春が来ると、世界は色を取り戻します。冬の間じっと待っていた生き物たちが一斉に動き出すこの季節、あなたの周りでも生命の循環に勢いがつき始めます。
遠出をしなくても、身近な公園や川辺が豊かな「冒険の地」に変わる…。そんな春の自然観察フィールドワーク入門として、初心者がはじめの一歩を踏み出すためのスタートガイドを作ってみました。
心身のリフレッシュと生物多様性への理解を同時に深めてみませんか。
ミミズク先生休日を使って張り切って出かけるも良し、休みでなくてもちょっと時間を作って、生き物に目を向けてみるのも良し。何かを見つけたり、自然の変化に気がつくことは楽しいものです。



観察の準備から記録の楽しみ方まで、あなたらしく自然と向き合えるよう、丁寧にナビゲートします!


あなたはどのタイプ?春の観察スタイル診断


自然観察に「正解のスタイル」はありませんが、自分の感性に合った楽しみ方を知っておくと、春のフィールドワークはぐっと充実します。知的好奇心をどこに向けたいのか、心がどんなときに落ち着くのかを意識することが、自然との付き合い方を長く続けるための土台になります。



結局、「何が好きか」につきますね



その「好き」を生き物に向けてもらうのも、ぼく達の重要な役目です



あなたの「しっくりくる」スタイルをイメージしながら読み進めてみてください
ここでは、大きく三つの観察タイプと、タイプに迷う方への最初の一歩を整理していきます。
宝探しタイプ(芽吹き・痕跡・落とし物)


足元の小さな変化や、生命が残したサインをじっくり味わいたい人には、「宝探しタイプ」の観察スタイルが向いています。広く歩き回るよりも、特定の微環境(特定の生物が暮らす、ごく狭い範囲の環境条件)を丁寧に見ていくのが得意分野です。


出典:iNaturalist – ギフチョウ Luehdorfia japonica (kat_ohmori)
例えば、早春の林床で、スプリング・エフェメラル(早春だけ地上に姿を見せる春植物)のカタクリ(Erythronium japonicum )が一斉に咲き、初夏には地上部を消してしまう姿は、「限られた時間で光を使い切る」適応戦略の象徴的な例と言えます。
カタクリの種子にはエライオソーム※(アリを引き寄せる物質)が付いており、アリに運んでもらうことで種を広げる仕組みになっています。このような「秘密」を知ると、足元の一輪から森全体のネットワークが想像できるようになります。
エライオソーム🐜🌱
エライオソームは、アリによる種子散布(アリ散布=ミルメココリー)に使われる、脂質やアミノ酸を多く含む種子についた「報酬」部分です。カタクリ(Erythronium japonicum )やスミレ類(Viola spp.)、セントウソウ類、海外ではスプリング・エフェメラルのトラウトリリー(Erythronium americanum )ど、多くの林床植物でよく発達しています。


出典:The University of Chicago Press ‐ Seed Dispersal by Ants: A Primer
アリはエライオソームを目当てに種子を巣へ運び、食べたあとで硬い本体を巣外や巣の周辺に捨てるため、植物は種子を天敵の多い親株の足元から離し、養分の多い場所へ運んでもらえるという利益を得ます。一方で、エライオソームの合成には植物側の大きな「コスト」がかかり、場合によってはシカや甲虫など他の植食者の目立つ標的になる、アリが必ずしも遠くまで運ばない、温暖化でアリの活動パターンが変わると散布サービスが不安定になる、といったリスクも指摘されています。
また、種によってはエライオソームに含まれる成分が発芽を一時的に抑える、あるいは除去されることで発芽が促進されるなど、発芽制御の役割を持つ場合もあり、単純な「報酬」以上の多機能な構造として研究が進められています。このように、エライオソームは植物とアリの双方にメリットとデメリットをもたらす「相利共生〜片利共生のあいだ」の複雑な関係を支える鍵となる形質とみなされています。
参考・引用文献


出典:iNatiralist – オオイヌノフグリ Veronica persica (kai_schablewski)
こうした静かな対象は逃げないため、ルーペでオオイヌノフグリ(Veronica persica )の花びらの筋模様を追ったり、キツツキの食痕や落ちた羽根をスケッチしたりと、自分のペースで観察を深められます。秋になれば、同じ場所でフクジュソウ(福寿草 Adonis ramosa )やエンレイソウ(延齢草 Trillium smallii )の葉痕や、木の実を探す楽しみへとつながり、季節をまたいだ「連続性」を感じ取りやすくなります。


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Trillium smallii (flower s10)



日本の四季は本当に美しいものです
まずは「春の野草&足元クエスト10」から始めてみましょう(詳しいミッションは書籍版にて)。
ハンタータイプ(昆虫・野鳥・両生類)


動きのある対象を追いかけ、その一瞬を逃さず切り取るスリルを味わいたい人には、「ハンタータイプ」の探検がおすすめです。動物行動学(動物の行動を機能や進化などの観点から読み解く学問)の視点を少し取り入れると、「なぜ今ここで、その動きをしているのか」という問いが生まれ、観察がより立体的になります。


出典:iNaturalist – ニホンアカガエル Rana japonica (timur_kalininsky)
春先の田んぼでは、ニホンアカガエル(Rana japonica )が冷たい水の中で一斉に産卵を行い、その広がりは「産卵前線」として季節の進行を示す現象にもなっています。


アカガエル産卵前線について詳しくは…


出典:iNaturalist – コツバメ Ahlbergia ferrea (sui)
地域によっては、水田のカエルの産卵状況が、里山環境の健全さを測る指標生物として活用されることもあります。 林縁では、年に一度だけ春に現れるシジミチョウ科(Lycaenidae)のコツバメ(Callophrys ferrea )が、樹皮そっくりの模様で擬態しながら枝にとまる様子を観察できます。


出典:iNatiralist – シジュウカラ Parus cinereus (naturalistsy)
すばやく動く対象が多いため、双眼鏡やカメラを構えて待つ時間も長くなりますが、その分、モンキチョウが翅を開く瞬間や、シジュウカラが逆さまになって虫を探す仕草に出会えたときの喜びはひとしおです。
まずは「春の蝶ハンティングクエスト」に挑戦してみてください(詳しいミッションは書籍版にて)。
散歩・癒やしタイプ(風景・季節感・五感)


名前を覚えることよりも、春の空気に身をゆだねて心を整えたい方には、「散歩・癒やしタイプ」のスタイルがいいでしょう。森林医学(森林環境が人の健康に与える影響を調べる学問)では、森を歩くことでストレスホルモンであるコルチゾールが減少し、自律神経のバランスが整うことが報告されています。



年中のんびりしたいのですが、春はとくに外でのんびりしたいですね〜


出典:iNaturalist – クロモジ Lindera umbellata (skycat)
クロモジ(Lindera umbellata )の枝に含まれるリナロール主体の精油や、森のフィトンチッド(樹木が放つ揮発性物質)は、ナチュラルキラー細胞(免疫を担う細胞)の働きを高める効果があることも示されています。 春の森で、新芽の柔らかな緑を眺め、鳥の囀りや水音に耳を澄まし、土の匂いを深呼吸で味わう時間は、単なる気分転換を超えて、心身のリフレッシュとしての意味を持ちます。
スマートフォンをポケットにしまい、ベンチで空を見上げる数分間だけでも、立派な「五感の観察」として自分を整える時間になります。
まずは「五感で巡る春さんぽクエスト」から、自分のペースで試してみてください(詳しいミッションは書籍版にて)。
どのタイプでも大丈夫。最初の一歩はここから
三つのタイプはきれいに分かれているわけではなく、多くの方が「今日は宝探し寄り」「今日はハンター寄り」と、気分や体調に応じて行き来しています。大事なのは、自分をどれか一つに固定することではなく、「このやり方なら今の自分でもできそう」と感じる入口を見つけることです。
たとえば宝探しタイプなら「自宅近くの公園で、地面から5センチほどの高さまでに見える新芽を3種類だけ探す」、ハンタータイプなら「早朝の道で、スズメ以外の小鳥を1種類見つけてみる」、散歩・癒やしタイプなら「気に入った一本の木を決めて、週に一度だけ変化を眺める」といったシンプルな目標から始めてもいいでしょう。こうした定点観察の習慣は、気象庁の生物季節観測でソメイヨシノを標本木として追う手法とも通じるもので、長く続けることで季節や気候の変化に気づく「自然を見る目」が少しずつ育っていきます。



自分にあったスタイルをイメージできたでしょうか?次は「どこに行くか」について、考えてみましょう!


どこへ行く?フィールドの選び方


春の自然観察を楽しむうえで、「どんな場所を選ぶか」はとても重要ですが、必ずしも遠くの有名スポットである必要はありません。生き物が暮らしやすい環境の条件を少し意識するだけで、通い慣れた道や近所の公園が、豊かな観察フィールドへと姿を変えていきます。
ここでは、身近な範囲からの始め方、生き物が集まりやすい場所の見つけ方、安全に楽しむための基本について確認します。基本を少し知っておくと、「次の休日、まずどこへ行ってみようか」が自然と決まっていきます。
まずは「半径1km」から始めよう


出典:iNaturalist – ウメ Prunus mume (hilyshao)



歩いていて、香りの主の姿は見えなくても、どこかで花の咲いている香りに出会うのも春ならではの楽しみですね〜
自然観察の第一歩としておすすめなのは、自宅や学校、職場から半径1キロメートルほどの「生活圏フィールド」を見つけることです。近所の公園、川の土手、緑道、社寺の境内、路傍の植え込みなどは、季節の移ろいによる変化を継続的に追いやすい場所です。


出典:iNaturalist – ナナホシテントウ Coccinella septempunctata (skorupiak1618)
毎日または週に一度、同じ道を歩くことで、昨日までは見られなかったウメ (Prunus mume )の開花や、ナナホシテントウ(Coccinella septempunctata )が越冬から目覚めて動き出す瞬間といった、小さな変化に気づけるようになります。
こうした定点観察の積み重ねは、気象庁の生物季節観測のように、季節や気候変動を読み解く手がかりにもなりうることが指摘されています。身近なフィールドを持つことは、今後、遠方の自然公園を訪れた際に「自分の町との違い」を比較する基準にもなり、観察の奥行きを深めてくれます。



ミミズク先生はもう何十年も、たくさんの決まった場所を回って採集され続けてらっしゃいますね



もう、すっかり習慣で…



私の生まれる前から、ミミズク先生の採集記録が途切れることなくコンスタントに!!スゴイ!!しかも標本もキレイ!!



ミミズク先生のコレクションは、データラベルもきっちり書いてありますから、入力作業も捗ります~♪
生き物が集まりやすい「ポイント」の見つけ方


出典:iNaturalist – ビロウドツリアブ Bombylius major (adinie)
同じフィールドの中でも、生き物が特に集まりやすい「ホットスポット」のような場所があります。その代表が、異なる環境が接するエコトーン(生態学的な境界帯)です。


出典:環境省 ‐ 睡蓮鉢で、コンテナで ビオトープをつくろう
森林と草地、陸地と水辺の境界などは、両方の環境を行き来する生き物が集まるため、多くの種が見られやすいとされています。春先の林縁では、早く温まる日だまりにビロウドツリアブ(Bombylius major )がふわりとホバリングしながら花の蜜を吸う姿が見られ、南向きの斜面ではチョウやトカゲの活動が一足早く始まります。
出典:広島大学 ‐ニホントカゲ



春には婚姻色(オレンジ色)に色づいたニホントカゲのオスも観察できます。


出典:iNaturalist – ニホントカゲ Plestiodon japonicus (rick_franks)



もっと暖かくなってくると、美しいシマ模様と青い尾の幼体も現れますよ
水辺では、鳥が水を飲みに来たり、カエルやトンボが繁殖のために集まったりと、時間帯によって登場する生き物が変化します。落ち葉が吹き寄せられて厚くたまった場所は、ダンゴムシやミミズなど分解者の活動が活発な「足元の森」と考えることができます。


出典:iNaturalist – カイツブリ Tachybaptus ruficollis (varmax)



一年を通して見られる鳥たちも、多くが繁殖期を迎え、中には鮮やかな色の羽毛(繁殖羽)に生え変わるものもいます。


出典:iNaturalist – テングチョウ 日本本土亜種 Libythea lepita ssp. celtoides (ovosapiens)


出典:iNaturalist – テングチョウ 日本本土亜種 Libythea lepita ssp. celtoides (shige-kanao)



成虫越冬したテングチョウも動き出します
時間帯の目安としては、早朝は鳥のさえずり、午前中は光が柔らかく写真向き、日中はチョウや花が狙い目というリズムを覚えておくと便利です。
出発前の安全確認チェックリスト
春のフィールドワークを安心して楽しむためには、出かける前のひと手間がとても大切です。少しだけ準備に時間をかけることで、現地での不安やトラブルを減らし、目の前の自然に集中しやすくなります。
出発前に自宅で確認すること
- 天気予報・注意報・警報を確認し、急な雷雨・強風・低温の恐れがないかチェックする
- 行き先とおおよその帰宅時間を、家族や友人に伝えておく
- スマートフォンを満充電にし、地図アプリ・連絡手段・位置情報共有アプリが使えるか確かめる
- 服装と装備を見直す(長袖・長ズボン・帽子・歩きやすい靴、必要ならレインウェア)
- 飲み物・軽食・救急セット(絆創膏、消毒、常備薬など)・虫よけスプレーを用意する
- 花粉症薬や持病の薬、モバイルバッテリー、ホイッスル(緊急時の合図用)を持つか検討する
- 日没時刻を確認し、余裕を持って行動できるよう出発・帰宅の時間を調整する
現地に到着したら確認すること
- まず案内看板や注意書きを読み、その場所特有のルールを把握する
- 立入禁止区域
- 火気厳禁の範囲
- 動植物の採取禁止・制限の有無
- クマ・マムシ・スズメバチ・マダニなど、危険生物に関する注意喚起がないか確認する
- トイレの場所、ビジターセンターや管理棟など、困ったときに頼れる施設の位置を確かめる
- 雨や体調不良のときにすぐ戻れるよう、避難経路や最寄りのバス停・駅の位置を地図で確認しておく
観察中に意識しておきたいこと
- 体調に少しでも違和感があれば、無理をせず早めに切り上げる「引き返す勇気」を持つ
- 人の少ない場所や見通しの悪い山道では、無理な単独行動を避ける
- ときどき現在地と時刻を確認し、予定より遅れていないかをチェックする
- 有毒生物を見かけたら、「近づかない・刺激しない・静かに距離を取る」の三原則を守り、むやみに触れない
こうした準備と心構えが整っていると、フィールドでの一瞬一瞬を、より落ち着いた気持ちで味わえるようになります。



次は、選んだフィールドで快適に過ごし、十分に観察を楽しむための装備と持ち物について見ていきましょう。


これだけあれば安心!装備と持ち物


春の自然観察を、安心してじっくり楽しむためには、難しい専門装備よりも「自分のスタイルにちょうどよい基本セット」を整えることが大切です。厳しい冬を越えたばかりのフィールドは、寒暖差や花粉、虫の活動など、春ならではの条件が重なります。
無理のない範囲で服装と持ち物を整えておくと、トラブルを避けつつ観察に集中しやすくなります。ここでは、野外活動の安全指針にもとづきながら、服装・観察道具・安全と快適さを支えるアイテムの三つに分けて整理していきます。
①基本の服装 ― 長袖・長ズボン・帽子
春のフィールドでは、紫外線、気温差、草木との接触、マダニや蚊などへの対策を兼ねた「肌を守る服装」が基本になります。厚生労働省や林野庁なども、野外活動時には長袖・長ズボン・つば付きの帽子を推奨しており、刺す・かぶれる・切れるといったトラブルを減らす効果が期待できます。



筆者は軍手とゴム手袋も必ず持っていきます。
服の色は、マダニを見つけやすく、かつスズメバチを刺激しにくいという観点から、淡いベージュやグレーなどの明るい色が無難です。春は気温の変化が大きいため、Tシャツの上に薄手の長袖シャツやウィンドブレーカーを重ねる「重ね着」にしておくと、暑くなったら脱ぐ・寒くなったら着るといった調整がしやすくなります。



蚊などの虫が止まりにくい素材や虫よけ効果のあるUVカットパーカーなど、最近は高機能の上着も販売されています
足元はサンダルではなく、かかとがしっかり固定されるスニーカーや軽量のハイキングシューズを選ぶと、未舗装の道や斜面でも安定して歩くことができます。



水際に行くときはやっぱり長靴ですね~!マムシも怖いですし…
観察の三種の神器「メモ・ルーペ・スマホ」
特別な高価な機材がなくても、
- 記録する
- 拡大して見る
- その場で調べる
の三つがそろうだけで観察の世界は大きく広がります。フィールドノートとペンは、日時、場所、天気、見つけた生き物や感じたことを書き留めるための基本アイテムで、市民科学プロジェクトでも「写真と位置情報+簡単なメモ」が重要なデータとして活用されています。



時々、コンパクトな水彩絵の具セットで風景画を描いている方も見かけます。素敵ですね~
ルーペは、5~10倍前後のものが扱いやすく、オオイヌノフグリの花の内側の模様や、ダンゴムシの体の節、葉の毛などをはっきりと観察することができます。高倍率のルーペは、ルーペを目の近くに固定し、対象のほうを前後させてピントを合わせると、ブレが少なく観察しやすくなります。



ぼくは基本的に採集して顕微鏡で観察しますが、ルーペを持っていく人は「失くさない」工夫をしましょう!



タヌ山先生は採集に夢中になって、持ちものをどんどん置き去りにしていきますからね…
スマホは、カメラとして記録を残すだけでなく、Biome やiNaturalistなどの画像検索を利用した識別アプリで、その場で生き物の名前や情報を調べることができる「ポケット図鑑」として役立ちます。



Biome やiNaturalistなどのアプリは、アカウントを作成すれば観察の記録もできて、他のユーザーとも観察記録を共有できるので楽しみが広がります
双眼鏡は必須ではありませんが、8倍程度のコンパクトなものが一つあると、遠くの野鳥やチョウの観察が格段に楽しくなります。
安全・快適のための最低限アイテム
自然観察を気持ちよく楽しむためには、「少なすぎず、多すぎない」持ち物を整えることが大切です。近所の公園や川沿いの散歩でも、ちょっとした準備があるだけで、疲れにくく、トラブルにも落ち着いて対処しやすくなります。
共通アイテム(どこへ行くときもベースにしたいもの)
- 飲み物
こまめに水分補給できるよう、水筒やペットボトルを1本は用意しておきます。 - 軽食
チョコレートやナッツ、ビスケットなど、小腹がすいたときにすぐ食べられるものを少し。 - タオル
汗拭き用としてはもちろん、首元の保温や簡易的な日よけとしても使える万能アイテムです。 - 虫よけ
春から活動する蚊やブユ、マダニへの対策として、スプレーやワンプッシュタイプの忌避剤を1本持っておきましょう。 - 簡易救急セット
絆創膏、消毒用シート、虫刺され薬、必要であれば常備薬を、ポーチなどにまとめておくと安心です。 - ティッシュ・ウェットティッシュ
手を拭く、汚れを落とす、花粉症の鼻水対策など、細かい場面で役立ちます。 - ゴミ袋
自分のゴミを必ず持ち帰るための小さな袋を1〜2枚。濡れたものを入れる用途にも便利です。 - スマートフォンと充電の確認
緊急連絡・地図・カメラとして使うため、出発前にバッテリー残量を確認し、不安ならモバイルバッテリーも1つ用意します。
天候や体質に応じて追加したいもの
- レインウェア/折りたたみ傘
近場中心なら折りたたみ傘でも十分ですが、歩く距離が長いときは軽量レインウェアのほうが両手が空いて安全です。 - 花粉症対策グッズ
マスク、目薬、常用しているアレルギー薬など。花粉の多い日は観察時間を短めにするだけでも身体が楽になります。 - 日焼け止め・帽子・サングラス
春でも紫外線は十分強いため、顔や首、手の甲など露出しやすい部分のケアをしておきましょう。
場所別に加えると安心なもの
🐟水辺(川・池・湿地)に行く場合
- 長靴または防水性のある靴(ぬかるみや浅い水辺を歩く可能性があるとき)
- 予備の靴下とタオル(足元が濡れたときのため)
- 帰りの履物と濡れたものを入れる袋
🌲林や山道に入る場合
- ホイッスル(迷子や緊急時の合図用)
- 小型ライトまたはヘッドライト(思ったより帰りが遅くなったときの備え)
- 紙の地図やコンパス(スマホの電波・バッテリーが頼れない状況への保険)
- 熊鈴やラジオなど、音が出るもの(地域の注意情報に応じて判断)
🥾長時間・少し遠出をするとき
- 行動食を少し追加(おにぎりやパンなど、しっかり空腹を満たせるもの)
- レジャーシート(休憩するときに地面に直接座らずに済む)
- 予備バッテリー(写真や地図アプリを多用する場合の安心材料)



軽量・コンパクトな折りたたみ椅子や、防水・断熱素材のたためる座布団などもレジャーシートの代わりに良いですよ
すべてを一度にそろえる必要はなく、「今日はどこへ、どれくらいの時間行くか」を出発前に思い浮かべながら、必要なものだけをコンパクトに選ぶのがコツです。少しずつ自分なりの定番セットができてくると、ふと思い立ったときにも、安心して「今日の冒険」に出かけやすくなります。



mont-bell(モンベル)の登山装備ガイドに掲載されていた一覧も参考までに貼っておきます。👇️


出典:mont-bell ‐ 登山装備ガイド 基本編(2025年8月6日)
(1)ヘッドランプ (2)サングラス (3)ウインドシェル (4)レインパンツ (5)レインジャケット (6)バックパック (7)クッション (8)ネックゲーター (9)グローブ (10)マスク (11)ウォーターパック (12)マップケース、地図、コンパス (13)虫よけスプレー、ウェットティッシュ、タオル、ビニール袋 (14)フリーズドライ食品 (15)バーナー&クッカー(ジェットボイル)、カップ、カトラリー (16)サコッシュ、財布、筆記用具、行動食、サプリメント (17)モバイルバッテリー、乾電池、ホイッスル、ライター、リップクリーム、マルチツールナイフ、日焼け止め (18)携帯トイレキット、ティッシュ (19)手ぬぐい (20)エマージェンシーシート (21)救急セット
装備を整えることは、自然と向き合う自分自身をていねいに整えることでもあります。必要十分な服装と持ち物がそろっていると、「何かあっても大丈夫」という安心感が生まれ、目の前の生き物や風景に、より穏やかな気持ちで集中できるようになります。



筆者は装備を整えるのも楽しみの一つです!
装備とフィールドが整ったら、いよいよ春の生き物たちを探す時間です。次の章からは、こうして準備した装備を携えて出かけた先で、春に出会いやすい生き物たちを、どのように探せばよいのか見ていきます。


春に出会える生き物たち:植物編


春の植物観察を楽しむためのコツは、知識よりもまず「見方」を少し変えてみることです。視線の高さや歩く速さを工夫するだけで、同じ散歩道でも見えてくる花の数が大きく変わってきます。ここでは、初心者の方が身につけておきたい基本の観察法と、春にぜひ出会いたい代表的な植物を環境ごとにまとめます。
観察を始める前に意識したい3つの視点
- 目線を下げる・止まる・見上げる
立ったまま歩いていると、足元の小さな花や冬芽はどうしても見落としがちです。ときどき立ち止まり、しゃがんで地面に近い視点から足元を眺め、次に周囲の目の高さ、最後に頭上の枝先を見上げる、という「三段階の目線」を意識してみてください。
これだけで、観察できる対象が一気に増えていきます。 - 色と形の「サイン」を手がかりにする
最初は「黄色だけ探す」「紫色だけ探す」というように、色を決めて歩くと、春のサインが見つけやすくなります。タンポポや菜の花の黄色、スミレやホトケノザの紫など、色のかたまりに気づいたら近づき、花びらの枚数や葉の付き方など、形の特徴も合わせて観察してみましょう。 - 光と時間帯を味方にする
春の花の多くは、太陽の光に反応して開閉します。晴れた日の午前〜昼過ぎ、日当たりの良い斜面や開けた場所を歩くと、いきいきと開いた花の姿を見られることが多くなります。
逆に、曇りの日や夕方にはつぼみのまま、あるいは閉じてしまうこともあるため、「時間帯」と「日当たり」は意識しておきたいポイントです。
道端・公園の芝生・舗装の隙間で出会える春の植物


出典:iNaturalist – ホトケノザ Lamium amplexicaule (lejones417)
- オオイヌノフグリ(Veronica persica )
道端や舗装のすき間、公園の芝生などに群生する、空色の小さな花です。晴れた日には花が開き、雨や夕方には閉じる性質があるので、時間による変化も観察してみてください。 - ホトケノザ(Lamium amplexicaule )
ピンク色の筒状の花が段々に並ぶ姿が特徴です。畑の縁や空き地など、人の暮らしに近い場所でもよく見られます。花の形や葉の付き方を、しゃがんでじっくり眺めてみましょう。 - タンポポ類(Taraxacum spp.)
春を代表する黄色い花で、公園や道端に広く見られます。花の下の総苞片(ガクのような部分)がそり返っているかどうかで、外来種と在来種の違いにも気づけるようになります。 - ナズナ(Capsella bursa-pastoris )
別名「ペンペン草」。細い茎の先に小さな白い花と、ハート形の果実をつけます。道端や畑のまわりで、実の形や揺れ方を観察してみてください。



ありふれた草花も、「その年一番」に見つけたときは嬉しいですね!
公園・林の縁・雑木林で出会える春の植物


出典:iNaturalist – タチツボスミレ Viola grypoceras (gbno)
- タチツボスミレ(Viola grypoceras )
日本でもっとも身近なスミレの一つで、ハート形の葉と淡い紫の花が特徴です。公園の片隅や林道沿いなどで、しゃがんで探してみると見つかりやすくなります。 - カタクリ(Erythronium japonicum )
落葉樹の林床に咲くスプリング・エフェメラル(春の妖精)の代表格です。晴れた日の日中だけ花を大きく反り返らせて開くので、開花のタイミングをねらって出かけるとよいでしょう。 - ニリンソウ(Anemone flaccida )
林床に白い花をたくさん咲かせる植物で、1本の茎にふたつの花をつける姿から「ニリンソウ」と呼ばれます。群落の広がりを、少し離れた場所から眺めるのもおすすめです。 - キクザキイチゲ(Anemone pseudoaltaica ) 落葉樹林の林床に咲く、淡い青紫色または白色の花を持つキンポウゲ科の多年草です。花びらに見える部分は実は萼片で、日が当たると開き、曇りや夜には閉じる性質があります。北海道から本州中部の山地でよく見られ、カタクリと同じ環境に生えることも多いため、両方を一度に観察できる場所もあります。
頭上の枝先で見つける「春のサイン」


出典:iNaturalist – コブシ Magnolia kobus (belvedere04)
- ソメイヨシノ(Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)
つぼみが膨らみ、花が咲き、やがて葉桜になるまでの変化は、春の進み方を知るわかりやすい手がかりです。同じ木を何度か見上げて、様子の変化を追ってみてください。 - コブシ(Magnolia kobus )
葉より先に白い花を咲かせるため、少し離れた場所からでもよく目立つ高木です。つぼみの形や、花が咲いた枝ぶりを観察してみると、ほかの木との違いが見えてきます。 - ケヤキ(Zelkova serrata )、イチョウ(Ginkgo biloba )
冬芽がほころんで赤みを帯びた新芽が現れ、次第に若草色の葉が広がっていきます。数日おきに同じ木を見上げると、「芽吹きのスピード」の違いを体感できます。
イチョウは意外と貴重な植物!?興味がある人にはこちらもおすすめ👇️
水辺・湿った場所で見つける植物


出典:iNaturalist – セリ Oenanthe javanica (keitawatanabe)
- ツクシ(スギナの胞子茎 Equisetum arvense )
田んぼのあぜや河川敷の土手など、湿り気のある場所に早春から顔を出します。背丈の低いツクシを探すときこそ、しゃがんで足元をじっくり見る習慣が活きてきます。 - セリ(Oenanthe javanica )
水路や湿地の縁に生えるセリ科の植物です。似た植物も多いので、葉の形や香りを確かめながら、野草として安易に食べないなど安全面にも配慮して観察を続けてください。 - ショウブ(Acorus calamus ) 菖蒲湯に使われる植物で、水辺や湿地に生える多年草です。初夏に花を咲かせますが、早春から剣状の葉が伸び始める様子が観察できます。アヤメ科のハナショウブやカキツバタと混同されやすいですが、ショウブはサトイモ科で、葉に芳香があるのが特徴です。
- フキ(Petasites japonicus ) フキノトウとして知られる蕾の後、大きな丸い葉を展開します。水辺や湿った斜面に群生し、初夏には人の背丈を超えるほどの葉になることもあります。雌雄異株で、雌株と雄株で花の形が異なるため、観察すると面白い発見があります。日本原産の山菜として古くから利用されてきました。


出典:iNaturalist – フキ Petasites japonicus (celuby)



ついでに「食べられる草」を探すのも楽しいですよ!ただし、初心者は絶対に調べて安全を確認してから食べてください。筆者はこの本で確認しています👇️
こうして「どこを、どの高さから、何色を手がかりに見るか」を意識して歩いてみると、同じ道でも毎週ちがう表情を見せてくれます。気になった植物は、写真と一行のメモ(場所・日付・環境)を残しておくと、自分だけの「春の植物図鑑」が少しずつ育っていきます。


春に出会える生き物たち:昆虫編





上のイラストで私が持っているのはビーティングネットと言って、木の枝を揺すって落ちてくる昆虫を受けるためのものです。本当は下のような作りになっています。


出典:むし社オンラインショップ ‐ ビーティングネット N-TYPE 布のみ



申し訳ございません、AIイラスト生成ではあれが限界でした…今後プロンプトの工夫します…



ミミズク先生は甲虫のファウナ※も研究対象にされていますから、様々なトラップも駆使されています。いつか紹介できるといいですね!
ファウナ(動物相)🦌🦉🦋
ファウナ(動物相 fauna)とは、特定の地域や時代に「どんな種類の動物がいるか」をまとめた、動物の種類の集まりを指す言葉です。たとえば「日本の春のファウナ」といえば、その時期の日本で見られる哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類・昆虫など、すべての野生動物の種のリストにあたります。
植物の種類の集まりを表すフローラ(植物相 flora)と対になる概念で、両方を合わせてビオタ(生物相 biota)と呼ぶこともあります。ファウナは、個々の動物の数や強弱ではなく、「そこにどの種が存在するか」という構成を扱うため、生態学・動物地理学・保全生物学などでは、生物多様性や環境変化、外来種の侵入状況を評価するための基礎データとして重要です。
歴史的には、『Fauna Japonica(日本動物誌)』のような動物誌が、日本や各地域のファウナを世界に紹介し、その後の分類学・保全研究の土台となってきました。フィールドワークで自分が出会った動物の種名を少しずつ記録していくことは、その場所のファウナの一部を自分の手で描き出していくことでもあります。


出典:環境省 ‐ 生物多様性保全上重要な里地里山(略称「重要里地里山」)
参考・引用文献
春の昆虫たちは、「あたたかい場所」と「食べ物のある場所」をめがけて動き始めます。この二つの条件がそろうポイントを押さえておくと、初心者でもぐっと見つけやすくなります。
まず身につけたい探し方のコツ
- 日だまりで「追う」のではなく「待つ」
チョウやハナアブ、ハチの仲間は、日当たりの良い場所で体を温めながら花を訪れます。南向きの斜面や、よく日に当たる花壇・畑のそばで立ち止まり、花の上を行き来する動きを静かに待ってみてください。飛んでいるときは追いかけず、「花にとまる瞬間」をねらうと、翅の模様や口の動きまで、落ち着いて観察できます。 - 「花・新芽・地面」の三か所をセットで見る
春の昆虫は、花(蜜と花粉)、新芽やつぼみ(アブラムシや幼虫)、地面(アリやダンゴムシなど)に集まりやすくなります。ひとつの場所に来たら、「花の上と周り→新芽やつぼみの付近→足元の地面やアリの列」の順で視線を動かしてみてください。何もいないように見えても、小さな動きが意外と見つかります。 - 裏・隙間・下を「そっと」覗く
葉の裏、石や倒木の下、落ち葉の下は、多くの小さな虫たちのかくれ家です。葉をそっとめくる、落ち葉を少し横にずらす、石を片側からゆっくり持ち上げると、ダンゴムシやハサミムシ、越冬明けのテントウムシなどが見つかることがあります。観察が終わったら、必ず元の向き・元の場所に静かに戻し、生き物をつぶさないようにすることが大切です。 - 自分の「影」と動きに気をつける
昆虫は影や振動にとても敏感です。近づくときは、虫に自分の影がかからない位置から回り込み、足音や草を大きく揺らす動きを避けながら、ゆっくり距離を縮めてみてください。急な手の動きや、大きな声は控えめにすると、より自然な行動を観察できます。



慣れてくると、どんどん昆虫が目に留まるようになります



レベルが上がると、擬態していても「そこ!」と見抜けるようになりますよ!
公園・花壇・畑のまわり


出典:iNaturalist – モンシロチョウ Pieris rapae (tomaaasv)
- モンシロチョウ(Pieris rapae )
アブラナ科の花(菜の花、キャベツなど)の上をひらひら飛ぶ白いチョウです。飛んでいるときは追わず、花にとまった瞬間に翅の模様や口吻で蜜を吸う様子を観察してみましょう。 - ナナホシテントウ(Coccinella septempunctata )
新芽やつぼみに群がるアブラムシのそばにいることが多いテントウムシです。じっと見ていると、アブラムシを捕まえて食べる様子や、葉の裏で休んでいる姿が見られます。 - ハナアブの仲間(Syrphidae など)
花の上でホバリング(その場で静止飛行)しながら蜜や花粉を食べます。ミツバチに似た姿ですが、翅が1対で、目が大きいことなどの違いにも注目してみてください。
道端・草地・校庭まわり


出典:iNaturalist – ヒゲジロハサミムシ Anisolabella marginalis (nomolosx)
- クロヤマアリ(Formica japonica )などアリ類
地面のひび割れや石のすき間に巣を作り、列をつくって餌を運びます。列をたどると、何を運んでいるのか、どこから来ているのかが分かり、行動パターンの観察にぴったりです。 - ダンゴムシ(オカダンゴムシ Armadillidium vulgare )
花壇の縁や石の下、湿った場所に多くいます。ダンゴムシは丸まり、ワラジムシ(Porcellio scaber )は丸まらずに走って逃げるなど、防御のしかたの違いを見比べてみると面白くなります。 - ハサミムシ(ヒゲジロハサミムシ Anisolabella marginalis など)
お尻のはさみが特徴の昆虫で、落ち葉の下や石の裏にいます。見つけたら、どのように体を隠しているかをそっと観察してみてください(素手で触らず、割りばしなどを使うとより安全です)。



落ち葉や石などの下の適度に湿った場所には、たくさんの生き物が暮らしています。ただし、動かすときは安全を確認してから、観察が終わった後はそっともとに戻しましょう。
林の縁・雑木林の中


出典:iNaturalist – クジャクチョウ Aglais io (exonie)
- ルリタテハ(Kaniska canace )
翅の裏は枯れ葉色、表は黒地に青い帯が入るチョウで、早春の林道や公園の木陰に現れます。とまっているときは枯れ葉に紛れて見えづらいので、「動き」から見つけて、翅を開いた瞬間を待ってみてください。 - クジャクチョウ(Aglais io )
翅に大きな目玉模様(眼状紋)を持つ美しいチョウで、成虫で越冬します。早春の林道や林縁で日光浴をする姿がよく見られ、翅を広げてじっとしていることが多いため観察しやすい種です。樹液や地面の水分を吸う様子も観察でき、人が近づいても比較的逃げにくい個体が多いのが特徴です。翅を閉じると暗褐色で目立ちませんが、開くと鮮やかなオレンジ色と青い眼状紋が現れます。 - ムラサキシジミ(Arhopala bazalus )
常緑樹林に生息し、成虫で越冬する小型のシジミチョウです。翅の表は青紫色に輝く美しいチョウですが、裏は地味な灰褐色のため、とまっているときは見つけにくくなります。シイやカシなどの常緑広葉樹の周辺で、地上1~2mの葉上にとまることが多く、じっと待っていれば翅を開く瞬間に出会えます。集団で越冬するため、複数個体が同時に現れることもあります。 - ベニカミキリ(Purpuricenus temminckii )
体長15~20mmで、全身が鮮やかな紅色をした美しいカミキリムシです。早春から初夏にかけて、伐採されたばかりの丸太や枯れ木の上で日光浴をする姿が見られます。特にスギやヒノキの切り株を好み、林道沿いの木材集積場などで出会える可能性があります。派手な色のため遠くからでも見つけやすく、動きもそれほど素早くないため観察に適しています。



同時にハチなども活動を始めますから、刺されないように注意してくださいね!



私のように黒い服だと、ハチに狙われやすいそうです
水辺・用水路・田んぼのまわり


出典:iNaturalist – アメンボ Aquarius paludum ssp. paludum (carlo_dal_cin)
- アメンボ(Aquarius paludum )
脚の先端には細かい毛が密生しており、表面張力を利用して水面に立つことができます。水面に落ちた昆虫を素早く察知し、鋭い口吻を刺して体液を吸います。春になると越冬していた成虫が活動を始め、池や用水路、流れの緩やかな川で観察できます。名前の由来は飴のような甘い匂いを出すことからです。 - ヤゴ(トンボの幼虫)
「ヤゴ」はトンボ類の幼虫の総称で、池や用水路、田んぼの水底にすみ、春から初夏にかけて羽化します。種類によって体型が異なり、オニヤンマのヤゴは体長40~50mmと大型で這い回るように移動し、イトトンボのヤゴは細長く水草にしがみついています。下唇が変形した捕獲器官(下唇)を瞬時に伸ばしてオタマジャクシや小魚を捕らえる肉食性です。 - マツモムシ(Notonecta triguttata )
体長12~15mmの水生カメムシで、背泳ぎで泳ぐ独特の姿が特徴です。腹側を上にして水面近くを泳ぎ、水面の振動で獲物を探します。銀色に光って見える腹部は、空気を蓄えた層が光を反射しているためです。春先から池や水田で活発に活動し、小昆虫やオタマジャクシを捕食します。刺されると痛いため、素手で触らないよう注意が必要です。 - コオイムシ(Appasus japonicus )
オスが卵を背負って保護する特異な子育て行動で知られています。早春から初夏にかけて、田んぼや池で見られ、メスがオスの背中に産卵した後、オスが孵化まで卵を守り続けます。この行動は水生昆虫の中でも珍しく、観察できれば貴重な体験になります。近年、生息地の減少により減少傾向にあります。


出典:iNaturalist – マツモムシ Notonecta triguttata (yuki_m)



網などを使って採集する場合は、必ずその場所のルールと安全を確認し、観察が終わったら元の水辺に静かに戻しましょう。
こうして「どんな場所で、何を求めて動いているか」に注目しながら観察すると、虫たちの行動にはっきりとした法則があることが見えてきます。気になった種は、写真と一行メモ(場所・日付・していた行動)を残し、図鑑やアプリで名前や食草を調べてみてください。



毎年「ここで見つけたい」と思う昆虫がいると、観察もより楽しくなります


春に出会える生き物たち:鳥類編


野鳥は小さく、動きも速いため、姿だけを頼りに探そうとするとすぐに難しく感じてしまいます。けれども、声と動き方に注目すれば、双眼鏡がなくても身近な場所でたくさんの鳥と出会えるようになります。
鳥を見つけるための4つのコツ
- まず立ち止まって、耳を澄ます
歩きながらだと、鳥の声は意外と聞き逃してしまいます。いったん立ち止まり、30秒〜1分ほど周囲の音に耳を傾けてみてください。どこかから「チュンチュン」「ツピーツピー」「ホーホケキョ」などの声が聞こえたら、その方向をゆっくり見渡します。姿が見えなくても、「このあたりにこの鳥がいる」と分かった時点で観察としては十分な一歩です。 - 「動くもの」をぼんやり探す
木や草の一本一本を細かく見るのではなく、木全体や電線、屋根の縁などを少し離れたところから「全体的に」眺めてみましょう。そのうえで、枝先がちょっと揺れた場所や、小さな影が左右に動いた場所に目を向けると、小鳥の姿が浮かび上がってきます。双眼鏡がなくても、スマートフォンのズーム機能で、どのくらいの大きさ・模様かを確かめることができます。 - シルエットと大きさ・動きに注目する
逆光や遠くの鳥は、体の色までは分かりません。この場合は、スズメくらいの大きさか、ハトくらいか、カラスくらいかという「サイズ感」と、尾の長さ、くちばしの長さ、歩き方・飛び方に注目します。地面を歩きながら尾を上下に振るセキレイ類、枝先で小刻みに動きながら鳴くシジュウカラ、低いところを速く飛び回るツバメなど、「動き方」も大きな手がかりです。 - 花・水辺・開けた場所を優先して見る
鳥が集まりやすい場所をあらかじめ絞っておくと、短い時間でも効率よく観察できます。
春は特に、
- 梅や桜など花の咲く木(蜜を吸いに来るメジロやヒヨドリ)
- 池や川、用水路(水を飲んだり羽づくろいするカモやサギ)
- 芝生や田畑(地面で餌を探すスズメやセキレイ)
がねらい目です。同じ場所に何度か通うと、「この木にはよくメジロが来る」「この川沿いにはハクセキレイが多い」など、鳥ごとの“行きつけ”も見えてきます。
市街地・住宅街・身近な公園


出典:iNaturalist – ツグミ Turdus eunomus (gg_copen)
- スズメ(Passer montanus )
最も身近な小鳥で、家のまわりや公園の地面で餌をついばみます。「チュンチュン」という声と、群れで行動する様子をまず押さえておくと、他の小鳥との見分けの基準になります。 - ヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis )
灰色の体と、やや大きめの体格が特徴です。「ヒーヨヒーヨ」と甲高く鳴き、庭木や街路樹の実や花を食べに来ます。 - ムクドリ(Spodiopsar cineraceus )
くちばしと脚が橙色、体は黒褐色に白い斑点があります。「ギャーギャー」「ミュルミュル」など騒がしい声で鳴き、大きな群れを作ることが多い鳥です。春には繁殖期を迎え、建物の隙間や街路樹の穴に営巣します。地面を歩いて虫を探す様子が観察でき、人に慣れているため近距離での観察も可能です。 - ハクセキレイ(Motacilla alba )
白と黒の体で、地面を歩くときに尾を上下に振る動きが目印です。川沿いや駐車場、芝生の上など、開けた場所でよく見られます。 - キジバト(Streptopelia orientalis )
「デーデッポーポー」とゆったりした声で鳴く中型のハトです。地面で餌をついばみ、驚くとゆるやかに飛び立ちます。体の模様や首元のしま模様も、双眼鏡やズームでよく見てみましょう。
公園・街路樹・庭の花木まわり


出典:iNaturalist – キビタキ Ficedula narcissina (maru_)
- メジロ(Zosterops japonicus )
黄緑色の小鳥で、目の周りの白い輪が名前の由来です。「チーチー」「チュルチュル」と細い声で鳴き、梅や桜、ツバキの花の蜜を吸いに来ます。花の咲いている木を少し離れて眺め、「特によく揺れている枝」を探すと見つかりやすくなります。 - シジュウカラ(Parus cinereus )
「ツピーツピー」「ツツピー」とリズミカルに鳴く、白い頬と胸の黒いネクタイ模様が特徴の小鳥です。幹を縦に登ったり、枝先を軽やかに移動しながら、小さな虫やクモを探しています。 - ツバメ(Hirundo rustica )
4月ごろから人家の軒先などに巣を作り、低いところをすばやく飛びながら空中の虫を捕らえます。電線に並んでとまった姿や、泥を集めて巣材にする様子など、巣作りの行動も春の楽しみの一つです。 - キビタキ(Ficedula narcissina )
体長13~14cmの夏鳥で、オスは鮮やかな黄色と黒のツートンカラーが美しい小鳥です。メスは地味なオリーブ褐色をしています。4月下旬から5月にかけて東南アジアから渡来し、「ピッコロロ、ピッコロロ」「ピリリリ」と美しい声でさえずります。公園や街路樹の中層から高層を好み、枝から飛び出して空中で虫を捕らえるフライングキャッチという狩りの技が観察できます。渡来直後は市街地の公園でも比較的よく見られます。 - ツグミ(Turdus eunomus )
体長24cm程度の冬鳥で、3月下旬から4月にかけて北へ帰る前の姿が観察できます。胸に黒い斑点があり、地面で数歩走っては止まり、首をかしげて虫を探す独特の行動が特徴です。公園の芝生や校庭、河川敷など開けた地面でよく見られます。警戒心が強いため、少し離れた場所から観察するのがコツです。
林縁・雑木林・少し大きめの公園


出典:iNaturalist – コゲラ Yungipicus kizuki (artoms)
- ウグイス(Horornis diphone )
「ホーホケキョ」と春を告げる代表的なさえずりの主です。藪の中や斜面の低い木にいることが多く、姿を見るのは難しいですが、「声が聞こえたら出会えた」と考えてよい鳥です。早春には、まだ練習中のたどたどしいさえずり(ぐぜり)が聞けることもあります。 - モズ(Lanius bucephalus )
体長20cm程度で、茶色と黒の体色に、黒い過眼線(目を通る黒い線)が特徴です。「キチキチキチ」と鋭く鳴き、林縁の木の梢や杭など見晴らしの良い場所にとまって獲物を探します。小鳥や昆虫を捕らえる肉食性で、捕まえた獲物を木の枝に刺す「はやにえ」と呼ばれる貯食行動で知られています。春には「高鳴き」と呼ばれる複雑なさえずりを披露し、他の鳥の鳴き声を真似ることもあります。見晴らしの良い場所を好むため、比較的観察しやすい鳥です。 - コゲラ(Yungipicus kizuki )
体長15cm程度の日本最小のキツツキで、スズメとほぼ同じ大きさです。白と黒の縞模様があり、「ギーギー」という声と、木の幹を「コココッ」と叩く音が特徴です。林縁の樹木の幹を縦方向に移動しながら、樹皮下の虫を探します。春には「ドロロロ」というドラミングと呼ばれる連続的な叩音で縄張りを主張し、樹洞に営巣します。木の幹に張りついている独特の姿勢を覚えると、遠くからでも識別できるようになります。 - ヤマガラ(Sittiparus varius )
体長14cm程度で、オレンジ色の腹と黒い頭巾のような模様が特徴的な美しい小鳥です。「ツーツーピー」と澄んだ声でさえずり、シジュウカラと混群を作ることもあります。器用にドングリなどの木の実を足で押さえて割る行動が観察でき、雑木林のコナラやクヌギの周辺でよく見られます。春には樹洞や巣箱に営巣し、繁殖行動が観察できます。人を恐れない個体も多く、じっと待っていると近くまで来てくれることもあります。
池・川・水辺の公園


出典:iNaturalist – バン Gallinula chloropus (mliddle)
- カルガモ(Anas zonorhyncha )
一年を通して見られるカモで、春にはつがいや親子で泳ぐ姿が見られることもあります。水面だけでなく、岸辺で羽づくろいをしているときの羽の模様にも注目してみてください。 - カイツブリ(Tachybaptus ruficollis )
小さな潜水性の水鳥で、水面を泳いでいて急に潜り、離れた場所に顔を出すことをくり返します。春には首元が赤茶色になる繁殖羽に変わり、「キリリリ…」という声も聞こえてきます。 - オオルリ(Cyanoptila cyanomelana )
体長16cm程度の夏鳥で、オスは鮮やかな瑠璃色の背と白い腹を持つ、日本三鳴鳥の一つです。「ピーリーリー、ジジッ」と澄んだ声でさえずり、渓流沿いの林や公園の大木を好みます。メスは地味な褐色です。キビタキと同様にフライングキャッチで虫を捕らえ、水辺に近い木の高い枝にとまることが多いため、双眼鏡があると観察しやすくなります。4月下旬から5月の渡りの時期は、都市公園でも見られることがあります。 - カワセミ(Alcedo atthis )
体長17cm程度で、鮮やかなコバルトブルーの背と橙色の腹を持つ、「空飛ぶ宝石」と称される美しい鳥です。「チーッ」という鋭い声を出しながら水面すれすれを直線的に飛び、水辺の枝や杭にとまって魚を狙います。春には繁殖期を迎え、土の崖に穴を掘って巣を作り、オスがメスに魚をプレゼントする求愛給餌の行動も観察できます。同じ枝に繰り返し戻ってくる習性があるため、一度見つければ再び観察できる可能性が高くなります。 - バン(Gallinula chloropus )
体長32cm程度の黒っぽい水鳥で、赤いくちばしと額板、黄緑色の脚が特徴です。泳ぐときに首を前後に振る独特の動きがあり、水面を泳ぐだけでなく、ヨシ原や水辺の草の上を歩く姿もよく見られます。「クルルッ」「キュッキュッ」と鳴き、春には水草を積み上げた巣を作り、繁殖します。警戒心がやや強いですが、ヨシ原のある池では比較的普通に見られる鳥です。



今年は野鳥の声がQRコードで聞けて、読み物としても面白い野鳥図鑑を買いました!👇️
最初からたくさん覚えようとせず、身近で特徴的な数種類から親しんでいくと負担が少なく続けやすくなります。気になる声や姿に出会ったら、メモや録音を残し、あとで図鑑やアプリで確認してみてください。
少しずつ「聞き覚えのある声」「見覚えのあるシルエット」が増えていき、春の散歩道が静かな「探鳥フィールド」に変わっていきます。


春に出会える生き物(植物・昆虫・鳥類以外)



補足として、植物、昆虫、鳥類以外で春に観察しやすい代表的な生き物をピックアップしてみます。
アズマヒキガエル(Bufo japonicus formosus )


出典:iNaturalist – アズマヒキガエル Bufo formosus (hakkahamushi)
早春に池や水路へ集まり、ひも状の長い卵塊を産む大型のカエルです。暖かい雨の夜には多数の個体が一斉に集まる「カエル合戦」が見られ、里山の春の風物詩として各地で記録されています。
ニホンアマガエル(Hyla japonica )


出典:iNaturalist – ニホンアマガエル Dryophytes japonicus (sawasan)
田んぼや水路まわり、庭木の葉の上などで「ケロケロ」と鳴く小型のカエルです。体色を緑から褐色へ変えられるため、同じ場所をもう一度じっくり眺めると、最初は見えなかった個体が見つかることもあります。
ニホンカナヘビ(Takydromus tachydromoides )


出典:iNaturalist – ニホンカナヘビ Takydromus tachydromoides (Dhugal Lindsay)
細長い体と長い尾を持つトカゲで、土手や石垣、ブロック塀の上で日光浴をしている姿が観察できます。数メートル手前からしゃがんで目線を低く保つと、驚かせずに本来の行動を観察しやすくなります。
アズマモグラ(Mogera imaizumii )


出典:iNaturalist – アズマモグラ Mogera imaizumii (tommarekbrno)
地下で生活するモグラの仲間で、春に地温が上がると庭や畑に「もぐら塚」と呼ばれる土の小山をいくつも作ります。新しい塚が並んでいる場所は、足元の地下でミミズなどを求めた活動が本格的に始まったサインといえます。
アブラコウモリ(Pipistrellus abramus )


出典:iNaturalist – アブラコウモリ Pipistrellus abramus (hiccup1)
人家のすき間をねぐらにする小型コウモリで、夕方の気温が15度前後を超えるころから、住宅街や公園の上空を飛び始めます。日没前後の空に、小さな黒い影がジグザグに飛び交う様子は、春の夜の訪れを告げる風景の一部になっています。
サワガニ(Geothelphusa dehaani )


出典:iNaturalist – サワガニ Geothelphusa dehaani (johngcramer)
日本固有の淡水性カニで、清らかな小川や湧水のある谷筋の石の下にひそんでいます。水温が上がる春には、石の間を歩き回る姿が増え、観察の際には石を片側からそっと持ち上げ、見終えたら元の向きに戻すことが小さな生態系を守るポイントです。
メダカ(Oryzias latipes )


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Oryzias latipes(Hamamatsu,Shizuoka,Japan,2007)-2


出典:WIKIMEDIA COMMONS – Kitano Medaka Male by Hino, Tokyo
田んぼや用水路、ため池などにすむ小型の淡水魚で、春の穏やかな光の下、水面近くを群れで泳ぐ姿が見られます。野生の在来メダカは各地で減少しており、地域によっては絶滅危惧種として扱われるため、捕まえずにその場の環境とともに静かに観察することが大切です。
メダカの遺伝子的な多様性について



従来1種類だと考えられていた日本のメダカですが、現在では大きくキタノメダカ(兵庫県以北の日本海側と、青森県の太平洋側)とミナミメダカ(丹後・但馬地方以南)に分けられています。



ミナミメダカでは、遺伝的な解析の結果、日本各地の水域ごとに「東日本型」「東瀬戸内型」「西瀬戸内型」「山陰型」「北部九州型」「大隅型」「有明型」「薩摩型」「琉球型」という9つの地域型が区別されることがわかっています。


出典:環境省 ‐ メダカ



さらに、ミトコンドリアDNAにもとづく研究からは、これらの地域集団それぞれが互いに異なる環境条件に適応している可能性が示されており、水域ごとの多様な暮らし方が、遺伝子レベルの構造としても反映されていると考えられています。
ミナミメダカでは、水域ごとに独自の地域型と環境適応が確認されているため、他地域型やキタノメダカとの交雑・放流による遺伝子撹拌※が、その多様性を失わせる大きな懸念とされています。一度混ざってしまった遺伝的構造を元に戻すことはほぼ不可能なため、「よかれと思って他所のメダカを放す」行為が、地域固有の集団を静かに消してしまう危険な行為であることが、近年の保全研究で繰り返し指摘されています。
遺伝子撹拌(いでんしかくはん)🧬
遺伝子撹拌(いでんしかくはん)とは、本来は別々に進化した集団が交雑し、地域ごとの遺伝的な個性が失われる現象です。



たとえば、地域ごとに特色のある「ふるさとの味」のお味噌を、一つの樽で混ぜ合わせてしまうようなものです。
一度混ざってしまうと、もとに戻すには途方もなく大変な作業です。(二度と戻らないこともあります。)
アユだけでなく、メダカ、ホタル、などでこの問題は深刻化しています。この撹拌により、それまでその地域の環境に適応してきた個体群の病気への抵抗力が弱まるなど、種の存続を脅かす原因になっています。


出典:国立環境研究所 - 侵入生物データベース 日本の外来生物 魚類 アユ
他の地域からの生き物の大規模な放流はもちろんのこと、飼っていた生き物を安易に自然へ放すことは、その土地の貴重な宝物である生物多様性を破壊してしまう行為なのです。生き物たちの「ふるさと」と繊細な自然の循環とバランスを守るため、私たちは細心の注意を払う必要があります。
参考・引用
環境省 ‐ メダカ(不適切な保全活動による遺伝的多様性の攪乱(遺伝的多様性については全ステップ共通を参照))
Spaceship Earth ‐ 外来種が引き起こす問題は?危険といわれる動物や植物とは?外来種の動物一覧を紹介!原因や対策を解説!(2025年9月)


春の自然を安全に楽しむための基本ルールと対策


春のフィールドワークを存分に味わうためには、「こわがりすぎないけれど、油断もしない」バランスが大切です。ここで挙げるポイントは、すべてを完璧にやる必要はなく、できそうなところ、その日気になるところから少しずつ取り入れていけば十分です。
春の天気と足元に気をつける
春は晴れていても急に雨や強風に変わることがあり、特に川沿いや山道では、短時間の雨でも増水やぬかるみを引き起こします。出かける前に天気予報と注意報・警報を一度チェックし、「天候が不安な時は別の日にする」と決めておくと安心です。
川やダムの近くにある「増水時立入禁止」などの看板は、その場所で実際に起きたことを踏まえて作られているので、必ず目を通し、立入禁止の表示には従いましょう。足元に関しては、濡れた落ち葉や木の根、斜面が滑りやすいポイントです。
場所に応じてスニーカーや登山靴、長靴など滑りにくい靴を選び、危なそうな場所では歩幅を小さくするだけでも、転倒のリスクをかなり減らせます。日没時刻もあらかじめ確認し、「暗くなる前に戻る」を目安に動くと、道に迷う心配も少なくなります。
ヘビ・ハチ・マダニとの距離のとり方
春は、冬眠から目覚めたヘビや、巣作りを始めるスズメバチ類、草むらのマダニなども動き出す季節です。大切なのは、「避ける」と「出会ったときの落ち着き方」を知っておくことです。
🐍ヘビについては、
- 草むらや石のすき間に手を入れない
- 見えない場所に素手を差し込まない
- 長ズボンと足首まで覆う靴を基本にする
だけで、多くのトラブルを防げます。もし見かけた場合は、近づかず、静かにその場から離れましょう。
🐝スズメバチやアシナガバチは、黒っぽい服や強い香りに反応しやすいとされるため、春〜秋の屋外活動では、できれば明るい色の服と香りの控えめな身支度がおすすめです。ハチが近くを飛んだときは、手で払ったり走って逃げたりせず、その場で動きを止め、落ち着いてからゆっくり距離をとる行動が推奨されています。



筆者はすでに一度アシナガバチに頭を刺されているので、必ず帽子を被り、山の中では走らない、不必要に素早い動作をしない、を心がけています…(普段ササッと動いているので…)
🕷️マダニに対しては、長袖・長ズボンに加え、裾を靴下の中に入れる、虫よけスプレーを足元や袖口に使うといった対策が有効です。帰宅後はシャワーや入浴の際に、首まわりやひざ裏などを軽くチェックしておきましょう。



道以外の茂みに入るとマダニリスクが高くなります。山では山道からなるべく外れないようにしましょう。
万一、咬傷や刺傷が疑われるときは、自分で無理に取ろうとせず、早めに医療機関や救急に相談しましょう。
自分の体調と「引き返すタイミング」を決めておく
どれだけ準備をしても、その日の体調や疲労度によっては、無理をしない判断が必要になります。こまめに水分をとり、チョコレートやナッツなどの軽食を少し持っておくだけでも、「気づいたらふらふらしていた」という状態を防ぎやすくなります。
歩きながら「少し頭が重い」「足が重くなってきた」と感じたら、それを「引き返すサイン」と決めておくと、後で後悔しにくくなります。春は朝晩と日中の寒暖差が大きいため、脱ぎ着しやすい上着を1枚持っていくと、冷えすぎと暑すぎの両方を調整しやすくなります。



自然の中でリラックスしながら、普段よりも深く、自分自身の心身の調子に向き合ってみましょう



ぼくは面倒くさがり屋ですが、寒いのは大嫌いなので、我慢しないようにしています。(あと、おやつ大好きです)
初めての場所や人の少ないエリアに行くときは、行き先とおおよその帰宅時間を家族や友人に伝え、スマートフォンの充電を確認しておきましょう。近所の公園であれば、「今日は30分〜1時間だけ」と時間を決めておくことも、安全と気楽さのバランスを保つ助けになります。
情報の扱いとフィールドのルールを守る
安全というと怪我や事故に目が向きがちですが、自然側にとっての「安全」を守ることも、私たちの活動を長く続けるためには欠かせません。国立・国定公園や自然度の高いエリアでは、自然公園法や各自治体のルールにより、植物の採取や昆虫採集が禁止されている場所も多く、環境省や各地の管理者も「動植物を持ち出さず、写真にとどめる」ことをすすめています。
フィールドに着いたら、まず案内板や注意書きを読み、その場所のルールを確認する習慣をつけておくと安心です。スマートフォンやカメラで撮影した写真には、位置情報が含まれていることがあり、希少種や巣の正確な場所が特定されてしまう場合があります。
SNSに投稿するときは、位置情報をオフにする、細かい地名や具体的なポイントを書かないといった配慮だけでも、生き物たちの静かな暮らしを守る助けになります。自分の安全と、自然の側の安全は、どちらも「少しの意識」で同時に守ることができます。
すべてを一度に完璧にこなす必要はありません。「天気予報を見る」「安全な服装(長袖・長ズボン)で出かける」「行き先を誰かに伝える」の三つができていれば、春の身近なフィールドではかなり安心して歩けるようになります。そこに少しずつ対策を足していきながら、自分なりの「安全の守り方」を育てていってください。


春のフィールドワークに出かけよう!


春の自然は、遠出をしなくても、自宅まわりの公園や川辺だけで十分に「小さな冒険」の舞台になってくれます。大切なのは特別な道具よりも、少しだけ立ち止まり、しゃがみ、耳を澄ませてみる心のゆとりです。
身近な場所がいちばんのフィールド
自宅や職場から半径1kmほどの範囲は、季節の変化を追うのに最適な観察地です。同じ道をくり返し歩くことで、「先週はつぼみだった花が今日は咲いている」「この時間帯だけ鳥の声が増える」といった小さな変化に気づきやすくなります。遠くの名所へ行く前に、まずはいつもの散歩道を「定点観察のフィールド」として見直してみてください。
ノートとスマホで「冒険の書」を育てる
特別なフィールドノートでなくても、メモ帳やスマホのメモに「日付・場所・天気・見つけたもの」を一行残すだけで、その日の光や空気まで思い出せる記録になります。写真は「全体がわかる一枚」と「花・葉・模様などのアップ」をセットで撮ると、後から図鑑やアプリで調べるときにとても便利です。
iNaturalist や Biome のようなアプリに投稿すれば、世界中の利用者や研究者と記録を共有でき、あなたの一枚が生物多様性モニタリングの一部として役立つ可能性もあります。
小さな一歩が、未来への贈り物になる
ここ数年、日本でも市民の自然観察記録が、開花時期の変化や生き物の分布の移り変わりを明らかにする重要なデータとして活用されつつあります。同時に、衛星観測などからは、気温上昇にともなう春の芽吹きの「前倒し」が報告されており、私たちの身近な季節感も静かに変わり始めています。
だからこそ、今日あなたがフィールドノートに書いた一行や、スマホに残した一枚の写真は、単なる思い出を超え、変わりゆく地球の「いま」を記録する小さな証人になります。ノートとペン、スマホをポケットに入れて、いつもの道を少しだけゆっくり歩いてみてください。足元の花、頭上の鳥の声、水面の波紋…そのひとつひとつが、あなただけの春の物語の始まりになってくれるはずです。


書籍の紹介



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はじめての分類学入門: 世界を整理する科学の基本 Lv.1


一科一属一種の生き物 【分類学編】: 生命の系統樹で最も細い枝



ブログ記事より少し踏み込んだ内容も追加されています



おまけコーナーもありますよ〜



ゆる~く、分類学の第一歩を踏み出してください
参考・引用文献
あなたはどのタイプ?春の観察スタイル診断
両生類保全研究資料室 ‐ アカガエル産卵前線って?(2014年3月27日)
政府広報オンライン ‐ 人はなぜ、森へ行くとリラックスするのか。(2024年6月)
森林総合研究所 ‐ 異なる自然環境におけるセラピー効果の比較と身近な森林のセラピー効果に関する研究(2011年12月)
日本自然保護協会 ‐ 【子育てと自然】第1回:子どもに自然とふれあわせるのはなぜ良いのでしょうか?(2020年7月3日)
自然環境局生物多様性センター ‐ 自然とふれあう豊かなライフスタイル
どこへ行く?フィールドの選び方
環境省 生物多様性センター ‐ インターネット自然情報システム(INIS)(2023年3月)
笹川平和財団 ‐ 生きものを見る目を養い、自然を感じる心をみがく(2016年2月5日)
東京動物園協会 ‐ 身近な自然を観察しよう! 先生のためのセミナー報告(2008年9月12日)
これだけあれば安心!装備と持ち物
厚生労働省 ‐ 蚊媒介感染症の最新の状況について(2023年)
森林総合研究所 ‐ 森林レクリエーションでの スズメバチ刺傷事故を防ぐために
春に出会える生き物たち:植物編
WILD MIND GO!GO! ‐ 植物の謎解き ひと足早く春の植物観察に出かけよう!(2021年3月)
船橋市議会議員 朝倉幹晴公式サイト ‐ 休校中の道端・空き地の草花(植物)観察のおすすめ(2020年3月16日)
神戸市教育委員会 広瀬小学校理科資料 ‐ 道ばたに見る春の草たち(公開年不詳・継続公開中)
札幌市博物館活動センター ‐ スプリング・エフェメラル~春のはかない植物たち(2022年11月30日)
Biome(バイオーム) ‐ 春にしか姿を見せない妖精のお話(2022年3月11日)
Garden Story ‐ 春の妖精 スプリング・エフェメラル「カタクリ」を咲かせよう(2023年3月29日)
気象庁 新潟地方気象台 ‐ 生物季節観測:植物季節の観測法(2020年11月9日)
GPV気象予報 ‐ 生物季節観測(気象庁発表)さくら・しば等(2019年4月18日ほか)
多摩市 道端の草を探す散歩会レポート ‐ 4/21の道端の草を探す散歩会で見つけた草(2024年4月23日)
Wikipedia日本語版 ‐ スプリング・エフェメラル(最終更新日適宜更新)
春に出会える生き物たち:昆虫編
Australian Museum ‐ What is fauna?(2020年)
Biology Dictionary ‐ Fauna Definition(2018年5月19日)
環境省 ‐ 生物多様性保全上重要な里地里山(重要里地里山)(2015年3月)
森林総合研究所 多摩森林科学園 ‐ Observing seasonal insects(更新年不詳・継続公開中)
昆虫図鑑 konchu-zukan.info ‐ アメンボ(2023年)
TAKAO 599 MUSEUM ‐ Coccinella septempunctata(Seven-spot Ladybird)(2014年)
Radio図鑑Kids ‐ ナナホシテントウ Coccinella septempunctata(2022年)
むしと里山の図鑑 Insects.jp ‐ テングチョウ:成虫越冬と早春の観察(2020年)
里山のチョウ図鑑 ‐ テングチョウ 観察記録と生活史(2025年11月7日)
春に出会える生き物たち:鳥類編
xeno-canto ‐ Japanese Bush Warbler Horornis diphone:spring song recordings in Japan(2025年4月19日)
Wikipedia ‐ Japanese bush warbler Horornis diphone
CABI Compendium ‐ Zosterops japonicus (Japanese white-eye)(2006年3月)
IUCN GISD ‐ Zosterops japonicus factsheet(2006年3月)
OM Digital Solutions ‐ 野鳥撮影をはじめよう〜その6 春の野鳥の楽しみ方〜(2023年3月)
HONDA ‐ 冬から春は身近な場所で野鳥観察を楽しむ絶好の季節です!
春に出会える生き物(植物・昆虫・鳥類以外)
J-STAGE(保全生態学研究) ‐ 千葉県印西市における耕作放棄水田域に造成した小水域のニホンアカガエルRana japonicaによる利用(2023年9月7日)
Wildlife of Japan(WildlifeCommons) ‐ ニホンアカガエル 学名:Rana japonica(2023年9月20日)
Wildenatur.com ‐ Japanese common toad (Bufo japonicus formosus)(2024年7月6日)
J-STAGE(哺乳類科学) ‐ 都市部におけるアブラコウモリの飛翔活動の季節的変化と活動開始気温(2023年10月30日)
Island Bat Research Group ‐ P. abramus | Japanese pipistrelle species account(2015年12月)
J-STAGE(Crustacea) ‐ The identity of the Japanese freshwater crab, Geothelphusa dehaani…(2024年4月24日)
環境省・国立環境研究所 ‐ 外来種ハンドブック:アブラコウモリ Pipistrellus abramus(2008年12月)
大阪ホタニ里山再生協議会・SER ‐ Ecological Restoration of Hotani Satoyama in Osaka, Japan(掲載年不明・閲覧日2026年2月)
楽しく安全に観察するためのコツとルール
こどもの国 ‐ 自然観察しぜんかんさつや虫捕むしとりする時ときの注意
科学技術振興機構 ‐ 観察法のイロハのイ 探し出せば好きになる!土の虫ウオッチング(2024年6月1日)
HONDA ‐ “見えない自然”を覗いてみよう!顕微鏡のプロが教える自然観察術(2022年11月2日)
日本自然保護協会 ‐ 【配布資料】今日から始める自然観察「昆虫をそっと観察 優しく触れる」(2024年4月24日)
「冒険の書」を作ろう ― 記録と楽しみ方のアイデア
HONDA ‐ キャンプの朝散歩がもっと楽しくなる!野鳥フィールドノート(2021年3月24日)
東京大学総合研究博物館 ‐ 渡辺武男のフィールドノート 田賀井 篤平
KOKUYO ‐ 自由研究や自主学習にもおすすめ!植物の観察記録ノート(2023年6月9日)
広島県 ‐ 環境省『いきものログ』を使って、みんなで生きものマップを作ろう!


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