ムカデやヤスデを見て「なぜこんなに足がたくさんあるのだろう?」――そんな素朴な疑問を抱いたことはありませんか。古くから地球の循環を支えてきたこれら「多足類」と呼ばれる生き物は、恐竜が現れるよりも遥か昔から、陸上の生命として土を耕し、食物連鎖の重要な一翼を担ってきました。
誤解されがちな毒の仕組みや、そして1,000本を超える脚を持つ驚きの新種の発見など、最新の知見をもとに「足の多い生き物」について探ってみましょう。正しい知識を持つことは、不必要な恐怖を取り除き、自分らしく安心して暮らすための第一歩です。
メンフクロウ職員ムカデやヤスデと聞くと「苦手!」と思ってしまう人も少なくないと思いますが、必要以上に「こわい」と思わないためにも、これらの生き物について知識を深めておきましょう。
足の多い生き物「多足類」とは?特徴と種類をやさしく解説


足が非常に多い生き物を総称して「多足類」と呼びます。 多足類は節足動物のうち、頭部と多数の体節からなる胴部を持ち、それぞれの節に1対または2対の脚がならぶグループです。
代表的な仲間はムカデやヤスデで、ほかにコムカデやエダヒゲムシといった小型の種も含まれます。 いずれも基本的には陸上性で、土や落ち葉の中、石の下など、私たちの身近な場所にひっそりと暮らしています。



「怖い!」「気持ち悪い!」と思われることも多い多足類ですが、全てが危険というわけではありません。不必要に敬遠する前に、少し多足類の世界を覗いてみましょう。
多足類はどんなグループ?ムカデ・ヤスデと昆虫との違い





多足類を代表するのはムカデ綱とヤスデ綱で、いずれも節足動物の仲間でありながら、昆虫とは少し違った体のつくりをしています。
昆虫は「頭・胸・腹」の三つの部分にはっきり分かれ、脚は胸から出る3対6本だけという決まったルールがあります。 一方、多足類は頭部のうしろに同じような形の体節がずらりと並び、それぞれの節から脚が生えるため、全体として何十本もの脚を持つ姿になります。
ムカデは1節に1対の脚、ヤスデは多くの節が「二つ分くっついた節(重体節)」となり、そこから2対の脚が出るのが特徴です。 また、昆虫には翅をもつ種類が多いのに対して、多足類は翅をもたず、地表や地中に特化した暮らし方を選んできました。
なぜこんなに足が多いのか?体のつくりと暮らし方


出典:iNaturalist – Chicobolus spinigerus(Danny Goodding)
多足類の脚が多い理由は、生息している場所と体のつくりに深く関係しています。 多くの種は、落ち葉の下や石の裏、土の中など、狭くてでこぼこした場所を移動する必要があり、体のあちこちに脚があることで、地面をしっかりと支えながら進むことができます。
たくさんの脚が地面に触れることで、滑りにくく、転びにくくなり、細い隙間の中でも体を波打たせるように前へ押し出していくことができるのです。


出典:iNaturalist – Scolopendra hardwickei(prakrit)
ムカデの仲間は、その多くの脚をテンポよく動かして素早く走り、小さな昆虫や節足動物を追いかける肉食のハンターとして進化しました。 一方、ヤスデの仲間は多数の脚をそろえてゆっくりと動かし、落ち葉や朽ち木を食べて分解する生活に適応しています。
足が多いことは、一部の脚を失っても歩ける「予備」を持っている、という意味でもあり、壊れにくい体としての利点もあります。 こうした特徴は、節を増やしながら成長する「増節変態」※と呼ばれる発生様式とも関係しており、多足類のボディプランがどのように進化してきたかを探る手がかりとして、近年の研究でも注目されています。
※増節変態:脱皮を繰り返すごとに、体の節(体節)と足の数が増えていく成長様式のこと。



ムカデやヤスデなどの多足類の多くは、成長に合わせて身体を長くし、より多くの足を手に入れていきます 。例えば、生まれた直後は足が数対しかなくても、大人になるまでに規定の数まで増やしていくのがこの「増節変態」の特徴です 。
多足類の4つのグループ(ムカデ綱・ヤスデ綱・コムカデ綱・エダヒゲムシ綱)


多足類は、大きく4つの綱(こう)に分類されます。
- ムカデ綱(Chilopoda):扁平で細長い体と1節1対の脚を持つ肉食性のグループで、頭のすぐ後ろの脚が毒を持つ顎肢(がくし)に変化しているのが特徴(a)
- ヤスデ綱(Diplopoda):丸みのある円筒形の体を持ち、多くの体節が「二つ分がつながった節」となっていて、そこから2対の脚が生え、落ち葉や枯れた植物を食べる分解者として重要な役割(b)
- コムカデ綱(Symphyla):体長数ミリほどの小さな多足類で、白く半透明の体を持ち、土や落ち葉の隙間で暮らしながら細かな有機物や根などを食べる(c)
- エダヒゲムシ綱(Pauropoda):さらに小型で、枝分かれした触角と柔らかい体が特徴の、土壌中にすむ原始的なグループ(d)


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Myriapod order diversity
このような分類の考え方は、カール・フォン・リンネ以来の分類学の伝統を受け継ぎつつ、近年はDNA解析などの成果と組み合わせて、より正確な系統関係が探られています。
多足類は、「足がたくさんある変わった生き物」という印象の裏側に、環境に合わせて磨かれてきた生き方と体のしくみを隠し持っています。 次の章では、その代表であるムカデとゲジに焦点をあてて、より具体的な姿や暮らしぶりをのぞいていきましょう。
ムカデ綱・ゲジの世界|足の多い生き物の代表たち


出典:iNaturalist – ゲジ Thereuonema tuberculata(obsnat)
足が多い生き物と聞いて、多くの方が思い浮かべるのがムカデやゲジではないでしょうか。 素早く走る姿や鋭い毒のイメージから「こわい生き物」として見られがちですが、その体のつくりや生き方を見ていくと、じつは陸上の生態系を支える優れたハンターであることがわかります。
ここでは、ムカデ綱の基本的な特徴から、ムカデとゲジの違い、ゲジが家に現れる理由、そして世界最大級のムカデまで、4つの視点でたどっていきましょう。
ムカデ綱の特徴|速さと毒を備えた多足ハンター


出典:iNaturalist – トビズムカデ Scolopendra mutilans(andriy)
ムカデ綱(唇脚綱)は、多足類の中でも「速さ」と「攻撃力」に特化したグループです。 体は頭部と胴部の2つに大きく分かれ、胴部には1節ごとに1対ずつ脚が並びます。 頭のすぐ後ろの1対は「顎肢(がくし)」と呼ばれる毒を持つ特別な脚に変化しており、これで獲物を押さえ込み、毒を注入して動けなくします。


参考:terminal-legs ‐ ムカデの構造(2019年5月)よりGeminiで作成
ムカデの目は、単眼※がいくつか集まったシンプルな構造で、細かな形までは見えませんが、明るさや動きを感じ取るのに適しています。 その代わり、長くよく動く触角で周囲を探り、地面の振動や匂いを敏感にキャッチすることで、暗い場所でも効率よく獲物を見つけることができます。
また、種類によって脚の対数は15対から100対近くまでさまざまですが、必ず奇数対になるという特徴も知られています。 こうした独特の体の設計は、細長い体全体を使って素早く動き回るために進化してきた「多足ハンターのボディプラン」と言えるでしょう。
単眼👁️🗨️
昆虫の頭部には、大きな「複眼(ふくがん)」のほかに、小さな「単眼(たんがん)」という視覚器官が存在します。単眼は主に光の強弱や変化を素早く察知する役割を担い、飛行時の姿勢制御や活動リズムの調節に寄与していることが近年の研究で明らかになっています。


※筆者撮影
単眼の構造と複眼との機能的差異
多くの成虫が持つ「背単眼(せいたんがん:median ocellus)」は、通常、額のあたりに3個配置されています。一つのレンズ(角膜)とその下に並ぶ視覚細胞で構成される単純な作りであり、形を鮮明に捉えることはできません。
これに対し、数千の個眼が集まる複眼は、物の形や色を認識することに長けています。
単眼の最大の利点は、情報の処理速度にあります。複眼よりも脳へ信号を伝える速度が速いため、光のわずかな変化に即座に反応し、外敵から逃れたり空中でバランスを保ったりする際に極めて有効に働きます。
一方で、解像度が低いため、単眼だけで周囲の状況を詳細に把握することは困難であるという側面も持ち合わせています。
さまざまな昆虫における単眼の役割と代表例
単眼の発達度合いは、その昆虫の生活様式と密接に関係しています。特に優れた飛行能力を持つトンボや、空中での静止飛行(ホバリング)を得意とするアブの仲間では、単眼が非常に重要な役割を果たしています。
また、完全変態を行う昆虫の幼虫(イモムシなど)は「側単眼(そくたんがん)」と呼ばれる別のタイプの単眼を持ち、これが唯一の視覚手段となっている場合も少なくありません。


出典:自然観察大学ブログ ‐ イモムシの眼は筋肉袋
※東武の両脇に縦に並ぶ黒い点々が側単眼
参考・引用文献
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)Science Portal ‐ トンボの複眼は色覚遺伝子多く超多彩(2015年)
ムカデとゲジの見分け方|似ているようでまったく違う


出典:iNaturalist – Lithobius forficatus(alexis_orion)
身近な多足類の中でとくによく混同されるのが、「ムカデ」と「ゲジ」です。 どちらもムカデ綱に属しますが、外見や暮らし方にははっきりした違いがあります。


出典:iNaturalist – ゲジ Thereuonema tuberculata(wresy)
一般的に「ムカデ」と呼ばれるオオムカデの仲間は、体がやや扁平で、しっかりとした太めの脚が体の両側に並び、地面に密着するように力強く進みます。 体色は黒や赤褐色などが多く、光沢のある「いかにも強そうな」印象のものが多いのが特徴です。
一方、ゲジ(ゲジ目)は体そのものは細く短めですが、脚が長く、体から大きく外側へ広がるように伸びているため、ぱっと見ではクモに似て見えることがあります。 ゲジはムカデ類の中で珍しく原始的な複眼を持ち、動きの速い獲物を視覚でとらえることにも長けていると考えられています。
ゲジはなぜ家に出るのか?人間とのちょっと複雑な関係
お風呂場や台所で、長い脚を広げて走るゲジを見かけて驚いた経験のある方も多いかもしれません。 しかし、ゲジが家に現れる主な理由は、人を襲うためではなく、「エサと隠れ場所がそろっているから」です。
ゴキブリやハエ、ダニ、小さなクモなど、私たちにとっての不快害虫は、ゲジにとって格好の獲物であり、こうした虫が多い建物ほど、ゲジにとってもすみやすい環境になります。
ゲジは基本的に臆病で、人が近づくと長い脚を使って一気に逃げてしまいます。 人を積極的に噛むことはまれで、病原体を媒介する例もほとんど知られていません。
そのため、害虫駆除の分野では「見た目は怖いが、害虫を食べてくれる益虫」として紹介されることもあり、化学薬剤を使わずにゴキブリなどを減らす“自然派の掃除屋”という見方もできます。



害虫を食べてくれるので、筆者の生き物仲間の中ではゲジは「ナイト」や「騎士様」と呼ばれています。
一方で、突然目の前に現れる心理的な負担は無視できないため、すき間をふさいだり湿気を減らしたりして「出にくい家」にしていくことが、人とゲジの距離感をほどよく保つコツと言えそうです。



見た目に抵抗があるのは仕方ありませんが、こうして特徴を知っておけば必要以上に怖がらずに済むと思います。
世界最大のムカデはどれくらい大きい?


出典:iNaturalist – Scolopendra gigantea (jmrobertia)
ムカデの仲間には、私たちの想像を超える大型種も知られています。 とくに有名なのが、南米の熱帯地域にすむペルビアンジャイアントオオムカデ(Scolopendra gigantea )で、体長は30センチを超え、報告によっては40センチ近くに達する個体もいるとされます。
その大きさと強い毒を生かして、昆虫やクモだけでなく、小型のトカゲやカエル、ネズミなどの小型哺乳類まで捕食する、まさに「頂点クラスの多足ハンター」です。
洞窟にすむ個体では、天井に後ろ脚だけでぶら下がり、空中を飛ぶコウモリを前方の顎肢でつかまえる狩りの様子が観察されており、世界中の研究者や自然番組で紹介されてきました。 赤や黄色を帯びた派手な体色は、強力な毒と攻撃性を持つことを示す警告色と考えられています。 こうした巨大なムカデの存在は、「多足でしなやかに動く体」が、環境によってはここまで大きく進化できることを教えてくれます。



ムカデは毒顎で咬むため、素手で触れることは絶対に避けてください。
ムカデ綱とゲジの仲間は、多くの脚と鋭い顎肢、優れた感覚器官を組み合わせて、陸上の暗いすき間で獲物を追うハンターとして長い時間を生き抜いてきました。 同時に、ゲジのように人の生活空間で害虫を減らす「陰の助っ人」として働く姿もあり、恐れと感謝が入り混じる、少し不思議な関係を私たちに見せてくれます。
次の章では、これとは対照的に「ゆっくり歩く落ち葉の分解者」であるヤスデ綱に目を向け、世界一足の多い生き物たちの世界をのぞいていきましょう。
ヤスデ綱の世界|世界一足が多い生き物とは


出典:iNaturalist – Harpaphe haydeniana(thomasbarbin)
ムカデたちの俊敏な世界から少し視点を変えると、足元の落ち葉の下には、ずっと穏やかで地道に働く「土壌の掃除屋さん」ヤスデ綱(倍脚綱)の仲間が暮らしています。 攻撃的な武器は持たない代わりに、落ち葉を食べて土をつくる働きと、世界一ともいえる脚の多さを生かした独自の生存戦略を進化させてきました。
ここでは、ムカデとの違いを押さえつつ、ヤスデ綱の特徴、防御のしくみ、世界最多クラスの脚を持つ種、そして身近な観察の楽しみ方を見ていきましょう。
コラム:ムカデとヤスデの違いを一言で言うと?
一言で表現するならば、ムカデは「速い肉食ハンター」、ヤスデは「ゆっくり落ち葉を食べる分解者」です。 ムカデは1つの体節に1対(2本)の脚を持ち、扁平で光沢のある体と毒を持つ顎肢で獲物をしとめる一方で、ヤスデは多くの体節が二つ分くっついた「重体節」になっており、そこから2対(4本)の脚が生えるため、見た目に「脚がびっしり」という印象になります。


出典:iNaturalist – Brachycybe producta(jfmantis)
体つきも、ムカデが平たくしなやかなのに対して、ヤスデは断面が丸い円筒形で、マットな質感の種が多く、動きもゆっくりです。 防御の仕方も対照的で、ムカデは毒爪で噛みついて反撃するのに対し、ヤスデは自ら丸まって硬い背板と臭い液で身を守る「守りのスタイル」に特化しています。



タマヤスデのように、それほど体が長くない仲間もいます。


出典:iNaturalist – ヤマシナタマヤスデ Hyleoglomeris yamashinai(genjitsu)



タマヤスデの見た目はダンゴムシにも似ていますが、ダンゴムシ・ワラジムシは、エビやカニと同じ甲殻類の仲間で、等脚目(ワラジムシ目)に分類されます。つまり海や淡水に生息する多くの甲殻類から陸上に進出した一部のグループです。



ダンゴムシ・ワラジムシは、7対14本の脚があり、各体節に1対(2本)ずつ配置されています。これに対し、ヤスデは1つの体節に2対(4本)の脚が配置されており、総数は種によって異なりますが、数十~数百本に達します。
ヤスデ綱の特徴|ゆっくり動く「土壌の分解者」
ヤスデ綱の仲間は、落ち葉や朽ち木などの有機物を食べて分解する「分解者」として、森や土壌の健康を支える多足類です。 頭のすぐ後ろを除く多くの体節が2節分くっついた重体節となり、1節に2対4本の脚がならぶことから「倍脚類」とも呼ばれます。
多くの種は腐葉や朽ち木、土の中の腐植などを食べ、消化しやすい形にして糞として出すことで、微生物によるさらに細かい分解を助けます。 その結果、土はふかふかになり、通気性や排水性が高まって、植物の根が伸びやすい環境が整えられます。 動きはゆっくりですが、こうした日々の積み重ねが、森や畑の土の豊かさを支える大きな力になっているのです。
ヤスデはなぜ丸まるのか?身を守るしくみ


ヤスデに触れたり驚かせたりすると、くるりと渦巻き状や球状に丸まることがあります。 これは、柔らかい腹側と多数の脚を内側に隠し、硬い外骨格の背板だけを外に向けることで、自分を「小さくて固いボール」に変える防御行動です。 丸まったヤスデは、鳥や小型哺乳類にとって噛みにくく、中身に歯が届きづらい構造になっています。


出典:iNaturalist – Blaniulus guttulatus(invertebratist)
さらに多くの種は体側に「臭腺」を持ち、危険を感じるとキノン類やシアン化合物などを含む刺激臭のある液体を分泌します。 これが捕食者の口や目に触れると、強い不快感を与えて「この獲物はおいしくない」と覚えさせる効果があります。
人の皮膚につくと、かぶれやしみるような刺激を起こすこともあるため、素手で強くつかんだりこすったりしないようにしましょう。 足が遅い代わりに、防御を重ねて生き延びる――このスタイルがヤスデの進化の方向性をよく表しています。
世界最多の脚を持つヤスデたち|何本くらいあるのか


出典:WIKIMEDIA COMMONS ‐ The leggiest animal on the planet, Eumillipes persephone, from Australia
「ヤスデ」とは本来「千本足」という意味ですが、長年の研究でも1,000本を超える脚を持つ種は知られていませんでした。 その常識を塗り替えたのが、2021年に西オーストラリアの地下約60メートルから発見された新種、Eumillipes persephone(エウミリペス・ペルセフォネ)です。
このヤスデは、最も脚の多い個体で330節・1,306本という驚異的な脚数が記録され、「地球上で最も足の多い動物」として報告されました。


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Female Illacme plenipes (MIL0020) with 618 legs – ZooKeys-241-077-SP-6-left
それ以前の記録保持者は、アメリカ・カリフォルニア州などに生息するIllacme plenipes(イラクメ・プレニペス)で、最大750本の脚を持つことが知られていました。 いずれも細長い体で目が退化し、地下の細い割れ目や岩の隙間にすむ「超細身のヤスデ」で、無数の脚を使って土や岩の隙間を押し広げるように進むと考えられています。
脚の数は成長とともに増える「増節変態」によって決まり、こうした極端な形は、地下の過酷な環境に適応した結果として進化してきたと考えられています。
落ち葉の下のヤスデ観察の楽しみ方


出典:iNaturalist – Zoosphaerium neptunus(jujurenoult)



上のヤスデは英名をMadagascar Green-Emerald Giant Pill-Millipedeといい、日本では「メガボール」という愛称で呼ばれる、大型のタマヤスデです。
ヤスデは、特別な場所に行かなくても、公園や雑木林、里山の小径などで案外簡単に出会える生き物です。 少し湿った落ち葉の層や朽ち木、石の下をそっと持ち上げると、丸い体をゆっくりと動かすヤスデが見つかることがあります。



観察するときは、白いトレイや紙の上に少しだけ落ち葉と一緒に移してみると、多数の脚が波打つように動く様子がとてもよく見えます。
刺激しすぎると丸まって防御物質を出すことがあるため、長時間つついたり、強く握ったりするのは避けましょう。 観察が終わったら、元の落ち葉や石をそっと戻してあげると、彼らの暮らしをあまり乱さずにすみます。


出典:法政大学 ‐ 法政大学島野教授の研究チームが、八重山諸島(石垣島と西表島)に生息する日本最大のヤスデであるヤエヤママルヤスデを新種記載(2023年1月12日)
ヤスデがいる場所は、有機物がたくさんたまり、土がゆっくりと「つくられている」場所でもあります。 そんな視点で足元を眺めてみると、日常の散歩道が、静かに土を育てる小さな生き物たちの宇宙に見えてくるかもしれません。
ヤスデ綱の仲間たちは、ムカデとは対照的に、ゆっくりとした動きと徹底した防御、そして圧倒的な脚の数を組み合わせて、森や土壌の「分解担当」として生態系を支えています。 次の章では、さらに小さく目立たない多足類であるコムカデ綱・エダヒゲムシ綱に視点を移し、土の中の世界に潜む多足類たちの姿を追いかけていきましょう。
コムカデ綱・エダヒゲムシ綱|土の中の小さな足の多い生き物



あまり馴染みがない人がほとんどでしょうから、まずはコムカデとエダヒゲムシがどのような生き物か確認しましょう。


iNaturalist – ミゾコムカデ属 属 Scutigerella(gernotkunz)
コムカデ綱(Symphyla)は、体長2〜10ミリ程度の細長い多足類で、全身が白っぽく柔らかいのが特徴です。 成体の胴部は14体節からなり、その下側に10〜12対の脚が並び、頭部には数珠状の触角が1対伸びています。
尾の先端には小さな突起と紡糸腺があり、細い糸を出して足場を補強したり、体を支えるのに役立てていると考えられています。


出典:iNaturalist – ニホンヨロイエダヒゲムシ Eurypauropus japonicus(sable)
エダヒゲムシ綱(Pauropoda)は、さらに小さい0.5〜2ミリほどの多足類で、柔らかく半透明な体と枝分かれした独特の触角を持ちます。 脚の数は9〜11対ほどと多足類の中では控えめですが、細かい土粒のあいだを抜けるには十分で、暗く湿った土壌の中で菌類や腐植を食べて暮らしています。



どちらも目は退化しており、感覚の多くを触角に頼ることで、「光のほとんど届かない世界」に適応したグループだといえます。
土壌の中での役割と暮らし方


出典:iNaturalist – ミゾコムカデ属 属 Scutigerella(preventthetoast)
コムカデの多くは、土壌中で植物の細い根や腐植、有機物を食べながら生活しています。種によっては若い根をかじることで農作物の生育を弱めるため、英語圏では「ガーデンシンフィラン(Garden Symphylan、学名:Scutigerella immaculata)」や「ガーデンセンチピード(Garden Centipede)」として知られ、海外では土壌害虫として防除研究の対象にもなっています。



日本では明確な一般的和名が定着していませんが、分類群全体を指す「シンフィラ類」または「少脚類」という呼称が使われることもあります。
その一方で、多くのコムカデやエダヒゲムシは、落ち葉や微小な有機物、菌類を細かくして糞として出すことで、微生物による分解を促し、栄養塩を土の中に循環させる役割を担っています。


出典:iNaturalist – Pauropus lanceolatus(dmartyniuk)
彼らが土の粒のあいだを出入りすることで、微細なすき間が作られ、土の中に空気と水が通りやすくなります。 こうした土壌動物の活動は、ミミズやヤスデなど他の土壌動物とともに「団粒構造」と呼ばれるスポンジ状の土をつくり、炭素や栄養分を土壌に蓄える働きにもつながっていると考えられています。
つまり、私たちが「よい土」と感じる性質の背景には、目に見えない多足類たちの小さな動きが積み重なっているのです。



土壌生物(土の中に暮らす生き物)の世界は、まだまだ調査・研究の余地がある分野です。



誰の目にも止まりやすい大きさの生き物ほど、早い時代から研究されていますからね〜
フィールドで「土の多足類」を見つけるヒント
コムカデやエダヒゲムシをフィールドで探すには、「白くて細い小さな影」を意識して見ることがポイントになります。 森や畑、公園の植え込みなどで、少し湿った落ち葉や表層の土を白いトレイやバットの上に薄く広げ、しばらくじっと観察してみてください。
最初は何もいないように見えても、やがて土粒のあいだをすばやく走る白い線のような動き(コムカデ)や、短い距離をちょこちょこと動く極小の影(エダヒゲムシ)が見つかることがあります。


出典:iNaturalist – Pauropus furcifer(Dawid Martyniuk)
より本格的に調べたい場合は、研究で使われる「ツルグレン装置(↓)」や簡易的な落ち葉ふるいを用いて、落ち葉や土壌から小型動物を分離する方法もあります。 ただし、どちらのグループも体が非常に繊細で、強くつまむと簡単に壊れてしまうため、柔らかい筆や吸虫管でそっと扱うのが安全です。


参考:I.Field ‐ ツルグレン装置よりGeminiで作成
近年では、こうした微小な多足類をDNAで同定して土壌の生物多様性を評価する研究も進んでおり、身近な土の中にもまだ記載されていない種が潜んでいる可能性が指摘されています。



ツルグレン装置は土壌生物の調査にはとても有効ですが、大きくて管理が大変かもしれません。上の仕組みを確認して、身近なもので小型のツルグレン装置を作ってみても楽しいですよ!
コムカデ綱とエダヒゲムシ綱の仲間たちは、普段の暮らしの中ではまず目に入らない存在ですが、土の中で有機物を分解し、土壌の構造と栄養循環を支える重要な役割を担っています。 次の章では、視点を地上と水中に移し、クモや甲殻類、タコやイカといった「足の数が少し多い生き物たち」と比べながら、足の本数と暮らし方の違いを見ていきます。
多足類以外で足が多い生き物(8〜10本)


出典:iNaturalist – Thwaitesia argentiopunctata(shesgotlegs)
多足類から少し離れて視界を広げると、「8本足」や「10本足」といった、きちんと決まった本数の脚を使いこなす生き物たちも暮らしています。 クモやカニ・エビは、多足類とは違う体のつくりを持ちながら、それぞれの環境に合わせて脚を高度に使い分ける進化を遂げてきました。
ここでは、クモの8本足と甲殻類の10本足の特徴を見たうえで、多足類との違いを見ていきましょう。
クモの8本足|歩く・感じる・捕らえるための多機能な脚


出典:iNaturalist – Oviballus vidae(hrodulf)
クモはクモ綱に属する節足動物で、体が「頭胸部」と「腹部」に分かれ、頭胸部から4対8本の脚が生えています。 昆虫のような6本足でもなく、多足類のように節ごとに脚が増え続けるわけでもない、クモ類独自のバランスです。



私たちの住環境で見かけるクモの多くは、人間に直接的な害を及ぼすことはほとんどありません。



いざ目の前にクモが現れたときに「落ち着いて安全に対処すること」と例えばセアカコケグモのように「本当に危険なケースだけ見逃さないこと」が大切です。


出典:iNaturalist – セアカゴケグモ Latrodectus hasselti(lily_kumpe)
※セアカゴケグモは、ぱっと見はとても小さなクモです。
- メスの体長(脚を含まない):およそ7~12mm前後。
- 脚を広げても、全体で3cm程度の大きさとされています。
- オスの体長:およそ3~5mmほどで、メスよりかなり小さく、ほっそりした体つきです。



クモは基本的に臆病で、人が近づくと逃げることが多く、こちらから触らなければ咬まれることはめったに無いと思います。


出典:iNaturalist – Gasteracantha fornicata(t-weichselbaum)
クモの8本足は、単に歩くためだけでなく、振動を感じ取る「センサー」としての役割も兼ねています。 多くのクモは脚に細かな感覚毛を持ち、獲物が網にかかったときの揺れや、地面を伝わる振動を読み取って獲物の位置や大きさを判断します。
糸自体は腹部の出糸突起から出ますが、脚を使って糸を引き伸ばし、網を整えたり、獲物を包み込んだりする作業をこなしており、「歩く」「感じる」「捕らえる」を8本の脚で器用にこなしているのです。
カニやエビの10本足|歩く脚とハサミの役割


出典:iNaturalist – アカホシカニダマシ Neopetrolisthes maculatus(roythedivebro)
カニやエビなどの仲間は、「十脚目」と呼ばれる甲殻類のグループに属し、頭胸部から5対10本の脚(胸脚)が生えています。 このうち一番前の1対は「鋏脚(きょうきゃく)」として発達し、私たちがよく知るハサミの形になっています。
残りの4対8本が歩脚として陸上や水底を歩くのに使われ、種によっては一部がひれのような形に変化して泳ぎを助けます。


出典:JAMSTEC ‐ 深海に暮らす自給自足の達人:ゴエモンコシオリエビ(2011年12月19日)
ハサミは、エサをつかむ、殻を割る、外敵から身を守る、オス同士の争いに使うなど、多くの役割を兼ねる「多目的ツール」です。 岩場を横歩きするカニの独特の動きは、甲羅の形と脚の関節の向きが「横方向の素早い移動」に適応した結果であり、水の流れが強い環境でも踏ん張れるような構造になっています。


出典:iNaturalist – イセエビ Panulirus japonicus(r_lai)
同じ十脚類でも、エビの仲間では脚を使った細かいつまみ食いや掃除行動が発達しており、10本足を「どの仕事にどれだけ振り分けるか」が生活様式に合わせて変化していることがわかります。


出典:JAMSTEC ‐ 深海映像・画像アーカイブス タカアシガニ(1993年10月22日)
多足類とクモ・甲殻類の違い|足の本数と暮らし方の関係
多足類、クモ類、甲殻類はいずれも節足動物ですが、「体の区切り方」と「脚の本数・役割」に、はっきりした違いがあります。 多足類は同じような体節がずらりと並び、その多くの節から脚が生えていて、ムカデのように素早く走るタイプも、ヤスデのようにゆっくり進むタイプも、「たくさんの脚で地面をしっかりとらえる」という方向に特化しています。
クモは8本足にしぼる代わりに、頭胸部と腹部を分け、糸を組み合わせることで立体的な網を張ったり、空中にぶら下がったりする生活へと進化しました。 甲殻類の十脚類は10本の脚のうち2本をハサミに特化させ、食事・防御・コミュニケーションなどの仕事を任せ、残りで歩行や泳ぎを担う「分業制」を発達させています。
これらの違いは、それぞれのグループが「どのくらいの本数の脚に、どんな仕事を任せるか」という進化上の選択の結果だと考えられます。次の章では、タコやイカのように骨を持たない「筋肉の足」を操る生き物たちをとおして、足の本数と役割のちがいをさらに探求していきましょう。
水中の足が多い生き物(タコ・イカ)|足の本数と役割の違い


出典:AUSTRALIAN MUSEUM – Scary by name but not by nature(2020年2月28日)
水の中には、骨の代わりに筋肉だけで形を保ち、何本もの「腕」を自在に操る生き物たちがいます。 タコやイカは節足動物ではありませんが、多数の腕を使い分けるという点で、「水中の足の多い生き物」としてとてもおもしろい存在です。
ここでは、タコとイカの腕の本数と役割、それが陸の多足類とどう違うのかを、簡単に整理していきます。
タコの8本腕|吸盤と分散した「知能」をもつハンター


出典:iNaturalist – ミミックオクトパス Thaumoctopus mimicus(uwkwaj)
タコは頭足類に属する軟体動物で、口のまわりから8本の腕(しばしば「足」と呼ばれる)が放射状に伸びています。 各腕の内側には吸盤が何列も並び、岩に吸い付いて移動するだけでなく、触ったものの硬さや味を感じ取るセンサーとしても働いています。


出典:Smithsonian OCEAN – Glowing Sucker Octopus(2015年10月)
大きな特徴は、神経の多くが腕の中に分散していることです。タコの腕には、頭部の脳よりも多くのニューロンが存在し、太い神経索を通じて各吸盤や筋肉をきめ細かく制御しています。
そのため、腕は中央の脳からの大まかな指示を受けつつ、細かな動きや力加減は「腕自身の神経系」がかなり自律的に決めていると考えられています。 瓶のフタを開ける、迷路を抜けるといった行動実験から、タコは高い学習能力と問題解決能力を持つことが示されており、8本の腕は「動く手」と「考えるセンサー」を兼ね備えた多機能な器官と言えます。
イカは「足8本+触腕2本」|腕と触腕の役割分担


出典:AUSTRALIAN MUSEUM – Southern Bottletail Squid(2026年4月15日)
イカもタコと同じ頭足類ですが、腕の構成が少し異なります。 口の周りにはタコと同じく8本の「腕」があり、これに加えて2本の長い「触腕(しょくわん)」が伸びているため、外見上は「10本の足」を持つように見えるのが特徴です。
触腕は伸縮自在で、普段は他の腕の間にたたまれていますが、獲物を見つけると一瞬で伸びて先端の吸盤でしっかりつかみ、捕らえた獲物を8本の腕へと引き寄せます。


出典:iNaturalist – ホタルイカ Watasenia scintillans(kisaland)
8本の腕は、獲物を押さえ込む、体を支える、泳ぐときの姿勢を保つといった「保持と操作」が主な役割で、2本の触腕は「遠くから素早くつかむ」ことに特化した捕獲用の道具です。 多くのイカは体側のヒレとジェット推進を組み合わせて高速で泳ぎながら、視力のよさと触腕の瞬発力を生かして魚や甲殻類を捕食します。
同じ頭足類でも、タコが岩場をはい回る「待ち伏せ型のハンター」なのに対し、イカは開けた水中を泳ぎまわる「突撃型のハンター」として、腕と触腕を分業させていると言えるでしょう。
海の多足と陸の多足|体のつくりと進化のちがい


出典:iNaturalist – ソデイカ Thysanoteuthis rhombus(mbartick)
タコやイカの「多くの腕」は、骨や関節を持たない筋肉のかたまりからできており、三次元的に自由に曲がったり伸びたりできる「筋肉の足」です。 これに対して、ムカデやヤスデ、クモ、甲殻類などの節足動物は、硬い外骨格と関節からなる脚を持ち、それぞれの節を動かすことで地面や水底を進むしくみを選んできました。



水中では浮力が体重を支えてくれるため、陸上ほど「体を支える柱」としての脚は必要なく、そのぶん腕を「つかむ・感じる・操る」方向に柔軟に進化させることができた、と考えることもできます。


出典:iNaturaslist – メジロダコ Amphioctopus marginatus(annaewa)
陸の多足類は多くの節と脚をくり返し並べることで、不整地を安定して進む「安定重視」のボディプランを発達させました。 一方、タコやイカは、柔軟な腕を多方向に操ることで、岩の隙間に潜り込んだり、水中で獲物を包み込んだりする「柔軟性重視」のスタイルを選んだと言えます。



どちらも環境に合わせて「多くの付属肢をどう使うか」を工夫してきた結果ですね。


出典: WIKIMEDIA COMMONS – Sepia lycidas Miyajima
タコやイカは、節足動物とはまったく別の系統にいながら、「たくさんの腕をどう使いこなすか」というテーマに、海ならではの答えを出した生き物です。 次の章では、足無しの生き物から多足類、クモや甲殻類、頭足類までをふり返り、「足の本数」という視点から生き物の進化の流れについて考えてみましょう。
足の本数で見る生き物の進化|足無しから多足類まで


出典:iNaturalist – Desmoxytes purpurosea(andaman)
※ヤスデです



生き物が持つ足の本数の裏側には長い時間をかけて積み重ねられてきた進化の歴史が隠れています。
足をすべて失ったヘビやミミズから、びっしりと脚が並ぶムカデ・ヤスデ、さらに6本・8本・10本ときっちり本数が決まった昆虫やクモ、カニたちまで、それぞれの足の数には「その環境で生き延びるための理由」があります。足の有無や本数に注目してみると、生き物たちがどのように暮らし、何を得意としてきたのかが、少し違った角度から見えてきます。
「足無しの生き物」とのつながり|失われた足か、選び取った形か


出典:iNaturalist – キングコブラ Ophiophagus hannah(talibzuo)
ヘビやミミズのような足のない生き物は、一見「原始的」にも見えますが、進化の視点から見ると「足を減らす・無くす方向に進んだ例」が多く含まれます。 ヘビの化石記録や遺伝子研究からは、祖先に四本足の爬虫類がいたことが示されており、地中や草むらをくねりながら進む生活に適応するなかで、脚がじゃまな環境では「脚を退化させる方が有利だった」ことがうかがえます。
「足なし」の生き物についてはこちら👇️


出典:iNaturalist – Akymnopellis chilensis(jotalillo)
これに対して、多足類は同じ「節足動物」の中でも、体節を増やし、それぞれに脚を生やす方向に進化したグループで、土や落ち葉の中を安定して進むために、たくさんの支点を持つボディプランを発達させてきました。 分子系統学や化石研究からは、多足類の仲間がカンブリア紀にはすでに他の節足動物と分かれ、シルル紀には初期の陸上生活者として現れていたことが示唆されています。



「足無し」と「多足」は、それぞれが特定の環境に適応した結果として選び取られた、別々の進化の答えなのですね。
足の本数が変える生き方|移動・捕食・防御の進化
足の本数は、移動の方法や暮らしの場を左右する「基本条件」のひとつです。 多足類では、脱皮のたびに体節と脚を増やす「増節変態」によって、細長い体に多数の脚を並べるスタイルが維持されており、凸凹した土壌や落ち葉の層を安定して進むのに適した構造になっています。
多数の脚は、1本や2本を失っても歩き続けられる「冗長性」と引き換えに、すべてを動かし制御するためのエネルギーや神経系の負担も大きくなる、という面も持ち合わせています。
昆虫・クモ・十脚甲殻類のように「6本・8本・10本」といった決まった本数に落ち着いたグループでは、それぞれの脚に役割を分担させることで、飛翔や糸操作、ハサミによる捕食など、高度に洗練された動きが可能になりました。 哺乳類が4本足を基本とし、人類がそのうち2本を「歩くため」に、残り2本を「道具を扱う手」に特化させたことも、「限られた数の付属肢をどう役割分担するか」という進化上の選択の一つです。



こうして見ると、足の本数の違いは、「どのように動き、何を得意とするか」を決めてきた進化の戦略そのものだと分かりますね。
「足」に注目すると広がる観察の楽しみ方
これから生き物を観察するときは、「足の本数」と「動かし方」に少しだけ意識を向けてみてください。 ムカデが多数の脚を波のように動かして走る様子や、ヤスデが足の列をそろえて土を押し進める様子、クモが8本足で糸の振動を読み取る姿、カニがハサミと歩脚を器用に使い分ける動きなど、それぞれの足にはその生き物らしい「仕事」が割り振られています。
また、「ほとんどの動物の足がなぜ偶数本なのか?」という素朴な疑問も、左右相称の体のつくりや、バランスよく立つために左右一対の脚が必要になることなどを考える入口になります。 多足類の系統進化や、昆虫が多足の祖先から6本足へと落ち着く過程を扱った研究に目を通してみると、足の本数は「たまたまそうなった」のではなく、長い時間をかけて磨き上げられた設計図であることが見えてきます。



道端や森で小さな生き物に出会ったとき、「この足の本数と動き方にはどんな理由があるのだろう」と想像してみると、自分の足元に広がる進化の物語が、少し身近に感じられるようになるはずです。
足の本数というシンプルな視点から眺めるだけでも、生き物たちが環境に応じてさまざまな戦略を選び取ってきたことが見えてきます。 足がないことも、多いことも、きっちり決まった本数であることも、それぞれが「その場所で生き延びるための最適解」を探し続けてきた結果であり、そこに生き物のたくましさとおもしろさが詰まっていると言えるでしょう。
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参考・引用文献
足の多い生き物「多足類」とは?特徴と種類をやさしく解説
BioKIDS ‐ millipedes, centipedes, and relatives (Myriapoda)
Biodiversity Singapore ‐ Myriapoda (Centipedes and Millipedes)
Encyclopedia Britannica ‐ Myriapod
NCBI ‐ Millipede genomes reveal unique adaptations during myriapod evolution
NCBI ‐ Phylogenomics illuminates the backbone of the Myriapoda Tree of Life
Library of Congress ‐ How are millipedes and centipedes alike and how do they differ?
NatureSpot ‐ Centipedes & Millipedes
BioOne / Invertebrate Life オンライン教材 ‐ Arthropod Diversity: Myriapoda
Wiley Online Library ‐ Myriapoda (Including Centipedes and Millipedes)
多足類 – Wikipedia(最終更新日確認・閲覧日:2026年)
松山市 ‐ クモガタ類・多足類|レッドデータブック検索(2012年)
東京大学大学院理学系研究科 ‐ ヤスデはどのように体節や脚を増やすのか?(2023年)
JT生命誌研究館 ‐ 節足動物の進化を考える〜特に多足類と鰓脚類の系統解析から(2024年)
ムカデ綱・ゲジの世界|足の多い生き物の代表たち
アース製薬 ‐ ムカデを知る|害虫を知る(閲覧日:2026年)
Terminal Legs ‐ ムカデとは ‐ 徹底解説(2023年)
Dangerous Creatures ‐ ペルビアンジャイアントオオムカデの生態と強さ
フマキラー ‐ ゲジゲジ(ゲジ)が発生する原因とは?(2019年10月)
京都大学 ‐ 素早く機敏な運動を可能にする多足ロボットの歩行原理(2016年7月)
ヤスデ綱の世界|世界一足が多い生き物とは
CSIRO ‐ Legs for days! Scientists discover world’s first true millipede with more than 1,000 legs
Nature ‐ The first true millipede—1306 legs long
フマキラー ‐ ヤスデは駆除した方が良い?生態や被害・侵入を防ぐ方法を解説
Phys.org ‐ First millipede with more than 1,000 legs discovered
DUSKIN ‐ ヤスデはムカデの幼虫?ヤスデの生態、発生を防ぐ対策(2025年5月14日)
コムカデ綱・エダヒゲムシ綱|土の中の小さな足の多い生き物
Symphyla ‐ Soil Bugs, Massey University
Pauropoda ‐ Encyclopedia of Arkansas
Pauropoda and Symphyla ‐ Colorado State University Webmonitor
Soil Health and Arthropods: From Complex System to Worthwhile Indicator
JT生命誌研究館 ‐ 土は生きている—土壌動物が育む土壌環境(2009年)
多足類以外で足が多い生き物(8〜10本):陸上編
ブッポウソウ総合情報センター ‐ 十脚甲殻類の体の基本的構造
JT生命誌研究館 ‐ 節足動物の進化を考える〜多足類と昆虫類のゲノム系統学〜
水中の足が多い生き物(タコ・イカ)|足の本数と役割の違い
タコ ‐ Wikipedia(最終更新確認・閲覧日:2026年)
沖縄科学技術大学院大学(OIST) ‐ タコの腕には脳がある?(2020年)
Gizmodo Japan ‐ 動物の究極進化。タコの腕は、それぞれ独立して動いている(2025年)
イカの足は何本あるか知っていますか?イカの足と触腕について(秋山鮮魚部、2025年)
JT生命誌研究館 ‐ 分子系統から生物進化を探る 3-2. 六脚類の起源と節足動物(2011年)
足の本数で見る生き物の進化|足無しから多足類まで
東京大学 大学院理学系研究科 ‐ ヤスデはどのように体節や脚を増やすのか?
JT生命誌研究館 ‐ 多足類の系統関係からみた変態様式の進化
静岡大学理学部 ‐ 節足動物:繁栄への助走路を走り抜けた動物たち(講義資料、2021年)
東京大学 ‐ 哺乳類の体重の進化には歩行様式(足の着き方)が関係していた



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