシ科 ヒゲブトオサムシ亜科 Paussus 属
分布:アフリカ・ヨーロッパ・アジアの熱帯〜温帯
保護状況:多くの種で公式な指定はないが、アリと共にくらす特殊な生態ゆえに、生息環境の変化に敏感で、地域的な減少が懸念されている
ヒゲブトオサムシ亜科 Paussinae は、世界に約1,000種以上が知られる不思議な甲虫のグループです。なかでも代表的な Paussus 属をはじめとする「ヒゲブトオサムシ族」の仲間は、すべてがアリの巣で暮らす「義務的アリ共生者(オブリゲート・ミルメコファイル)」として知られています。
体は丸みを帯びた独特の形で、触角や体表からアリが好む物質を分泌し、アリたちに守ってもらう代わりに、そのアリや幼虫を少しずつ捕食するという、したたかな共生関係を築いています。また、防御用の爆発的な化学噴射能力を持つ甲虫としても知られ、化学・行動・共生生態のどれを取っても研究者の興味が尽きない存在です。
なお、この亜科には日本産のエグリゴミムシのように、アリとは共生しない種も含まれています。


クワガタムシ科 Lucanidae


出典:iNaturalist – サソリクワガタ Platyfigulus scorpio(amila_sumanapala)
クワガタムシ科 Lucanidae は、世界の森林を中心に暮らす「オスの大顎が発達した甲虫たち」の大きなグループで、東南アジアの熱帯雨林から日本各地の雑木林まで、樹木と深く結びついた暮らしを続けています。
日本でお馴染みのオオクワガタやノコギリクワガタに加え、ニジイロクワガタやオウゴンオニクワガタのような海外の美麗種も含まれており、大顎の形や体色のバリエーションの豊かさが、この科ならではの魅力です。


出典:iNaturalist – ルフィペスヒメコツノクワガタ Paralissotes rufipes(invertebratist)



クワガタムシ科に共通する主な特徴と生態をまとめると、次のようになります。
大顎の発達と多様性


出典:iNaturalist – プリモスマルガタクワガタ Colophon primosi(knysna_wildflowers)
オスの頭部には著しく発達した大顎(おおあご)があり、樹液の出る場所をめぐる争いや、メスをめぐる競争で相手をつかんだり持ち上げたりする「武器」として働きます。
ノコギリの刃のようにギザギザのもの、シカの角のように優雅に曲がるもの、太く短く力強いものなど、種ごとに形がまったく違ううえ、同じ種類でも幼虫期の栄養状態によって大きさや形が変化するため、「同じ種なのにこんなに顔つきが違うのか」と、生物の多様性を目で見て感じられるグループです。
森と朽ち木に支えられた一生


出典:iNaturalist – カエラートゥスサメハダクワガタ Erichius caelatus(vito_rojas)
幼虫は主に立ち枯れた木や倒木、土に還りつつある朽ち木の内部にすみつき、菌類の働きで柔らかくなった木質を食べて成長します。成虫は多くの種が樹液を栄養源とする一方、なかには熟した果実や花の蜜などを利用する種も存在します。
幼虫は木を土へと変える「分解の名人」


出典:iNaturalist – コクワガタ Dorcus rectus(takuya_iwasawa)
クワガタムシは完全変態を行う昆虫で、卵から孵化した幼虫は何度か脱皮を繰り返しながら成長し、やがて蛹(さなぎ)を経て成虫へと姿を変えます。幼虫は柔らかく腐朽した木をかじって消化し、細かな糞として排出することで、朽ち木の分解を助けています。
こうした働きは、菌類やシロアリ、他の木材を利用する昆虫などとともに森林の物質循環を支え、栄養豊かな土壌づくりや、次の世代の樹木や草花が育つ環境の維持に役立っています。



それでは、昆虫展や博物館でよく展示されるクワガタムシを中心に、属ごとに整理して見ていきましょう。
ミヤマクワガタ属 Lucanus


出典:iNaturalist – ミヤマクワガタ 基亜種 Lucanus maculifemoratus ssp. maculifemoratus(renshuchu)
和名:ミヤマクワガタ(日本産は Lucanus maculifemoratus)
学名:Lucanus spp.
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 ミヤマクワガタ属
分布:日本(北海道〜九州)、朝鮮半島、中国、台湾、ロシア南東部、ヨーロッパ(L. cervus)
保護状況:日本産は普通種だがヨーロッパミヤマ(L. cervus)はEU生息地指令付属書II掲載
ミヤマクワガタ属 Lucanus は、頭部の両側が「耳」のように張り出した独特のシルエットと、のこぎり状にギザギザした大顎が印象的な大型クワガタムシのグループです。日本のミヤマクワガタ(Lucanus maculifemoratus )を代表として、ユーラシア各地の冷涼な森林帯に複数種が知られており、いずれも「涼しい森」を象徴するような存在感を持っています。


出典:iNaturalist – ヨーロッパミヤマクワガタ Lucanus cervus(maxverheij)
この属の最大の特徴は、オスの頭部にそびえ立つ冠のような隆起(耳状突起)と、長く弧を描いて伸びる大顎です。大顎の先端が二股に分かれ、小刻みな内歯が並ぶ繊細な造形は、種ごとに少しずつ形が違ううえ、同じ種でも幼虫期の栄養状態によって大きく姿が変わります。


出典:iNaturalist – タイワンミヤマクワガタ Lucanus formosanus(wei_xz)
生息環境としては、クヌギやコナラの二次林からブナやミズナラの自然林まで、さまざまな森林に見られます。日本では、薪炭利用などによって適度に管理されてきた里山で多く見られる傾向があります。
幼虫は、地中に半ば埋もれた腐朽木(埋没朽木)の中で数年かけて成長し、成虫は樹液に集まります。比較的冷涼な環境を好むため、平地の都市部では見られる機会が少なく、山地や丘陵地で出会うことの多いクワガタムシです。
ノコギリクワガタ属 Prosopocoilus


出典:iNaturalist – ノコギリクワガタ 基亜種 Prosopocoilus inclinatus ssp. inclinatus(tokue)


出典:iNaturalist – フタテンアカノコギリクワガタ Prosopocoilus astacoides ssp. blanchardi(dolphin07)


出典:iNaturalist – コンフキウスノコギリクワガタ Prosopocoilus confucius(jueming641)
和名:ノコギリクワガタ(日本産の代表種は Prosopocoilus inclinatus)
学名:Prosopocoilus
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 ノコギリクワガタ属
分布:日本(本州〜四国・九州・一部離島)、東アジア〜東南アジアの森林地帯に多数種が分布
保護状況:日本産の代表種は広く見られるが、地域的に個体数が減少しているとされる亜種・近縁種もある
ノコギリクワガタ属 Prosopocoilus は、その名の通り「ノコギリ」の刃のようにギザギザとした大顎を持つクワガタムシのグループで、日本のノコギリクワガタやリュウキュウノコギリクワガタ、東南アジアの大型種まで多彩な仲間が知られています。オスの大顎は細長く前方へ伸び、先端から根元まで大小の突起が並んでおり、樹液の出る幹や倒木の上で、相手をつかんでひっくり返す「取っ組み合い」の道具として活躍します。



東南アジアの大型種といえば、「ギラファノコギリクワガタ」が有名ですね。長い大顎が強そう~!


出典:iNaturalist – Prosopocoilus girafa ssp. girafa(mfsc)
生息環境としては、クヌギやコナラを主体とした里山の雑木林を中心に、各地の落葉広葉樹林で見られます。日本では、薪炭利用などによって適度に管理されてきた里山に多く生息してきました。
幼虫は地中に半ば埋もれた腐朽木(埋没朽木)や広葉樹の根部の中で1〜2年ほどかけて成長し、成虫は主に樹液を栄養源とします。夏の夕暮れから夜にかけて活発に活動し、クヌギやコナラの樹液に集まる姿は、日本の夏を代表する昆虫の風景の一つとなっています。



日本のノコギリクワガタを観察すると分かりますが、活動期を迎えた成虫は、雌雄ともに非常に気が荒く活動的で、樹液の場所をめぐって激しい闘争を繰り広げます。



そんなアグレッシブな性格も、人気を集める要因かもしれませんね。
同じ種類でも、大顎の長さやギザギザの数が個体によって大きく違うほか、日本の里山から東南アジアの熱帯雨林まで、地域ごとに色や体型が少しずつ変わる点も注目ポイントで、この属を「世界の森をつなぐクワガタ」として見ることもできます。
ツヤクワガタ属 Odontolabis


出典:iNaturalist – フェモラリスツヤクワガタ Odontolabis femoralis(dazaoaaaa)


出典:iNaturalist – ストリアータツヤクワガタ Odontolabis striata(easyparadise)


出典:iNaturalist – オニツヤクワガタ Odontolabis siva ssp. parryi(lupintheking)
和名:ツヤクワガタ
学名:Odontolabis spp.
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 ツヤクワガタ属
分布:東南アジアを中心に、マレー半島・ボルネオ島・スマトラ島・ジャワ島などの熱帯雨林
保護状況:国際的な一括指定はないが、生息地の森林伐採により、地域的な個体数減少や流通量の少ない種も多い
ツヤクワガタ属 Odontolabis(ツヤクワガタ類)は、光沢のある美しい体表を持つ種が多い、大型クワガタムシのグループです。東南アジアを中心に、インドシナ半島からマレー諸島にかけて広く分布し、インド北東部や中国南部にも生息域が及びます。
黒と黄褐色のツートンカラーが美しいブルマイスターツヤクワガタ Odontolabis burmeisteri や、100mm級に達するインターメディアツヤクワガタ Odontolabis intermedius など、「大きさ」と「輝き」の両方で見る人を圧倒する種類が多く知られています。


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Coleoptera- Lamellicornia (1910) (20635976476)
※左上:長歯型、右上:中歯型、左下:原歯型、右下:雌
オスの大顎は種によって姿が大きく異なり、長くまっすぐ伸びるタイプ、途中で強く曲がるタイプ、根元が極端に太くなるタイプなど、同じ属とは思えないほどバリエーションが豊かです。しかも、同じ種のオスでも「長歯型」「中歯型」「短歯型」といった大顎の形の違いが現れるため、標本箱を眺めるだけでも「同じ仲間の中でここまで形が違うのか」と進化の不思議を感じさせてくれます。
生息環境は、東南アジアの熱帯・亜熱帯林を中心とし、森林内の朽ち木や腐朽した植物質と深く結びついています。幼虫は朽ち木や地中に埋もれた腐朽木の内部で成長し、成虫は夜間に活動して樹液や熟した果実などを利用します。
オス同士では発達した大顎を使った争いも見られ、迫力ある姿から海外の人気クワガタとして高い注目を集めています。
フタマタクワガタ属 Hexarthrius


出典:iNaturalist – Hexarthrius parryi ssp. paradoxus(chengzhong)


出典:iNaturalist – Hexarthrius parryi ssp. deyrollei(jiangyou)
和名:フタマタクワガタ
学名:Hexarthrius spp.
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 フタマタクワガタ属
分布:インド〜インドシナ、マレー半島、スマトラ島・ボルネオ島・ジャワ島など東南アジアの森林地帯(日本産はなし)
保護状況:国際的な一括指定はないが、熱帯雨林の伐採や開発により、生息地の縮小や個体数減少が懸念される種も多い
フタマタクワガタ属 Hexarthrius は、パリーフタマタクワガタ Hexarthrius parryi やマンディブラリスフタマタクワガタ Hexarthrius mandibularis のような人気種を含む、大型クワガタムシのグループです。南アジアから東南アジアにかけて広く分布し、インド北東部やミャンマー、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島などの森林に生息しています。
和名の由来にもなった「二股に分かれた大顎」を持つ種が多く知られていますが、実はこの特徴は属内のすべての種に共通するわけではなく、シカクワガタ属やミヤマクワガタ属など他の属にも似た形の大顎を持つ種が存在します。
オスは長く湾曲した大顎の先端が二股状に分かれ、内側には鋭い歯が発達しており、真正面から見るとまるで「カニのはさみ」を持った甲冑武者のような迫力があります。


出典:iNaturalist – Hexarthrius mandibularis ssp. mandibularis(lesday)
この属を見分ける確実な決め手は、触角の先端部が6つの片状節に分かれていることです。属名 Hexarthrius も「6つの関節」という意味で、これは本属全種に共通し、外見が似たツヤクワガタ属やノコギリクワガタ属と区別するための、もっとも簡単で確実な識別ポイントになっています。
生息環境は東南アジアの熱帯林を中心とし、幼虫は倒木や朽ち木の内部で成長します。成虫は夜間に活動し、樹液や熟した果実などを利用します。
オスは気性が荒く、発達した大顎を使って同種・他種を問わず激しく攻撃することもある「闘士」で、その迫力ある姿から世界中の昆虫愛好家を魅了しています。
ホソアカクワガタ属 Cyclommatus


出典:iNaturalist – チュウホソアカクワガタ Cyclommatus chewi(edfinder)


出典:iNaturalist – ルニフェルホソアカクワガタ Cyclommatus lunifer(siang_liang)
和名:ホソアカクワガタ
学名:Cyclommatus spp.
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 ホソアカクワガタ属
分布:スマトラ島・ボルネオ島・マレー半島・スラウェシ島など、東南アジアの山地〜丘陵の森林地帯
保護状況:国際的な一括指定はないが、高地性の種を中心に、生息地の伐採や乱獲により個体数の減少が懸念されている
ホソアカクワガタ属 Cyclommatus は、「細く長い大顎」と「金属的な体色」で世界的な人気を集めるクワガタムシのグループです。東南アジアの熱帯・亜熱帯林を中心に、低地から山地まで多様な森林環境に分布しています。
代表種のメタリフェルホソアカクワガタ Cyclommatus metallifer は、銅色〜金属緑の光沢を帯びた体と、体長の半分以上にもなる細長い大顎が特徴です。また、エラフスホソアカクワガタ C. elaphus は、緑〜青みを帯びた体色とシカの角のように湾曲した大顎を持ち、世界でも特に美しいクワガタの一つとして人気があります。


出典:九州大学総合研究博物館 ‐ 烏山邦夫甲虫類コレクション ホソアカクワガタ
属名 Cyclommatus は「円形の目」を意味する言葉に由来し、大きく発達した複眼が特徴の一つです。オスの大顎は細長く伸び、多くの種では独特の位置に発達した内歯を備えており、種ごとに個性豊かな形を見せます。
この細長い大顎は、樹冠部や細い枝の上で相手を挟み合う際に、独特の働きをすると考えられています。
さらに興味深いのは、多くのクワガタムシが樹液を主食とするのに対し、ホソアカクワガタ属は花の蜜を吸って生活するという珍しい習性を持つことです。幼虫は森林内の朽ち木や腐朽した植物質を利用して成長し、成虫は細い枝先や草花を主な生活の場とする、この属らしい暮らしぶりを見せてくれます。
オウゴンオニクワガタ属 Allotopus


出典:iNaturalist – Allotopus moellenkampi ssp. moseri(justcapture2021)
和名:オウゴンオニクワガタ属
学名:Allotopus
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 オウゴンオニクワガタ属
分布:インドネシア・ジャワ島西部(Allotopus rosenbergi)、スマトラ島・ボルネオ島・マレー半島などに A. moellenkampi 系統が分布
保護状況:日本には自然分布しないが、生息地の森林伐採による減少に加え、ペット用採集圧もあり、一部地域での個体数減少が懸念されている
オウゴンオニクワガタ属 Allotopus は、黄金色に輝く美しいオニクワガタの仲間として世界的に人気の高いグループです。ジャワ島西部にはローゼンベルグオウゴンオニクワガタ Allotopus rosenbergi が分布し、モーレンカンプオウゴンオニクワガタ A. moellenkampi はスマトラ島・ボルネオ島・マレー半島などに分布します。
代表種のローゼンベルグオウゴンオニクワガタは、金色から黄褐色の強い光沢を帯びた体表が魅力で、英語圏でも Golden stag beetle などの名前で知られています。大型のオスでは大顎の先端が三つに分かれる個体も見られる、複雑で個性的な武器の持ち主で、飼育下では比較的扱いやすい種類としても知られています。
この属ならではの面白い特徴が、幼虫の成長に欠かせない「菌類との関係」です。野外では、特定の白色腐朽菌によって分解された朽ち木を選んで産卵すると考えられており、一般的なクヌギ・コナラ材では飼育下での産卵が難しいことで知られていました。
その後、霊芝材やカワラタケ菌床を利用した飼育技術が確立され、現在では累代飼育も広く行われています。「黄金色のクワガタ」と「森のキノコ」の不思議な関係は、本属を象徴する魅力の一つです。
ニジイロクワガタ属 Phalacrognathus


出典:iNaturalist – ニジイロクワガタ Phalacrognathus muelleri(ross_coupland)


出典:iNaturalist – ニジイロクワガタ Phalacrognathus muelleri(sylvanc)
和名:ニジイロクワガタ
学名:Phalacrognathus muelleri
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 ニジイロクワガタ属
分布:オーストラリア北東部(クイーンズランド州)の熱帯雨林
保護状況:国際的な絶滅危惧指定はないものの、分布域が限られており、生息環境の破壊や乱獲による影響が懸念されています
ニジイロクワガタ属 Phalacrognathus は、世界でたった1種類、ニジイロクワガタ Phalacrognathus muelleri だけからなる「1属1種」の非常に珍しいクワガタのグループです。オーストラリア北東部クイーンズランド州の熱帯雨林や湿潤な森林、ケープヨーク半島周辺に分布しています。
深い緑・赤銅色・紫がかった光沢が角度によって入れ替わる独特の金属光沢は、色素ではなく外骨格のごく微細な構造が光を反射して生まれる「構造色」によるもので、まさに名前の通り「虹色」の鎧をまとった甲虫です。
形態的な特徴としては、頭部が小さく幅が狭いのに対し、オスの大顎は上向きに大きく反り返り、先端が二股に分かれるという独特な形をしています。この反り返った大顎は、相手を挟むよりもカブトムシのように下からすくい上げて戦うのに向いていると考えられており、色彩の美しさに加え、他のクワガタとは一線を画す個性的なフォルムも、この属ならではの大きな魅力です。
幼虫は森林内の倒木や朽ち木の内部で腐朽した木質を食べて育ち、成虫は夜間に活動して樹液などを利用します。





注意点として、ニジイロクワガタは「単型属」であって、上の記事が扱っている「単型科(一科一属一種)」ではありません。



「クワガタ科」にはたくさんの「属」が存在しますからね~
オオクワガタ属 Dorcus


出典:iNaturalist – Dorcus antaeus ssp. miyashitai(lu_s_w)


出典:iNaturalist – タイワンオオクワガタ Dorcus grandis ssp. formosanus(yuluhuang)
和名:オオクワガタ(日本では Dorcus hopei binodulosus が代表種)
学名:Dorcus spp.
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 オオクワガタ属(Dorcus)
分布:日本(北海道〜九州・対馬など)、朝鮮半島、中国など東アジアを中心に多数種・亜種が分布
保護状況:日本のオオクワガタは全国的には「準絶滅危惧〜要注目種」扱いが多く、里山の大木の減少と採集圧により、地域によってはレッドリスト指定や保護の対象になっています
オオクワガタ属 Dorcus は、日本のオオクワガタDorcus hopei ssp. binodulosus やコクワガタ Dorcus rectus 、ヒラタクワガタ類(Dorcus 亜属 Serrognathus とされることもある)など、黒く重厚な「王道系クワガタ」を多く含むグループです。代表種の日本産オオクワガタは、日本を代表する大型クワガタで、オスは大顎を含めると70mmを超える個体も記録されており、「黒いダイヤ」と呼ばれてブームを巻き起こしたこともあります。


出典:iNaturalist – ヒラタクワガタ 本土亜種 Serrognathus titanus ssp. pilifer(naturalistsy)
この属の特徴は、太く内側へ湾曲した大顎と、ずっしりした体つきです。オオクワガタのオスの大顎には中央よりやや前方に大きな内歯が一対ありますが、その位置や発達の程度は体の大きさによって変化し、小型個体でもオオクワガタ特有の大顎形状が比較的よく残ることから、サイズによる形態変化を観察できる点も興味深い特徴です。
幼虫はクヌギやコナラなど広葉樹の白色腐朽した朽ち木を利用し、1〜2年ほどかけて成長します。成虫は夜に樹液へ集まり、樹洞や大木の割れ目、樹皮のめくれの奥でひっそりと暮らします。


出典:iNaturalist – コクワガタ 基亜種 Dorcus rectus ssp. rectus(plant0302)
生息環境としては、平地〜低山帯の雑木林や河畔林など、人里に近い里山の大木と強く結びついており、台場クヌギのような老齢木や樹洞を持つ大木が少なくなると、重要な生息場所も失われてしまいます。オオクワガタは環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されており、里山の大木の減少や商業目的の過剰な採集が主な要因とされています(種の保存法に基づく国内希少野生動植物種には指定されていないため、採集や飼育自体は法的に禁止されていません)。
そのため、オオクワガタ属の分布は「里山の成熟度や大木の存在を知る手がかり」となる存在として、日本の森と人の暮らしの歴史を語るうえでも、博物館や昆虫展で重要な役割を担っています。
シカクワガタ属 Rhaetulus


出典:iNaturalist – タイワンシカクワガタ Rhaetulus crenatus(lupintheking)


出典:iNaturalist – タイワンシカクワガタ Rhaetulus crenatus(ihenglan)


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Blblupside
和名:シカクワガタ(日本産の代表種はアマミシカクワガタ Rhaetulus recticornis)
学名:Rhaetulus spp.
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科 シカクワガタ属
分布:東南アジア大陸部(タイ・マレー半島・ベトナムなど)から台湾・中国南部にかけて広く分布し、日本では奄美群島のアマミシカクワガタが唯一の種として知られています
保護状況:日本のアマミシカクワガタは奄美群島固有種で、生息域が限られるうえ、森林伐採や外来種の影響により個体数の減少が懸念されており、各地のレッドリストで保全対象として扱われています
シカクワガタ属 Rhaetulus は、名前の通り「シカの角」のように立体的に湾曲した大顎を持つクワガタムシのグループです。オスの大顎は根元で大きくL字型に曲がり、その先端が二股に分かれる独特のシルエットをしていて、前胸背板の両側がギザギザに尖っていることも、この属ならではの特徴です。
中国南部・台湾からインドシナ半島にかけてを中心に、マレー半島の高地などにも分布する種があり、日本では奄美群島のアマミシカクワガタ Rhaetulus recticornis が唯一の種として知られています。東南アジアの種では、背中に鼈甲色の模様が乗るものも多く、黒地に赤〜黄褐色の模様と大顎の組み合わせが「いかにも熱帯のクワガタ」という雰囲気を醸し出します。


出典:iNaturalist – アマミシカクワガタ Rhaetulus recticornis(makopisces)
日本のアマミシカクワガタは、このグループの中で最小種であり、奄美群島にだけ生息する小型のシカクワガタです。大型個体では大顎の湾曲がよく発達し、シカの角を思わせる立体的な姿になる一方、体色はつや消しの黒で落ち着いた雰囲気を持っており、「鹿の角を持つ黒い里の住人」といった印象を与えます。
なお、アマミシカクワガタは環境省レッドリストには掲載されていないものの、2013年より奄美大島・徳之島の各自治体の条例によって採集が禁止されており、違反すると罰則が科される、法的に守られている種です。
生態的には、湿った倒木の内部で幼虫が育ち、成虫は夜行性で、アカメガシワやスダジイなどの細枝からしみ出す樹液に集まるほか、灯火にもよく飛来します。多くの種は気性が荒く、発達した大顎で相手を挟んで押し合うような独特の争い方をする点も、この属の面白さのひとつです。
コガシラクワガタ Chiasognathus grantii


出典:iNaturalist – コガシラクワガタ Chiasognathus grantii(netoguz8)
和名:コガシラクワガタ(チリクワガタ、グラントチリクワガタ)
学名:Chiasognathus grantii
分類:コウチュウ目 クワガタムシ科 チリクワガタ属 Chiasognathus
分布:南米チリ(ビオビオ州など)およびアルゼンチン(ネウケン州・チュブ州など)の冷涼な森林地帯
保護状況:原産地では比較的普通種とされるが、分布域が限られ、採集と生息環境の変化による影響が懸念されている
コガシラクワガタ Chiasognathus grantii は、クワガタの常識を打ち破る奇抜な姿で知られる南米産の大型クワガタです。オスの大顎は体長に匹敵するほど長く伸び、その基部近くには大きな内歯が発達しており、この長い大顎を使って相手を巧みに引っかける独特の戦い方をします。
頭部は小さく、脚は非常に長く発達し、全身は赤褐色の地色に虹色の金属光沢を帯び、腹面には白い毛が密生するなど、「細身の体に過剰な装飾を施した」ような極端なデザインが特徴です。一見すると「華奢で弱そう」に見えますが、性格は非常に好戦的で、縄張り意識が強いことで知られています。


出典:iNaturalist – コガシラクワガタ Chiasognathus grantii(patrich)
ただし戦い方はオスとメスで異なり、オスは長い大顎を相手の翅の下に引っ掛けて持ち上げ、木の上から落とすという、力よりも技を重視した独特の戦法をとる一方、メス同士は前脚をムチのように振り回しながら、ニッパー状の短く鋭い大顎で挟み合う、激しい争いを繰り広げます。
長い大顎の先端部は挟む力が弱いものの、基部側の内歯は鋭く発達しており、皮膚に傷を負わせるほどの力を持っています。
この「体長級の大顎」は、ダーウィンが著書『人間の由来』(1871年)の中で、性選択によってオスの武器が発達した例として紹介したことから、英語では“Darwin’s beetle”とも呼ばれます。チリでの学術調査では、本種は分布域の限られる稀少種であり、気候変動などの環境変化によって絶滅の可能性が高い脆弱な種と評価されています。


クロツヤムシ科 Passalidae


出典:iNaturalist – Odontotaenius disjunctus(prsonnen)
クロツヤムシ科 Passalidae は、朽ち木のトンネルの中で「家族ぐるみ」で暮らす、社会性の発達した甲虫のグループです。 熱帯〜温帯の森林に広く分布し、見た目は黒くて地味ですが、親が幼虫の世話をしたり、仲間同士で音声のような擦過音を出して“会話”したりと、生態の面ではきわめてユニークな存在です。



クロツヤムシ科に共通する主な特徴と生態をまとめると、次のようになります。
朽ち木トンネルに暮らす「家族集団」


出典:iNaturalist – Odontotaenius disjunctus(sjreilly)
クロツヤムシ科の甲虫は、ほぼ例外なく倒木や立ち枯れの内部にトンネルを掘り、その中で成虫と幼虫がいっしょに暮らします。 成虫は朽ち木をかじって通路を広げつつ、その木片をかみくだいた「半分消化済み」の餌を幼虫に与え、幼虫の蛹室づくりまで手伝う「協同育児」を行います。
卵から成虫までのあいだ、親と子が同じトンネルで長期間過ごす「家族生活」は甲虫の仲間では珍しく、クロツヤムシ科は「準社会性(subsocial)」「家族性(family living)」の代表例として、行動学や社会性進化の研究でよく取り上げられています。
成虫と幼虫が「糞」でつながる栄養循環


出典:iNaturalist – Odontotaenius disjunctus(mattandeliz)
朽ち木そのものは栄養価が低く、セルロースやリグニンなど、消化しにくい成分が多く含まれます。クロツヤムシ科では、成虫の糞や咀嚼した木質物を幼虫が利用することで、朽ち木を分解する微生物群も親から子へと受け継がれていきます。
この栄養と微生物の受け渡しには、腸内や糞にすみつく微生物の働きが深く関わっており、「外部にしつらえた反芻胃(external rumen)※」にたとえられることもあります。こうしたしくみのおかげで、クロツヤムシ科は硬い朽ち木を効率よく土へと変える「分解の専門家」として、森林の土壌形成に大きな役割を果たしています。
※反芻胃(ルーメン external rumen)
ウシなど反芻動物の胃(ルーメン)は微生物の力で消化しにくい植物繊維を分解する器官。クロツヤムシは、この発酵・分解のプロセスを自分の体内ではなく、親が出す糞という「体外の場」で行い、子がそれを食べて栄養と微生物を受け継ぐことから、「外部にしつらえた反芻胃」と呼ばれる。
“声”でやり取りする甲虫たち
クロツヤムシ科の甲虫は、仲間同士で多彩な擦過音(アコースティック・シグナル)を出すことでも知られています。 成虫は、腹部背面と後翅をこすり合わせることで音を出し、幼虫は脚を特定の部位にこすりつけて別の音を出します。
種によって異なる複数の音パターンが知られており、警戒・接触・給餌など場面ごとに使い分けられていると考えられています。特に北米に分布するホーンド・パサルス Odontotaenius disjunctus では十数種類の音が記録されており、複雑な音声コミュニケーションを持つ甲虫として注目されています。
ツノクロツヤムシ Cylindrocaulus patalis


出典:iNaturalist – ツノクロツヤムシ Cylindrocaulus patalis(nomame)
和名:ツノクロツヤムシ
学名:Cylindrocaulus patalis
分類:コウチュウ目 クロツヤムシ科 ツノクロツヤムシ属
分布:日本(四国・九州の山地のブナ帯、標高約1,000m以上)
保護状況:日本固有種で、生息域が限られ、各地のレッドデータブックでは絶滅危惧種・要注目種として扱われることが多い
ツノクロツヤムシ Cylindrocaulus patalis は、四国と九州の標高約1,000m以上のブナ帯にだけひっそりと暮らす、日本固有のクロツヤムシです。 漆黒の円筒形の体に細かな縦筋が並び、頭部には控えめな突起状の「ツノ」が生えています。
このツノは、カブトムシのような武器というより、狭い木のトンネルの中で木片を押しのけたり、仲間に触れて位置を確かめたりする“作業道具”として役立っていると考えられます。 成虫はブナなどの朽ち木の中で一生を過ごし、移動能力が高くないため、古いブナ林の消失はそのまま種の存続に直結します。
ゴーリーオバケクロツヤムシ Proculus goryi


出典:iNaturalist – ゴーリーオバケクロツヤムシ Proculus goryi(echame)
和名:ゴーリーオバケクロツヤムシ
学名:Proculus goryi
分類:コウチュウ目 クロツヤムシ科 オバケクロツヤムシ属
分布:中米の山地の冷涼な森
保護状況:野外情報は限られるが、生息域が狭く、大型で採集対象になりやすいため、局所的な個体数減少が懸念される種とされる
ゴーリーオバケクロツヤムシ Proculus goryi は、中米の限られた山地林に生息する、世界最大級のクロツヤムシです。日本のツノクロツヤムシが 20mm 前後なのに対し、本種は 70mm、最大で 85mm を超えるという圧倒的な「オバケ」サイズを誇ります。
漆黒に磨き上げたような体に、脚の関節などから生える鮮やかなオレンジ色の剛毛が美しいアクセントとなっています。これほどの巨体でありながら、脚の爪は驚くほど小さく華奢で、一生のほとんどを朽ち木の中で過ごすため、自重を支えて木にしがみつく必要がなかった進化の痕跡とも考えられます。
標本愛好家の間では「赤ゴーリー」と呼ばれる赤みがかった希少個体も知られ、特に人気の高い存在です。
ホーンド・パサルス(Bess beetle) Odontotaenius disjunctus


出典:iNaturalist – Odontotaenius disjunctus(tshahan)
和名:定まった和名なし(ホーンド・パサルス、ベス・ビートルなど)
英名:Horned passalus / Bess beetle / patent leather beetle
学名:Odontotaenius disjunctus
分類:コウチュウ目 クロツヤムシ科 Odontotaenius 属
分布:北米東部(テキサス〜カナダ東部までの広葉樹林帯)
保護状況:森林内の広葉樹倒木を分解する普通種であり、保全上の懸念は極めて低い
ホーンド・パサルス Odontotaenius disjunctus は、北米の温帯広葉樹林を代表するクロツヤムシです。頭部に前方へ曲がった小さなツノを持ち、エナメル革(パテントレザー)のような美しい光沢の黒い体から “patent leather beetle” とも呼ばれます。
特に驚くべきなのは「おしゃべり」の能力です。成虫は羽をこすり合わせて十数種類もの異なる音を出し、状況に応じて使い分けます。さらに幼虫も、退化した後ろ脚を楽器のようにこすり合わせて音を出すことが知られています。
羽化直後の成虫は体が真っ赤で、時間の経過とともにツヤのあるブラックへと変化していく様子も見事です。大人しく扱いやすいうえ、自重の約 50 倍もの重さを引っ張る力を持つため、北米では理科教材や自然観察会の題材としてもよく取り上げられます。


コガネムシ上科 ― カブトムシ亜科 Dynastinae


出典:iNaturalist – ティティウスシロカブト Dynastes tityus(cyberchuck)
カブトムシ亜科 Dynastinae は、コガネムシ科の中でもひときわ頑丈な体つきと、オスが誇る「角」の多様なデザインで知られるグループです。ヘラクレスオオカブトのような巨大種から、日本のカブトムシまで、世界中の森で樹木と深く結びついた暮らしが特徴で、見た目の迫力と、生態系の中で担う役割の両方が大きな魅力になっています。



カブトムシ亜科に共通する主な特徴と生態をまとめると、次のようになります。
角の発達と形のバリエーション


出典:iNaturalist – カブトムシ 本土亜種 Trypoxylus dichotomus ssp. septentrionalis(m_sato)
オスの頭部や前胸には、強く発達したキチン質の角があり、樹液の出る場所やメスをめぐる争いで、相手を持ち上げたり押し出したりする「武器」として働きます。
- 日本のカブトムシ(Trypoxylus dichotomus )は頭角を相手の下に滑り込ませて力強く跳ね上げるスタイル
- ヘラクレスオオカブト(Dynastes hercules )は頭角と胸角の間に相手を挟み込み、持ち上げて落とすスタイル
- ゴホンツノカブト(Eupatorus gracilicornis )は五本の角を立体的に組み合わせた独特のシルエットを持つ
など、角の形と戦い方は属・種ごとに少しずつ違います。同じ種でも、幼虫期の栄養状態によって角の長さや太さが大きく変わるため、「どれだけ良い環境で育ったか」が、成虫の姿にそのまま表れるグループでもあります。
森と樹木に支えられた一生
成虫は基本的に夜行性で、日中は樹皮の隙間や落葉の下に身を潜め、夜になるとクヌギやコナラ、シイなどから染み出る樹液や、熟した果実を求めて活動します。
一部のカブトムシ類では、すでに樹液が出ている場所を利用するだけでなく、自ら樹皮を傷つけて樹液を出やすくする行動も報告されており、「樹木から糖分を引き出す名人」としての一面をうかがわせます。こうした樹木依存の暮らしぶりのため、里山のナラ・クヌギ林が減ると、カブトムシ亜科の仲間も姿を消しやすく、人の森づくりと密接に結びついた存在だとわかります。
一方で、ヤシ農園やサトウキビ畑のような人工的環境では、サイカブト類の一部が作物の茎や生長点を食害して農業害虫になる例もあり、「本来の森が失われたときに、どこで生きようとするか」という生態学的なねじれが、カブトムシたちの行動に現れていると見ることもできます。
幼虫は木と落ち葉を土へ変える分解名人


出典:iNaturalist – Pericoptus truncatus(arnim)
カブトムシ亜科の幼虫は、典型的なコガネムシ型幼虫で、C字に曲がった太い体と、腐葉土や腐植質を噛み砕くための頑丈な口器を持っています。
林床に積もった腐葉土や、菌類によって柔らかくなった朽ち木、堆肥の中で大量の有機物を食べ、細かく砕いて糞として排出します。幼虫自身が直接、木質成分を分解する力はそれほど大きくないとも考えられていますが、糞に変換されることで周囲の微生物による分解が進みやすくなり、結果として土壌の形成を後押ししています。
日本・東アジアを中心とする属
カブトムシ属 Trypoxylus


出典:iNaturalist – カブトムシ 本土亜種 Trypoxylus dichotomus ssp. septentrionalis(ts04)


出典:iNaturalist – ツノボソカブト Trypoxylus dichotomus ssp. tsunobosonis(sugarchen)
※カブトムシ T. dichotomus の亜種
和名:カブトムシ属(代表種:カブトムシ)
学名:Trypoxylus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族 カブトムシ属
分布:日本・朝鮮半島・中国・台湾〜インドシナ半島の東アジア
保護状況:本州以南は普通種だが、沖縄や久米島の固有亜種は本土産との交雑によって純血個体の減少が懸念
カブトムシ属 Trypoxylus は、世界で約 1,600〜2,000 種ほどいるカブトムシ亜科の中でも極めて小規模なグループで、長らくおなじみのカブトムシ(Trypoxylus dichotomus ) 1 種のみが知られていましたが、現在はミャンマーからインド・中国(チベット・雲南)に生息するカナモリカブト(T. kanamorii )を含む「一属二種」で構成されています。


出典:iNaturalist – Trypoxylus kanamorii(xiaodoudou)
学名 Trypoxylus は「木に穴を穿つもの」の意で、この属にはかつてAllomyrina (「もう一つのMyrina属」の意)という属名が使われていた歴史もあります。シジミチョウの属名Myrina と重複したことがその由来で、現在は国内外の多くの文献でTrypoxylus が有効名として使われていますが、旧属名Allomyrina も異名として今なお見られることがあります。
オスの頭角は先端がさらに二又に分かれて四叉となる独特の形で、世界的にも極めて珍しく、美しい構造として知られています。近年の飼育ブームの陰で本土産が沖縄などに人為的に持ち込まれ、固有亜種オキナワカブトとの交雑による遺伝子汚染が問題になっていることから、「日本の夏の象徴」であると同時に、在来亜種の保全を考えるうえでも重要な属だと言えるでしょう。
ヒメカブト属 Xylotrupes


出典:iNaturalist – スマトラヒメカブト Xylotrupes sumatrensis(reflectitur_photons)


出典:iNaturalist – オーストラリアヒメカブト 基亜種 Xylotrupes australicus ssp. australicus(broadaus)
和名:ヒメカブト属
学名:Xylotrupes
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布:インドからインドシナ半島、マレー諸島、ニューギニア周辺、オーストラリア北部まで広範囲
保護状況:分布域が広く個体数は多いものの、代表種ヒメカブトはサトウキビの害虫として日本への輸入が植物防疫法で規制されている
ヒメカブト属 Xylotrupes は、日本のカブトムシの胸角をぐいっと引き伸ばしたような姿で、頭角・胸角ともにシンプルな二又に分かれるのが特徴です。タイ北部のチェンマイなどでは、メスや餌場をめぐる闘争行動を利用した、伝統の昆虫相撲が古くから行われています。
現地で「メンクワン」と呼ばれるこの行事の主役に選ばれる本種ですが、実際の闘争心の強さについては諸説あり、この相撲文化のイメージが先行している面もあるようです。試合では、丸太に開けた穴にメスを入れてオスたちを興奮させ、丸太の上で戦わせます。
相手にペンチのように挟まれて「脚がすべて丸太から離れたら負け」というルールで、横綱級の強いオスは驚くほどの高値で取引されます。
サイカブト属 Oryctes


出典:iNaturalist – ヨーロッパサイカブト Oryctes nasicornis(karimstrohriegl)
和名:サイカブト属
学名:Oryctes
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 サイカブト族
分布:アフリカを中心にヨーロッパ・アジアなど旧世界の熱帯・温帯域に約40種
保護状況:代表種サイカブトはヤシ・サトウキビの深刻な農業害虫として世界各地に拡散し、沖縄県などでは重点対策外来種に指定
サイカブト属 Oryctes は、サイのような短い角を持つことからこの名がついた属で、ヤシの木のてっぺんをバリバリとかじり、内部にトンネルを掘って食害する厄介な習性で知られます。成長点を破壊されたヤシは枯死するため、代表種サイカブト Oryctes rhinoceros(別名タイワンカブト)は東南アジア原産ながら、世界中のヤシ農園で恐れられる農業害虫となりました。


出典:iNaturalist – グヌサイカブト Oryctes gnu(jiangyou)
海外では、サイカブトなど本属の複数種に感染する天敵ウイルス(OrNV)を野生に放つ生物防除が劇的な効果を上げています。しかし、このウイルスは日本の在来カブトムシにも感染して死に至らしめることが近年の研究で確認されたため、沖縄では生態系破壊のリスクを懸念してウイルスの導入は見送られ、罠(トラップ)による捕獲が地道に行われています。
コカブト属 Eophileurus


出典:iNaturalist – コカブト 基亜種 Eophileurus chinensis ssp. chinensis(fuyou06)


出典:iNaturalist – コカブト 奄美亜種 Eophileurus chinensis ssp. irregularis(merec0)
和名:コカブト属
学名:Eophileurus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 コカブトムシ族
分布:インドから東アジア、オーストラリア北部まで約30種
保護状況:日本産のコカブトは個体密度が低く、熊本県で絶滅危惧Ⅱ類、複数県で準絶滅危惧に指定されるなど、身近な虫ながら見つけにくい存在になりつつある
コカブト属 Eophileurus は、カブトムシと聞いて誰もが思い浮かべる立派な角とは無縁の、体長2cmほどの地味な仲間です。日本産のコカブトはオスも小さな突起程度の角しか持たず、樹液ではなく昆虫の死骸などを食べる肉食性という異色の生態を持ちます。
面白いことに、昆虫ゼリーに丸ごと沈んでしまっても24時間以上溺れずに活動を続けた例が報告されており、クワガタなら溺死事故につながりかねない状況を平然と乗り切る耐水性は、コカブトムシ属ならではの隠れた特技かもしれません。
東南アジア・旧大陸の大型・個性派
アトラスオオカブト属 Chalcosoma


出典:iNaturalist – Chalcosoma atlas ssp. mantetsu(fernwild)
和名:アトラスオオカブト属
学名:Chalcosoma
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族※
分布:インドから東南アジア島嶼部、フィリピンにかけての山岳地帯
保護状況:森林伐採による生息地の減少が懸念される一方、飼育・流通が盛んで個体数自体は豊富な種も多く存在
アトラスオオカブト属 Chalcosoma は、頭角1本と胸角2本、計3本の角を持つことから英名で「スリーホーンビートル」と呼ばれる、アジアを代表する大型カブトムシです。学名Chalcosoma は「青銅の体」を意味し、点刻のないつるりとした体表が金属のような光沢を放ちます。


出典:iNaturalist – ジャワコーカサス Chalcosoma chiron ssp. chiron (serangga_id)
アトラスオオカブト Chalcosoma atlas と、よく似た近縁のコーカサスオオカブト Chalcosoma chiron とは、胸角の発達具合や頭角中央部付近の突起の有無で見分けられます。ただし、一般的にはコーカサスオオカブトでは頭角基部付近に歯状突起があり、アトラスオオカブトでは目立たないとされるものの、亜種や個体によって形態差があり例外も存在するため、あくまで傾向として捉えるのがよいでしょう。



アトラスとコーカサスの見分け方、パッと見ただけでは難しいですよね…!以下をヒントにしてみてください。
| 観察のポイント | アトラスオオカブト Chalcosoma atlas | コーカサスオオカブト Chalcosoma chiron |
|---|---|---|
| 頭角の突起 | 基本的に歯状突起はない。 ただし亜種や個体によって形態差があり、例外も存在 | 頭角の基部寄りに歯状突起がある |
| メスの上翅(背中)の質感 | 小さな針毛が生えておりザラザラした質感 | 柔らかい微毛が生えておりフワフワした質感 |
| 体の大きさ | 亜種により40〜110mm 比較的細身 | オス75〜133mm、メス40〜67mm 幅広く重厚 |
ゴホンヅノカブト属 Eupatorus


出典:iNaturalist – ゴホンヅノカブト Eupatorus gracilicornis(ratchadee_jansui)


出典:iNaturalist – ゴホンヅノカブト Eupatorus gracilicornis(iris_mayr)
和名: ゴホンツノカブト属
学名: Eupatorus
分類: コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布: 中国南部、インド北東部、インドシナ半島、マレー半島
保護状況: 特になし(生息地である竹林環境の変遷に影響を受けやすいグループです)
アジアの竹林に暮らすゴホンツノカブト属 Eupatorus は、頭部に1本、胸部に4本の計5本の角を備えた、きわめて独創的なシルエットを持つ一群です。厳つい姿にもかかわらず、性質はたいへん穏やかであることが知られており、そのギャップもこのグループの大きな魅力と言えます。
最大の特徴は、竹林環境への深い適応にあります。成虫が主食とするのは、標高の高い竹林に生育する、成長の速いタケの新芽から染み出す新鮮な樹液で、角は主にメスをめぐるオス同士の闘争に用いられます。
淡いクリーム色の前翅は、竹の若い枝葉や林床の光に溶け込む保護色として機能していると考えられています。また、雨季の訪れとともに成虫が姿を現す生活史を持ち、地上に姿を現してからの活動期間は比較的短いことが知られています。
メンガタカブト属 Trichogomphus


出典:iNaturalist – シムソンメンガタカブト Trichogomphus simson(sparkn)


出典:iNaturalist – モンゴルメンガタカブト Trichogomphus mongol(oryzias)
和名:メンガタカブト属
学名:Trichogomphus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 サイカブト族
分布:インド〜中国南部、東南アジア(マレー半島、インドネシアなど)の森林地帯
保護状況:生息地である熱帯雨林の伐採や農園開発による影響が懸念されています
メンガタカブト属 Trichogomphus は、東南アジアの鬱蒼とした森を舞台に、前胸部が「お面」のように盛り上がった独特のシルエットを見せるサイカブトのグループです。最大の特徴は、オスの前胸部に発達した幅広い突起で、正面から見ると東洋の伝統的な仮面や盾を思わせる姿からその名が付けられました。
夜になると活発に動き、樹液や植物由来の汁を吸って暮らしています。近年はプランテーション開発にともないヤシ類の人工林周辺にも姿を見せるようになっており、本来の住処を失いながらも変化した環境に適応して生き延びようとするそのたくましさは、熱帯雨林と人間の経済活動の関係を考えるうえでも、ひとつの象徴的な存在と言えるでしょう。
タテヅノカブト属 Golofa


出典:iNaturalist – ピサロタテヅノカブト Golofa pizarro(julio)


出典:iNaturalist – エアクスタテヅノカブト Golofa eacus(lames9898)
和名:タテヅノカブト属
学名:Golofa
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布:中南米(メキシコからアルゼンチンにかけての森林地帯)
保護状況: 特になし(生息地である熱帯雨林や山岳林の環境変化による影響が懸念されています)
タテヅノカブト属 Golofa は、中南米の熱帯雨林や山岳林に暮らし、細長く垂直に伸びる頭角と、ひょろりと長く発達した前脚が印象的なカブトムシのグループです。一般的なカブトムシのような太く重厚な体つきではなく、全体にほっそりとしたスマートな体型をしており、細い植物の茎の上という限られた足場での生活に特化して進化してきたと考えられています。
成虫が主な食物とするのは、現地に自生するタケ類など、細い茎を持つ植物から染み出すみずみずしい汁で、頭部の先端にある平らな「頭盾(とうじゅん)」を使って、カンナで削るように表皮を薄く剥ぎ取り、そこから吸汁します。細く不安定な茎の上で体をしっかり固定し、絶妙なバランスを保つために発達したと考えられる長い前脚は、オス同士がメスや餌場をめぐって争う際の主要な武器としても使われます。
サンボンヅノカブト属 Debeckius


出典:iNaturalist – サンボンヅノカブト Debeckius beccarii(janmar)
和名:サンボンヅノカブト
学名:Debeckius beccarii
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布:ニューギニア島周辺
保護状況: 特になし(生息地である熱帯雨林の環境変遷による影響が懸念されています)
オーストラリアの北方に位置する広大な島、ニューギニア島の鬱蒼とした熱帯雨林にひっそりと息づくのが、このサンボンツノカブト Debeckius beccarii です。頭部に1本、胸部に2本の合わせて3本の角を持つことからその名が定着しました。
大型種として高名なコーカサスオオカブトなどが所属する「アトラスオオカブト属 Chalcosoma 」とは別属に分類されており、古くから名称や和名が混同されやすい特徴的な歴史を持っています(実際、本種はかつては”Chalcosoma beccarii“として記載されていました)。
危険を察知すると、前翅(まえばね)の裏側と腹部を器用にこすり合わせ、「ギーギー」という独特の摩擦音を発して周囲に警告を与えます。このような防衛行動は、近縁である温和なゴホンツノカブトの仲間とも共通する性質です。
人工的な環境下での産卵や幼虫の育成には極めて特定の土壌条件が必要とされるため、長年にわたり繁殖の難関種として扱われてきました。
南米・アフリカの大型種を含む属
ヘラクレスオオカブト属 Dynastes


出典:iNaturalist – ヘルクレスオオカブト Dynastes hercules(narberthnaturalist)


出典:iNaturalist – ネプチューンオオカブト 基亜種 Dynastes neptunus ssp. neptunus(maja44)
和名:オオカブト属(ヘラクレスオオカブト属)
学名:Dynastes
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布:北米南部〜中南米・カリブ海
保護状況: 国際的な保護指定はないものの生息地である熱帯雨林の環境変化による影響が懸念される
ヘラクレスオオカブト属 Dynastes は、中央アメリカから南アメリカ、そしてカリブ海の島々にかけての豊かな熱帯雨林を中心に分布する、世界最大級のカブトムシのグループです。学名の「ディナステス」には「支配者」という意味があり、その名にふさわしい圧倒的な体躯と、前方に長く伸びる美しい角を備えています。
この属には、漆黒の体を持つ大型種ネプチューンオオカブト Dynastes neptunus のほか、白い体色が魅力のシロカブト類など、世界的に人気の高い種が含まれています。


出典:iNaturalist – グラントシロカブト Dynastes grantii(oliviaconover)
代表種であるヘラクレスオオカブト Dynastes hercules の大型個体は、角を含めた全長が180ミリメートルに達すると言われ、世界でも最大級の甲虫として広く知られてきました。この種の最大の特徴は、周囲の湿度に応じて前翅(まえばね)の色彩が変化する神秘的な生態です。
乾燥した環境では上品な黄褐色を見せる翅が、夜間や雨期などの高湿度環境になると水分を吸収し、深い漆黒へと様変わりします。標本が基本的に黄褐色を維持するのは、乾燥状態で保存されるためです。
ゾウカブト属 Megasoma


出典:iNaturalist – ゾウカブト Megasoma elephas(scmayo)


出典:iNaturalist – アヌビスゾウカブト Megasoma anubis(lfunez)
和名:ゾウカブト属
学名:Megasoma
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布:メキシコ南部〜中南米
保護状況: 特になし(生息環境である熱帯雨林の減少や、局所的な採集による影響が懸念されています)
中南米の広大な熱帯雨林を中心に息づくゾウカブト属 Megasoma は、地球上の甲虫類の中で群を抜くほどの重量感を誇る圧倒的なグループです。代表的な種であるエレファスゾウカブト Megasoma elephas などは成虫の体重が50グラム近くに達することもあり、細長いヘラクレスオオカブトを凌ぐほどの確かな体質量(たいしつりょう)を持っています。
オスの持つ角は比較的短く頑丈に発達しており、その巨体を支えるために驚くほど強靭な脚力を備えているのが特徴です。一度木の幹にしがみつくと容易には引き剥がせないほどの力を秘めています。夜間に力強く飛び回る際、現地の街灯に激突して電球を破損させてしまうほどの大変な迫力に満ちた生き物です。
その頑健な姿から一部の地域では古くから装飾品として利用されてきた歴史もありますが、現在は生息環境の変容に伴う個体数の動向にも静かな注目が集まっています。
ケンタウルスオオカブト属 Centaurus(アフリカ産)


出典:iNaturalist – ケンタウルスオオカブト Augosoma centaurus(princeelislebni)
和名:ケンタウルスオオカブト属
学名:Augosoma(代表種 Augosoma centaurus)
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族
分布:アフリカ中西部(カメルーンなど)
保護状況:特別な保護指定はないが、生息環境の変化には影響を受けやすい
ケンタウルスオオカブト属 Augosoma は、大型カブトムシとしてはアフリカ大陸でほぼ唯一のグループにあたる、たいへん特徴的な属です。代表種ケンタウルスオオカブトの種小名 centaurus は、ギリシャ神話の半人半馬ケンタウロスに由来し、ワインレッドがかった光沢を帯びたボディと、力強い頭角・胸角がその名にふさわしい迫力を感じさせます。
同じ属には、ガボンに生息するガボンオオカブト Augosoma hippocrates(ニセケンタウルスオオカブト)も含まれ、こちらはやや小型で、ケンタウルス種の近縁種として位置づけられています。


出典:iNaturalist – ガボンオオカブト Augosoma hippocrates(anderspeltomaa)
アフリカ大陸では、ゴライアスオオツノハナムグリ Goliathus goliatus をはじめとする大型ハナムグリ類が樹上の資源を大きく占める一方で、大型カブトムシの種類は他大陸に比べて少なく、「ハナムグリが目立つ大陸で生きる数少ない大型カブトムシ」として、この属は生態的な意味でも興味深い存在です。成虫の寿命はおおよそ2〜5ヶ月と比較的短く、野外・飼育ともに流通量は限られますが、アフリカの一部地域では、大型甲虫の幼虫や成虫が貴重なタンパク源として食用にされる例も報告されています。
ヘクソドン属 Hexodon


出典:iNaturalist – Hexodon quadriplagiatum(silversea_starsong)
和名:ヘクソドン
学名:Hexodon
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 カブトムシ亜科 ヘクソドン属
分布:マダガスカル島
保護状況:生息地である固有の森林や砂地の環境変化による影響が懸念されている
ヘクソドン属 Hexodon は、アフリカ東方のマダガスカル島で独自の進化を遂げた、極めて異色なカブトムシの一種です。一般的なカブトムシの象徴である立派な角はまったく持たず、体は上下に押しつぶされたような平たい円盤状で、上翅には美しい網目状の幾何学模様が刻まれています。
一見すると、大型のカメノコハムシのような風貌ですが、後翅が退化していて自力で飛ぶことができない点も大きな特徴です。分類上はカブトムシ亜科の中の一族(ヘクソドン族)として位置づけられていますが、角を持たず雌雄同型という点で、角の発達したカブトムシたちとは対照的な姿をしており、この亜科の多様性の広さを物語る存在として注目されています。


コガネムシ上科 ― ハナムグリ亜科 Cetoniinae


出典:iNaturalist – ケブカハナムグリ Tropinota squalida(esant)
ハナムグリ亜科 Cetoniinae は、コガネムシ科 Scarabaeidae の中でも特に多様性に富むグループのひとつで、世界各地の森林や草原に分布しています。日本のカナブンやシロテンハナムグリに加え、アフリカのゴライアスハナムグリのような世界最大級の種も含まれており、金属光沢を帯びた体色や斑紋の豊かさと、花粉・蜜・樹液を中心とした暮らしぶりが、この亜科ならではの魅力です。



ハナムグリ亜科に共通する主な特徴と生態をまとめると、次のようになります。
花と樹液をめぐる「日中中心の活動」


出典:iNaturalist – ヒルタケブカハナムグリ Tropinota hirta(marcohuang)
多くの種は成虫期に、花粉や花の蜜、樹液、熟した果実などを利用しており、春から秋にかけて林縁や草原の花に集まる姿がよく観察されます。
クワガタムシやカブトムシに、夜になってから樹液に集まる種が多いのに対し、ハナムグリの仲間は日中も活発に飛び回る種が目立つ、という「活動時間帯の傾向」がありますが、薄暮性ややや隠れた生活を送る種も存在するため、厳密な二分法ではなく「そうした傾向が強いグループ」と捉えるのが適切です。
金属光沢や斑紋が織りなす多彩な体色


出典:iNaturalist – タテゴトアオカナブン Narycius opalus(sohan92834)


出典:iNaturalist – カザリハナムグリ Eupoecila australasiae(buffsky)
ハナムグリ亜科の体色は、緑、銅色、紫、黒などバリエーションが豊富で、種によっては白い斑点模様を散りばめたものや、強い金属光沢を放つものも知られています。
同じ種の中でも緑色型と褐色型などのカラー変異が見られる例があり、「一見同じ虫なのに色違いがいくつもいる」という現象を通して、生物の多様性を直感的に感じ取れるグループだと言えるでしょう。
幼虫は土の中で腐植や朽木を食べる分解者
幼虫の多くは地中性で、土に埋もれた朽木や腐植土、堆肥などを食べて成長し、森や草原の有機物を細かく砕いて土に近い状態へと変えていきます。一方で、樹洞に堆積した軟らかい腐植土や、鳥の古い巣に堆積した特殊な有機物を利用するなど、種によって生息環境や食性は多様であることも知られています。
ハナムグリと似た姿の甲虫:見分け方



ハナムグリとカナブンなど、コガネムシ科の周辺には似た姿の甲虫がたくさんいますね!



確かにそうですね。ちょっとした見分け方を知っておくと、野外観察や昆虫展の見学が、より楽しくなるかもしれません。以下を参考にしてください。
カブトムシ・クワガタのメス:


出典:iNaturalist – ツノボソカブト Trypoxylus dichotomus ssp. tsunobosonis(blackgod)
カブトムシ・クワガタのメスは、黒っぽくツヤのあるがっしりした体で、オスのような派手な角がほとんど目立たないのが特徴です。前脚のすね(脛節)が土を掘るために幅広く発達し、外縁に鋸歯状の突起が並んでいるのが決定的な目印になります。
樹液場で「角がないのに大きめの黒い甲虫」を見たら、まずカブトムシかクワガタのメスを疑うとよいでしょう。ただし、クワガタムシのメスは種によって前脚の形態差が大きく、必ずしも同じ形とは限りません。
センチコガネなど一部の糞虫:


出典:iNaturalist – センチコガネ Phelotrupes laevistriatus(sylbobaggins)
センチコガネ Phelotrupes laevistriatus はコガネムシ科ではなくセンチコガネ科 Geotrupidae に分類される、コガネムシ上科の仲間です。丸みの強いドーム状の体型で、緑〜紫銅色、瑠璃色など息をのむほど鮮やかな金属光沢を放つ種類が多いグループです。
花や葉の上ではなく、地面・獣糞・死骸のまわりを歩き回っていることが最大の手がかりになります。背中(上翅)には白い斑点はなく、細かな縦スジが刻まれていること、お尻側が丸く閉じる独特の形と、土をかき分ける太い棘が脚に並ぶ点も見分けのポイントです。
ハナムグリ:


出典:iNaturalist – キンイロハナムグリ Cetonia aurata(eliot13)
全体のシルエットはカナブンに似ていますが、前胸背が前方に向かって細くなる三角形で、胴体に軽い「くびれ」があり、やや砂時計型の優美な輪郭を描きます。もっとも分かりやすい目印は、硬い背中に「白い絵の具を飛ばしたような斑点模様」が散らばっていることです(斑点の少ない種もいます)。
日中の草原や林の縁の花に深く頭を突っ込み、花粉や蜜を食べている姿がよく見られるので、「斑点付きで花に潜り込んでいる緑〜銅色の甲虫」はハナムグリと思ってよいでしょう。
カナブン:


出典:iNaturalist – カナブン Pseudotorynorrhina japonica(zhenhao4)
頭の先端が小さな四角形で、肩に当たる前胸背も箱型に近い直線的な輪郭をしているため、「顔と肩が角張ったハナムグリの仲間」という印象を受けます。体色は上品なブロンズ色や緑銅色で、白い斑点模様はほとんどありません。
背中の三角形(小楯板)が大きくはっきりした逆三角形として目立つこと、樹液に集まることが多いこと、飛ぶときに前翅をほぼ閉じたまま側面の隙間から後翅だけを出して俊敏に飛び立つことが、コガネムシとの分かりやすい違いです。
コガネムシ:


出典:iNaturalist – コガネムシ Mimela splendens(tosakah)
体全体がころんと丸い卵型で、深い緑色や銅色など均一なメタリックカラーに包まれているのが特徴です。背中に白い斑点や模様はなく、庭木や草の葉を食べている様子がよく観察されます。
羽の付け根にある三角形(小楯板)は丸く小さく、カナブンより目立たないのが目印です。飛び立つときは、硬い前翅を左右に大きく開いてから後翅を広げる「典型的な甲虫らしい飛び方」をするので、「丸くて光る甲虫が葉を食べていて、飛ぶ前に前翅をパカッと開いたらコガネムシ」と覚えると見分けやすくなります。



一方、ハナムグリには前翅をほとんど開かずに、その隙間から後翅だけをすばやく出して飛ぶという特徴があります。


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Cetonia aurata take off composition 05172009



上の連続写真のように、ハナムグリは硬い前翅を閉じたまま、体の側面のえぐれた部分から薄い後翅をスッと出して、そのまま素早く離陸します!



多くの甲虫では、飛翔時に上翅を左右に大きく開いてから後翅を広げる必要があるため、飛び立ちがゆっくりになる傾向があります。
オオツノハナムグリ属 Goliathus


出典:iNaturalist – Goliathus goliatus ssp. goliatus(moonmoths)


出典:iNaturalist – サザナミオオツノハナムグリ Goliathus albosignatus(sipajz)
和名:オオツノハナムグリ属(ゴライアスハナムグリ属)
学名:Goliathus spp.
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科 オオツノハナムグリ属
分布:アフリカ中西部〜中央アフリカの熱帯雨林
保護状況:国際的な一括指定はないが、熱帯林の伐採や採集圧により、野外個体群への影響が懸念される属
オオツノハナムグリ属 Goliathus は、属名の由来でもある旧約聖書の巨人ゴリアテになぞらえた「世界最重量級のハナムグリ」として知られるグループです。 代表種ゴライアスオオツノハナムグリ G. goliatus は、オスで体長 6〜11cm、幼虫は大きい個体では 100g を超えることもあり、アフリカでは最大級の甲虫として、昆虫展や標本コレクションで“主役級”の存在感を放ちます。
種によって白・黒・赤褐色など独特の模様を持ち、頭部前方の角状突起と、太く力強い前脚が特徴で、同属のレギウスオオツノハナムグリ G. regius などとともに、種ごとの模様や体色のわずかな違いが愛好家の楽しみになっています。成虫は熱帯林の樹冠付近で樹液や果実、花粉を食べ、ハナムグリ亜科特有の「前翅をほとんど開かず、隙間から後翅だけを出して飛ぶ」スタイルで、巨体に似合わぬ速度と機敏さを見せることでも有名です。



この属は見た目はとてもかっこいいのですが、特に「匂いがきつい標本」が多いのですが…



この巨体ですからね!採集して標本にするまでに十分な脱脂や乾燥がされなかったのかもしれませんね~



ずっと前に、タヌ山先生が採集したゾウカブトを標本にした時は、3年乾燥させましたもんね。



あ、それ、途中で忘れて3年後に思い出したやつですね…



お陰でほとんど無臭の標本に仕上がりましたけどね~!(展足する前は匂いました)
なぜアフリカではハナムグリが大きくなったのか?


出典:iNaturalist – シラフオオツノハナムグリ Goliathus orientalis(dongshuo)



アフリカではハナムグリが「最大の甲虫」なのですが、なぜクワガタでもカブトムシでもなく、ハナムグリが大型化したのでしょうか?



確定した答えはありませんが、よく挙げられるのが、「巨大カブトムシの枠が空いていた」という見方です。大型のカブトムシやクワガタが進出する以前に、ハナムグリが先に巨大化してニッチ※をおさえたという考えです。
アフリカ中西部の熱帯雨林では、ゴライアスオオツノハナムグリなど大型ハナムグリが、樹液・果実・花粉といった「カブトムシが好みそうな資源」を、すでに強く利用するグループとして進出していました。そのため、あとからカブトムシやクワガタが同じ方向に巨大化する余地が小さかった、と考えることができます。
ニッチ(Niche)🎯🧩
ニッチ(niche)という言葉は、もともとフランス語で「壁のくぼみ」や「装飾用の小さな空間」を意味する建築用語でした。1917年、生態学者ジョセフ・グリニル(Joseph Grinnell)は、この比喩的な表現を使って、特定の生物が生態系の中で占める独特な「位置」や「役割」を説明するようになりました。
つまり、現代における「ニッチ」とは、ある生物が「何を食べるか」「どこに住むか」「いつ活動するか」など、その生物が利用できる環境条件・資源の総合的なパターンのことです。建築物の「壁のくぼみ」のように、生態系においても、各生物は「独自のくぼみ」を占めており、その中で他の生物と競合しないで生存しているのです。
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出典:GeeksforGeeks – Ecological Niche
特に興味深い点は、同じ環境内で複数の生物が共存するために、それぞれが微妙に異なる「ニッチ」を利用している、ということです。例えば、光合成をする植物が優占する明るい環境では、菌従属栄養植物は「光が極めて少ない林床」というニッチを独占的に利用することで、競争を回避し、生存しているのです。このようなニッチの多様性が、生態系の豊かさと安定性を支えています。
参考・引用
Wikipedia ‐ ニッチ
People and Nature (Journal) – The socio‐ecological niche(2025年4月)
EcoEvoRxiv – Re-revisiting the Niche Concept (Leibold, 2025年)



ハナムグリが巨大になった理由としては、ほかにも
①サルや鳥など捕食者も大型で力が強い環境では、「小さく柔らかい甲虫」より「分厚く硬い、重装甲の甲虫」のほうが生き残りやすく、大型個体が選ばれやすかった
②雨季に豊富な食べ物をため込み、乾季の厳しい時期を乗り切るには、エネルギーを蓄えられる大きな体が有利になりやすい
という点も関係しているかもしれませんね!
メキノリーナ属(オオツノカナブン属) Mecynorhina


出典:iNaturalist – Mecynorhina confluens()


出典:iNaturalist – ホシボシツノカナブン Amaurodes passerinii(sizwent)
※Amaurodes passerinii は、かつて Mecynorhina の一種として扱われたこともありますが、現在は独立した属 Amaurodes に分類される傾向があります。
和名:メキノリーナ属(オオツノカナブン属)
学名:Mecynorhina
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科 オオツノカナブン属
分布:熱帯アフリカ(コンゴ民主共和国・カメルーン・ウガンダなど)
保護状況:国際的な一括指定はないが、熱帯林の伐採や採集圧により、一部の亜種・産地個体群で減少が懸念されていると報告されている
メキノリーナ属(オオツノカナブン属) Mecynorhina は、ゴライアスハナムグリ属に次ぐサイズを誇るアフリカの大型ハナムグリの代表格です。種によってはオスの頭部から前方に伸びる二又に分かれた長い角を持ち、鮮やかな金属光沢を帯びた体とあいまって、「小さなゴライアス」とも呼べる迫力を放つものもあります。


出典:natural sciences.be – Mecynorhina polyphemus polyphemus (Fabricius, 1781)
タイプ種のオオツノカナブン M. polyphemus をはじめ、大型種では、オスの体長が70〜80mmに達することもあり、緑・銅赤・黄緑など個体ごとに異なる豊かな体色バリエーションを楽しめる点も、愛好家に人気の理由です。
生息地はコンゴ盆地周辺を中心とした熱帯アフリカの森林で、幼虫は腐植土や朽木の中で有機物を食べながら成長し、成虫は樹液や熟した果実を求めて樹冠部を飛び回ります。ゴライアスほどの“超重量級”ではないものの、「色彩の多様さ」と「角の美しさ」のバランスが良く、アフリカ産ハナムグリの魅力を知るうえで絶好の入り口となるグループと言えるでしょう。
近縁種 Mecynorrhinella の仲間


出典:九州大学総合研究博物館 ‐ 烏山邦夫甲虫類コレクション アフリカのハナムグリ
実はカナブン愛好家に人気のメレヅネハナムグリ(トルクアータ)M. torquata やウガンデンシスオオツノハナムグリ M. ugandensis は、厳密にはMecynorhina 属ではなく、近年独立した属に昇格したMecynorrhinella(メシナロヒネラ)属というグループに分類されています。二又に分かれた角を持つMecynorhina に対し、Mecynorrhinella は剣のようにすっと一本に伸びる「単純な角」が最大の違いです。



同じ「オオツノカナブン」の仲間でも、角の形をよく見比べてみると新たな発見があるかもしれませんよ。
ディクロノリーナ属 Dicronorhina


出典:iNaturalist – シロスジオオツノカナブン 基亜種 Dicronorhina derbyana ssp. derbyana(basil_boer)
ディクロノリーナ属 Dicronorhina は、アフリカ原産の大型ハナムグリで、金属光沢のある緑や青、白の模様が美しいグループです。オスの頭部には横方向に広がるT字型の立派な角があり、メスをめぐる争いで相手を押しのける武器になります。
幼虫は土中で腐敗した植物質を食べて育ち、成虫は樹液や熟した果物を好み、人の手でも比較的飼育しやすいことから、昆虫愛好家に人気の高い種類です。光を受けて輝く姿は、まさに「動く宝石」のようだと評されます。
サスマタカナブン属(エウディセラ属) Eudicella


出典:iNaturalist – スミスサスマタカナブン Eudicella smithii(berniedup)
サスマタカナブン属(エウディセラ属) Eudicella は、細くスマートな角とスリムな体型が特徴のアフリカ産ハナムグリです。黄・緑・赤・オレンジなどカラフルな色彩を持ち、種によって模様のバリエーションが豊富なため「コレクションしたくなる」グループとして知られています。
こちらも樹液や果物を好み、比較的丈夫で飼育しやすい種類が多い傾向があります。色の違いだけでなく、角の形の微妙な差を見比べる楽しさがあり、図鑑や標本箱を眺める時間を豊かにしてくれる存在です。
カナブン属 Pseudotorynorrhina


出典:iNaturalist – カナブン Pseudotorynorrhina japonica(wongun)


出典:iNaturalist – サメハダカナブン Pseudotorynorrhina fortunei(muyaocraft)
和名: カナブン属(広義のカナブン類)
学名: Pseudotorynorrhina spp. / Rhomborrhina spp.
分類: コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科
分布: 日本(本州・四国・九州など)、極東アジア地域
保護状況: 地域環境の変化による個体数の偏りは見られるが、基本的には普通種として広く親しまれている
カナブン属 Pseudotorynorrhina は、日本の里山から都会の公園まで、私たちの身近な環境で普通に見られる中型のハナムグリの仲間です。丸みのある体に金属光沢を帯びた緑〜銅色の色合いをまとい、夏になるとクヌギやコナラの樹液、熟した果実に集まってにぎやかに飛び回ります。
ブーンと重たい羽音を立てて飛ぶ姿は、「夏らしさ」を感じさせる風物詩のひとつと言えるでしょう。近年は分類体系の見直しにより、日本のカナブン類はRhomborrhina 属とPseudotorynorrhina 属に整理して扱われることが増えています。


出典:iNaturalist – カナブン Pseudotorynorrhina japonica(yoshik)
特にクヌギの樹液を好み、他の甲虫と並んで食事を楽しむ姿は、樹液を利用する多くの昆虫の一員として、森林生態系の物質循環に関わっている様子を観察できる、身近で代表的な存在と言えるでしょう。日中の明るい時間帯に活発に行動し、ハナムグリ亜科特有の「前翅を閉じたまま飛ぶ」飛翔を行い、豊かな森林の物質循環を支える重要な役割を果たしています。
アオカナブン Rhomborrhina unicolor


出典:iNaturalist – アオカナブン 基亜種 Rhomborhina unicolor ssp. unicolor(clurarit)
アオカナブン Rhomborrhina unicolor は、カナブンの緑色型によく似ていますが、体つきがより細長く、光沢の強さがひと際目立つのが特徴です。腹面を見ると、左右の後脚の付け根(後基節)が接していることが、見分けの決め手になります。
比較的涼しい環境を好む山地性の傾向があり、気温が高いと産卵しにくいことが知られており、これが大都市近郊で数を減らしている大きな要因のひとつとされています。
クロカナブン Rhomborhina polita


出典:iNaturalist – クロカナブン Rhomborhina polita(naturalist49784)
クロカナブン Rhomborrhina polita は、艶のある黒色の体表を持つ、カナブンほど普通には見られない種類です。分類上はカナブンよりもアオカナブンに近縁とされています。
シカツノハナムグリ属 Dicronocephalus


出典:iNaturalist – ワリックツノハナムグリ Dicronocephalus wallichi(jiangyou)


出典:iNaturalist – Dicronocephalus shimomurai(jennyguo)


出典:iNaturalist – Dicronocephalus uenoi ssp. katoi(michaelyuhina)
和名: シカツノハナムグリ属
学名: Dicronocephalus
分類: コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科(ゴライアスオオツノハナムグリ族 シカツノハナムグリ亜族に含まれる属)
分布: 中国南部〜朝鮮半島・台湾・ヒマラヤ山麓など東アジアを中心とした山地帯
保護状況: 種によっては局地的な生息・採集圧や森林伐採の影響が指摘されているが、属全体として網羅的な評価は十分ではない
シカツノハナムグリ属 Dicronocephalus は、ハナムグリ亜科の中でも、オスの頭部にシカの角のような2本の突起をそなえた独特の姿で知られるグループです。ワリックツノハナムグリ D. wallichii やチョウセンツノハナムグリ D. adamsi など、東アジア〜その周辺の山地に点々と分布する種類がよく知られ、「東アジアの山のハナムグリ」を象徴する存在です。
オスの角は種ごとに長さや開き具合が異なり、メスではほとんど発達しません。この角はオス同士の闘争や繁殖行動で利用されると考えられています。
代表種のワリックツノハナムグリでは、花の蜜や熟した果実に加えて、タケ類の若い稈や新芽から染み出す樹液によく集まることが知られ、こうした資源を幅広く使いこなす採餌行動が、この種らしい個性として注目されます。
インドネシアのカリマンタン島には、頭部や前胸背から長大な角を伸ばす「カブトハナムグリ Theodosia (カブトハナムグリ族 Phaedimini )」という別系統のグループも存在します。見た目はよく似ているものの分類上は異なる系統に位置づけられ、離れた地域で似た武器形質が独立に進化した、収斂進化の好例といえます。


アヤヒシムネハナムグリ属 Gymnetis


出典:iNaturalist – ホウシャアヤヒシムネハナムグリ Gymnetis stellata(sarahdiaz17)


出典:iNaturalist – ヒョウモンアヤヒシムネハナムグリ Gymnetis pantherina(indianacristo)


出典:iNaturalist – フチベニアヤヒシムネハナムグリ Gymnetis rufilatris(marcoscampis)
和名:アヤヒシムネハナムグリ属(フラワー&フルーツビートル)
学名:Gymnetis
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科 ヒシムネハナムグリ族(Gymnetini)
分布:アメリカ合衆国南部からアルゼンチン・チリまでの中南米、西インド諸島(新世界固有のグループ)
保護状況:属全体としての包括的な評価は確認できず。種によって局地的な分布記録の追加が続く
アヤヒシムネハナムグリ属 Gymnetis は、新世界※だけに分布するハナムグリの一群で、英語圏では果実や花に集まる生活から「flower and fruit beetle(花と果実の甲虫)」とも呼ばれます。
新世界🗺️
生物学における「新世界」とは、主に南北アメリカ大陸やその周辺の地域を指します。これは、約15世紀以降の大航海時代にヨーロッパ人から見て「新しく発見された」大陸であったことに由来します。対を成すのは、それ以前から知られていたユーラシア大陸やアフリカ大陸で、これらは「旧世界」と呼ばれます。
太古の昔、大陸が分裂(プレートテクトニクス)して以降、新世界と旧世界は数千万年にわたり地理的に隔離されてきました。そのため、それぞれの地で生物は独自の進化を遂げ、例えば鼻の形が異なり尻尾で物をつかめる新世界ザルと、そうではない旧世界ザルのように、近縁でも全く違う特徴を持つ種が生まれたのです。


出典:WIKIMEDA COMMONS – Platyrrhini


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Cercopithecidae
かつては数十種前後が知られる中規模の属とされていましたが、近年の分類学的な再検討によって、南米を中心に新種の記載や分類の見直しが進み、現在では50種以上(モノグラフによる再検討では57種・4亜種)が知られる、ハナムグリ亜科の中でも特に種数の多いグループのひとつとして認識されるようになってきました。
この属最大の魅力は、体表を彩る模様のバリエーションの豊かさです。黒地に黄色い放射状の帯模様が入る種や、豹柄のようなまだら模様を持つ種など、同じ属とは思えないほど多彩なデザインが見られ、種内でも斑紋や色合いに大きな個体差(色彩変異)が見られます。
生態面では、成虫は熟した果実や花、樹液などに集まる一方、幼虫は主に朽ち木や腐植土に富んだ土壌の中で育ち、分解者としても重要な役割を果たしています。南米では、複数種の幼虫が近年になってようやく詳しく記載されはじめたところで、比較的よく見られる属でありながら、生活史の細部がまだ十分にわかっていない種も多く残っており、これからも発見の余地が大きいグループと言えるでしょう。
インカハナムグリ属 Inca


出典:iNaturalist – インカツノコガネ Inca clathratus(edu31)


出典:iNaturalist – Inca pulverulenta(rafael_barros)


出典:iNaturalist – Inca clathratus ssp. clathratus(thiago_zanetti)
和名:インカハナムグリ属
学名:Inca
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科(エグリハナムグリ族に近縁とされるインカハナムグリ族 Incini に含まれる属)
分布:中央アメリカ〜南アメリカ(アボカドやマンゴーの樹液に集まることが知られる熱帯域)
保護状況:属全体としての包括的な評価は確認できず。種によっては局地的な分布記録の更新が続く
インカハナムグリ属 Inca は、中南米に分布するハナムグリの一群です。代表種 Inca clathratus の種小名「clathratus」はラテン語で「格子状の」を意味し、前翅の表面に浮かぶ網目模様のような独特の彫刻に由来すると考えられています。
この族はかつてトラハナムグリ亜科(Trichiinae)の一亜族として扱われていましたが、分子系統解析の進展にともない、現在ではハナムグリ亜科(Cetoniinae)に属する独立した族として整理されています。族名も属名 Inca に由来しており、その表記についても国際動物命名規約に沿った訂正が行われてきたという、分類学史の小さなエピソードを持っています。
生態面では、傷んだ木や病気の木から染み出す樹液に集まる性質が強く、とくに代表種 Inca clathratus では、マンゴーやアボカドなどの果樹の樹液に日中から時には夜間にかけても集まる様子が報告されています。多くのハナムグリが花や樹液、熟した果実などを幅広く利用するのに対し、インカハナムグリ属の仲間には、樹液や傷んだ果実への依存度が比較的高い種が目立ち、「中南米の森の樹液場を彩る大型ハナムグリ」として覚えておくと、この属らしい個性がよく伝わるでしょう。
カタハリカナブン属 Ischiopsopha


出典:iNaturalist – ウォーレスカタハリカナブン Ischiopsopha wallacei(martinlagerwey)


出典:iNaturalist – アカオビカタハリカナブン Ischiopsopha jamesi(johnpaulhouston)
和名:カタハリカナブン属
学名:Ischiopsopha
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科 マダラハナムグリ族 Schizorhinini(Lomapterina 系統に含まれるグループ)
分布:ニューギニア島を中心に、その周辺の島々からオーストラリア北部(ケープヨーク半島)〜ソロモン諸島にかけてのオセアニア地域wikipedia+1
保護状況:属全体としての包括的な評価は示されておらず、島ごとの固有種や新種・新亜種の記載が現在も続いている
カタハリカナブン属 Ischiopsopha は、まさにオセアニアらしい鮮烈なメタリックグリーンや青緑の体色をもつハナムグリのグループで、肩(前翅の付け根付近)が張り出した力強い体型から「カタハリ」の名がついたとされます。 分布と種の多様性の中心はニューギニア島で、そこから周辺の島々へと広がる過程で、島ごとに模様や色合いの異なる固有種が分かれている点が、生物地理学的にも興味深いところです。
成虫は花や樹液、熟した果実に集まる典型的なフラワービートルで、現地では熱帯雨林の花房のまわりを素早く飛び回る姿が観察されています。 ニューギニア本島から離れた島々でも、新種や新産地の報告が今も続いており、「南太平洋の島々で進行中の種分化」を感じさせる、発見の余地が大きい属といえます。
ビロードツノカナブン属 Compsocephalus


出典:iNaturalist – ドヘルティオオビロードツノカナブン Compsocephalus dohertyi(gurveena)


出典:iNaturalist – モンビロードツノカナブン Compsocephalus dmitriewi(kerejoo)
和名:ビロードツノカナブン属
学名:Compsocephalus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科 ゴライアスオオツノハナムグリ族 Goliathini
分布:主に東アフリカ、とくにエチオピアやケニア周辺の高地帯
保護状況:生息域が山地林に限られる種が多いと考えられるが、属全体として網羅的なレッドリスト評価はまだ十分ではない
ビロードツノカナブン属 Compsocephalus は、ゴライアスハナムグリで知られるゴライアスオオツノハナムグリ族の一員ですが、超大型種の迫力とは対照的に、やや小型〜中型で落ち着いた存在感をもつグループです。代表種 Compsocephalus dmitriewi では、暗緑色から青緑色を基調としたビロードのようなマットな体表をもち、種によっては金属光沢を帯びた帯模様が現れます。
オスの額には短く尖った角があり、種によっては先端がY字状に分かれる形状も知られ、「控えめなカブトハナムグリ」といった印象を与えます。
生態については詳しくわかっていない点も多いものの、成虫は花や樹液、熟した果実などを利用すると考えられています。東アフリカの山地林に生息する種が多く、美しい体色と独特の質感から、ゴライアスオオツノハナムグリ族の中でも個性的な存在として知られています。


コガネムシ上科 ― テナガコガネ亜科


出典:iNaturalist – タイワンテナガコガネ Cheirotonus formosanus(kennethchinimages)
テナガコガネ亜科 Euchirinae は、オスの前脚が体長を超えるほど極端に長く伸びることで知られる、世界でもきわめて種類数の少ない大型甲虫のグループです。東南アジアから中国南部、台湾、日本の南西諸島、西アジアの一部まで断続的に分布し、「昆虫展の標本箱でひときわ目を引く存在」でありながら、実際の暮らしぶりはごく限られた原生林の巨樹に依存した、とても繊細なものです。
オスだけに発達する「長い前脚」の役割
テナガコガネ亜科の最大の特徴は、オス成虫の前脚が細長く伸び、内側に鋭い突起(棘)が並んでいることです。この前脚は、垂直な木の幹や樹洞の内側をよじ登るための「しがみつき道具」であると同時に、メスをめぐる争いでライバルを外へ押し出す「武器」としても使われると考えられています。
同じテナガコガネ属の中でも、種によって前脚の長さには差があります。例えば日本のヤンバルテナガコガネ Cheirotonus jambar は、他の東南アジア産の仲間と比べると前脚がやや短めであることが知られています。
巨樹の樹洞に依存する幼虫の暮らし



テナガコガネ亜科の幼虫は、地面の土の中ではなく、広葉樹の老木にできた大きな樹洞の底にたまった腐植質を食べて育ちます。



それはかなり限られた条件ですね!
この樹洞は、木が何十年、何百年もの時間をかけて内部をゆっくりと朽ちさせることで生まれた空間で、細かな木くずや腐植が落ちた天然の「ゆりかご」のような場所です。外の気温変化や乾燥から守られたこの環境は、他の生き物たちが長い時間をかけて作り上げてきたものであり、テナガコガネ亜科の幼虫が安定して育つには、様々な樹齢の木が共存する成熟した森林が欠かせません。



特に豊かな森でしか生きられないのですね…
一度に産む卵の数が比較的少ないことも知られており、原生林の伐採や開発が進むと、世代交代がすぐに途切れてしまう危うさを抱えたグループでもあります。日本のヤンバルテナガコガネが天然記念物に指定され、採集や飼育が厳しく制限されているのは、こうした生活史の背景によるものです。
点々と隔離された「小さな分布パターン」


出典:iNaturalist – ヤンソンテナガコガネ Cheirotonus jansoni(ccliming)
テナガコガネ亜科は、世界で3属・十数種程度とされる非常に小さなグループで、分布も連続した広い範囲ではなく、東南アジアの島々や山地、日本の南西諸島、西アジアの一部などに「飛び地」のように点々と現れます。
近縁種どうしが地続きの平野ではなく、遠く離れた地域や島に分かれて生き残っているこのパターンは、過去の気候変動や地殻変動の影響を受けて、かつてひとつながりだった分布が、長い年月を経て細かく分断されていった名残ではないかと考えられており、「生きた地史の証人」として、研究者の関心を集め続けています。
派手な姿と繊細な生態が重なり合うグループ
このように、テナガコガネ亜科 Euchirinae は、オスの長い前脚という一見派手な「武器」を持ちながら、実際には巨樹の樹洞というごく限られた環境に静かに依存して生きている、華やかさと繊細さを併せ持つ甲虫のグループです。



一方で、日本では、テナガコガネの生きた個体を扱うことは外来生物法で厳しく禁じられています。



これは、日本に侵入・定着した場合、ヤンバルテナガコガネなど在来のテナガコガネ類と、樹洞や腐植質といった限られた資源を奪い合うおそれがあるためです。そのリスクを未然に防ぐ目的で、外来生物法にもとづき特定外来生物に指定され、生体の輸入・飼育・保管が禁止されています。
テナガコガネ属 Cheirotonus


出典:iNaturalist – タイワンテナガコガネ Cheirotonus formosanus(zongweijiang)


出典:iNaturalist – マレーテナガコガネ Cheirotonus peracanus(dhfischer)


出典:iNaturalist – ヤンソンテナガコガネ Cheirotonus jansoni(inccc)
和名:テナガコガネ属(代表種:ヤンバルテナガコガネ Cheirotonus jambar)
学名:Cheirotonus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 テナガコガネ亜科 テナガコガネ属
分布:ヒマラヤ山系からインドシナ半島、中国南部、台湾、日本の南西諸島(沖縄本島北部など)にかけて、アジアの山地林に点々と分布
保護状況:世界的に種数が少なく、生息域も限定的。日本のヤンバルテナガコガネは国内希少野生動植物種・天然記念物として採集禁止。台湾固有のタイワンテナガコガネも現地で採集・輸出が厳しく規制されている
テナガコガネ属 Cheirotonus は、ヒマラヤ山系から中国南部・台湾・日本の南西諸島まで、アジアの山地林に点々と分布する大型甲虫のグループです。オスでは前脚が非常に長く発達し、種によっては体長に匹敵するほどになるのが最大の特徴です。前胸背に金属光沢を帯びる種が多く、黒褐色の上翅に黄橙色から橙色の斑紋をもつ種が多いという共通した姿は、標本箱の中でもひときわ目を引きます。
幼虫は地中ではなく、広葉樹の老木にできた樹洞の底で木くずや腐植を食べて育つため、原生林の大樹が失われると、世代交代が容易に途切れてしまいます。



日本や台湾の固有種が厳しく保護されている背景には、このような限られた生活環境と、回復しにくい生息地の事情があります。
ヤンバルテナガコガネ


出典:環境省那覇自然環境事務所 ‐ 国内希少野生動植物種 ヤンバルテナガコガネ Cheirotonus jambar(2010年)
ヤンバルテナガコガネ Cheirotonus jambar は、沖縄本島北部のやんばるの森だけに生息する、日本固有のテナガコガネです。東南アジアの近縁種と比べると前脚がやや短く、独自の特徴を持つ種です。
分子系統解析では、中国南部からベトナムに分布するヤンソンテナガコガネに近縁であるものの、その分岐は古く、沖縄への隔離が長い年月にわたって続いてきた「遺存種」のひとつと考えられています。
幼虫はやんばるの広葉樹の樹洞にたまった腐植を食べて育ち、成虫も老木の多い森林でひっそりと生活するため、自然下で出会うことは極めて稀です。現在は天然記念物かつ国内希少野生動植物種として、捕獲・採取・譲渡・飼養などが法律で厳しく規制されており、博物館などで標本を通してその姿に触れられる、特別な存在になっています。
ドウテナガコガネ属 Euchirus


出典:iNaturalist – ドウテナガコガネ Euchirus longimanus(mangge_totok)
和名:ドウテナガコガネ属(クモテナガコガネ属)
学名:Euchirus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 テナガコガネ亜科 ドウテナガコガネ属
分布:インドネシア(スラウェシ島・モルッカ諸島など)、フィリピンの島々に限られて分布する、ごく小さなグループ
保護状況:日本では、ヤンバルテナガコガネと同じ資源を奪い合う可能性から「特定外来生物」に指定され、生体の輸入・飼育・保管が法律で禁止されている
ドウテナガコガネ属 Euchirus は、テナガコガネ属と同じくオスの前脚が異様に長く伸びる「長腕コガネムシ」の仲間ですが、体つきはやや丸みを帯び、南国らしい派手な模様をまとったものも含むグループです。代表種セラムドウナガテナガコガネ Euchirus longimanus では、最大級の個体で前脚を左右に広げると全長が20cm近くに達することもあり、昆虫展でも、標本の前で思わず足を止めてしまう迫力があります。


出典:iNaturalist – セスジドウナガテナガコガネ Euchirus dupontianus(ma__donna_del_moro)
フィリピンのセスジドウナガテナガコガネ Euchirus dupontianus は、黒地に茶〜橙色の太い縞が入り、その独特の模様から「西瓜の皮」を思わせる姿として紹介されることがある種です。長い腕と個性的な斑紋の組み合わせが、標本でもひときわ印象に残ります。
オスは外敵に対して長い前脚を持ち上げて威嚇することがあり、さらに胸部と翅をこすり合わせて音を出す発音行動(ストリドレーション)も知られています。見た目だけでなく、行動もかなり個性的なテナガコガネの仲間です。
ヒメテナガコガネ属 Propomacrus


出典:iNaturalist – ダビドヒメテナガコガネ Propomacrus davidi(njeewrsey1)
和名:ヒメテナガコガネ属
学名:Propomacrus
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 テナガコガネ亜科 ヒメテナガコガネ属
分布:地中海東部〜中東(ギリシャ、トルコ、キプロス、イランなど)と、中国江西省の山地にかけて、ユーラシア大陸を東西につらぬく「飛び石状」の分布
保護状況:キプロス固有種 P. cypriacus は国際的なレッドリストで絶滅危惧IA類(Critically Endangered)、地中海東部の P. bimucronatus も朽木性甲虫のレッドリストで準絶滅危惧として評価され、各地で保全が進められている
ヒメテナガコガネ属 Propomacrus は、テナガコガネ亜科の中でもっとも小型の仲間ですが、分布のスケールは亜科屈指です。体長は4センチ前後とテナガコガネ属より小ぶりで、オスの前脚もやや控えめな長さですが、前胸背板の後ろが鋭く角張る独特のシルエットや、落ち着いた黒褐色の体色が「ヨーロッパらしい渋さ」を感じさせます。


出典:iNaturalist – ヒメテナガコガネ Propomacrus bimucronatus(oz-rittner-smnh-tau)
代表種ヒメテナガコガネ P. bimucronatus は、地中海東部〜中東の古い広葉樹林に生息し、ナラ類などの老木の樹洞や倒木内部にたまった腐植土で幼虫は育ちます。一方、キプロス島だけに生き残るP. cypriacus や、中国江西省の山地に生息するダビドヒメテナガコガネP. davidi まで含めると、わずか数種がユーラシア大陸を東西にまたぐように飛び地状に分布していることがわかり、「かつて大陸全体に広がっていた森のベルトが、気候変動や土地利用の変化によって細くちぎれていった可能性がある」と想像させてくれます。
近年では、P. cypriacus が新種として記載されてからほどなく、IUCNの評価基準における最も高い危険度ランクである絶滅危惧IA類(Critically Endangered)と評価されたことや、ミトコンドリアゲノム解析によって系統関係の再検討が進んでいることなど、この属をめぐる物語は今も更新され続けています。


コガネムシ上科 ― コガネムシ亜科など


出典:iNaturalist – ライオンコガネ Sparrmannia flava(riana60)



この章では、コガネムシ上科の中から次の3つのグループを取り上げます。
- コブスジコガネ科 Trogidae
動物の毛皮や乾いた死骸を専門に片づける「特殊な分解者」で、命の残りかすを土へ戻す最後の担当です。 - センチコガネ科・糞虫の仲間
動物の糞を地中へ運び、土を耕しながら養分を循環させる「大地の掃除屋」です。古代エジプトで聖なる甲虫とされたスカラベも、このグループの象徴として紹介します。 - コガネムシ亜科(典型的なコガネムシ)
春から夏の草原や畑で葉を食べる、緑や銅色に輝く身近なコガネムシたちで、幼虫は土の中で根や腐植を食べて育つ地下生活者です。
それぞれの、「死骸」「糞」「葉」という違った資源を通して、森や草原の物質循環を支えるコガネムシ上科の多様な役割を見ていきます。
コブスジコガネ科 Trogidae


出典:iNaturalist – Omorgus carinatus(timothycota)


出典:iNaturalist – Polynoncus gemmifer(ben_rittner)


出典:iNaturalist – Phoberus horridus(koosretief)
和名:コブスジコガネ科
学名:Trogidae
分類:コウチュウ目 コゴネムシ上科 コブスジコガネ科
分布:世界各地の草原や疎林に広く分布し、日本にもコブスジコガネ属 Trox やオオコブスジコガネ属 Omorgus など十数種が知られている
保護状況:一部の種は地域のレッドデータブックで絶滅危惧種・注目種として評価されています
コブスジコガネ科 Trogidae は、動物の遺骸の「最後のかけら」を片づける専門家として知られる、独特な分解者のグループです。体表はイボ状にゴツゴツと隆起し、灰褐色の背中には土や砂がまとわりついていることが多く、遠目には地面の小石とほとんど見分けがつかないほど周囲に溶け込みます。



派手な金属光沢こそありませんが、この地味な外見こそが、死骸まわりで目立たずに仕事をこなすための優れた迷彩服です。
最大の特徴は、その食性にあります。動物の死骸が時間をかけて朽ち、柔らかい肉をほかの分解者が食べ尽くしたあとに現れ、乾いた皮や毛、羽根といった硬い繊維質を成虫・幼虫ともに食べて片づけてしまいます。
誰も手をつけなくなった残りかすを細かく砕き、完全に土へ戻す役割から、「分解の最終走者」と呼びたくなる存在です。危険を感じると脚を縮めて長時間じっと動かない「死んだふり」を見せることも多く、土と一体化したような姿で天敵の目をごまかします。
法医学の分野では、乾いた死骸にコブスジコガネ科が集まり始める時期が「死後どれくらい時間が経ったか」を推定する手がかりとして使われることもあり、野外の分解者であると同時に、人間の調査にも静かに貢献している甲虫です。
センチコガネ科・糞虫(糞の分解者)


出典:iNaturalist – ミツノセンチコガネ Typhaeus typhoeus(eheckscher)


出典:iNaturalist – Bolbaffer tenuelimbatus(nickybay)
和名:センチコガネ科・糞虫(代表種:センチコガネ・オオセンチコガネ・スカラベなど)
学名:Geotrupidae/Scarabaeidae の食糞性グループ
分類:コウチュウ目 コガネムシ上科 センチコガネ科・コガネムシ科の一部
分布:日本全国を含む世界各地の森林、牧草地、草原地帯
保護状況:放牧地の減少や家畜用駆虫薬の影響により、地域によっては糞虫の個体数減少が問題視され、一部種がレッドリストで注目されている
センチコガネ科と、コガネムシ科の食糞性グループを含む「糞虫」は、哺乳類の糞を素早く処理し、大地の健康を根底から支える掃除係です。優れた嗅覚で新鮮な糞を見つけると、地表で食べるだけでなく、糞を地中へ運び込み、自分と幼虫の餌にしながら土壌へ有機物を送り込みます。



こうした働きによって、森や牧草地は糞だらけにならず、ハエの発生や寄生虫の拡散も抑えられ、草木が根を張りやすい環境が保たれています。


出典:iNaturalist – オオセンチコガネ 基亜種 Phelotrupes auratus ssp. auratus(invertebratist)
日本のセンチコガネ Phelotrupes laevistriatus やオオセンチコガネ Phelotrupes auratus は、黒〜金緑色、紫銅色など宝石のような金属光沢をまとい、愛好者も多く存在します。この色彩は外骨格の微細な層による構造色で、木漏れ日のゆれる林床では天敵の目を惑わす迷彩としても働きます。
奈良公園や放牧地のように大型草食動物が多い場所では、糞虫の種類も豊かで、その活動が景観と土壌の両方を支えていることが研究から示されています。最近では、家畜に投与される寄生虫駆除薬が糞に残り、幼虫の成育を阻害する影響も指摘されており、糞虫の数の変化が畜産のあり方を映す「ささやかなバロメーター」として注目されつつあります。
スカラベ Scarabaeus sacer


出典:iNaturalist – ヒジリタマオシコガネ Scarabaeus sacer(will_fr)
和名:スカラベ(ヒジリタマオシコガネ)
学名:Scarabaeus sacer
分類:コウチュウ目 コガネムシ科 コガネムシ亜科 マグソコガネ族 スカラベ属
分布:地中海沿岸・北アフリカ・中東
保護状況:地域により減少傾向
スカラベ Scarabaeus sacer は、古代エジプトで太陽神ケプリの象徴とされた「聖なる糞虫」です。糞球を作り、後ろ足でコロコロと転がして地中に運ぶ独特の行動は、土壌へ栄養を深く送り込む掃除係としての役割に加え、ナビゲーション研究でも注目されています。


出典:iNaturalist – Escarabaeus satyrus(ryanmtippett)
近縁のアフリカ産の夜行性の糞虫、Scarabaeus satyrus が天の川を手掛かりに進行方向を定めることを示した研究は、2013年にイグノーベル賞を受賞し、「小さな甲虫が、星空を見上げて道を決めている」というロマンあふれる事実が世界中で話題になりました。ヒジリタマオシコガネと同じ属の仲間が、こうした驚くべき能力を持っていることも、糞虫という存在の奥深さを教えてくれます。
スジコガネ亜科


出典:iNaturalist – コガネムシ Mimela splendens(yunlin_wayne)


出典:iNaturalist – サクラコガネ Anomala daimiana(ts04)


出典:iNaturalist – マメコガネ Popillia japonica(djringer)
和名:スジコガネ亜科
学名:Rutelinae
分類:コウチュウ目 コガネムシ上科 コガネムシ科 スジコガネ亜科
分布:世界中の森林・草原・農耕地・都市近郊の緑地に広く分布し、7つの族・約200属・4,000種以上を含む大きなグループ
保護状況:多くは普通種として身近な存在だが、原生林に依存する固有種や、逆に「侵略的外来種」として警戒される種など、立場は種によって大きく異なる
スジコガネ亜科 Rutelinae は、庭木や街路樹の葉にとまる緑色・銅色の丸い甲虫として、多くの人に最も馴染み深いグループです。角のような大きな武器を持たず、丸みのある卵型の体と、扇状の触角、均一な色彩を備えているのが大きな特徴です。
成虫はクヌギやサクラなどの葉や花びらを食べる植物食の消費者で、幼虫は土の中で朽ち木や堆肥、植物の根を食べて育ち、地上と地下の両方で植物の生活に結びついています。


出典:iNaturalist – ドウガネブイブイ Anomala cuprea(obsnat)
日本では、マメコガネ・ドウガネブイブイ・コガネムシなどが代表的な種で、身近な緑地で普通に見られる一方、マメコガネが20世紀初頭にアメリカへ渡り、天敵の少ない環境で大発生して「Japanese beetle」と呼ばれる深刻な農業害虫となった例は有名です。身近な虫が、場所を変えるだけで世界的なニュースになることを教えてくれるエピソードと言えるでしょう。
マッシロコガネ属 Cyphochilus


出典:iNaturalist – Cyphochilus farinosus(dolphin07)


出典:iNaturalist – Cyphochilus apicalis(alanyip)
マッシロコガネ属 Cyphochilus は、東南アジアに分布するコガネムシの仲間で、「地球上でもっとも白い生物のひとつ」と評される純白の鱗片を全身にまとうグループです。 この白さは色素ではなく、鱗片内のナノサイズの繊維が、さまざまな波長の光をほぼ等しく散乱させる「薄い乱雑なフォトニック構造(非周期的フォトニック構造)」によって生じるもので、紙や人工材料をしのぐ高効率な白色光の反射が実現されています。
暗色の外骨格の上にごく薄い鱗片を重ねるだけで、キノコなど白い背景に溶け込める迷彩効果を生み出している点が、プラチナコガネ属の鏡面構造と並んで「自然が生み出した光学デザイン」の好例として、物理学・材料科学の分野からも注目されています。
プラチナコガネ属 Chrysina


出典:iNaturalist – Chrysina limbata(gernotkunz)


出典:iNaturalist – Chrysina resplendens(enmotologists)


出典:iNaturalist – ギンスジウグイスコガネ Chrysina gloriosa(jaykeller)
プラチナコガネ属 Chrysina は、中南米の山地林に分布するコガネムシ亜科屈指の美麗グループで、金や銀、エメラルドグリーンなど、宝石のような鏡面光沢を持つ種が多いことで知られています。表面の「金属メッキ」のような質感は色素ではなく、外骨格表面の極めて薄い多層構造が光を反射することで生じる構造色で、周囲の緑や光を映し込むことで外敵から姿を紛らわせる高度な光学迷彩になっていると考えられています。
乾燥した標本にしても輝きがほとんど色褪せないため、昆虫標本の世界では「貴金属の輝きを持つ昆虫」としてコレクターに愛される存在です。
中南米産コガネムシ類


出典:iNaturalist – アシナガミドリツヤコガネ Chrysophora chrysochlora(saracastromarin321)


出典:iNaturalist – Macraspis clavata(lakbayer)


出典:iNaturalist – Macraspis jamesi(felixuribe)
中南米の森や高地草原には、プラチナコガネ属以外にも、多様なコガネムシ亜科の仲間が暮らしており、まだ名前すら付いていない種を含め、分類が追いついていないほどの豊かさが残されています。ゴールドや純銀、赤銅色、虹色など、色彩や光沢のバリエーションに富んだ種が次々に見つかっており、「次はどんな姿のコガネムシが現れるのか」という楽しみを、研究者とコレクターの両方が分かち合う地域でもあります。



このあたりは、タヌ山先生が大好きな甲虫がたくさんいますね〜



確かに僕、プラチナコガネに代表されるキラキラ・ピカピカも、マッシロコガネのようなベルベットみたいな質感も大好きです!


タマムシ科 Buprestidae


出典:iNaturalist – Neojulodis tomentosa ssp. gnaphalon(felix_riegel)
タマムシ科 Buprestidae は、強い金属光沢と鮮やかな色彩で知られる甲虫のグループです。世界に約15,000種、日本でも約220種が記録されています。
標本箱の中でもひときわ輝く存在でありながら、その美しさは、構造色という精巧な仕組みと、樹木と深く結びついた生態によって支えられています。
光がつくる「構造色」の輝き


出典:iNaturalist – Buprestis samanthae(pasoka)
タマムシ科最大の特徴は、死後もほとんど色褪せない金属光沢です。これは色素ではなく、外骨格表面の薄い透明な層が重なり合い、特定の波長の光を強く反射する「構造色」によるものです。
見る角度や光の当たり方で色が変わって見える性質には、背景に溶け込みやすくしたり、輪郭を分かりにくくしたりする効果があると考えられています。日本では法隆寺の「玉虫厨子」にヤマトタマムシの翅が用いられた例が有名で、自然の構造色が古くから工芸にも生かされてきました。



上の理由のほかにも、照葉樹林のツヤツヤの葉の上では、同じくツヤツヤ・ピカピカな体のほうが目立たないかもしれません。
樹木の内部で育つ幼虫


出典:iNaturalist – タマムシ科 科 Buprestidae(maxverheij)
幼虫は華やかな成虫とは対照的に、樹木の内部という目に見えにくい場所で長い時間を過ごします。卵から孵化した幼虫は樹皮の下や木質部の中へと掘り進み、木材の繊維を食べながら2〜3年、種によっては7〜8年もかけて成長します。
伐採された木が建材や家具となったあと、数年を経てから室内でタマムシが羽化する例も知られており、「木とともに時間を歩む」暮らしぶりを象徴しています。多くの種は弱った木や枯れ木を利用し、樹木内部に坑道を作ることで菌類や微生物による分解を進みやすくし、結果として森の物質循環の一端を担っています。
日光を好む短い成虫期と防疫の視点
成虫は昼行性で、晴れた日の強い日差しの下を好んで飛び回り、花や葉を食べながら短い成虫期のあいだに配偶者を探します。その一方で、幼虫が木の内部を食べる性質から、タマムシ科の一部には街路樹や果樹、針葉樹に被害を与える森林害虫として扱われる種もあります。
特定の外来種が新しい地域に侵入すると、在来の樹木や生態系へ大きな影響を及ぼすおそれがあるため、日本では植物防疫の枠組みのもと、海外から生きた昆虫や未加工木材が持ち込まれる際には検疫が行われています。
ケブカフトタマムシ属 Julodis


出典:iNaturalist – ムラサキケブカフトタマムシ Julodis viridipes(botalex)


出典:iNaturalist – Julodis rothii(niv2003)


出典:iNaturalist – Julodis manipularis(joeybom)
和名:ケブカフトタマムシ属(代表種:ヨーロッパケブカフトタマムシ)
学名:Julodis
分類:コウチュウ目 タマムシ科 ケブカフトタマムシ属
分布:アフリカ、中東、中央アジア、地中海沿岸の乾燥・半乾燥地帯
保護状況:多くの種が広い乾燥地帯に細かく分布しており、属全体の包括的な評価はまだ十分に整理されていないが、砂漠化や植生の変化による生息環境の縮小が懸念されている
ケブカフトタマムシ属 Julodis は、タマムシ科のなかでも、体表を覆うふさふさとした毛並みがひときわ印象的なグループです。青緑や瑠璃色の金属光沢を基調に、黄色や白色の柔らかな毛の束が背中にまだら模様を描き、「虹色の甲虫の上に毛糸の刺繍を施したような質感」を生み出しています。


出典:iNaturalist – Julodis euphratica(hri_)
成虫は日中に花や低木の葉に集まり、花の蜜や花粉を摂りながら短い成虫期のあいだに交尾と産卵を行うのが一般的です。一方、幼虫は樹木や低木の根元付近、あるいは半分朽ちた木質部などで時間をかけて育ち、中には雨の多い季節に合わせて一斉に成虫が現れるライフサイクルを持つ種も報告されています。
砂漠や半乾燥地帯という厳しい環境のなかで、限られた水と植物資源に合わせて生活のリズムをぴたりと調整している点が、この属の大きな特徴です。
ルリタマムシ属 Chrysochroa


出典:iNaturalist – Chrysochroa fulminans(allencarmona)


出典:iNaturalist – Chrysochroa buqueti(thepazzzzz)


出典:iNaturalist – Chrysochroa purpureiventris(germaynetan)
和名:ルリタマムシ属
学名:Chrysochroa
分類:コウチュウ目 タマムシ科 ルリタマムシ亜科 ルリタマムシ属
分布:日本、韓国、中国南部、台湾、インドシナ半島、マレー半島、インド、インドネシアなど、東〜東南アジアの森林地帯
保護状況:属全体の一括評価は未整理だが、森林伐採や大径木の減少が一部種に影響すると考えられており、韓国では Chrysochroa coreana(独立種または地域個体群として扱われる)が天然記念物・絶滅危惧種として保護されている例がある
ルリタマムシ属 Chrysochroa は、日本のヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima をはじめ、緑・青・赤銅色の強い金属光沢と縦帯模様をまとった「ジュエルビートル」の代表格です。昆虫展の標本箱では、見る角度によって色が変わる構造色の輝きがひときわ目を引き、東〜東南アジアの森が生んだ造形美の象徴として、多くの来館者を魅了します。
幼虫は弱った木や枯れ木の内部に潜る材食性で、数年かけて成長します。韓国産とされる Chrysochroa coreana では、エノキの枯れ木の内部で5年以上幼虫期を過ごすことがCT撮影を用いた研究から示されており、「木の中で長く、外では短く輝く」生活史が、この属の特徴をよく表しています。
タマムシ(ヤマトタマムシ)Chrysochroa fulgidissima


出典:iNaturalist – タマムシ Chrysochroa fulgidissima(conchuningen)
ヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima は、体長30〜40mmほどの細長い体に、緑の地色と赤紫の縦じまが重なる強い金属光沢をまとった、日本を代表するタマムシです。幼虫はエノキなどの枯れ枝や弱った幹の内部で数年をかけて育ち、成虫は真夏の晴れた日に梢の周辺を飛び回る姿がよく観察されます。



タマムシは木の高いところにいて、なかなか降りてこない印象があります。
法隆寺の国宝「玉虫厨子」の装飾には無数の翅が用いられており、千年以上を経てもその輝きが残っていることから、日本の自然美と伝統工芸を結ぶ象徴的な昆虫として、今も多くの人に親しまれています。
オオルリタマムシ Megaloxantha bicolor


出典:iNaturalist – オオルリタマムシ Megaloxantha bicolor(pasoka)


出典:iNaturalist – オオルリタマムシ Megaloxantha bicolor(gancw1)
和名:オオルリタマムシ
学名:Megaloxantha bicolor
分類:コウチュウ目 タマムシ科 ルリタマムシ亜科 オオルリタマムシ属
分布:東南アジアの熱帯雨林(マレー半島、インドシナ半島、スマトラ・ボルネオ・ジャワ、フィリピン諸島など)
保護状況:属・種全体の包括的な評価はまだ整理途上ですが、熱帯林の伐採に伴う大径木の減少が、生息環境に影響を及ぼす可能性が指摘されている
オオルリタマムシ Megaloxantha bicolor は、体長5〜7cmほどに達するタマムシ科でも最大級の種類の一つで、深い金緑色の金属光沢の上に、上翅後方へ黄色〜白色の太い帯が入る堂々とした姿が特徴です。巨木の樹冠近くで活動し、晴れた日には若葉や植物組織を食べながら生活します。幼虫は弱った大径木や枯れ木の内部で数年をかけて成長し、熱帯林の成熟した森林環境に強く依存しています。
こうした生活史から、急速に失われつつある原生林の存在が、この種の安定した暮らしにとっていかに重要かが静かに伝わってきます。
オーストラリアジュエルビートル Castiarina


出典:iNaturalist – 属 Castiarina(tinnanbar)


出典:iNaturalist – Castiarina insignis(nickm69)


出典:iNaturalist – Castiarina amabilis(joshgan)
和名:オーストラリアジュエルビートル(カスティアリナ属)
学名:Castiarina
分類:コウチュウ目 タマムシ科 タマムシ亜科 ニシキタマムシ族(Stigmoderini)Castiarina属
分布:オーストラリア全土(西オーストラリアから東海岸、内陸部、タスマニアまでの森林・低木林・ヒース帯)
保護状況:属全体の包括的な評価はまだ整理途上ですが、ごく限られた高地や湿地に固有の希少種も知られ、地域ごとの生息地保全が重要な課題になっている
Castiarina 属は、400種を超える多様なジュエルビートルを含む、オーストラリア随一の大きなタマムシ属です。赤・黄・黒・オレンジ、深い藍色などが織りなす鮮やかな縞模様や斑点模様が大きな特徴で、かつて Stigmodera 属にひとまとめにされていた多くの種が、分類の見直しによってこの属に再編されています。
生態的には、ユーカリやティーツリー、フトモモ科の花木など、オーストラリア特有の植物の開花シーズンに合わせて成虫が一斉に現れ、真夏の満開の花に群がって花粉や蜜を食べながら活発に飛び回ります。幼虫は多くが木材や枯れ枝の内部を食べる材食性で、種によっては地下部や根を利用すると考えられるものも知られています。
Stigmodera 属(ジュエルビートル)


出典:iNaturalist – Stigmodera sanguinosa(fabiando)


出典:iNaturalist – Stigmodera macularia(jimbobo)


出典:iNaturalist – Stigmodera gratiosa(joshgan)
和名:特に定まった和名なし(ジュエルビートル)
学名:Stigmodera
分類:コウチュウ目 タマムシ科 タマムシ亜科 ニシキタマムシ族 Stigmodera 属
分布:オーストラリア(とくに西オーストラリア)
保護状況:西オーストラリア州ではタマムシ科全体が州法で採集規制の対象となっており、商業的な採集や輸出は厳しく制限されています。
Stigmodera 属は、かつてオーストラリア産ジュエルビートルの大半(100種以上)をひとまとめにしていた「元祖・大所帯」の属でした。しかし詳しい分類学的研究の結果、多くの種が Castiarina 属などへ再編され、現在では狭義の Stigmodera 属に残る種はわずか数種の少数精鋭グループとして扱われています。
緑・青・赤・銅色などが組み合わさった宝石のような金属光沢を持ち、その褪せない色合いから、かつて西オーストラリアでは外骨格がブローチや装身具の素材として実際に利用されていたことも知られています。


出典:iNaturalist – Stigmodera cancellata(joshgan)
代表種 Stigmodera cancellata は、幼虫が地中で最長15年もの長い時間を過ごし、その後ごく短い成虫期のあいだに地上へ出て、交尾と産卵を一気に終えるという極端な生活史を持っています。長い雌伏ののちの「一世一代の晴れ舞台」とも言えるライフサイクルは、オーストラリアの厳しい環境に適応したしたたかな戦略であり、同じジュエルビートルでもキャスティアリナ属とは少し異なる「時間の使い方」を教えてくれる存在です。


コメツキムシ科 Elateridae


出典:iNaturalist – 属 Diplophoenicus(sympiotr)
コメツキムシ科(Elateridae)は、深い森から草原、農地、都市の公園まで、世界で1万種以上、日本でも数百種が知られる大きな甲虫のグループです。仰向けになると「パチン」と音を立てて勢いよく跳ね起きる独特の習性と、細長く硬い体、そして土の中や朽木の中で過ごす幼虫期という、科として共通する特徴がはっきりしています。



この科の多くは見た目は地味ですが、生態は驚くほど多様で、土壌生態系や農業とも密接につながっています。
胸のバネが生む「跳ね起き」機構
成虫最大の特徴は、前胸と中胸の間に備わった特殊な関節構造です。前胸裏側の突起を中胸のくぼみに引っ掛けて体を反らせ、筋肉の緊張を一気に解除することで、自分の体長の数倍から数十倍もの高さまで空中に跳ね上がります。
この仕組みは、まず脚を使わずに体勢を立て直すための機能であると同時に、勢いよく跳ね起きる動きや音によって天敵を驚かせる防御行動としても役立っていると考えられています。名前の由来になった「コメツキ跳び」は、この科を象徴する物理学的に合理的な動きと言えるでしょう。
土中や朽木で過ごす幼虫期


出典:iNaturalist – コメツキムシ科 科 Elateridae(felix_riegel)
幼虫は「ワイヤーワーム(日本ではハリガネムシとも呼ばれることがありますが、線形動物の寄生虫であるハリガネムシとは別のなかまです)」と呼ばれる細長く頑丈な体を持ち、土壌や朽木の中で数年をかけて成長します。種によって腐植物質や朽木、植物の根、他の小動物などさまざまなものを食べ、土壌生態系のなかで多様な役割を担っています。
一方、トウモロコシやジャガイモなど農作物の根を食害する種は「ワイヤーワーム」として、農業の現場で対策の対象となっています。土の中で静かに活動する幼虫たちの食性は科内で幅広く、森の新陳代謝を支える種と、農業の現場で注意が必要な種が同居している点が、この科の重要な特徴です。
成虫の生活と自然界での役割
成虫は多くの種が夜間に活動し灯火にも飛来しますが、昼間に活動する種も少なくありません。細長い体と硬い外骨格は、草むらや落葉層をすり抜けて歩き回るのに適しており、種によっては花粉や樹液を利用するもの、ほとんど摂食しないものなど、暮らし方もさまざまです。
春〜初夏に活動のピークを迎えるものが多く、昼行性で鮮やかな色を誇るタマムシ科とは対照的に、「地味だが機能的な体と行動」で環境に適応してきたグループと言えます。
コメツキムシ科の成虫と幼虫は、土壌の分解や土壌環境の維持、小動物の捕食、そして鳥類・両生類・小型哺乳類の餌資源として、生態系の基盤を静かに支えています。一方で、農業害虫となる種の重要度は地域や作物によって大きく異なるため、自然観察の対象としての魅力と、農業上の注意点の両方を理解しながら付き合っていくことが大切です。
オオアオコメツキ属 Campsosternus 属


出典:iNaturalist – 属 Campsosternus(jiangyou)


出典:iNaturalist ‐ Campsosternus dohrni(ars_4)


出典:iNaturalist – Campsosternus candezei(easyparadise)
和名:オオアオコメツキ属(通称)
学名:Campsosternus
分類:コウチュウ目 コメツキムシ科 Dendrometrinae 亜科(※分類体系により多少異なる) Campsosternus 属
分布:台湾、中国南部、東南アジアなどの温暖な森林地帯(日本では沖縄本島、石垣島、西表島、与那国島など南西諸島に、種によって限定された分布が知られる)
保護状況:属全体の包括的な評価はまだ整理途上だが、大型種が森林伐採による生息環境の変化の影響を受けやすいと考えられ、各地で分布や個体数の推移が調査されている
オオアオコメツキ属 Campsosternus は、コメツキムシ科の中でもタマムシに匹敵する鮮やかな緑色や黄金色の金属光沢をまとう「ジュエルクリックビートル」として知られるグループです。体長はおおむね3センチ前後の中〜大型種が多く、やや平たく重厚な体型と、全身を包む深い金属光沢が重なり合い、昆虫展の標本箱では「タマムシのように見えるコメツキムシ」としてひときわ強い存在感を放ちます。
本属の成虫は、温暖な森の林縁や樹幹の周辺を好み、日中から薄暗い時間帯にかけて、樹皮や根元、草地の上をゆっくり歩きながら樹液や葉を利用して暮らします。夜間には灯りに飛来する種も知られ、「昼の森で虹色に輝く姿」と「夜の灯火に集まる姿」の両方がフィールドで観察されます。
オオアオコメツキ Campsosternus auratus


出典:iNaturalist – オオアオコメツキ Campsosternus auratus(goofyko)
オオアオコメツキ Campsosternus auratus は、体長3センチ前後の細長い体を深い金緑色の金属光沢が包む、東アジアを代表する大型コメツキムシです。中国南部や台湾などに広く分布し、日本では対馬の森林における限られた記録が知られています。
けて眩しくきらめくその姿は、地味なイメージを持たれがちなコメツキムシの印象を鮮やかに塗り替えてくれます。幼虫は朽ち木の中で長い時間を過ごし、他の小動物や昆虫の幼虫を捕食する森のハンターとして暮らします。
ウバタマコメツキ属 Cryptalaus


出典:iNaturalist – オオフタモンウバタマコメツキ 本土亜種 Cryptalaus larvatus ssp. pini(nukaruminomono)


出典:iNaturalist – Cryptalaus sordidus ssp. ceylonensis(nuwan)


出典:iNaturalist – Cryptalaus suboculatus(sharmaine3)
和名:ウバタマコメツキ属(通称)
学名:Cryptalaus
分類:コウチュウ目 コメツキムシ科(亜科や細分類は研究者・分類体系により異なる)Cryptalaus属
分布:日本(本州・四国・九州・伊豆諸島・対馬・屋久島・南西諸島など)を含む東アジア〜東南アジアの森林地帯
保護状況:古い大樹や立ち枯れ木の減少が、地域によっては個体群に影響を及ぼす可能性があり、寺社林や原生的な雑木林に依存する種では、生息状況が注意深く見守られている
ウバタマコメツキ属 Cryptalaus は、ボコボコとした灰色〜白色の地に黒い斑紋を散らした「渋い大型コメツキ」が集まるグループで、ウバタマコメツキ Cryptalaus berus やオオフタモンウバタマコメツキ Cryptalaus larvatus など、日本産でも30mm級の堂々とした種が含まれます。体表を覆う細かい鱗毛と半月形の黒斑がつくり出す深みのある迷彩柄は、樹皮や立ち枯れ木の質感とよく同化し、静かに幹にとまっていると姿を見失ってしまうほどです。
幼虫はアカマツや広葉樹などの枯死木の樹皮下に潜み、他の昆虫の幼虫を捕食する「朽木に潜むハンター」である点が、他のコメツキムシ科の仲間との共通項です。樹木そのものを餌とせず、木材を餌とするカミキリムシなどの幼虫を捕食して成長する種も知られ、自然のなかで材食性昆虫の増え過ぎを抑える役割を担っていると考えられています。
ウバタマコメツキ Cryptalaus berus


出典:iNaturalist – ウバタマコメツキ Cryptalaus berus(yuki_m)
ウバタマコメツキ Cryptalaus berus は、日本各地の雑木林やマツ林に生息するこの属の代表種で、体長30mm前後の大きな体と、灰白色の地に胸部と上翅の黒い斑紋が並ぶ独特の模様を持ちます。
樹皮の質感によくなじむ迷彩柄の体で、触れると脚を折りたたんで擬死(死んだふり)し、その後コメツキムシらしい跳ね起き行動で体勢を立て直します。



死んだふりのあとの、急な「パチン」という大ジャンプには、体の大きさにかかわらず相手はびっくりしてしましますね。
ヒカリコメツキ属 Pyrophorus


出典:iNaturalist – Pyrophorus punctatissimus(patriciocowpercoles)


出典:iNaturalist – Pyrophorus punctatissimus(poerli)


出典:iNaturalist – ヒカリコメツキ属 属 Pyrophorus(laurent_h)
和名:ヒカリコメツキ属
学名:Pyrophorus
分類:コウチュウ目 コメツキムシ科(族 Pyrophorini に含まれる系統)Pyrophorus 属
分布:中南米の熱帯・亜熱帯地域(メキシコから南アメリカ、カリブ海諸島など)
保護状況:属全体としての包括的な評価は整理途上だが、生息基盤となる熱帯林や草原環境の縮小が、局所的な個体群に影響を及ぼす可能性が指摘されている
ヒカリコメツキ属 Pyrophorus は、その和名が表すように、生物発光を行う甲虫のグループです。成虫は前胸背板の両後角に二つの発光器を持ち、暗闇の中で緑色〜黄緑色を帯びた光をヘッドライトのように灯します。



実際に見たことがありますが、ヒカリコメツキの発光はかなり明るいと感じました。
腹部腹面にも広い発光域があり、飛翔時には胸と腹の二か所から光がにじむことで、夜の熱帯の草原や林縁に幻想的な光の軌跡を描きます。ホタルのような断続的な点滅ではなく、比較的持続的に光を保ちつつ、その強弱を調整できる点が特徴で、仲間との位置を知らせる合図や、捕食者への牽制信号として働いていると考えられています。


出典:iNaturalist – Pyrearinus termitilluminans(cotinis)
幼虫や蛹、卵も弱い光を発することが知られており、「一生のほとんどの段階で光る甲虫」として、進化生物学や生物発光研究の重要なモデルになっています。土中や朽木の中で暮らす幼虫は、他の小さな無脊椎動物や有機物を摂りながら成長し、静かな地中生活のなかでも淡い光を保っていると報告されています。
発光のしくみは、ルシフェリンとルシフェラーゼが酸素と反応することで光を生じる「生物発光」に属し、投入されたエネルギーの多くを光として放出し、ほとんど熱を出さない冷光という性質を持ちます。この高効率なエネルギー変換は、ホタルとは別系統で獲得された仕組みと考えられており、現代の生化学や発光材料の研究でも、自然界の優れた手本として注目されています。



中南米の一部地域では、瓶に入れたヒカリコメツキを簡易な灯りとして使ったという民俗的な記録も残されています。



電気やランプのない真っ暗な夜、熱くならないヒカリコメツキの光は重宝されたかもしれませんね。
ヒゲコメツキ属 Pectocera


出典:iNaturalist – Pectocera babai(luketseng)


出典:iNaturalist – オキナワヒゲコメツキ Pectocera yonaha(coleoreteh)
和名:ヒゲコメツキ属(代表種:ヒゲコメツキ)
学名:Pectocera
分類:コウチュウ目 コメツキムシ科 オオヒゲコメツキ亜科(Oxyngopterinae/Oxynopterinae など、体系により表記差あり)ヒゲコメツキ族 Pectocerini ヒゲコメツキ属
分布:日本(北海道・本州・四国・九州、各地の島嶼部)、中国など東アジアの森林・草地
保護状況:属全体のレッドリスト評価は未整備だが、島嶼固有種や局所的な大型種では、里山や照葉樹林の保全が重要な課題として挙げられている
ヒゲコメツキ属 Pectocera は、名前の通り立派な「ひげ」のような触角を持つコメツキムシのグループで、特に雄の触角の華やかさが目を引きます。代表種ヒゲコメツキ P. fortunei では、雄の触角各節から長く扁平な枝状突起が伸びて櫛状となり、その長さは体長の3分の2ほどにも達します。
全体は茶褐色を基調に、灰白色〜黄色の短い毛が密に生え、一部が斑紋となっているため、樹皮や枯れ草の上にとまると落ち着いた迷彩柄としてよく馴染みます。もちろん、コメツキムシ科共通の跳ね起き機構も備えており、ひっくり返されると前胸の突起と中胸の係合部を使って「パチン」と音を立てて跳ね上がり、長い触角をたなびかせながら体勢を立て直します。
また、興味深いのは、雄と雌で触角の形がはっきり違う性的二型が見られる点です。雄は櫛歯状の触角で、遠くの雌が出す匂いを効率よく受け取れるようになっていると考えられ、雌は鋸歯状でやや短い触角を持ちます。
ヒゲコメツキ Pectocera fortunei


出典:iNaturalist – ヒゲコメツキ Pectocera fortunei(muyaocraft)
ヒゲコメツキ Pectocera fortunei は、体長21〜27mmに達する日本産の大型コメツキムシで、雄の櫛状の触角と、全身を覆う茶褐色〜灰白色の柔らかな毛が特徴です。北海道から九州まで広く分布し、島嶼部も含めた多くの地域の雑木林や草地で見られる普通種です。
初夏のころ灯火に多数飛来したり、昼間に樹木の花の上でゆっくり歩く姿は、初めて見る人に強い印象を残します。



昆虫好きの中には、「触角マニア」も結構多い気がします。



個性的な触角、カッコイイですよね!
Semiotus 属


出典:iNaturalist – アカトガリコメツキ Semiotus angulatus(desertnaturalist)


出典:iNaturalist – Semiotus illigeri(marcodehaas)


出典:iNaturalist – Semiotus linnei(omarjavier48)
和名:定まった和名なし(南米の大型コメツキ)
学名:Semiotus
分類:コウチュウ目 コメツキムシ科 Semiotus 属
分布:中央アメリカ〜南アメリカの熱帯・亜熱帯地域(パナマ、コロンビア、ベネズエラ、ペルーなど)
保護状況:属全体の包括的なレッドリスト評価は整備途上ですが、熱帯林の伐採や牧草地化に伴う生息環境の変化が、地域の個体群に影響しうると考えられています。
emiotus 属は、中南米の豊かな熱帯雨林に生息する、中〜大型のコメツキムシのグループです。体長14〜40mmほどの種が多く、黄色やオレンジ、赤、黄金色の地に黒い縦条や帯状の斑紋が走る派手な外観が特徴で、「コメツキムシは地味」というイメージを鮮やかに覆してくれます。
昆虫展の標本箱では、南米産タマムシやカミキリムシと並んでも見劣りしない造形美を誇り、ひと目で「新世界の森の仲間」だと分かる温かい色合いをたたえています。成虫は熱帯林の林縁や倒木の周辺で見られ、日中から夕暮れにかけて樹液や花の蜜を口にしつつ、ゆっくりと樹幹を歩き回ります。
Semiotus imperialis


出典:iNaturalist – Semiotus imperialis(urban_funga)
Semiotus imperialis は、体長40mm前後に達する重厚な体躯と、赤〜橙色の地に深い黒の縦条模様を備えた、本属を代表する大型美麗種です。ペルーやブラジル、コロンビアなどの熱帯雨林に生息し、強い日差しが差し込む時間帯に、大樹や立ち枯れ木の周囲をゆっくり歩き回る姿が観察されます。



他にもいくつかありますが、学名そのままや学名をローマ字読みしたままの呼び名が多数で申し訳ありません。



できれば、どの昆虫にも、その種にピッタリの和名をつけたいものですね〜
Alaus 属


出典:iNaturalist – Alaus zunianus(robertivens)


出典:iNaturalist – Alaus myops(blueeagle73in)


出典:iNaturalist – Alaus lusciosus(tomfeild)
和名:定まった和名なし
学名:Alaus
分類:コウチュウ目 コメツキムシ科 Alaus 属
分布:主に北米〜中米の森林地帯(東部アメリカ合衆国からテキサス周辺、中米の一部まで)、種によっては中央アメリカ・南米や他地域にも分布が知られています
保護状況:属全体の包括的なレッドリスト評価は整備途上ですが、倒木や立ち枯れ木に依存する幼虫期の暮らしから、原生的な広葉樹林の保全が重要とされています。
Alaus 属は、「アイドクリックビートル(目玉模様を持つコメツキムシ)」として知られる大型コメツキムシのグループで、成虫の体長がおおよそ2.5〜5cmに達する種が多く含まれます。黒〜暗褐色の細長い体の前胸背に、クリーム色の縁取りを伴う大きな黒い斑紋が左右に一対並び、遠目には「大きな目が背中に付いている」ように見えるのが最大の特徴です。
この目玉模様は、自身の頭部や本物の目ではなく、鳥などの天敵に「自分より大きな生き物の顔」や、攻撃しづらい前胸部を印象づけることで、捕食をためらわせる、防御的な擬態として働いていると考えられています。
Alaus oculatus


出典:iNaturalist – Alaus oculatus(awells)
アメリカ東部に生息するAlaus 属の代表種、Alaus oculatus は、体長2.5〜5cmほどの大型コメツキムシです。黒い体の前胸背に白色〜クリーム色で縁取られた大きな目玉模様には、視界に入るとハッとさせられます。



全く光のない眼状紋(がんじょうもん)…かなりインパクトがありますね!


カミキリムシ科 Cerambycidae


出典:iNaturalist – ニッポンモモブトコバネカミキリ Merionoeda formosana(mingyuchang1)
カミキリムシ科 Cerambycidae は、節のある長い触角でよく知られる甲虫の大きなグループで、世界では3万5,000種以上、日本でも700種を超える仲間が知られています。森の樹木や朽ち木、里山の木、果樹園、街路樹、花の上まで、非常に広い環境に適応しているため、見た目も暮らし方も驚くほど多彩です。
いかにも「木とともに生きる甲虫」という印象の強い科ですが、その中には森の循環を支える種もいれば、樹木に被害を与える種もいて、自然と人の暮らしの両方に深く関わっています。
木に寄り添う幼虫期


出典:iNaturalist – Hylotrupes bajulus(andrew_the_biologist)
カミキリムシ科のもっとも大きな共通点は、幼虫が植物の内部で育つことです。多くの種では、卵は樹皮のすき間や木の表面近くに産みつけられ、孵化した幼虫が樹木の幹や枝、朽ち木の中へと入り込んで、木質部を食べながら成長します。
外からは静かに見えても、木の内部では長い時間をかけた生活が進んでおり、種によっては数年にわたって同じ木の中で過ごします。この暮らし方には、森をゆっくり変えていく働きがあります。
枯れ木や倒木を利用する種は、木を細かく砕いて分解を進め、菌類や微生物が働きやすい状態をつくります。その結果、養分が土へ戻り、次の植物の成長につながっていきます。つまりカミキリムシ科は、見えにくい場所で森の循環を支える存在でもあるのです。
長い触角の意味
カミキリムシ科をひと目で見分けやすい特徴が、体長を超えることもある長い触角です。とくに雄では、雌よりも触角がずっと長い種が多く、仲間を見つけたり、産卵に向いた木を探したりするうえで大切な役割を果たしています。



昆虫の触角は、においや振動、周囲の気配をとらえるための精密な感覚器です。
樹皮の上や枝先で、触角を前へ大きく広げながら歩く姿は、まるで周囲を丁寧に確かめているように見えます。夜の森でも相手を探しやすいのは、この長い触角が働いているからです。
多様な姿


出典:iNaturalist – Excastra albopilosa(jtweed)



上のモフモフのカミキリムシ Excastra albopilosa は2024年にオーストラリア・クイーンズランド州で発見された、フトカミキリ亜科(Lamiinae)に属するカミキリムシ科の新種です!クイーンズランド大学の博士候補生ジェームズ・トゥイード氏が、キャンプ場で偶然見つけた、たった1個体の標本から記載されました。
カミキリムシ科は大所帯で、体の大きさも色彩も実に幅があります。瑠璃色に輝くルリボシカミキリのような美しい種もあれば、シロスジカミキリのように大型で迫力のある種、クワガタムシのような大顎を持つ種などももいます。
花を訪れて花粉や蜜に関わるもの、樹液をなめるもの、ほとんど成虫では餌をとらず繁殖に集中するものなど、暮らし方もさまざまです。


出典:iNaturalist – Pachyta quadrimaculata(gadel)
活動する時間帯も一様ではありません。昼に花の上で目立つ種がいる一方、夕方から夜にかけて動き、灯火に集まる大型種もいます。さらに、色や模様の変化も豊かで、黒地に白い斑点をもつ種、黄色い斑紋が目立つ種、金属光沢をもつ種まで見られます。
森林と人の暮らし
カミキリムシ科には、森林の循環を助ける種がいる一方で、果樹や林業樹木、街路樹に被害を与える種も含まれます。ゴマダラカミキリやシロスジカミキリのように、身近な樹木に関わる種は、自然観察の対象として親しまれる一方、被害の面では注意も必要です。
つまりこの科は、単純に「害虫」と呼んで片づけられるものではなく、森の働きと人の生活のあいだにある、幅広い存在だといえます。また、外来種の問題もこの科では重要です。木材や苗木を介して移動しやすいため、国や地域をまたぐ物流の中では、検疫や持ち込み管理が大切になります。
カミキリムシは鳴く?
あまり知られていませんが、多くのカミキリムシは音を出すことができます。鳴き声は「ギーギー」「キュッキュッ」といった軋(きし)むような音で、手でつかんだときや敵に刺激されたときによく聞かれます。
この音は、人の声のように喉から発しているのではなく、前胸と中胸のつなぎ目にある細かいヤスリ状の構造をこすり合わせる、「摩擦発音」と呼ばれる仕組みによって生み出されます。



楽器のギロを鳴らすときのイメージに近い発音方法です。
種類によって音の大きさや鳴き方には違いがありますが、この能力はカミキリムシ科の多くの仲間に共通して見られる特徴の一つです。
ニセクワガタカミキリ亜科 Parandrinae


出典:iNaturalist – 属 Parandra(mordano)
ニセクワガタカミキリ亜科 Parandrinaeを一目で見分けるいちばんのポイントは、カミキリムシでありながら、まるでクワガタムシのような平たい体と短い触角を持っていることです。一般的なカミキリムシは体長を超えるほど長い触角がトレードマークですが、この亜科は正反対で、多くは頭部と同じくらいの短い触角しか持ちません。
体は光沢のある黒褐色で扁平、前方に張り出す発達した大あごを持ち、脚もがっしりとしています。こうした姿は、樹木の内部という狭く暗い空間で暮らすのに適した体つきと考えられており、長い触角を持たないことも、木の中を掘り進む際に引っかかりを防ぐ合理的な工夫だと考えられています。
分類上は、脚の先端にある「跗節(ふせつ)」と呼ばれる部分の構造がノコギリカミキリ亜科とよく似ており、両者は近縁なグループとされています。このカミキリとしては、とても個性的な見た目が、「ニセクワガタカミキリ」という和名の由来です。



クワガタムシとは触覚の形が違うのですぐに見分けられますね!参考までに、コクワガタの触角と比べてみましょう👇️


出典:iNaturalist – コクワガタ Dorcus rectus(taewoo)
ニセクワガタカミキリ亜科の仲間は、派手な色や長い触角を持たない分、目立たない存在ですが、カミキリムシの中でも原始的な特徴を色濃く残すグループとして、進化の歴史を物語る貴重な存在です。



日本では奄美大島や沖縄など南西諸島のごく限られた地域のみに生息し、国内で知られている種はわずか2種という、たいへん希少な亜科です。
ニセクワガタカミキリ属 Parandra


出典:iNaturalist – 属 Parandra(alonso24)
和名: ニセクワガタカミキリ属
学名: Parandra
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 ニセクワガタカミキリ亜科
分布: 世界の熱帯〜亜熱帯地域(南北アメリカ大陸を中心に、アフリカなどにも分布)
保護状況: 大径木や原生林への依存度が高く、森林伐採による生息環境の縮小が一部地域で懸念される
ニセクワガタカミキリ属 Parandra は、ニセクワガタカミキリ亜科の模式属(タイプ属)※であり、この亜科全体の基準となる、いわば「元祖」の仲間です。細長い姿が多い一般的なカミキリムシとは対照的に、平たく幅広い体、極端に短い触角、そして力強く発達した大あごを持ち、遠目にはクワガタムシと見間違えてしまうほどの姿をしています。



模式属(タイプ属)とは、科などのより上位の分類群の名前を決める基準となる属のことで、その科の学名は模式属の名前をもとにつくられます。 つまり、動物分類学のルール上、上科から亜族までの階級は必ずいずれか一つの属を基準として名付けられ、この基準となる属が「タイプ属」と呼ばれます。
2010年の分類再編でアジア・オセアニア産の種がKomiyandra 属として独立したため、現在のParandra 属は主に南北アメリカ大陸を中心とした系統として位置づけられています。
Komiyandra 属


出典:iNaturalist – 属 Komiyandra(hanyuu)
Komiyandra 属は、以前は広くParandra 属に含められていた種群のうち、東アジア〜東南アジア産のグループを独立させる形で2010年に設立されました。世界では約25種が知られ、そのほとんどがこの属の設立と同時に新たに記載された、比較的新しい研究対象のグループです。
体は小型から中型で、細長く扁平、脚が短く、光沢のある黒っぽい体色をした種が多いのが特徴です。触角はかなり短く、Parandra 属と同じく、クワガタムシを思わせる姿をしています。



日本のニセクワガタカミキリ亜科Parandrinaeとしては、Komiyandra 属の2種(アマミニセクワガタカミキリ、サキシマニセクワガタカミキリ)が知られています。
ノコギリカミキリ亜科 Prioninae


出典:iNaturalist – キンオニノコギリカミキリ Psalidognathus friendii(tukup)
ノコギリカミキリ亜科を見分けるポイントは、名前の由来にもなっている、鋸(のこぎり)の歯のようにギザギザとした触角にあります。とくにオスでは、この鋸歯状の触角が太くゴツゴツと発達し、メスは細くて短めになるという、雌雄の違いがはっきり現れる(性的二型※)のも特徴です。
性的二型🦚
性的二型(せいてきにけい、英語: sexual dimorphism)とは、同じ種類なのにオスとメスの見た目や大きさが大きく異なる現象です。代表的な例として、クジャクやキジのオスは羽が鮮やかで大きく、メスは地味な色をしています。
また、カブトムシではオスにだけ立派な角があり、メスにはありません。この違いは、オスどうしがメスをめぐって競争する「性選択」や、オスやメスがそれぞれ特定の役割に特化することで進化したと考えられています。
オスが派手になると「相手に見つけてもらいやすい」「強さをアピールできる」というメリットがありますが、逆に「捕食者に目立ちやすくなる」などのデメリットもあります。一方で、猛禽類や深海魚などではメスのほうが大きくなる「逆転型」もあり、環境や生存戦略によって多様なパターンが見られます。


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Peacock.displaying.better


出典:WIKIMEDIA COMMONS – FemalePeacock 001
体は黒褐色から黒一色のものが多く、他の亜科に比べて幅広く扁平な、がっしりとした体つきをしています。カミキリムシ科の中でも大型の種を多く含むグループで、国内でも体長が40mmを超える種が珍しくありません。多くのカミキリムシは胸をこすり合わせて音を出しますが、この亜科にはその器官がなく、代わりに後脚を腹部にこすりつけて音を立てる、独自の発音方法を持っています。
成虫は夜行性のものが多く、昼間は樹皮の隙間や倒木の陰にひそみ、夜になると灯火へ飛来するなど活発に動き回ります。
トゲバカミキリ属 Dorysthenes


出典:iNaturalist – Dorysthenes granulosus(dolphin07)
和名: トゲバカミキリ属(代表種:トゲバカミキリ)
学名: Dorysthenes
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 ノコギリカミキリ亜科
分布: 東アジアから東南アジア、南アジアに広く分布(日本では南西諸島に分布)
保護状況: 多くは未評価だが、森林伐採や開発による生息環境の減少が懸念される地域もある
トゲバカミキリ属 Dorysthenes は、ノコギリカミキリ亜科の中でも特にオスの大あごが牙のように大きく発達するグループで、その姿はクワガタムシを思わせるほど迫力があります。
体は黒褐色から赤褐色で、前胸の側縁には鋭い棘状の突起が並び、名前の由来にもなっています。幼虫の生態はまだ十分にわかっておらず、地中や朽ち木の根元に潜り込み、硬い木質部を食べながら数年をかけて育つと考えられています。成虫は夜行性で灯火に飛来する種も知られていますが、生態面については分布域ごとに研究段階の情報も多く残っています。



ニセクワガタカミキリ属 Parandra に特徴が似ていますね。



トゲバカミキリ属 Dorysthenes は、従来ノコギリカミキリ亜科 Prioninae に分類される属であり、ニセクワガタカミキリ亜科 Parandrinae のニセクワガタカミキリ属 Parandraとは、同じカミキリムシ科の中で別の亜科に属する近縁グループという関係にありました。しかし、近年の分子系統解析では、ニセクワガタカミキリ亜科をノコギリカミキリ亜科に含める見解も提案されています。
ウスバカミキリ属 Titanus


出典:iNaturalist – タイタンオオウスバカミキリ Titanus giganteus(frank-deschandol)
和名: ウスバカミキリ属(代表種:タイタンオオウスバカミキリ)
学名: Titanus
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 ノコギリカミキリ亜科
分布: 南アメリカ北部(アマゾン熱帯雨林を中心に分布)
保護状況: 未評価(IUCN未掲載)。森林伐採による生息環境への影響が懸念される。
ウスバカミキリ属 Titanus は、ノコギリカミキリ亜科の中でも世界最大級のカミキリムシを含む、きわめて有名な属です。現在知られている現生種はタイタンオオウスバカミキリ Titanus giganteus 1種のみで、単型属として扱われています。
体は細長く扁平で、黒褐色の硬い外骨格と非常に長い触角、強い大あごを備え、熱帯雨林の大径木や朽ち木に関わる生活に適した姿をしています。幼虫は野外でまだ十分に確認されておらず、生態には謎が多い一方、成虫は夜行性で灯火に飛来することが知られています。
- タイタンオオウスバカミキリ Titanus giganteus


※筆者撮影
タイタンオオウスバカミキリ Titanus giganteusは、南米のアマゾン流域に分布する世界最大級のカミキリムシです。最大で体長約17cmに達し、触角まで含めると20cmを超えることもあります。成虫は夜に活動し、光に引き寄せられて飛来しますが、寿命は短く、ほとんど餌をとらないと考えられています。
幼虫の生活史は今も大きな謎に包まれており、巨大な体と未解明の生態が、多くの人を惹きつける理由になっています。



上の写真、僕が採ったタイタンですね。たまたま南米で僕に向かって飛んできました!



さすが、持ってますね〜!標本にできて私も嬉しかったです!



タヌ山先生はときどき大きな奇跡を起こしますよね。



研究者にとっては、まさに「実力のうち」ですよ。フィールドに立ち続けているからこそ、得られた幸運ですね。
オオキバウスバカミキリ属 Macrodontia


出典:iNaturalist – Macrodontia batesi(laurent_h)
オオキバウスバカミキリ属 Macrodontia は、ノコギリカミキリ亜科の中でも特に巨大な種を含む、中南米産の大型カミキリムシのグループです。学名は「大きな歯」を意味し、その名のとおり、雄では鹿の角を思わせる長く発達した大あごが目立ちます。
体は細長く扁平で、長い触角と力強い脚を備え、熱帯林の大径木や朽ち木に関わる暮らしに適しています。幼虫は木質部の内部で長い時間をかけて育ち、森の中で木をゆっくり分解する役割を担っています。
巨大さと美しい造形の両方をあわせ持つ、まさにタイタンオオウスバカミキリと並んで“南米の巨人”と呼びたくなる属です。
- オオキバウスバカミキリ Macrodontia cervicornis


出典:iNaturalist – オオキバウスバカミキリ Macrodontia cervicornis(leandroramosduarte)
和名: オオキバウスバカミキリ属(代表種:オオキバウスバカミキリ)
学名: Macrodontia
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 ノコギリカミキリ亜科
分布: 中央アメリカから南アメリカの熱帯地域
保護状況: 未評価(IUCN未掲載)。熱帯雨林の伐採に伴う生息環境の減少が懸念される地域もある。
オオキバウスバカミキリMacrodontia cervicornis は、ブラジルやペルー、コロンビアなど南米の熱帯雨林にすむ世界最大級のカミキリムシです。雄の大あごは特に長く、全長は17cm前後に達することもあります。
学名の cervicornis は「鹿の角のような」という意味で、その大あごの形をよく表しています。夜行性で灯火に飛来することもあり、巨大さと独特の姿から、タイタンオオウスバカミキリと並んでよく知られる存在です。



大顎が長いので、全長はタイタンオオウスバカミキリにせまる大きさになります。標本で同じくらいの体長の個体を比べると、タイタンオオウスバカミキリの方が体重が重いと感じます。
ノコギリカミキリ属 Prionus


出典:iNaturalist – カリフォルニアノコギリカミキリ Prionus californicus(diego_h)
和名: ノコギリカミキリ属(代表種:ノコギリカミキリ)
学名: Prionus
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 ノコギリカミキリ亜科
分布: ヨーロッパ、アジア、北アフリカ、北アメリカなど北半球に広く分布(日本では本州・四国・九州・対馬など)
保護状況: 多くの種は未評価。一部地域では森林環境の変化により減少が懸念される
ノコギリカミキリ属 Prionus は、ノコギリカミキリ亜科の模式属で、この亜科の名づけの基準にもなっている代表的なグループです。太く頑丈な体と、ノコギリの歯のように鋭く並ぶ鋸歯状の触角が大きな特徴で、とくに雄ではその発達が目立ちます。
分布は北半球の温帯域を中心に広く、成虫は夜に活動して灯火に飛来することもあります。また一方で、地域によっては果樹や林木の根を加害する種も知られています。
- ノコギリカミキリ Prionus insularis insularis


出典:iNaturalist – ノコギリカミキリ 基亜種 Prionus insularis ssp. insularis(wongun)
ノコギリカミキリ Prionus insularis insularis は、日本を代表する大型のカミキリムシの一つで、本州から九州、対馬などに分布します。黒褐色の重厚な体に、鋸の歯のような触角を備え、夏の夜に灯火へ飛来する姿がよく知られています。
幼虫は広葉樹の切り株や根の中で数年をかけて成長し、朽木の分解に貢献します。派手さはなくても、堂々とした姿でノコギリカミキリ亜科らしさをよく示す種です。
ハナカミキリ亜科 Lepturinae


出典:iNaturalist – アイヌホソコバネカミキリ Necydalis major(agabus1)
ハナカミキリ亜科 Lepturinae は、カミキリムシ科の中でも花をよく訪れる仲間として親しまれています。細長くすっきりした体つきで、昼間に活動する種が多いのも特徴です。
成虫はノリウツギやシシウドなどの花に集まり、蜜や花粉を口にしながら暮らします。なかにはハチに姿を似せた種類もいて、見た目の美しさと生き残りの工夫の両方を楽しめるグループです。
トホシハナカミキリ属 Brachyta


出典:iNaturalist – Brachyta interrogationis(merlu)
トホシハナカミキリ属 Brachyta は、ハナカミキリ亜科の中でも冷涼な地域や高山環境に適応したグループです。体は比較的がっしりしており、黒地に黄色や橙色の斑紋をもつ種が多く、花の上でもよく目立ちます。
成虫は春から初夏にかけて花を訪れ、蜜や花粉を食べながら活動します。幼虫は草本の根や茎、あるいは朽木の内部でゆっくり育ち、短い高山の季節のあいだに命をつないでいます。
- トホシハナカミキリ Brachyta danilevskyi


出典:iNaturalist – トホシハナカミキリ Brachyta danilevskyii(kats228)
トホシハナカミキリ Brachyta danilevskyi は、黒い上翅に10個前後の黄色い斑紋が並ぶ、美しい高山性のハナカミキリです。日本では本州中部以北の高山帯を中心に見られ、短い夏のあいだに高山植物の花を訪れます。
花粉や蜜を食べながら活動する姿は、まさに山の花畑を彩る小さな訪問者です。限られた環境にすむため、気候の変化には注意が必要な種でもあります。
ヒメハナカミキリ属 Pidonia


出典:iNaturalist – フタオビチビハナカミキリ Pidonia puziloi(tofuinsect)


出典:岐阜聖徳学園大学教育学部川上研究室 ‐ カグヤヒメハナカミキリ


出典:iNaturalist – ナガバヒメハナカミキリ Pidonia signifera(dave1186)
ヒメハナカミキリ属 Pidonia は、東アジアを代表するハナカミキリの仲間で、日本でも多くの種が知られる多様なグループです。体は小型で細長く、黄褐色や赤褐色、黒色を組み合わせた斑紋をもつ種が多く見られます。
よく似た種が多いため、分類の面白さも感じやすい属です。ヒメハナカミキリ属の魅力は、地域ごとの多様性にあります。



日本列島では山地や島ごとに異なる種が分かれており、同じ属のなかに多くの“近いけれど少し違う”仲間が並んでいます。



日本では愛好家の関心が高い属です。ヒメハナカミキリの多くは身近なカミキリですが、多様性が豊かで奥が深いので、「やりこみ要素」が高いと言えますね!
以下のサイトで丁寧で美しい標本が見えます👇️
これは、山や谷で集団が分かれやすい日本の地形と、長い時間をかけた進化が重なって生まれたものです。見た目の似た小さな虫たちを丁寧に見分けていくと、足元の森に思った以上の奥行きがあることに気づかされます。



以前受け入れた寄贈標本のコレクションには、大量のヒメハナカミキリが含まれていましたね。私がヒメハナカミキリだけを抜き出して、あとはメンフクロウさんにお願いしました。



私は専門家でないのでヒメハナカミキリの整理は大変でした…。産地や見た目が似たものは近くに寄せていますが、完璧に分けるのは研究されている方がいらっしゃったときにお願いします。
ブチヒゲハナカミキリ属 Stictoleptura


出典:iNaturalist – アカハナカミキリ Stictoleptura dichroa (vvolkotrub)


出典:iNaturalist – ブチヒゲハナカミキリ Stictoleptura variicornis(mihailivanov)
和名:ブチヒゲハナカミキリ属
学名:Stictoleptura
分類:コウチュウ目 カミキリムシ科 ハナカミキリ族
分布:ヨーロッパからシベリア、中国、朝鮮半島、日本まで、ユーラシア北部を中心に分布
保護状況:森林環境に結びつく種が多く、古い立ち枯れ木や朽木の減少の影響を受けやすい種もある
ブチヒゲハナカミキリ属 Stictoleptura は、細長い体と長い触角をもつハナカミキリの仲間です。黒色や赤褐色、黄褐色を組み合わせた体色をもち、触角に明るい斑が入る種もあるため、見た目の印象がとてもはっきりしています。
成虫は初夏から夏にかけて花を訪れ、ノリウツギやシシウドなどで見られることがあります。花の蜜や花粉に集まることで、植物の受粉にも関わっています。
この属の魅力は、ユーラシアの広い範囲で地域ごとの種分化が進んでいることにあります。日本でも山地性の種が知られ、同じ仲間に見えても体色や斑紋、触角の色の入り方に違いが見られます。
この属も近縁種どうしはよく似ているため、見分けには少しコツがいりますが、その難しさこそが面白さでもあります。
Judolia 属


出典:iNaturalist – シララカハナカミキリ Judolia sexmaculata(harrinygren)


出典:iNarturalist – Judolia instabilis(mkdwoodruff)
和名:ヨツスジハナカミキリ属、またはキモンハナカミキリ属として扱われることがある
学名:Judolia
分類:コウチュウ目 カミキリムシ科 ハナカミキリ族
分布:ヨーロッパからシベリア、中国、朝鮮半島、日本、さらに北アメリカ北部にかけて分布する、北半球の冷温帯〜亜寒帯のグループです。
保護状況:多くの種は未評価。一部の高山性・寒冷地性種では森林環境の変化や気候変動の影響が懸念される
ヨツスジハナカミキリ属 Judolia は、寒冷地や山地の森林に適応したハナカミキリ亜科の代表的な属で、世界に約10種が知られています。細長く引き締まった体形と、黒色の上翅に黄色や黄褐色の縦帯・斑紋を持つ種類が多く、和名の由来となった「四筋」の模様を持つ種も含まれます。
成虫は初夏から夏にかけてセリ科やバラ科、キク科などの花を訪れ、花粉や蜜を食べながら活動します。冷涼な森林や高山帯を代表するハナカミキリとして、多くの昆虫愛好家に親しまれています。
- 氷河時代を生き抜いた北方系のハナカミキリ


出典:iNaturalist – Judolia cerambyciformis(ramune_vakare)
Judolia 属は、北半球の冷温帯から亜寒帯に広く分布する「北方系」のグループです。現在も北海道や本州の高山帯に生息する種類は、氷河時代に南下した祖先が寒冷な環境へ取り残され、そのまま生き残った遺存的な系統と考えられています。
そのため、日本では高山や北海道に局地的に分布する種が多く、昆虫の分布や気候変動の歴史を知る手がかりとなる、学術的にも興味深い属として知られています。
カミキリ亜科 Cerambycinae


出典:iNaturalist – Aglaoschema ventrale(gussoni)


出典:iNaturalist – Enchoptera nigricornis(coddiwompler)


出典:iNaturalist – タケトラカミキリ Chlorophorus annularis(gthreebao)
カミキリ亜科 Cerambycinae は、カミキリムシ科の中でもとくに種数が多く、細長い体と長い触角をもつ「カミキリらしさ」の強い仲間が集まるグループです。成虫は花を訪れるもの、樹皮の上で活動するもの、夜に灯火へ集まるものなどさまざまで、見つけ方にも幅があります。
幼虫は多くが枯れ木や衰弱した木の内部で育ち、木材を分解して森の循環を支えます。なかにはハチやアリに似た姿をもつ種もいて、見た目の多様さもこの亜科の大きな魅力です。
ルリボシカミキリ属 Rosalia


出典:iNaturalist – Rosalia alpina(antonio_goncalves)


出典:iNaturalist – ベニボシカミキリ Rosalia lesnei(streamyu)
和名: ルリボシカミキリ属
学名: Rosalia
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 カミキリ亜科
分布: ヨーロッパから東アジアまでのユーラシア温帯域(日本、中国、朝鮮半島、ロシア、ヨーロッパなど)
保護状況: 一部の種は森林伐採や老齢広葉樹林の減少により個体数が減少しており、ヨーロッパでは保護対象となる種も知られる
ルリボシカミキリ属 Rosalia は、青みを帯びた体色に黒い斑紋をもつ、美しいカミキリムシの仲間です。成虫は夏に見られ、立ち枯れ木や倒木のまわりで活動します。幼虫は広葉樹の朽木の中で数年をかけて育ち、木材を分解して森の循環に関わります。見た目の華やかさだけでなく、古い森があってこそ成り立つ暮らしをもつことが、この属の大きな特徴です。ルリボシカミキリ属は、自然林の豊かさを感じさせてくれる存在でもあります。
- ルリボシカミキリ Rosalia batesi


出典:iNaturalist – ルリボシカミキリ Rosalia batesi(tosakah)
ルリボシカミキリ Rosalia batesi は、日本を代表する美しいカミキリムシで、本州・四国・九州に分布します。青灰色の体に丸い黒斑が並び、青く長い触角との組み合わせは日本産昆虫の中でもひときわ印象的です。
夏になるとブナやケヤキなどの伐採木や立ち枯れ木で見られることが多く、昆虫写真家や採集家から高い人気を集めています。なお、ヨーロッパに分布する近縁種 Rosalia alpina は生息地の減少により保護対象となっており、本属は森林生態系の健全さを示す指標昆虫としても注目されています。
オオアオカミキリ属 Chloridolum


出典:iNaturalist – アカアシオオアオカミキリ Chloridolum japonicum(banananamekuji)


出典:iNaturalist – Chloridolum sieversi(kmt22)
和名: オオアオカミキリ属
学名: Chloridolum
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 カミキリ亜科
分布: 日本、中国、台湾、朝鮮半島、東南アジアなど東アジアから東南アジアに広く分布
保護状況: 多くの種は未評価。一部の島嶼性・局地性種では森林環境の変化による影響が懸念される
オオアオカミキリ属 Chloridolum は、金属光沢を帯びた緑色や青緑色の体が美しいカミキリムシの仲間です。細長い体と長い触角をもち、初夏から夏にかけて広葉樹の花や樹液、伐採木のまわりで見られます。
- ミドリカミキリ Chloridolum viride


出典:iNaturalist – ミドリカミキリ Chloridolum viride(rockfish17)
ミドリカミキリ Chloridolum viride は、日本を代表する美麗種の一つです。鮮やかな緑から青緑の輝きをもち、黒い触角との対比が印象的です。広葉樹林で見られ、樹液や花に集まる姿がよく知られています。
ベニカミキリ属 Purpuricenus


出典:iNaturalist – モンクロベニカミキリ Purpuricenus lituratus(haocong_cat)


出典:iNaturalist – ヘリグロベニカミキリ Purpuricenus spectabilis(keitawatanabe)
和名: ベニカミキリ属
学名: Purpuricenus
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 カミキリ亜科
分布: ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアから東アジアまで広く分布(日本、中国、朝鮮半島を含む)
保護状況: 多くの種は未評価。一部の森林性・局地性種では生息環境の変化による影響が懸念される
ベニカミキリ属 Purpuricenus は、赤や赤橙色の上翅に黒い模様が入る、美しいカミキリムシの仲間です。成虫は初夏から夏にかけて広葉樹林で活動し、花や樹液、伐採木のまわりで見られます。
赤と黒の配色は、天敵に警戒されやすい色づかいとしても働いていると考えられます。
- ベニカミキリ Purpuricenus temminckii


出典:iNaturalist – ベニカミキリ Purpuricenus temminckii(tardiswho)
ベニカミキリ Purpuricenus temminckii は、日本にも生息するこの属の代表的な美麗種です。鮮やかな紅色の上翅に大きな黒紋をもち、見ればすぐ印象に残る姿をしています。日本では本州・四国・九州に分布し、初夏の里山や雑木林で見られます。枯れ枝や伐採木に関わる暮らしをもち、里山の自然の豊かさを感じさせてくれる種です。



ベニカミキリについては、以下の記事でも紹介しています!そっくりな他人(近縁というわけでない昆虫)がいっぱい…その理由は…?👇️


トラカミキリ属 Xylotrechus


出典:iNaturalist – ヤノトラカミキリ Xylotrechus yanoi(fuyou06)


出典:iNaturalist – クビアカトラカミキリ Xylotrechus rufilius(emura_atka)


出典:iNaturalist – ムネマダラトラカミキリ Xylotrechus grayii(arbarokampo)
和名: トラカミキリ属
学名: Xylotrechus
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 カミキリ亜科
分布: ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北アメリカなど世界各地(日本にも約30種が分布)
保護状況: 多くの種は未評価。一方で、一部の種は林業害虫や外来害虫としても知られる
トラカミキリ属 Xylotrechus は、世界に200種以上が知られるカミキリ亜科でも特に多様性の高い属です。黒色の体に黄色や橙黄色の帯模様を持つ種類が多く、その姿はアシナガバチやスズメバチによく似ています。
これは天敵を欺く「ベイツ型擬態」の代表例とされ、昼間に樹幹や花の上をすばやく歩き回る姿は、一見するとハチそのものです。幼虫は広葉樹や針葉樹の枯れ木や衰弱木の内部で成長し、森林の分解者として重要な役割を担います。
一方で、種によっては建築材や果樹、林木を加害するものもあり、森林昆虫としてだけでなく林業や木材管理の分野でもよく知られたグループです。



ベイツ型擬態については、以下の記事で解説しています👇️


- トラフカミキリ Xylotrechus chinensis


出典:iNaturalist – トラフカミキリ Xylotrechus chinensis(fboetzl)
トラフカミキリ Xylotrechus chinensis は、黄色い帯模様が虎の縞を思わせることから名付けられた、日本でもよく知られる代表種です。クワやニセアカシアなどの樹木を利用し、成虫は初夏から夏にかけて活動します。
近縁種には街路樹や果樹を加害する重要害虫も含まれ、とくに海外では外来種として問題となるものも知られています。その一方で、鮮やかな警戒色とハチそっくりの行動は擬態の教材としても有名で、昆虫の進化を学ぶ上で欠かせない存在となっています。
ジャコウカミキリ属 Aromia


出典:iNaturalist – ジャコウカミキリ Aromia moschata ssp. orientalis(nordlich0328)


出典:iNaturalist – Aromia moschata(kaschum1)
和名: ジャコウカミキリ属
学名: Aromia
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 カミキリ亜科
分布: ヨーロッパから東アジアまでのユーラシア温帯域(日本、中国、朝鮮半島、ロシア、ヨーロッパなど)
保護状況: 多くの種は未評価。日本では普通種だが、老齢樹木の減少が局所的な個体数に影響する可能性があり
ジャコウカミキリ属 Aromia は、世界に10種前後が知られる比較的小さな属で、金属光沢を帯びた美しい体色と、成虫が甘く麝香(じゃこう)のような香りを放つことで有名です。属名 Aromia も「芳香」を意味するギリシャ語に由来しています。細長い体と長い触角を持ち、成虫は夏にヤナギ類やポプラ類などの樹木を活発に飛び回ります。
- クビアカツヤカミキリ Aromia bungii


出典:iNaturalist – クビアカツヤカミキリ Aromia bungii(threegee)
クビアカツヤカミキリ Aromia bungii は、日本・中国・朝鮮半島などに分布する本属の代表種です。黒っぽい体に赤い前胸部が目立ち、近づくと甘い麝香(ジャコウ、ムスク)※のような香りを感じることがあります。この香りが和名の由来にもなっています。
一方で、幼虫はサクラやモモ、ウメなどバラ科樹木の材を食害するため、果樹や街路樹の重要害虫としても知られています。
※麝香(じゃこう、ムスク)
ジャコウジカの雄がもつ香嚢から得られる、甘く粉っぽい強い香りの香料。古くから香水や伝統薬に使われてきたが、現在は保護や規制のため、合成ムスクが主流。
フトカミキリ亜科 Lamiinae


出典:iNaturalist – Hypsideroides junodi(wynand_uys)


出典:iNaturalist – ラミーカミキリ Paraglenea fortunei(tosakah)
フトカミキリ亜科(Lamiinae)は、カミキリムシ科の中でもとくに種類が多く、世界中に広く分布する大きなグループです。体はがっしりした円筒形で、灰色や褐色、黒色など、樹皮に溶け込みやすい地味な色合いの種が多く見られます。


出典:iNaturalist – Sternotomis bohemani ssp. bohemani(arachon)
頭部がやや下向きに見える独特の形も、この亜科らしさの一つです。
幼虫は枯れ木や衰弱木、生木、竹、つる植物など、さまざまな植物の中で育ちます。森林の分解に深く関わる一方、この亜科の仲間も種によっては果樹や林木に影響することもあり、自然の循環と人の暮らしの両方に関係する亜科です。
テナガカミキリ属 Acrocinus


出典:iNaturalist – テナガカミキリ Acrocinus longimanus(marcoscampis)
和名: テナガカミキリ属
学名: Acrocinus
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 フトカミキリ亜科
分布: メキシコ南部から中央アメリカ、南アメリカ北部〜アマゾン流域
保護状況: 世界的な評価は十分ではないが、熱帯雨林の伐採による生息環境の減少が懸念される
テナガカミキリ属 Acrocinus は、熱帯林を代表する非常に個性的なカミキリムシの仲間です。属全体で1種のみが知られる単型属で、成虫は樹皮に溶け込む迷彩模様と、雄でとくに目立つ長い前脚が大きな特徴です。
夜に活動することが多く、昼間は樹幹の上でじっとしている姿も見られます。また、小さなダニを体に乗せて運ぶ便乗共生でも知られ、昆虫の形や暮らしの不思議を感じさせてくれる属です。
- テナガカミキリ Acrocinus longimanus


出典:iNaturalist – テナガカミキリ Acrocinus longimanus(josecueva)
テナガカミキリ Acrocinus longimanusは、この属を代表する有名種です。長い前脚と樹皮に似た模様が印象的で、熱帯林の樹幹上ではひときわ存在感があります。学名の longimanus は「長い手」を意味し、その名のとおりの姿が見どころです。



英名はHarlequin beetle(ハーレクインビートル)です。Harlequin は、もともと道化師・おどけ者を意味する言葉です。そこから転じて、菱形やまだら模様の派手な色柄、あるいはそのような模様をもつものを指すこともあります。
ゴマダラカミキリ属 Anoplophora


出典:iNaturalist – ハデオオシラホシカミキリ Anoplophora albopicta(galanhsnu)


出典:iNaturalist – オオシマゴマダラカミキリ Anoplophora oshimana(wachinakatada)


出典:iNaturalist – Anoplophora sollii(sarojruchisansakun)
和名: ゴマダラカミキリ属
学名: Anoplophora
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 フトカミキリ亜科
分布: 東アジアを中心に分布(日本、中国、朝鮮半島、台湾、ベトナムなど)
保護状況: 多くの種は未評価。一方で、一部の種は世界各地へ侵入した外来種として森林・街路樹への被害が問題となっている
ゴマダラカミキリ属 Anoplophora は、その多くが黒い体に白い斑点が目立つ、大型で存在感のあるカミキリムシの仲間です。長い触角にも白黒の帯が入り、見た目の印象がとてもはっきりしています。
森林の中では木の更新に関わる一方で、人の暮らしの近くでは果樹や街路樹の害虫として注意されることがあります。
- ゴマダラカミキリAnoplophora chinensis


出典:iNaturalist – ゴマダラカミキリ Anoplophora chinensis(orthoptera-jp)
ゴマダラカミキリ Anoplophora malasiaca は、日本で最もよく知られるこの属の代表種です。黒地に白い斑点が並ぶ姿と、長い触角が印象的で、昆虫図鑑でもおなじみの存在です。
幼虫はカンキツ類やクワなどの生木に入って育ち、果樹園では注意が必要な存在という一面もあります。
シロスジカミキリ属 Batocera


出典:iNaturalist – Batocera rufomaculata(gauvain_saucy)


出典:iNaturalist – Batocera boisduvalii(toddburrows)
和名: シロスジカミキリ属
学名: Batocera
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 フトカミキリ亜科
分布: アフリカ、アジア、オーストラリア、太平洋諸島の熱帯・亜熱帯地域(日本では南西諸島まで分布)
保護状況: 多くの種は未評価。一部の種は果樹や街路樹を加害する重要害虫として知られ、地域によっては防除対象となっている
シロスジカミキリ属 Batocera は、がっしりした大きな体に、白い帯や斑紋をもつ種類が多い、存在感の強いカミキリムシの仲間です。触角はとても長く、前胸の側にはとげのような突起があります。
熱帯林を代表する大型昆虫として親しまれる一方、樹木を弱らせることもあるため、自然観察と樹木管理の両面で注目される属です。
シロスジカミキリ Batocera lineolata


出典:iNaturalist – シロスジカミキリ Batocera lineolata()
シロスジカミキリ Batocera lineolata は、日本でよく知られる代表種です。黒っぽい体に白い筋模様が入り、長い触角と大きな体がとても印象的です。
南西諸島を中心に見られ、夜には樹液や灯火に集まることがあります。
ヒゲナガカミキリ属 Monochamus


出典:iNaturalist – マツノマダラカミキリ Monochamus alternatus(oak123)
和名: ヒゲナガカミキリ属(代表種:マツノマダラカミキリ)
学名: Monochamus
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 フトカミキリ亜科
分布: ヨーロッパ、アジア、北アメリカを中心とする北半球の温帯〜亜寒帯(日本全国にも複数種が分布)
保護状況: 多くの種は未評価。一方で、マツ材線虫病を媒介する種が含まれるため、世界的に森林害虫として重要視されている
ヒゲナガカミキリ属 Monochamus は、長い触角がよく目立つ、森林性の大型カミキリムシの仲間です。成虫は初夏から夏にかけて活動し、樹皮や伐採木、樹木のまわりで見られます。
幼虫は主にマツやモミ、トウヒなどの針葉樹の枯れ木や衰弱木で育ち、木質部を食べながら成長します。森林の分解に関わる一方で、マツノザイセンチュウを運ぶ種もいるため、自然観察だけでなく森林管理の場面でもよく知られた属です。
- ヒゲナガカミキリ Monochamus alternatus


出典:iNaturalist – ヒゲナガカミキリ Monochamus grandis()
ヒゲナガカミキリ Monochamus alternatus は、日本で最もよく知られる代表種です。褐色のまだら模様と、オスのとても長い触角が特徴で、松林で見かけることがあります。この種の幼虫はマツ材の中で育ち、マツノザイセンチュウを運ぶことでマツ材線虫病の広がりに関わります。
森林保全や林業の分野でとくに重要なカミキリムシです。
キボシカミキリ属 Psacothea


出典:iNaturalist – キボシカミキリ Psacothea hilaris(r88621108)
和名: キボシカミキリ属
学名: Psacothea
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科 フトカミキリ亜科
分布: 東アジアを中心に分布(日本、中国、台湾、朝鮮半島、ベトナムなど)
保護状況: 多くの種は未評価。一部の種はクワなどを加害する林業・養蚕害虫として知られる
キボシカミキリ属 Psacothea は、黒い体に黄色や黄白色の斑点が並ぶ、よく目立つカミキリムシの仲間です。成虫は春から夏に活動し、クワやイチジクなどの葉や若枝に見られます。
かつて養蚕が盛んだった時代にはクワの害虫として知られましたが、今では公園や河川敷など身近な場所でも観察できる、昆虫観察の入門種としても親しまれています。斑点模様の美しさと、樹木に寄り添う暮らしの両方が印象に残る属です。



キボシカミキリ属は世界的に見てもごく少数の種しかいない属です。しかし、キボシカミキリは地理的変異が大きく、日本産だけでも複数の亜種に分けられています。



亜種(あしゅ)は、同じ種の中で、地域ごとの違いがある集団を指す分類です。見た目や大きさ、色などに差があっても、基本的には同じ種として扱われ、交配も可能です。



つまり、亜種は「見た目や分布が違うだけの、同じ種の中のバリエーション」であり、種のような明確な生殖の壁はありません。
- キボシカミキリ Psacothea hilaris


出典:iNaturalist – キボシカミキリ 基亜種 Psacothea hilaris ssp. hilaris(galois)
キボシカミキリ Psacothea hilaris は、この属を代表する種です。黒地に黄色い斑点が散る姿がとても目立ち、長い触角も印象的です。幼虫はクワやイチジクの幹で育ち、成虫は葉や樹皮を利用します。日本の夏に身近な大型カミキリムシとして、子どもから大人まで覚えやすい存在です。


ゾウムシ上科 Curculionoidea


出典:iNaturalist – アリモドキゾウムシ Cylas formicarius(melvynyeo)
ゾウムシ上科(Curculionoidea)は、頭部の先が象の鼻のように長く伸びた独特の姿で知られ、地球上でもとくに種類の多い甲虫のグループです。植物の芽や幹、果実、種子、根など、あらゆる部位と深く結びついた暮らしをしており、知れば知るほど奥行きが感じられる存在です。



私も個人的にかなり関心の高い甲虫群です。ゾウムシ上科に共通する主な特徴と生態をまとめると、次のようになります。
象の鼻のような「吻」は穴あけ工具


出典:iNaturalist – アルファルファタコゾウムシ Hypera postica(michaelvoeltz)
頭部の一部が細長く伸びた「吻」の先には、小さな大顎があります。この吻を使って、種子や果実、茎などに穴を開け、そこへ卵を産み付けます。ふ化した幼虫は植物の内部で守られながら育つため、外敵から身を隠しやすいのが利点です。吻の長さや太さは種によって異なり、利用する植物の部位に合わせて多様に進化してきました。
植物とともに広がった、驚くほどの多様性


出典:iNaturalist – 属 Peribleptus(squiresk)


出典:iNaturalist – Eubulus triangularis(lolavioleta)


出典:iNaturalist – Euscelus dominicanus(maribela)
ゾウムシ上科は、世界で6万種以上が知られる、非常に大きなグループです。葉や木材、種子、キノコを利用する種など、暮らし方は実にさまざまです。植物の進化と歩みを合わせながら多様化してきたと考えられ、生態系のいたるところにその姿を見つけることができます。
幼虫は植物の内部で静かに育つ


出典:iNaturalist – Lixus musculus(tkoffel)
幼虫の多くは足が退化したイモムシ型で、木の内部や種子、根の中で育ちます。枯れ木を食べる種は、固い木質を分解しやすい状態に変え、森の土づくりを陰から支えています。
さらに、ヤシ類の幹で育つ大型の幼虫は、東南アジアやアフリカ、南米などの地域で、カミキリムシやハチの幼虫と並ぶ栄養豊富な食材として古くから利用されてきました。とくにヤシオオオサゾウムシ属 Rhynchophorus の幼虫は「サゴワーム」として知られ、高タンパク・高脂質な伝統的な恵みとして親しまれています。


出典:iNaturalist – ヤシオオオサゾウムシ Rhynchophorus ferrugineus(rongrong_a)
木の内部という人には消化しにくい資源を、幼虫が栄養に変えてくれる姿は、森の恵みを分けてもらう人と自然の結びつきを感じさせてくれます。
コラム:日本のゾウムシ研究を築いた森本桂先生
日本のゾウムシ研究といえば、九州大学名誉教授の森本桂先生の名がまず挙がります。生涯にわたり日本や東アジア産のゾウムシ類を研究し、数多くの新種を記載しながら分類の基礎を整えてこられました。その論文や検索表は、今も国内外の研究者に活用されており、日本がゾウムシ研究の分野で高く評価される背景を支えています。



森本先生が複数の言語を自在に操り、ストイックに研究へ向き合う姿勢には憧れたものです。



「ゾウムシ全体を一人で整理するのは無理」と言われていた広大なゾウムシの世界に、基礎を築いた偉大な先生です。
このように、ゾウムシ上科はあまりにも大きく多様な集団のため、ここからは科ごとに分けて解説を進めていきます。科ごとの違いを知ることで、「みんな同じゾウムシ」に見えていた仲間たちが、少しずつ個性豊かに見えてくるはずです。
ヒゲナガゾウムシ科 Anthribidae


出典:iNaturalist – Mecotropis unoi(chiawentsai)
和名:ヒゲナガゾウムシ科(代表種:クロオビヒゲナガゾウムシ、エゴヒゲナガゾウムシ)
学名:Anthribidae
分類:コウチュウ目 ゾウムシ上科 ヒゲナガゾウムシ科
分布:世界の熱帯・亜熱帯を中心に広く分布し、日本にも100種以上が生息
保護状況:科全体としては広く定着しているが、原生林や大径木に依存する種は森林伐採による生息地の減少が懸念される
ヒゲナガゾウムシ科(Anthribidae)は、ゾウムシ上科の中でも比較的古い系統に位置づけられる、世界に約4,000種が知られる大きなグループです。一般的なゾウムシ科の仲間は頭部から長い管状の口吻(こうふん)を伸ばしますが、ヒゲナガゾウムシ科の仲間は、その口吻が幅広く短めであることが大きな見分けのポイントとなります。
その代わりに目を引くのが、名前の由来にもなった長い触角です。とくに雄では、体長を超えるほど長く伸びる種もあり、その優美な姿には思わず見入ってしまいます。
体色は褐色や灰色のまだら模様をした種が多く、樹皮に止まると見分けがつかなくなるほど、周囲へ巧みに溶け込みます。
また、食性の幅広さも、この科ならではの魅力です。植物の葉や果実を食べる種のほか、枯れ木に生える菌類(キノコの仲間)を主食とする種、さらには小さな昆虫を捕食する種まで含まれています。とりわけ菌類を利用する種の多さは、植物を主に食べるゾウムシ科の仲間とは一線を画す特徴であり、朽木を分解して土へと還す森の循環を、静かに支える存在だと言えるでしょう。
エゴヒゲナガゾウムシ Exechesops leucopis


エゴヒゲナガゾウムシ Exechesops leucopis (別名ウシヅラヒゲナガゾウムシ)は、体長約5mmでエゴノキの実を利用する昆虫です。オスは顔の左右に眼が突き出た独特の顔つきをしており、実の上でオス同士が顔を突き合わせて縄張りを競う姿が観察されます。
メスが種子に産卵し、孵化した幼虫は種子内部を食べて成長、そのまま越冬します。幼虫は釣り餌「ちしゃの虫」としても古くから利用されてきました。
キノコヒゲナガゾウムシ Euparius oculatus


出典:iNaturalist – キノコヒゲナガゾウムシ Euparius oculatus(rosefan2)
キノコヒゲナガゾウムシ Euparius oculatus は、体長5.5〜9.5mmほどのヒゲナガゾウムシ科を代表する種です。日本各地の平地から低山地に分布し、枯れ木に生えるサルノコシカケなどの多孔菌類(キノコの仲間)を、成虫も幼虫も揃って食べて育ちます。
体表には灰黄色の毛が密生する個体と、黒色の個体があり、同じ種とは思えないほど印象が変わるのも魅力の一つです。この模様が樹皮やキノコの表面にうまく同化することで、鳥などの天敵から身を隠す役割も果たしています。
オトシブミ科 Attelabidae


出典:iNaturalist – キリンクビナガオトシブミ Trachelophorus giraffa(erlandreflingnielsen)
和名:オトシブミ科(代表種:オトシブミ、エゴツルクビオトシブミ)
学名:Attelabidae
分類:コウチュウ目 ゾウムシ上科 オトシブミ科
分布:世界の温帯から熱帯にかけて広く分布し、アジアの熱帯・亜熱帯地域に多様な種が集まる
保護状況:多くの種は雑木林などで広く見られるが、特定の樹木に依存する種は森林環境の変化に影響を受けやすい
オトシブミ科(Attelabidae)は、樹木の葉を巧みに切り巻いて「揺籃(ようらん)」と呼ばれる筒状のゆりかごを作る、独特な子育て行動で知られる甲虫のグループです。メスは鋭い大顎(おおあご)で葉に丁寧な切れ込みを入れ、器用に折りたたんで内部に卵を一つ産みつけます。
出来上がった揺籃は、そのまま枝に吊るされるか、地面へ切り落とされ、孵化した幼虫にとって食料と隠れ家を兼ねた住まいとなります。この「落とし文」のような習性が、和名の由来にもなりました。種によって葉の巻き方や利用する植物が異なるため、観察してみると、それぞれの工夫の違いを楽しめる点も魅力の一つです。
オトシブミ Apoderus jekelii


出典:iNaturalist – オトシブミ Apoderus jekelii(onidiras)


出典:iNaturaliat – オトシブミ Apoderus jekelii(onidiras)
オトシブミ Apoderus jekelii は、日本各地の雑木林で見られる代表種です。メスはクリやコナラなどの葉を切り取り、細長く巻いて揺籃を作り、完成した揺籃を切り落として地面に落とします。
ハイイロチョッキリ Cyllorhynchites ursulus


出典:iNaturalist – ハイイロチョッキリ Cyllorhynchites ursulus(jupmingspider)
ハイイロチョッキリ Cyllorhynchites ursulus は、体長7〜9mmほどの、灰褐色で毛深いチョッキリゾウムシです。8〜9月にコナラやクヌギの未熟なドングリへ長い口で穴を開けて産卵し、葉の付いた枝ごと切り落とす独特の行動で知られています。
この行動には、幼虫が地面に落ちたドングリの中で成長し、やがて土中で越冬するための工夫が関係していると考えられています。オトシブミが葉を丁寧に巻くのに対し、枝ごと断ち切るハイイロチョッキリの姿は、同じ科の中にある行動の多様性を教えてくれる存在です。
ミツギリゾウムシ科 Brentidae


出典:iNaturalist – Lasiorhynchus barbicornis(emily_r)


出典:iNaturalist – Antliarhis zamiae(cornerautenbach)


出典:iNaturalist – ホソチビゾウムシ Nanophyes marmoratus(ivanprst)
和名:ミツギリゾウムシ科(代表種:ミツギリゾウムシ)
学名:Brentidae
分類:コウチュウ目 ゾウムシ上科 ミツギリゾウムシ科
分布:世界の熱帯・亜熱帯を中心に分布し、日本にも約30種が知られる
保護状況:里山や老齢木に依存する種が多く、生息環境の変化により地域的に減少が懸念される種もある
ミツギリゾウムシ科 Brentidae は、前後にきわめて細長く伸びた直線的な体型を最大の特徴とするグループです。この体形は、樹皮の下や、他の昆虫が開けた狭い坑道の中を移動するのに適した形へと進化したと考えられています。
オスとメスで頭部や口吻(こうふん:頭部から伸びる管状の口器官)の形が大きく異なる種が多いことも、この科ならではの特徴です。オスは大顎を発達させて同種同士の争いに用いる一方、メスは細く長い口吻を使って木材に穴を開け、安全な場所に産卵します。
ミツギリゾウムシ Baryrhynchus poweri


出典:iNaturalist – ミツギリゾウムシ Baryrhynchus poweri(kuman)
ミツギリゾウムシ Baryrhynchus poweri は、日本を代表するミツギリゾウムシ科の一種で、体長は約10〜24mm。細長い体と長く伸びた吻が特徴で、幼虫は広葉樹の枯れ木を利用します。かつては薪や伐採木の周辺で比較的普通に見られましたが、薪炭利用の減少や里山環境の変化に伴って減少し、福岡県では準絶滅危惧に指定されています。全国的にも里山環境の変化によって減少傾向がみられ、地域によってはレッドリスト掲載種となっています。
Calodromus 属


出典:iNaturalist – 属 Calodromus(timmy612)
Calodromus 属は、東南アジアを中心に分布する、極端に細長い円筒形の体を持つ甲虫です。この体型は、樹皮下の狭い隙間や、他の昆虫が開けた小さな坑道内を移動しやすくするための適応と考えられています。
特に注目したいのは、オスの後脚です。腿節・脛節・跗節(あしの各部分)が種によって複雑な形へ大きく伸長しており、単なる歩行のためだけでなく、メスをめぐる争いや、オス同士の防御行動と関わって進化した可能性があります。



はじめて見た時は、どの甲虫の仲間なのかわかりませんでした…
ゾウムシ科 Curculionidae


出典:iNaturalist – クリシギゾウムシ Curculio sikkimensis(wongun)
和名:ゾウムシ科
学名:Curculionidae
分類:コウチュウ目 ゾウムシ上科 ゾウムシ科(18亜科)
分布:南極を除く世界中に分布
種数:世界で約5万〜6万種、日本国内でも1,300種前後が知られる
ゾウムシ科 Curculionidae は、甲虫の中でも圧倒的な種数を誇り、地球上のあらゆる植物環境へ深く適応しながら進化を遂げてきた、最大級のグループです。名前の由来にもなっている、象の鼻のように長く伸びる口吻(こうふん)が最大の特徴で、先端についた小さな大顎を使って、葉や芽、果実、種子、樹皮、根など、植物のほぼすべての部位に穴を開け、食事や産卵の場として利用します。
その暮らしぶりは驚くほど多彩です。ドングリに産卵するシギゾウムシ、金属のような輝きをまとうホウセキゾウムシ、硬い装甲のような体で身を守るカタゾウムシなど、姿かたちも生き方も種ごとに大きく異なります。中には翅が退化して飛べなくなった代わりに、並外れて頑丈な体を手に入れた離島や高山の仲間もいて、環境に応じた進化の幅広さを感じさせてくれます。
農林業では作物を食い荒らす害虫として扱われることもありますが、それは彼らが持つ「植物を巧みに利用する力」の裏返しでもあります。足元の草むらから熱帯の原生林まで、地球上のあらゆる緑に寄り添いながら命をつないできたゾウムシ科の姿は、生き物が見せる進化の奥深さを、静かに物語っています。
ホウセキゾウムシ属 Eupholus


出典:iNaturalist – ショーエンヘルホウセキゾウムシ Eupholus schoenherrii(kirill_petrov)


出典:iNaturalist – Eupholus waigeuensis(myerssusan)
ホウセキゾウムシ属 Eupholus は、ニューギニア島とその周辺の島々に生息する、ゾウムシ随一の美しさを誇るグループです。体表を覆う鱗片の微細な構造が光を反射することで、色素によらない鮮やかな青や緑の「構造色」を生み出しています。世界で約68種が知られ、種や個体によって色合いが大きく異なるため、コレクターの間でも高い人気を誇ります。
カタゾウムシ属 Pachyrhynchus


出典:iNaturalist – Pachyrhynchus congestus(lindaalisto)


出典:iNaturalist – Pachyrhynchus sonani(emmatrs)
カタゾウムシ属 Pachyrhynchus は、フィリピンや台湾、日本の八重山諸島などに分布し、非常に硬い外骨格を持つグループです。この硬さの秘密は、体内に共生する細菌「ナルドネラ」が作り出すアミノ酸(チロシン)にあることが、日本の研究チームによって解明されています。左右の翅が完全にくっついて飛べなくなった代わりに、鮮やかな警告色と圧倒的な防御力を手に入れた、進化の妙を感じさせる存在です。
- クロカタゾウムシ Pachyrhynchus infernalis


出典:iNaturalist – クロカタゾウムシ Pachyrhynchus infernalis(orthoptera-jp)
クロカタゾウムシ Pachyrhynchus infernalis は、日本国内でカタゾウムシ属の姿を見られる、唯一の固有種です。艶やかな黒い光沢をまとった体は、人間の指の力では到底つぶせないほど強靭に発達しており、鳥やトカゲが噛んでも砕けないほどの防御力を誇ります。この硬さの秘密は、体内に共生する細菌ナルドネラが作り出すアミノ酸(チロシン)にあることが、日本の研究チームによって解明されています。
シギゾウムシ属 Curculio


出典:iNaturalist – Curculio glandium(peter839)


出典:iNaturalist – デイクマンシギゾウムシ Curculio dieckmanni(dolphin07)
シギゾウムシ属 Curculio は、体長を超えるほど細長く伸びた口吻を持つ、ゾウムシらしさを最もよく体現するグループです。メスはこの口吻でドングリやクリの実に穴を開けて産卵し、孵化した幼虫は実の中身を食べて育ったのち、地面に落ちて土中で越冬します。秋にドングリに小さな穴を見つけたら、この仲間の仕業かもしれません。
- クリシギゾウムシ Curculio sikkimensis


出典:iNaturalist – クリシギゾウムシ Curculio sikkimensis(arbarokampo)
クリシギゾウムシ Curculio sikkimensis は、体長7〜10mmほどで、体長に匹敵するほど長くしなやかな口吻を持つ、秋の里山を代表する昆虫です。日本各地のほか、中国やインドのシッキム地方にも分布します。
メスはこの口吻でクリの毬(いが)に穴を開けたのち、果皮と渋皮の間に産卵管を差し込んで卵を産みつけます。メスの口吻はオスより著しく長く、この違いも観察のポイントの一つです。
孵化した幼虫は果肉を食べて成長し、やがて実の外へ脱出して土の中にもぐり、幼虫のまま冬を越します。面白いのは、その多くが1年では成虫にならず、2〜3年ものあいだ土の中でじっと過ごしてから羽化する個体が多いという点です。
すべての幼虫が一斉に羽化してしまうと、栗が不作の年に共倒れしてしまうため、羽化の時期を何年かに分散させることで、危険を分け合うリスク管理の知恵だと考えられます。
Camarotus 属


出典:iNaturalist – 属 Camarotus(elendil_c)


出典:iNaturalist – 属 Camarotus(danielblanco521)
Camarotus 属は、中央アメリカを中心とする熱帯域に分布する、丸みを帯びた独特の体型を持つグループです。オスの交尾器の形態が種ごとに大きく異なり、外見だけでは見分けにくい種の識別に重要な手がかりとなっています。
生態にはまだ解明されていない部分が多く、今後の研究が待たれる興味深いグループです。
オサゾウムシ科 Rhynchophoridae


出典:iNaturalist – 属 Paratasis(frederic_griesbaum)


出典:iNaturalist – Toxorhinus amarillo(eli4721)
和名:オサゾウムシ科
学名:Rhynchophoridae
分類:コウチュウ目 ゾウムシ上科 オサゾウムシ科
分布:世界中に広く分布し、熱帯・亜熱帯に特に多様な種が生息する
保護状況:多くは普通種だが、農業・林業上の重要害虫として扱われる種が多い
オサゾウムシ科(Rhynchophoridae)は、ゾウムシ上科の中でも大型の種を多く含み、丈夫な吻(ふん)とがっしりした円筒形の体つきを特徴とするグループです。触角の先端が扁平に膨らんだ独特の形をしており、この部分の根元だけに光沢のある滑らかな面が残る点が、見分けの手がかりになります。
幼虫の多くはヤシやタケ、穀物といった植物の内部深くに潜り込み、外敵に見つかりにくい安全な環境で豊富な栄養を摂取しながら育ちます。この「植物の中に隠れて育つ」という戦略は、朽ち木を分解して森の物質循環を助ける種から、米や麦を食い荒らす貯穀害虫まで、多様な暮らし方へとつながってきました。
オサゾウムシ属 Rhynchophorus


出典:iNaturalist – Rhynchophorus vulneratus(slowswakey)


出典:iNaturalist – Rhynchophorus phoenicis(aaubrey)
オサゾウムシ属 Rhynchophorus は、ヤシ類を主な宿主とする世界的な大型ゾウムシのグループで、体長30〜40ミリメートルに達する種を含みます。赤褐色や橙色を帯びた光沢のある体色を持つ種が多く、雌は丈夫な口吻でヤシの幹や成長点付近に小さな穴を開けて産卵します。
孵化した無脚の幼虫は植物内部にトンネルを掘りながら成長するため、外からは被害の進行が非常に気付きにくいのが特徴です。もともと東南アジアやインドが原産の種が多いものの、貿易や園芸を通じて世界各地へ分布を広げ、ココヤシやデーツヤシの重要害虫として農業分野で大きな注目を集めています。
幼虫は幹の内部を食べ進んで成長し、蛹になる際には周囲の植物繊維を集めて頑丈な繭を作ります。東南アジアの一部地域では、幼虫が高タンパクな伝統食材として親しまれてきた歴史も持っています。



幼虫はカスタードクリームやサツマイモに似た味と言われています。この食文化がある地域ではごちそうとして好んで食べられるそうです。
- ヤシオオオサゾウムシ Rhynchophorus ferrugineus


出典:iNaturalist – ヤシオオオサゾウムシ Rhynchophorus ferrugineus(mdmadhu)
ヤシオオオサゾウムシ Rhynchophorus ferrugineus は、背面がつやのない橙色、腹面が光沢のある黒色という鮮やかな体色を持つ種です。原産地の東南アジアから人や物流に伴って中東やヨーロッパ、アフリカなどへ分布を拡大し、日本へは1975年に沖縄県で初めて確認された記録が残っています。
幼虫がヤシの成長点付近を食い荒らすため、多数が寄生すると株全体が枯死へと至ることもあり、世界的にヤシ農業や緑化樹木に深刻な被害を与える代表的な外来害虫として知られています。
オオゾウムシ属 Sipalinus


出典:iNaturalist – オオゾウムシ Sipalinus gigas(hsbugman44644)
オオゾウムシ属 Sipalinus は世界に7種のみが確認されている、小さくも力強いグループです。アジア・オーストラレーシアには、日本在来最大のゾウムシであるオオゾウムシ Sipalinus gigas と、中国雲南省に生息するウンナンオオゾウムシSipalinus yunnanensis の2種が分布します。残る5種はアフリカ大陸の森林に生息し、いずれも倒木を分解し土へ還す大切な役割を担っています。
- オオゾウムシ Sipalinus gigas


出典:iNaturalist – オオゾウムシ Sipalinus gigas(pavelkornev)
和名: オオゾウムシ
学名: Sipalinus gigas
分類: コウチュウ目 オサゾウムシ科 オオゾウムシ属
分布: 日本(北海道から南西諸島まで)、台湾、中国、朝鮮半島、東南アジア、ニューギニアなど
体長: 約12〜30ミリメートル
保護状況: 多くの地域で普通種だが、大径木や倒木の減少による生息環境の変化には注意が必要
オオゾウムシ Sipalinus gigas は、体長が最大30ミリメートル近くに達し、日本産のゾウムシ類の中でひときわ大きな存在感を放つ代表種として知られています。表面はゴツゴツとした褐色の微毛に覆われ、羽化直後には黄褐色の粉をまとって樹皮の質感へ見事に溶け込みます。成虫は夜間にクヌギやコナラなど衰弱した広葉樹や倒木、伐採木へ集まる習性を持ち、幼虫は固い木質部を食べ進んで育つのが特徴です。
羽化したての成虫は体表から分泌される黄褐色の粉に包まれ、樹皮の凹凸や苔の質感と同化することで、日中に休む際の優れた保護色として働きます。



日本でゾウムシといえば、真っ先に思い浮かべるのがこの姿ですね!
コクゾウムシ属 Sitophilus


出典:iNaturalist – アシナガコクゾウムシ Laogenia formosana(piratesl17)


出典:iNaturalist – Toxorhinus banonii(elendil_c)
コクゾウムシ属 Sitophilus は、体長2〜4ミリメートルほどの小さな体でありながら、堅固な外骨格と鋭く突出した口吻を備え、乾燥した穀物環境へ見事に適応したグループです。雌はこの口吻で米やムギ、トウモロコシといった穀粒に深い穴をあけ、1粒に1個ずつ確実に卵を産み込みます。
孵化した幼虫は外からは見えない種子内部だけを食べて成長し、蛹を経て成虫となって初めて外の世界へ姿を現すため、被害に気付きにくいのが特徴です。古代エジプトのピラミッドや日本の縄文土器の内部からも本属の痕跡が見つかっており、人類が農耕や貯蔵を始めた頃からずっと歩みをともにしてきた、歴史の深い昆虫でもあります。
- コクゾウムシ Sitophilus zeamais


出典:iNaturalist – コクゾウムシ Sitophilus zeamais(kitchang)
コクゾウムシ Sitophilus zeamais は、体長2.5〜4ミリメートルほどの褐色の甲虫で、上翅に淡い斑紋が見られる種です。後翅がよく発達しているため自力で飛翔でき、野外の作付地から屋内の貯蔵場所へ移動して繁殖する、機動力の高い性質を持っています。
近年の考古昆虫学の研究では、日本の縄文土器の内部から本種の痕跡(土器圧痕)が多数発見され、当時の人々が栗などの食料を貯蔵していた証拠として注目を集めました。世界各地の貯蔵穀物における重要害虫として知られる一方、遠い昔から人の暮らしにそっと寄り添ってきた存在でもあります。
タケオサゾウムシ属 Cyrtotrachelus


出典:iNaturalist – タイワンオオオサゾウムシ Cyrtotrachelus thompsoni(aerobird)


出典:iNaturalist – Cyrtotrachelus rufopectinipes(hanchongchong)
タケオサゾウムシ属 Cyrtotrachelus は、東アジアから東南アジアの竹林に生息する大型のオサゾウムシで、竹という硬質な植物環境へ徹底的に適応したグループです。最大の特徴は、特に雄の身体で著しく長く伸びた前脚にあり、このしなやかで力強い前脚によって、滑りやすい竹の表面を自在に登り移動することができます。
雌は雨季を迎えて急速に伸び始めるタケノコに口吻で穴をあけて産卵し、孵化した幼虫は柔らかな内部組織を食べて急成長を遂げます。竹材やタケノコの生産地では害虫として警戒されることもありますが、一方で枯死した竹の分解を助け、現地では幼虫が季節の恵みとして食用にされてきた歴史もある、自然と人の暮らしが重なり合う存在です。



長く伸びた前脚をもつので、テナガオサゾウムシとも呼ばれます。
- タケオサゾウムシ Cyrtotrachelus buqueti


出典:iNaturalist – Cyrtotrachelus buquetii(jackychiangmai)
代表種であるタケオサゾウムシ Cyrtotrachelus buqueti は、赤褐色から赤茶色の光沢ある体表と、体長を上回るほど長く伸びた前脚が特徴的な、東南アジアの竹林を象徴する大型種です。中国南部やタイ、ベトナム、ラオスなどに広く分布し、雌はタケノコの表面に穴をあけて卵を託します。
この長い口吻の構造は近年、軽量で丈夫な工業デザインの着想源としても研究対象になっています。


その他の甲虫
ハンミョウ亜科 Cicindelinae(オサムシ科)


出典:iNaturalist – Cicindela formosa ssp. formosa(mdillon444)


出典:iNaturalist – Cicindela coerulea ssp. coerulea(alexeiebel)
先にご紹介したオサムシ科のなかには、他の仲間とはまったく異なる暮らしぶりを見せる一群が存在します。それがハンミョウ亜科 Cicindelinaeです。夜の地表を歩くオサムシが多いのに対し、この亜科の面々は昼間の明るい太陽の下で活動し、鋭い視力と圧倒的な走力を武器に小さな昆虫を追いかける、俊敏な地上のハンターとして知られています。
見分けるポイントは、体に対して大きな複眼と、鋭く発達した大顎、そして長く伸びた脚です。金属光沢や鮮やかな斑紋をまとう種が多く、人が近づくと数メートル先へ飛んで着地し、また近づくと飛び立つ動きを繰り返すことから、「道教え(みちおしえ)」「道標(みちしるべ)」という親しみ深い別名でも古くから呼ばれてきました。
幼虫もまた、なかなか個性的な狩人です。地面に垂直な穴を掘り、平らな頭部で入口をふさいでカモフラージュしながら、通りかかった小さな虫を一瞬で引きずり込みます。背中には前方を向いた鉤状の突起が備わっており、獲物に引っ張られて外へ飛び出してしまわないよう、しっかりと巣穴の壁に体を固定する仕組みまで持ち合わせているのです。


出典:iNaturalist – Cicindela sexguttata(treegrow)
豆知識として、ぜひ知っていただきたいのが、猛スピードで走るがゆえの意外な弱点でしょう。あまりに速く走ると目に入る光の量が追いつかず、視界が一瞬ぼやけてしまうため、走っては止まり、また走るという「ストップ・アンド・ゴー」を繰り返しながら獲物との距離を詰めていることが、コーネル大学の研究によって明らかにされています。
ハンミョウ(ナミハンミョウ)Cicindela japonica


出典:iNaturalist – ハンミョウ Sophiodela japonica(emura_atka)


出典:iNaturalist – ハンミョウ Sophiodela japonica(shou_1221)
ハンミョウ(ナミハンミョウ)Cicindela japonica は、赤、青、緑が交わる強烈な金属光沢をまとい、日本産甲虫のなかでも屈指の美しさを誇る種といえるでしょう。本州・四国・九州の日当たりの良い山道や河川敷に生息し、人が歩くたびに数メートル先へ飛んで着地する行動を繰り返すため、まるで道案内をしているかのように感じられます。
これは、優れた視覚と高い跳躍力を活かし、地表を素早く動く小さな昆虫を鋭い大顎で捕らえて食べているのです。近年は生息地の減少が進み、地域によっては準絶滅危惧種に指定されるなど、身近でありながらも注意深く見守っていきたい存在です。
オオエンマハンミョウ Manticora latipennis


出典:iNaturalist – Manticora latipennis(mario_machunguene_jr)
オオエンマハンミョウ Manticora latipennis は、アフリカ南部の乾燥地帯に暮らす、世界最大級のハンミョウです。雌は体長6cmを超えることもあり、左右で大きさの異なる強力な大顎を備えているのが特徴といえます。
両性とも上翅が癒合していて後翅が退化しているため、空を飛ぶことはできません。夜になると地表を歩き回り、他の昆虫だけでなく小型の脊椎動物まで襲うほど、屈強な捕食者として知られています。
日本の小さなハンミョウたちとはまるで異なる力強い姿から、同じ亜科のなかに秘められた驚くほど幅広い多様性を感じていただけることでしょう。
ゲンゴロウ科 Dytiscidae


出典:iNaturalist – ヒメフチトリゲンゴロウ Cybister rugosus(luketseng)


出典:iNarturalist – Laccophilus hyalinus(felix_riegel)
ゲンゴロウ科 Dytiscidae は、世界に4,000種以上、日本だけでも150種以上が知られる、水生甲虫を代表するグループです。水の抵抗を極限まで抑えた滑らかな流線型の体を持ち、毛の生えた後脚をオールのように動かして、池や沼、水田などの止水域を自在に泳ぎ回ります。
呼吸の方法も巧妙です。尻の先を水面から出して空気を取り込み、前翅と背中のあいだにできる隙間へ気泡として蓄え、しばらくのあいだ潜水を続けることができます。成虫も幼虫も旺盛な肉食性を持ち、小魚やオタマジャクシ、水生昆虫を捕らえる、水辺の生態系における重要な捕食者です。


出典:iNaturalist – Hydaticus quadrivittatus(damienbr)
オスの前脚には円盤状の小さな吸盤が並んでいます。これは交尾の際に、滑りやすいメスの背中へしっかりと抱きつくために発達したと考えられています。また、幼虫の大顎には細い管が通っていて、獲物に突き刺して消化液を注入し、液状化した組織を吸い上げる「体外消化」という食べ方をします。



オスの前脚は、ほっそりとしたメスの前脚に比べて、手袋をしているように太くなっている種類が多いので、そこでも雌雄の判断ができます。
水質や水草の状態に敏感なため、澄んだ水辺と豊かな生態系の存在を示す指標としても注目されています。
ゲンゴロウ Cybister chinensis


出典:iNaturalist – ゲンゴロウ Cybister chinensis(liboheng_reborn)
ゲンゴロウ Cybister chinensis は、日本産ゲンゴロウ科のなかで最大級となる、この科を代表する種です。体長は34〜42mmに達し、緑色を帯びた黒褐色の体に、側縁を彩る黄色い筋模様があります。
水草の豊富なため池や水田を好んで暮らし、幼虫・成虫ともに小魚やオタマジャクシ、水生昆虫を旺盛に捕食します。かつては里山の水田地帯で普通に見られましたが、護岸工事や農薬の普及、生息地の減少により各地で個体数が減り、現在は環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。
ハイイロゲンゴロウ Eretes sticticus


出典:iNaturalist – ハイイロゲンゴロウ Eretes griseus (rosefan2)
ハイイロゲンゴロウ Eretes sticticus は、体長13〜17mmほどの偏平な流線型をした種です。浅い池や水田、時には一時的な水たまりにも素早く進入し、夜間には水中から飛び立って新しい水場を探す高い移動能力を持っています。
旺盛にボウフラを食べることが知られており、化学薬品に頼らず自然に害虫の発生を抑える、水辺の調整役として知られています。



ゲンゴロウの仲間は、飛ぶことができるので飼育の際は蓋をすることを忘れずに!
ホタル科 Lampyridae


出典:iNaturalist – 属 Magnoculus(mabelin)


出典:iNaturalist – 属 Diaphanes(gbno)


出典:iNaturalist – 族/連 Cratomorphini(marianosantanna)
ホタル科 Lampyridae は、世界に約2,000種、日本にも約50種が知られる、体内で光を生み出す甲虫のグループです。腹部にある発光器の中で「ルシフェリン」という物質が酵素「ルシフェラーゼ」と反応し、熱をほとんど出さない効率の良い光を放ちます。



この発光の仕組みを支える酵素は、ヒカリコメツキと同じ「アシルCoA合成酵素」という物質から進化したものですが、実は別々の進化イベントによって、それぞれ独立に手に入れた発光能力です。



ホタル科とコメツキムシ科(ヒカリコメツキが属する科)は約1億1500万年前に分岐した別の系統です。発光能力もはるか昔に分岐した後、独立に獲得されたことがゲノム解読で確認されています。
この光は主に、オスとメスが互いを見つけ合うための求愛シグナルとして使われていますが、卵や幼虫の段階でも発光する種が多く、体に持つ毒を周囲へ知らせる警告のサインとしても働いていると考えられています。実は、清らかな川で暮らす種は実はごく一部で、多くの仲間は陸上の湿った森林でカタツムリやミミズなどを食べながら育ちます。


出典:iNaturalist – マドボタル亜科 亜科 Lampyrinae(darkraptormacro)
なかでも興味深いのが、マドボタルの仲間に見られる「ネオテニー(幼形成熟)」という現象です。オスは翅を持って空を飛び回れるのに対し、メスは翅が退化しており、幼虫のような姿のまま一生を地面の上で過ごすという、雌雄でまったく異なる生き方をする種が存在するのです。
ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata


出典:iNaturalist – ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata(hakkahamushi)
ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata は、日本固有種であり、日本産ホタルのなかで最大級の種として知られています。体長はオスが12〜15mm、メスが15〜18mmほどで、前胸の赤い地色に黒い十字模様が入るのが特徴です。
この種は雌雄とも翅を持ち、幼虫は清らかな小川でカワニナ※を食べながら約9か月かけて成長し、上陸後に土の中で蛹となって羽化します。初夏の夜、川面をオスが飛びながら明滅し、メスが草の上から応えるように光る様子は、日本の夏の風物詩として古くから親しまれてきました。



カワニナは、東アジアに分布する淡水性の細長い巻貝で、水のきれいな川や用水路の石に付着し、藻類などを食べて暮らしています。ゲンジボタルやヘイケボタルの幼虫の主要な餌として知られ、清流の生態系を象徴する存在です。
クロマドボタル Pyrocoelia fumosa


出典:iNaturalist – クロマドボタル Pyrocoelia fumosa(shige-kanao)


出典:iNaturalist – クロマドボタル Pyrocoelia fumosa(coleoreteh)
クロマドボタル Pyrocoelia fumosa は、本州から九州にかけての森林に生息する、陸生のホタルです。メスのネオテニーがはっきりと確認できる代表種で、オスは黒褐色の翅と前胸の透明な「窓」模様を持って夜空を飛びますが、メスは翅が完全に退化しており、一生を地表で幼虫のような姿のまま過ごします。
幼虫やメスはともにカタツムリなどの陸生貝類を食べて育ち、飛べないメスが地面で光を灯してオスを呼び寄せる姿は、生き物の多様な生存戦略を教えてくれる興味深い一例です。
ゴミムシダマシ科 Tenebrionidae


出典:iNaturalist – Onymacris marginipennis(peter_erb)


出典:iNaturalist – Helea perforata(jmwatson)
ゴミムシダマシ科 Tenebrionidae は、世界に2万種以上が知られる、コウチュウ目のなかでも極めて多様なグループです。森林、草原、砂漠、海岸、洞窟にまで生息範囲を広げており、頑丈で分厚い外骨格によって体内の水分蒸発を防ぐ仕組みを共通の強みとしています。
多くの種は夜行性で、朽ち木やキノコ、腐植質、乾燥した種子などを食べる腐食性・雑食性の生活を送っており、自然界における有機物の分解者として重要な役割を担っています。とりわけ注目したいのが、左右の前翅がしっかりと結びつき、内部に空気の層を閉じ込める構造です。
この仕組みによって、乾燥や強い日差しから体内の水分を守り、過酷な環境でも生き延びる力を獲得してきました。砂漠に暮らす仲間のなかには、一度しっかり食事をとると何か月も絶食できる種や、朝霧から水分を集める驚くべき行動を見せる種も知られています。
また、この科の幼虫は「ミールワーム」として広く知られ、鳥類や爬虫類の生き餌としてだけでなく、近年は高タンパクで環境負荷の低い食用昆虫としても注目を集めています。
森林の代表種:キマワリ(ニホンキマワリ) Plesiophthalmus nigrocyaneus


出典:iNaturalist – ニホンキマワリ 基亜種 Plesiophthalmus nigrocyaneus ssp. nigrocyaneus(nickvolpe)
キマワリ(ニホンキマワリ)Plesiophthalmus nigrocyaneus は、体長16〜25mmほどで、黒銅色の体表に金属光沢が輝く、日本の雑木林でよく見られる代表種です。成虫は樹幹や倒木の上を活発に歩き回り、枯れ木に生える菌類や腐朽した木質部を主な食べ物としています。
幼虫も倒木の内部で育ち、木材を細かく砕いて土壌へ還す働きをしていますが、手入れの行き届いた森林では倒木自体が少ないため、むしろ手入れが放棄された里山で多く見られる点も興味深い特徴です。
砂漠の代表種:フォグバスキングビートル Onymacris unguicularis


出典:iNaturalist – Onymacris unguicularis(gerrit_oehm)
フォグバスキングビートル Onymacris unguicularis は、アフリカ南西部、ナミブ砂漠の砂丘に生息する、極限環境への適応で世界的に知られる種です。ほとんど雨が降らないこの地域で生きるため、早朝に砂丘の頂で頭を下げ、後脚を高く上げて体を傾ける独特の姿勢をとり、海から流れてくる霧を体表で受け止めます。



Onymacris unguicularis 自体のこのポーズの画像は見つかりませんでしたが、別種の似た行動をとるものがこちら👇️


出典:iNaturalist – Eleodes gracilis ssp. distans(bugnasha)
結露した水滴は背中の溝を伝って口元まで導かれ、貴重な水分として摂取されます。この「フォグ・バスキング」という行動は1976年に学術誌『Nature』で報告されて以来、砂漠生物の水分獲得戦略の代表例として知られるようになり、近年では効率的な集水技術や機能性素材の開発をめざす生物模倣(バイオミメティクス)研究にも応用されています。


ハムシ科 Chrysomelidae


出典:iNaturalist – Plagiometriona clandestina(isaias22)


出典:iNaturalist – フェモラータオオモモブトハムシ Sagra femorata(dineshvalke)


出典:iNaturalist – ツシマヘリビロトゲハムシ Platypria melli(jinzichao)
植物を食べる小さな甲虫の大グループ
ハムシ科 Chrysomelidae は、世界に3万5,000種以上、日本にも約780種が知られる、植物食に特化した甲虫の大きなグループです。体長は数ミリメートルから1センチメートルほどと小柄ながら、鮮やかな金属光沢や美しい模様をまとった種が多く、草地から高木、水辺まで、あらゆる植物環境に適応してきました。
もっとも大きな特徴は、成虫も幼虫も特定の植物だけを食べる「狭食性」を示す点です。植物は虫に食べられないよう防衛物質を作りますが、ハムシ科の多くはこれを解毒したり逆に利用したりする仕組みを発達させ、特定の植物と深く結びつきながら進化してきました。



このため、種類ごとに好む植物がほぼ決まっており、見つけた植物からハムシの種類を推測するのも楽しみの1つです。
同じ種でありながら体色に個体差が見られる「色彩多型」も、この科ならではの興味深い現象です。さらに、水辺に暮らす仲間の幼虫は、水生植物の内部にある空気の通り道(通気組織)に体の一部を差し込んで呼吸するという、驚くべき適応まで見せています。小さな体に凝縮された生存戦略の幅広さこそ、ハムシ科最大の魅力といえるでしょう。
草地の代表種:ヨモギハムシ Chrysolina aurichalcea


出典:iNaturalist – ヨモギハムシ Chrysolina aurichalcea(nakarb)
ヨモギハムシ Chrysolina aurichalcea は、日本全土の河川敷や草地でごく普通に見られる、その名の通りヨモギを専門に食べる代表的なハムシです。体長は7〜10mmほどで、紺色や赤銅色など個体によって色合いが異なる、豊かな色彩の変化を見せてくれます。
成虫のまま冬を越し、春から秋にかけて長く活動を続けるたくましさを持ち、身近な草むらで気軽に観察できる入門種として親しまれています。
樹木の代表種:クルミハムシ Gastrolina depressa


出典:iNaturalist – クルミハムシ Gastrolina depressa(kmt22)


出典:iNaturalist – クルミハムシ Gastrolina depressa(inccc)
クルミハムシ Gastrolina depressa は、北海道から九州にかけて分布し、オニグルミやサワグルミの葉を専門に食べる樹木性のハムシです。体長は7〜8mmほどで、藍色や緑色を帯びた光沢のある黒い体をしています。



メスのほうがオスよりやや大きく成長する傾向があります。とくに、産卵期のメスは腹部に卵を蓄えるため、腹が膨らんで見えることも見分けのヒントになります。
初夏に集団で発生して葉を食べ尽くすこともありますが、樹木が作った有機物を虫が利用し、その虫がさらに鳥などの捕食対象になるという、森の物質循環の一端を担う存在です。
農地の代表種:ウリハムシ Aulacophora femoralis


出典:iNaturalist – ウリハムシ Aulacophora indica(smathichong)
ウリハムシ Aulacophora femoralis は、日本各地の畑や草地でよく見られる、鮮やかな橙黄色の体を持つ小型のハムシです。成虫はキュウリやカボチャなどウリ科の葉を食べ、幼虫は土の中で根を食べて育ちます。
農作物への被害が知られる一方、植物との密接な関係を学ぶうえで代表的な種であり、都市部でも簡単に観察できる存在です。
話題の「ブローチハムシ」代表種:Aspidimorpha sanctaecrucis


出典:iNaturalist – Aspidomorpha sanctaecrucis(jiangyou)
Aspidimorpha sanctaecrucis は、東南アジアに分布する、カメノコハムシ亜科の仲間です。上翅の縁が透明な盤状に大きく広がり、中央部が金色に輝くことから「ブローチハムシ」という愛称で世界的に話題を集めています。この金色は色素によるものではなく、クチクラの内部にある多層構造のあいだに含まれる水分量が変化することで生まれる「構造色」であり、体が乾いたり刺激を受けたりすると輝きが赤みを帯びた色へと変わることが、光学研究によって解明されています。透明な縁の部分は葉に密着した際の影をなくし、天敵から輪郭を見えにくくする効果を持つとも考えられており、見た目の美しさと生き抜くための工夫が両立した、非常に興味深い存在です。



展示の会場で「ブローチ虫」について聞かれたので、ジンガサハムシ Aspidimorpha indica の仲間ではないかとお答えしました。



この仲間のデザインは、可愛いものが多いですね~



蟲神器というカードゲームに、「コウテイブローチハムシ Stolas imperialis 」というカードがあるようなので、属こそ違いますが、その解説で大体あってます。


出典:iNaturalist – Stolas imperialis(isaias_de_lima)



なるほど!南米ブラジル固有種で、体長6〜12mmほどの小型種ですね!(ブローチというより、ボタンでは…)↑
テントウムシ科 Coccinellidae


出典:iNaturalist – ナミテントウ Harmonia axyridis(cosmin_manci)


出典:iNaturalist – Cyrea mcclarini(josh_vandermeulen)
テントウムシ科 Coccinellidae は、丸くドーム状に盛り上がった体と鮮やかな斑紋で親しまれる、世界に約6,000種、日本にも約180種が知られる甲虫グループです。太陽に向かって飛ぶ習性から「天道虫」という名がつけられました。
危険を感じると脚の関節から黄色く苦い体液を分泌する「反射出血」という防衛手段を持ち、この目立つ体色自体が「食べても美味しくない」という警告として働いていると考えられています。
食性は種によって大きく以下の3つに分かれます。
- アブラムシなどを捕食する肉食性の仲間
- ナス科植物の葉を食べる植物食性の仲間
- ウドンコ病菌のような菌類だけを食べる菌食性の仲間
とくに肉食性の種は農作物を守る天敵として重宝され、代表的な「益虫」として知られています。
また、注意していただきたいのが、「テントウムシダマシ」という名前の面白い二重性です。農業や園芸の現場では、この呼び名は植物を食べるニジュウヤホシテントウなど、テントウムシ科のなかの害虫グループを指すことが多いのですが、昆虫学の世界では見た目がよく似た別の科である「テントウムシダマシ科(Endomychidae)」を指す場合もあります。
同じ名前が業界によって違うものを指すという、なかなか奥深い雑学といえるでしょう。



ややこしいですよね!!
肉食性の代表種:ナナホシテントウ Coccinella septempunctata


出典:iNaturalist – ナナホシテントウ Coccinella septempunctata(wwbugsandslugs)
日本各地でもっともよく見られる、赤い翅に7つの黒い斑紋を持つ代表的なテントウムシです。体長は5〜9mmほどで、成虫・幼虫ともにアブラムシを盛んに食べる強い肉食性を持っています。成虫のまま冬を越し、春から活発に動き出すため、アブラムシがついた植物を探せば簡単に見つけられる、身近な益虫の代表です。
菌食性の代表種:キイロテントウ Kiiro koebelei


出典:iNaturalist – キイロテントウ 基亜種 Illeis koebelei ssp. koebelei(birdlay)
模様のない鮮やかな黄色一色の翅を持つ、小さなテントウムシです。成虫も幼虫も、植物の葉に発生する「ウドンコ病菌」というカビだけを食べて育つ、珍しい菌食性の種として知られています。ウドンコ病になりやすいバラやモミジなどでよく見つかり、植物の病気を自然に抑える働きから、隠れた益虫として評価されています。
植物食性の代表種:ニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctopunctata


出典:iNaturalist – ニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctopunctata(carlosalexandreraposo)
ニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctopunctata は、黄褐色の体に28個の黒い斑点を持つ、農業の現場で「テントウムシダマシ」と呼ばれることの多い植物食性の種です。ナスやジャガイモなどナス科の葉を好み、成虫・幼虫ともに葉の裏側から表皮を残して葉肉だけを削り取るため、平行な筋が並んだ独特の食べ跡が残ります。
同じテントウムシ科のなかでも珍しい植物食への進化を遂げた種であり、農業害虫としても重要視されています。
テントウムシダマシ科 Endomychidae


出典:iNaturalist – Endomychus coccineus(gillessanmartin)


出典:iNaturalist – タイワンオオテントウダマシ Eumorphus quadriguttatus ssp. pulchripes(beizi125)


出典:iNaturalist – マオウトゲトゲテントウダマシ Cacodaemon satanas(naturaldudeguy)
先ほどテントウムシの解説でも触れましたが、「テントウムシダマシ」という名前は、実は二つの異なる意味で使われています。農業現場でナス科植物を食べるニジュウヤホシテントウ(テントウムシ科)を指す俗称と、分類学上まったく独立したテントウムシダマシ科 Endomychidae という正式な科名です。



両者は見た目こそ、ある程度似ていますが、暮らし方も食べ物もまるで違います。
見分け方は「触角」と「食べ物」


出典:iNaturalist – ヘリビロオオテントウダマシ Eumorphus marginatus(soo_ting)
テントウムシダマシ科の甲虫は、体形がやや縦長で扁平な種が多く、触角の先端がゆるやかに膨らんで棒状になっている点が、テントウムシ科との見分けのポイントです。世界に約130属1,800種以上が知られ、熱帯・亜熱帯を中心に分布しています。
もっとも大きな違いは食性です。一般的なテントウムシはアブラムシなどを食べる肉食性が多く、ニジュウヤホシテントウのような一部の種は植物の葉を食べます。それに対し、テントウムシダマシ科の多くは、倒木や枯れ木に生えるキノコの胞子や菌糸、微細なカビ類を食べる菌食性の生活を送っています。農作物を加害する種はほとんど知られていません。



テントウムシダマシ科は、系統的にはテントウムシ科に最も近縁とされています。
森の中で静かに働く分解者


出典:iNaturalist – Gerstaeckerus gratus(pasteurng)
枯れ木やホコリタケの内部、森林の落ち葉層にひっそりと暮らし、菌類の増殖を適度に抑えながら、有機物の分解を助ける役割を担っています。「テントウムシダマシ」という少し紛らわしい名前を持ちながら、実際には森の奥でキノコを食べて静かに働く、分解者としての一面を持つグループです。


エリトラがひらく、甲虫の多彩な世界


出典:iNaturalist – Ithystenus hollandiae()
硬い前翅である「エリトラ(さや翅)」を持つ甲虫目は、記載されている昆虫のなかでも特に多くの種類を含む、大きく豊かなグループです。博物館や各地の昆虫展では、立派な角を持つカブトムシ、大きな大顎を備えたクワガタムシ、金属のように輝くタマムシ、長い触角を伸ばすカミキリムシなどが、華やかな主役として展示を彩ります。
しかし、その背後には、枯死木の中で育つゾウムシやカミキリムシ、水中で暮らすゲンゴロウ、植物と結び付いて生きるハムシ、夜に光るホタルなど、姿も暮らしも大きく異なる仲間たちの多様性に富んだ世界が広がっています。
甲虫を「角を持つ大きな虫」とだけ考えず、「硬いさや翅を土台に、さまざまな場所へ進出した昆虫たち」と見てみると、展示の景色はぐっと立体的になります。さや翅は、飛ぶための後翅や腹部を守る盾であると同時に、乾燥や外敵への備え、体温や水分の調節、泳ぎなどにも関わる、奥深い仕組みです。
また、「害虫」「益虫」という人にとって便利な区分だけでは、その姿を十分には捉えられません。たとえばオオゾウムシは、弱った木や伐採された木を利用し、幼虫は木の内部で育ちます。 一頭の甲虫を見つめることは、その虫が利用する木や草、水辺、土、さらに同じ場所に暮らす無数の生き物とのつながりを見つけることでもあります。
昆虫展では、人気の甲虫の迫力や美しさを楽しみながら、標本箱の隅にいる小さな仲間や身近に観察できる昆虫にも目を向けてみてください。地球のあらゆる場所で営まれてきた、多彩な生命の物語が、きっと見えてくるでしょう。



甲虫の多様性を知るということは、私たちが暮らす風土の豊かさを知ることにほかなりません。遠い国の珍しい虫だけでなく、皆さんの身近な里山や公園にすむ甲虫たちも、ぜひ観察してみてくださいね。



大きい」「珍しい」「かっこいい」だけで終わらせず、その昆虫がどこで、何を食べ、どのように育つのかまで調べてみましょう!甲虫の世界が、もっと面白くなりますよ。



この記事を参考に、昆虫展や博物館で、実物の甲虫標本をじっくり観察してくださいね~!



チョウやガの鱗翅目に続き、甲虫目編をお届けしました! 次回は「その他の昆虫編」も執筆予定です!






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ブログ記事より少し踏み込んだ内容も追加されていますよ


参考・引用文献
そもそも甲虫とは?
- 埼玉県 ‐ 昆虫類 コウチュウ目
- 名古屋市 ‐ ゴミムシダマシ類(コクヌストモドキなど)について
- Wikipedia ‐ 甲虫類
- Wikipedia ‐ 昆虫の翅
- 農研機構 ‐ ハチ目(膜翅目)とコウチュウ目(鞘翅目)におけるゲノム編集研究
- 九州大学総合研究博物館 ‐ 昆虫のヒミツ
オサムシ科 Carabidae
- Carabidae of the World ‐ Carabidae Latreille, 1802(総説論文)nature.berkeley
- 北海道大学 CoSTEP ‐ 北の宝石「オオルリオサムシ」を北大“虫研”が全亜種コンプリート(2019年10月4日)
- 北海道大学 農学部 ‐ Carabus gehinii (Coleoptera: Carabidae) の抱歯左右非対称性に関する研究(2019年)agr.hokudai
- 滋賀県立琵琶湖博物館 ‐ 資料情報「キタオオルリオサムシ Damaster gehinii aereicollis」(標本データベース)jmapps.ne
- National Museum of Natural Science(台湾・国立自然科学博物館)‐ Species Database(Carabus/Coptolabrus 関連種)nature.edu
- Etervalu 自然情報サイト ‐ 日本の固有種一覧【昆虫】コウチュウ目オサムシ科Vol3(2020年2月21日)
- GBIF ‐ Scarites subterraneus 種ページspecies.nibr.go
- Carabidae of the World(国際的なオサムシ類データベース)‐ Carabidae Latreille, 1802(Scarites 属の解説を含む)nature.berkeley
- グリーンフォレスト財団 ‐ 島根半島の海岸に生息する甲虫類(9)オサムシモドキ(2005年頃)green-f
- 福岡県 ‐ 福岡県レッドデータブック オサムシモドキ(Web版・各種の解説)biodiversity.pref.fukuoka
- レッドデータ検索システム(日本全国版)‐ オサムシモドキ Craspedonotus tibialisjpnrdb
- Wikipedia ‐ バイオリンムシ Mormolyce phyllodes(最終更新:2024年頃)kateigaho
- Carabidae of the World ‐ レビウス亜科 Lebiinae 内 Mormolyce 属の解説nature.berkeley
- 日本甲虫学会 ‐ 日本産ヒゲブトチビシデムシ類要説(VI)(さやばねNS, 第26号 PDF)coleoptera.sakura.ne
- Carabidae of the World ‐ Paussinae 解説(爆発的な化学噴射能力など)nature.berkeley
- 寺山 守 ‐台湾農業試験所所蔵のアリ類標本について:いわゆる「素木標本」と関連して(2014年)
- Wikipedia ‐ マイマイカブリ
- Wikipedia ‐ アフリカマイマイ
- 日本比較生理生化学会 ‐ アリとともに生きる仕組み – JSCPB wiki
クワガタムシ科 Lucanidae
- European Commission ‐ LIFE Bridging the Gap (BTG): Sweden Natura 2000 Oak Forest Restoration Project
- EUR-Lex ‐ Commission Guidance Document on the Strict Protection of Animal Species under the Habitats Directive (2021年12月9日)
- 環境省 ‐ レッドリスト指定種および関連法令指定状況(2020年公表)
- Global Biodiversity Information Facility ‐ Lucanidae Latreille, 1804 Taxonomic and Distribution Database
- Wet Tropics Management Authority ‐ Diversity and Evolutionary Biology of Wet Tropics Rainforest Insects
- Atlas of Living Australia ‐ Species Page of King Stag Beetle Phalacrognathus muelleri (Macleay, 1885)
- 環境省 九州地方環境事務所 ‐ 奄美・沖縄の固有野生動植物種の保護とアマミシカクワガタの現状(2020年)
- 国立環境研究所 ‐ 侵入生物データ:クワガタムシ科における外国産亜種の交雑リスク(2021年)
- 鹿児島県 ‐ 希少野生動植物の保護に関する条例およびアマミシカクワガタ指定状況(2024年)
- 環境省 生物多様性センター ‐ 日本産オオクワガタ等の局所的衰退および生息地保全に関する調査(1985年以降)
- IUCN Red List ‐ European Red List of Saproxylic Beetles (Nieto & Alexander, 2010)
- European Commission ‐ Habitats Directive
- Catalogue of Life ‐ Lucanidae Latreille, 1804
クロツヤムシ科 Passalidae
- 愛媛県 ‐ 愛媛県レッドデータブック 昆虫類 ツノクロツヤムシ(2014年)
- 国立環境研究所系統 ‐ クロツヤムシ(Passalidae)の社会性と家族生活の解説(2007年)PDF
- Wikipedia(日本語版) ‐ クロツヤムシ(2024年更新)
- GBIF ‐ Odontotaenius disjunctus (Illiger, 1800) 種情報・分布データ(2024年)
- Florida University IFAS ‐ Horned passalus, Odontotaenius disjunctus (Illiger) Featured Creatures(2020年11月)
- University of Nebraska ‐ Acoustical signals of passalid beetles: complex repertoires(2015年)
- Things Biological ‐ Horned Passalus (Odontotaenius disjunctus)(2010年12月)
- Picture Insect ‐ ゴーリーオバケクロツヤムシ Proculus goryi 種プロファイル(閲覧年不詳)
- Six Legs Too Many Blog ‐ Bess beetles and their fascinating social structure(2012年6月)
- 北海道大学学術成果レポジトリ HUSCAP ‐ 日本産クロツヤムシ科(Cylindrocaulus patalis)の分類および採集記録(1955年)
コガネムシ上科 ― カブトムシ亜科 Dynastinae
- ResearchGate ‐ Investigation of the selective color-changing mechanism of Dynastes tityus beetle (Coleoptera: Scarabaeidae)(2021年1月)
- ResearchGate ‐ Figure 1 – uploaded by Jean-François Colomer
- ResearchGate ‐ Diffractive hygrochromic effect in the cuticle of the hercules beetle Dynastes hercules(2008年3月)
- The Royal Society ‐ Controlled fluorescence in a beetle’s photonic structure and its sensitivity to environmentally induced changes(2016年12月26日)
- National Library of Medicine ‐ Bio-inspired colorimetric film based on hygroscopic coloration of longhorn beetles (Tmesisternus isabellae)(2017年3月21日)
- 植物防疫所 ‐ 植物防疫法施行規則
- 農林水産省 ‐ 検疫有害動植物の指定に関するPRA結果の概要(平成23年9月)
- 沖縄県 ‐ 沖縄県外来種対策行動計画に基づくサイカブト(タイワンカブトムシ)防除計画(2020年3月)
- 沖縄県 ‐ 生きものいっせい調査 2023 について【指導用資料】(2023年)
- いきもの発見日和 ‐ 肉を食べるカブトムシ -コカブトムシ-(2020年6月25日)
- Wikipedia ‐ コカブト
- スモールズー ‐ コカブト(コカブトムシ)
- University of Michigan ‐ Dynastes hercules
- Wikipedia ‐ Hexodontini
- The Royal Society ‐ Rapid and reversible humidity-dependent colour change by water film formation in a scaled springtail
- GBIF ‐ Dynastes tityus species information
- GBIF ‐ Trypoxylus dichotomus species information
- GBIF ‐ Xylotrupes sumatrensis species information
- GBIF ‐ Oryctes nasicornis species information
- GBIF ‐ Eophileurus chinensis species information
- GBIF ‐ Chalcosoma atlas species information
- GBIF ‐ Eupatorus gracilicornis species information
- GBIF ‐ Trichogomphus simson species information
- GBIF ‐ Golofa eacus species information
- GBIF ‐ Dynastes hercules species information
- GBIF ‐ Megasoma elephas species information
- GBIF ‐ Augosoma centaurus species information
- GBIF ‐ Hexodon reticulatus species information
- Wikipedia ‐ カブトムシ亜科(概要と主な属・生態の整理
コガネムシ上科 ― ハナムグリ亜科 Cetoniinae
- GBIF (Global Biodiversity Information Facility) ‐ Ischiopsopha lucivorax species record
- PubMed / NCBI (アメリカ国立衛生研究所) ‐ A review of the Cetoniinae (Coleoptera: Scarabaeidae) from Argentina and adjacent countries: systematics and geographic distributions(2015年)
- Graellsia(スペイン国立研究機構 CSIC 発行) ‐ Gymnetis stellata (Latreille, 1833) in Mexico: an update on its geographic distribution(2025年)
- J-STAGE(日本生態学会) ‐ ワリックツノハナムグリ Dicronocephalus wallichii のオス間闘争における複数の武器の機能(2022年)
- 広島大学デジタル博物館 ‐ アオカナブン(広島大学東広島キャンパス)
- Wikipedia ‐ Compsocephalus(属の分布・特徴)
- Wikipedia ‐ Ischiopsopha(属の分布・特徴)
- Scientia agriculturae bohemica(チェコ生命科学大学) ‐ A contribution to knowledge of genus Ischiopsopha Gestro, 1874 with descriptions of new species(2013年)
- Wikipedia ‐ Inca clathratus(生態・分布)
- Wikispecies ‐ Genus Gymnetis(種一覧・分類階級)
タマムシ科 Buprestidae
- Journal of The Royal Society Interface – Gold bugs and beyond: a review of iridescence and structural colour mechanisms in beetles (Coleoptera) (Parker et al.)(2008年10月28日)
- 針山孝彦「タマムシを用いた構造色の起源と構造色弁別能の行動学的解析」色材協会誌
- Honda Woods「キラキラ虹色に光る昆虫の構造色のなぜ?なに? 編(ホンダ・環境教育コンテンツ)」
- タマムシ科 – Wikipedia
- タマムシ – Wikipedia
- 農林水産省 植物防疫所 ‐ 輸入植物検疫
- 税関 ‐ 1803 植物防疫法に基づく輸入規制の税関における確認内容(カスタムスアンサー)
- Western Australia Department of Biodiversity, Conservation and Attractions – Stigmodera gratiosa (Pemberton Jewel Beetle)
- The World of Jewel Beetles b Duplicate, original reprints (17 February 2010)
- 積水インテグレーテッドリサーチ ‐ 第 1回 タマムシに学ぶ構造色発色(2020年12月1日)
- GBIF (Global Biodiversity Information Facility) – Buprestidae Leach, 1815 Classification and descendants
- 文化遺産データベース ‐ 玉蟲厨子
- 農林水産省 植物防疫所 – 生きた昆虫類を輸入される方へ 生きた昆虫類の輸入について
- Western Australian Museum – Jewel Beetles
- Victoria and Albert Museum ‐ Textile ca.1880 (made) Hobart School for Mussulman Girls (maker)
- Smithsonian Design Museum – Nature’s Sequins Posted by Susan Brown on September 14, 2018 Author: Jennifer Angus
- 日本科学協会 ‐ 自然に学ぶ 玉虫の厨子って・・
- 積水化学工業株式会社 ‐ タマムシに学ぶ構造色発色 光とナノ構造が生み出す構造色
- Buprestidae of South Australia ‐ Buprestidae of South Australia Introduction
- Wikipedia – Stigmodera cancellata
コメツキムシ科 Elateridae
- MDPI ‐ Functional Morphology of the Thorax of the Click Beetle Campsosternus auratus (Coleoptera, Elateridae), with an Emphasis on Its Jumping Mechanism(2022年2月28日)
- National Library of Medicine ‐ Complementary DNA coding click beetle luciferases can elicit bioluminescence of different colors(1989年5月12日)
- LSU AgCenter ‐ Alaus oculatus and A. myops, Eyed Click Beetles (Coleoptera: Elateridae)(2025年6月16日)
- University of Minnesota ‐ Wireworms
- Pensoft Biodiversity Data Journal ‐ First report of an intersex individual of the click beetle Pectocera fortunei (Elateridae) and additional cases of gynandromorphism in Coleoptera (Lucanidae, Scarabaeidae)(2025年2月20日)
- Utah State University ‐ Wireworms
- Bug of the Week ‐ Spooky eyes on the Stygian rainforest floor: Headlight beetles, fire beetles, Pyrophorus spp.(2025年2月24日)
- ScienceDirect(Journal of Insect Physiology) ‐ Characterization of luciferases and its paralogue in the Panamanian luminous click beetle Pyrophorus angustus: A click beetle luciferase lacks the fatty acyl-CoA synthetic activity(2010年2月15日)
- University of Illinois Extension ‐ Wireworms Family Elateridae (several species)
- University of Michigan ‐ Alaus oculatus eyed click beetle
- bugswithmike.com ‐ Elateridae Leach, 1815
- Beetles In The Bush ‐ Pop! goes the beetle(2014年1月23日)
- National Library of Medicine ‐ Functional Morphology of the Thorax of the Click Beetle Campsosternus auratus (Coleoptera, Elateridae), with an Emphasis on Its Jumping Mechanism(2022年2月28日)
カミキリムシ科 Cerambycidae
- EPPO ‐ Anoplophora chinensis
- EPPO ‐ Anoplophora chinensis Pest Report to support the ranking of EU candidate priority pests(2022年)
- EFSA ‐ Pest survey card on Aromia bungii(2019年12月2日)
- 林野庁 東北森林管理局 ‐ マツノマダラカミキリ Monochamus alternatus
- 国立環境研究所 侵入生物データベース ‐ キボシカミキリ(奄美亜種)
- 東京大学 ‐ キボシカミキリの幼虫休眠に関する研究 : その生態学的意義 新谷,喜紀(1997年3月28日)
- GBIF ‐ Cerambycidae database(2021年11月3月)
- Guinness World Records ‐ Longest beetle body (species)(2016年)
- National Library of Medicine ‐ Evaluation of the Applicability of 3d Models as Perceived by the Students of Health Sciences(2019年3月)
- MDPI ‐ Comparative Transcriptome Analysis of the Pest Galeruca daurica (Coleoptera: Chrysomelidae) Larvae in Response to Six Main Metabolites from Allium mongolicum (Liliaceae)(2024年10月29日)
- Laboratory of Woodland Ecology ‐ The Rosalia Longicorn Beetle (Rosalia alpina)
- 和歌山県 ‐ Red Data Book of Wakayama Prefecture 昆虫類
- シロアリ対策協会 ‐ しろありNo180 27/46
ゾウムシ上科 Curculionoidea
- American Society for Microbiology ‐ Complete genome of the mutualistic symbiont “Candidatus Nardonella sp.” Pin-AIST from the black hard weevil Pachyrhynchus infernalis(2025年2月25日)
- Springer Nature ‐ Curculionidae and Rhynchitidae Community (Coleoptera: Curculionoidea) in Different Ecosystems of Eastern Black Sea and Northeastern Anatolia of Türkiye(2025年12月22日)
- GBIF ‐ Rhynchophorus ferrugineus (Olivier, A.G., 1791)
- 農林水産省 植物防疫所 ‐ 病害虫情報バックナンバー(94号~108号)
- 農林水産省 ‐ 各地で話題の病害虫(2001年11月15日)
- 農研機構 ‐ コクゾウムシと縄文土器(2012年2月22日)
- 日本植物防疫協会「植物防疫」誌 ‐ コナラ属・クリ混交林におけるクリシギゾウムシの寄主利用と生活史(檜垣守男、2023年)
- 日本経済新聞 ‐ 国内のゴキブリの起源か 縄文土器から「第2の発掘」(2016年6月28日)
- 今坂正一 & E-アシスト ‐ 吾が師 森本 桂先生に教えていただいたこと(2019年9月22日)
- 滋賀県 ‐ 石川県初記録のヒゲナガゾウムシ科7種を発見(2026年3月29日)
- 科研費 ‐ヒゲナガゾウムシ科の口器と寄主利用の進化と多様性
- 九州大学 ‐ 日本産クチカクシゾウムシ亜科の分類学的研究(甲虫目,ゾウムシ科)およびその発音行動についての研究 辻 尚道(2022年)
- 日本甲虫学会 ‐ 森本桂博士の逝去を悼む(2019年12月)
- 徳島県立博物館所 ‐ 徳島県立博物館所蔵石田正明コレクションのヒゲナガゾウムシ科に関する報告外村俊輔 1・今田舜介 2(2025年12月)
その他の甲虫
- Journal of The Royal Society Interface (PMC) ‐ Tiger beetles pursue prey using a proportional control law with a delay of one half-stride(2014年4月)
- EFSA ‐ Safety of frozen and dried formulations from whole yellow mealworm (Tenebrio molitor larva) as a novel food pursuant to Regulation (EU) 2015/2283(2021年7月7日)
- EUR-Lex ‐ authorising the placing on the market of frozen, dried and powder forms of yellow mealworm (Tenebrio molitor larva) as a novel food under Regulation (EU) 2015/2283 of the European Parliament and of the Council, and amending Commission Implementing Regulation (EU)(2017/2470)(2022年2月9日)
- Nature ‐ Fog basking by the Namib Desert beetle, Onymacris unguicularis(1976年7月)
- Biomimetics (PMC) ‐ Importance of Body Stance in Fog Droplet Collection by the Namib Desert Beetle(2019年8月)
- 独立行政法人 理化学研究所 ‐ ゲンジボタルの発光現象の仕組みをとらえる(SPring-8 プレスリリース)(2006年3月)
- 理化学研究所 バイオリソース研究センター ‐ ルシフェラーゼ関連遺伝子材料と発光システム(2025年12月確認)
- 環境省 ‐ 第5節 野生生物の適切な保護管理と外来種対策の強化等 1 絶滅のおそれのある種の保存
- 愛媛県 ‐ 愛媛県レッドデータブック2014:ゲンゴロウ(2014年3月)
- Honda Outdoor ‐ ハイイロゲンゴロウの生態や観察のポイント
- 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 ‐ キイロテントウとうどんこ病菌の補食生態(2021年6月)
- 農研機構 ‐ 昆虫の食性進化と植物防衛物質の克服メカニズム(2025年11月)
- Molecules(NIH)‐ (−)-Adaline from the Adalia Genus of Ladybirds Is a Potent Antagonist of Insect and Specific Mammalian Nicotinic Acetylcholine Receptors(2022年10月20日)
- Connect with NLM ‐ Static antennae act as locomotory guides that compensate for visual motion blur in a diurnal, keen-eyed predator(2014年3月22日)
- APS ‐ Switchable reflector in the Panamanian tortoise beetle Charidotella egregia (Chrysomelidae: Cassidinae)(2007年9月11日)
- Connect with NLM ‐ Underwater attachment using hairs: the functioning of spatula and sucker setae from male diving beetles(2014年8月6日)
- Connect with NLM ‐ Firefly toxin lucibufagins evolved after the origin of bioluminescence(2024年6月25日)
- Connect with NLM ‐ Fog-basking behaviour and water collection efficiency in Namib Desert Darkling beetles(2010年7月16日)
- The Royal Society ‐ Gold bugs and beyond: a review of iridescence and structural colour mechanisms in beetles (Coleoptera)(2008年10月28日)
- 国立遺伝学研究所 ‐ 日本固有のホタル「ゲンジボタル」の全ゲノム解析を達成!
~ホタルの発光周期の謎を解き明かすカギとなる成果~(2024年3月18日) - 農研機構 ‐ 飛ばないナミテントウ利用技術マニュアル(2014年)
- 岐阜県 ‐ ゲンゴロウ(2015年9月16日)
- National Library of Medicine ‐ Genome assembly of Genji firefly (Nipponoluciola cruciata) reveals novel luciferase-like luminescent proteins without peroxisome targeting signal(2024年4月1日)
- Cornell Chronicle ‐ When tiger beetles chase prey at high speeds they go blind temporarily, Cornell entomologists learn(1998年1月16日)


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