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【収斂進化】進化の最適解で生き物はそっくりに?平行進化や擬態との違いも解説

2026 2/08
分類学 生き物 自然
2026年2月8日

生物の進化には、遺伝系統が異なる者同士が親戚のようにそっくりになる不思議な現象があります。サメとイルカの流線型の体やサボテンのトゲなどは偶然の一致ではなく、「収斂進化(しゅうれんしんか)」が生み出した必然の結果です。

これは生命が環境という共通の難問に対し、それぞれに同じ「最適解」を導き出した証拠といえます。

ミミズク先生

進化生物学の不思議の1つ、「他人の空似」がなぜ起こるのか、その驚くべきメカニズムを基礎からゆっくり紐解いていきましょう。

タヌ山先生

ぼくもアライグマに似てると言われていますが、タヌキはイヌ科、アライグマはアライグマ科でそんなに近い親戚ではないかな…

メンフクロウ職員

さて、タヌ山先生とアライグマさんは収斂進化の結果似た姿になったのか…これについては後半でちょっと考えてみましょう

目次

遠い親戚なのにそっくり?収斂進化とはどんな現象か

地球上には、まるで同じ設計図から生まれたかのように姿形がよく似た生き物たちがいます。ところが、不思議なことに彼らは血族ではなく、遺伝的には全く別のルートを歩んできた「他人の空似」という場合があります。

しかし、その「そっくり」は単なる偶然ではなく、生命が環境という共通の問題に対して、それぞれ別々の場所で、同じ答えを導き出した結果なのです。この現象を「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼び、進化生物学の中でもとても魅力的な現象のひとつです。

メンフクロウ職員

以前タヌ山先生、収斂進化に関する大きな研究されてましたね

タヌ山先生

もう論文にして発表しましたよ

それでは、進化が生み出す「そっくり」の正体を、基礎から丁寧に解いていきましょう。

収斂進化の基本的な意味と「遠い親戚が似てくる」不思議

収斔進化とは、系統的に全く異なる生物が、似た環境で生活したり同じような役割を果たしたりするうちに、独立して似た姿や機能を獲得する現象です。もっと簡潔に言えば、共通祖先から受け継いだものではなく、物理法則と環境という共通のルールの中で、それぞれの生き物が自力で同じ「解答」に辿り着く進化のことです。

典型的な例がサメとイルカの関係です。このふたつは約4億年以上も前に進化の道を分かれましたが、どちらも「水中を高速で泳ぐ必要性」という同じ課題に直面しました。その結果、水の抵抗を減らす流線型の体、背びれ、尾びれなど、よく似た体の構造を互いに独立して獲得したのです。

この結果は、誰かから教わったわけではなく、遺伝したわけでもありません。それは、特定の環境下では「最も効率的な形」が限られているためです。

数百万年の歳月をかけて、自然選択という目に見えない力が両者を同じ形へと進化させていきました。この現象を、イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスは「自然が同じ問題に何度も同じ答えを見つける」と表現しています。

【リチャード・ドーキンス(2022年10月)】
出典:WIKIMEDIA COMMONS – Dinner with Richard Dawkins and CFI… like a candle in the dark

突然変異と自然選択がつくる「最適解」という考え方

収斔進化が起こる根本的な仕組みは、チャールズ・ダーウィンが提唱した「自然選択」にあります。生き物の体には常にランダムな「突然変異」が起きており、その中でたまたま環境に適した特徴を持った個体が生き残り、子孫を残していくのです。

水中に暮らす生物を例に考えてみましょう。いくつかの個体が突然変異によってわずかに流線型に近い体型を持つようになったとします。

その少しの違いが、わずかに速く泳ぐことを可能にします。速く泳げれば、捕食者から逃げやすくなり、獲物を捕まえやすくなるため、こうした個体は生き残りやすく、より多くの子孫を残します。

子孫たちはその親の流線型に近い形を受け継ぎ、さらに次の世代で有利な変異が重なります。このプロセスが何百万年も繰り返されることで、その環境に最適な流線型へと進化していくのです。

重要な点は、このプロセスが「目的を持って進化している」のではなく、単に「生き残った個体の形質が次世代に伝わっている」だけだということです。しかし、その結果として環境に最も適した形が自動的に選ばれていきます。

異なる系統の生物が似た環境に置かれれば、同じような環境圧に晒されます。すると、別々に進化していながらも、最終的に似た「最適解」に辿り着くわけです。これが収斔進化の科学的根拠であり、生命の多様性の中に見られる不思議な秩序なのです。

相似器官と相同器官の違いから見る、進化の見分け方

見た目や機能が似ている器官」があるからといって、その原因は常に収斔進化とは限りません。進化の道筋を正しく理解するためには、「相似器官(そうじきかん)」と「相同器官(そうどうきかん)」という2つの概念を区別する必要があります。

この区別は、19世紀の解剖学者リチャード・オーウェンによって体系化されました。

相似器官

相似器官とは、起源は異なるが、似た機能を果たすために形が似ている器官です。収斔進化によって生まれた「そっくり」がこれに該当します。

昆虫の翅と鳥の翼がその典型例です。どちらも空を飛ぶための道具ですが、昆虫の翅は外骨格が伸びてできたもの、鳥の翼は脊椎動物の前肢が変化したものです。つまり、出発点となった器官の構造が全く異なるのです。

相同器官

一方、相同器官とは、現在の形や働きは異なっていても、共通の祖先から受け継いだ器官を指します。人間の腕、犬の前脚、クジラの胸びれ、鳥の翼、コウモリの翼は、すべて脊椎動物の前肢という共通の構造を祖先から受け継いでおり、骨格の基本配置は変わっていません。

それぞれの生活様式に適応する過程で役割が変わっただけなのです。

この区別の重要性は、進化の検証にあります。相似器官は「同じ環境下で異なる系統から似た進化が起こった」という証拠であり、相同器官は「共通の祖先から多様な生物が分岐した」という証拠です。

現代では、見た目だけでなくDNAを比較することで、その「そっくり」が偶然の収斔進化なのか、それとも血縁関係を示す証なのかを、かつてない精密さで判定できるようになりました。

収斂進化のキーワード:「生態的地位(ニッチ)」

収斔進化を理解する鍵となるのが、「生態的地位」や「ニッチ」※と呼ばれる概念です。これは、生態系における「その生き物が果たす役割」や「その生き物が占める地位」を意味します。

たとえば「暗い地中で土を掘って生活する中型の捕食者」というのは、ひとつのニッチです。

ニッチ(Niche)🎯🧩

ニッチ(niche)という言葉は、もともとフランス語で「壁のくぼみ」や「装飾用の小さな空間」を意味する建築用語でした。1917年、生態学者ジョセフ・グリニル(Joseph Grinnell)は、この比喩的な表現を使って、特定の生物が生態系の中で占める独特な「位置」や「役割」を説明するようになりました。​

つまり、現代における「ニッチ」とは、ある生物が「何を食べるか」「どこに住むか」「いつ活動するか」など、その生物が利用できる環境条件・資源の総合的なパターンのことです。建築物の「壁のくぼみ」のように、生態系においても、各生物は「独自のくぼみ」を占めており、その中で他の生物と競合しないで生存しているのです。​

【生態系における「ニッチ」】
出典:GeeksforGeeks – Ecological Niche

特に興味深い点は、同じ環境内で複数の生物が共存するために、それぞれが微妙に異なる「ニッチ」を利用している、ということです。例えば、光合成をする植物が優占する明るい環境では、菌従属栄養植物は「光が極めて少ない林床」というニッチを独占的に利用することで、競争を回避し、生存しているのです。このようなニッチの多様性が、生態系の豊かさと安定性を支えています。

参考・引用

Wikipedia ‐ ニッチ
People and Nature (Journal) – The socio‐ecological niche(2025年4月)
EcoEvoRxiv – Re-revisiting the Niche Concept (Leibold, 2025年)

ニッチが空いていると、異なる種類の生き物がその場所・その役割を埋めようとします。そのニッチを生き抜くために最も効率的な能力を備えた生き物が生き残り、子孫を残していきます。

ミミズク先生

生存戦略として、競争の少ないところ、自分が生き残れるところに進出していくということですね

時間をかけて自然選択が働くことで、異なる系統の生き物が同じまたは似たようなニッチに適応し、結果として似た姿になっていくのです。

メンフクロウ職員

次の章からは、収斂進化の具体的な例を見ていきましょう。

タヌ山先生

自然がいかにして機能美を作り上げてきたかがよく分かりますよ!

オーストラリアの有袋類と真獣類:別々の大陸で生まれたそっくりさん

【滑空するフィリピンヒヨケザル (Cynocephalus volans )】
出典:iNaturalist – フィリピンヒヨケザル Cynocephalus volans(kjhijlkema)

地球の南に位置するオーストラリア大陸は、約4000万年前、南極大陸(アンタークティカ)から完全に分離し、他の大陸から孤立しました。その結果、生まれたのが、世界でも有数の自然史の不思議、独自の進化を遂げた生き物たちです。

約1億6000万年前、哺乳類は有袋類と真獣類という2つの大きなグループに分かれました。オーストラリアが孤立する前、両者は異なる地へ散らばっていきました。

一方の大陸では真獣類(胎盤哺乳類)が台頭し、もう一方のオーストラリアでは有袋類だけが独自の進化を遂げたのです。驚くべきことに、この地理的な大分断を超えて、同じ環境・同じ役割を求める生き物たちは、遺伝的には全く別の出発点から、限りなく似た「答え」に辿り着いたのです。

ミミズク先生

生命が遠く離れたそれぞれの場所で、同じような答えを導き出した「そっくりさん」たちの秘密を見ていきましょう。

有袋類と真獣類:異なる繁殖戦略から生まれた2つの哺乳類グループ

【世界最小の滑空する有袋類チビフクロモモンガ(Acrobates pygmaeus )】
出典:iNaturalist – チビフクロモモンガ Acrobates pygmaeus (jamesbennettwild)
【真獣類のホースコビトモモンガ(Petaurillus hosei )】
出典:iNaturalist – ホースコビトモモンガ Petaurillus hosei (jeromerz)

有袋類と真獣類の最も顕著な違いの一つは、繁殖様式と子どもの育て方にあります。真獣類が発達した胎盤を通じて子を母体内で十分に成長させてから産むのに対し、有袋類はごく未熟な状態で子を産み、母親のお腹にある袋(育児嚢)や乳首の上で長期間育てます。

有袋類の妊娠期間は一般に10〜38日程度と、真獣類の妊娠期間と比べると際立って短く、生まれてきた赤ちゃんは目も見えず、被毛もなく体も未発達ですが、よく発達した前肢を使って母親の体をよじ登り、袋の中の乳首にたどり着きます。そこで数週間から数ヶ月かけて乳首にしっかり吸着したまま成長し、ようやく外界で生活できる段階に達します。

この独特な戦略は、かつては真獣類と比べて「より原始的な方法」と見なされてきましたが、現在では、環境資源が限られたり変動の大きい地域で母体への投資を小刻みに分散できる「実用的な適応戦略」として評価されつつあります。実際、オーストラリア大陸が第三紀後期(およそ3,000〜4,000万年前)に他の大陸からほぼ完全に孤立すると、有袋類はこの隔離された大陸環境という「孤立の舞台」で独自の多様化と適応放散を遂げ、肉食性・草食性・昆虫食性など、さまざまな生態的地位を埋めていったと考えられています。

有袋類の繁殖戦略

メンフクロウ職員

こうした有袋類の繁殖戦略には、「一度の妊娠に大きく賭けず、少しずつ何度も子を持つ」というリスク分散できるというメリットがあることがわかりました。

妊娠期間が短く、きわめて未熟な段階で出産するため、母親は大きく育った胎児を長期間お腹に抱え込まずにすみます。そのぶん、干ばつや餌不足、捕食などで途中で親が命を落としてしまっても、一度の妊娠に費やしたエネルギー損失は真獣類ほど大きくありません。

逆に環境条件がよい時期には、比較的短い間隔で次々と出産できるため、「一回あたりのリスクを小さくしながら、トータルとして子孫をつなぐ」仕組みとして働いていると考えられます。

空を滑る樹上の精:フクロモモンガと飛鼠(ヒヨケザル)

【クレフトフクロモモンガ(Petaurus notatus )】
出典:iNaturalist – Petaurus notatus(joelp)
【ニホンモモンガ(Pteromys momonga )】
出典:iNaturalist – ニホンモモンガ Pteromys momonga (masaki_ishihara)

夜の森の梢から梢へ、滑空する小さな生き物たちが居ます。オーストラリアの有袋類、フクロモモンガ(Petaurus notatus )と、北半球に暮らすヒヨケザル(飛鼠、Cynocephalus volans )やモモンガ(リス亜科 Sciurinae、モモンガ族 Pteromyini )などの真獣類は、驚くほどよく似ています。

どちらも大きな夜目、手足の間に張られた飛膜(ひまく)をもち、樹上で素早く移動し、夜間に活動します。フクロモモンガの場合、この飛膜で15〜20メートル、時には50メートル近くの距離を滑空することもできます。

しかし、これらは分類学上、全く別の系統です。フクロモモンガは有袋類のポッサム科、ヒヨケザルはげっ歯類、モモンガはリス亜科です。つまり、約1億6000万年に系統が分岐したという途方もない時間の隔たりがあるのです。

タヌ山先生

ヒヨケザルとモモンガも約8000万〜1億年前も別々の目に分岐しています

【フィリピンヒヨケザル(Cynocephalus volans )】
出典:iNaturalist – フィリピンヒヨケザル Cynocephalus volans(curtis39)

にもかかわらず、なぜこれほど似ているのでしょうか。その答えは「夜の樹上で暮らし、樹から樹へ移動する」という、同じニッチを占めているからです。

暗闇で生活するために必要な大きな目、安全に移動するための飛膜…。これらはこのニッチにおいて、生存に不可欠な「最適解」なのです。

2024年の研究では、飛膜の発達に関わるEmx2遺伝子※が、異なる種の間で似た進化パターンを示していることが明らかになり、遺伝子レベルからも収斔進化の痕跡が確認されました。

Emx2遺伝子🧬

Emx2(EMX2)遺伝子は、からだの設計図づくりを助ける「ホメオボックス遺伝子」で、特に脳と腎臓・生殖器などの発生で重要なスイッチとして働きます。発生中の大脳皮質では、どの場所がどんな領域になるか(前・後・内側など)の区分けや、神経前駆細胞の増え方・並び方を調節しており、マウスで Emx2 を欠損させると海馬や背側終脳がうまくできません。

同じ遺伝子は腎臓や尿管・性腺のもとになる組織でも発現していて、Emx2 変異マウスでは腎臓・尿路・生殖管がほぼ欠損し、尿や生殖に必要な器官が形成されないことが報告されています。ヒトでも EMX2 の変異は、脳に深い裂け目ができる「裂脳症(schizencephaly)」などのまれな形成異常と関連しており、この遺伝子が脳と泌尿生殖器の正しい形づくりに不可欠であることが示されています。

さらに最近の研究では、ゼブラフィッシュで emx2 が腎臓や耳などの「繊毛(せんもう)」をもつ細胞の発達を制御していることもわかり、体のさまざまな器官で細胞のかたちと働きを整える、多面的な役割を持つことが明らかになってきています。

参考・引用文献

Nature – Emx2 underlies the development and evolution of marsupial gliding membranesNCBI Gene – EMX2 empty spiracles homeobox 2PubMed – Emx2: a gene responsible for cortical development, regionalization and area specification

地中という暗闇の世界:フクロモグラとモグラ

【フクロモグラ(Notoryctes typhlops )】
出典:@WIKI – 動物図鑑 @ ウィキ フクロモグラ
【アズマモグラ(Mogera imaizumii )】
出典:WIKIMEDIA COMMONS – Mogera imaizumii

地中生活に完全に適応した有袋類のフクロモグラ(Notoryctes typhlops )と、真獣類のモグラ(モグラ科 Talpidae)は、収斂進化の中でも最も劇的で見る者を驚かせる例です。1億年以上も前に分かれた別系統なのに、円筒形の体、退化した目(あるいは皮膚に隠れた小さな目)、スコップのような強力な前肢、特殊な感覚器官など、その特徴は驚くほど一致しています。

光のない地中で、狭い空間を掘り進み、アリやミミズを探すという、過酷な環境下では、視覚よりも触覚や強力な掘削能力が圧倒的に重要です。つまり、この体形と感覚機器こそが生存のための「絶対的な正解」といえるのです。

【ケープキンモグラ(Chrysochloris asiatica )】
出典:iNaturalist – ケープキンモグラ Chrysochloris asiatica (ianrijsdijk)

2025年に発表された最先端のゲノム研究により、フクロモグラが視覚に関わる遺伝子に機能喪失変異を持つことや、掘削機能に関わる遺伝子に選択圧が働いていることが明らかにされました。興味深いことに、フクロモグラはアフリカの黄金モグラ(Chrysochloris asiatica など)とも同様の収斂進化の関係にあり、複数の大陸で「地中での掘削」というニッチが、独立して似た形態をつくり出してきたことが分かります。

ミミズク先生

世界中で「地中で狭い空間を掘り進みアリやミミズを探す」というニッチではこの姿が「最適解」として導き出されたということですね!

絶滅した頂点捕食者:フクロオオカミ(タスマニアタイガー)とオオカミ

【フクロオオカミ(Thylacinus cynocephalus )】
出典:WIKIMEDIA COOMONS – Thylacinus (Perplexityより彩色)

もしかして、進化の最も劇的な例は、失われた生き物の中に眠っているのかもしれません。かつてタスマニア島などに生息していた有袋類のフクロオオカミ(Thylacinus cynocephalus、タスマニアタイガー)は、真獣類のオオカミ(Canis lupus )と、頭骨構造から歯の配置まで、驚くほど似通っていました。

フクロオオカミは、獲物を追跡する能力に長けた肉食動物でした。鋭い犬歯、獲物を追うための長くしなやかな四肢、敏捷な体型…。オーストラリアという孤立した大陸で、「中〜大型の捕食者」というニッチを占めるために必要なすべてを備えていました。

しかし、この見事な適応も、人間の介入には太刀打ちできませんでした。ヨーロッパ人の入植後、家畜を襲うとされて駆除の対象となり、1936年9月7日、ホバート動物園で最後の個体が息を引き取りました。

メンフクロウ職員

つまりフクロオオカミは1936年に絶滅してしまったのです

進化生物学者スティーヴン・ジェイ・グールドはフクロオオカミを「収斂進化の必然性を示す象徴」として挙げています。近年の分子生物学的研究では、

  • フクロオオカミとオオカミの頭骨が、幼体から成体に至るまで驚くほど平行な成長軌跡をたどる
  • 遺伝子の調節領域においても似た変異が生じている

などの事実が明らかにされました。

このことは、「中〜大型捕食者」という同じニッチに置かれた生き物たちが、遺伝子レベルから骨格まで、あたかも同じ「設計図」で作られたかのように似た進化を遂げることを示しているのです。

【アラビアオオカミ(Canis lupus ssp. arabs )】
出典:iNaturalist – アラビアオオカミ Canis lupus ssp. arabs (alex_alaman)

これらのオーストラリアの有袋類と他大陸の真獣類が示す、驚くべき相似性から、進化が決してランダムではなく、環境と生態的役割によって強く方向づけられることがわかります。

1億6000万年も離れた系統が、まるで同じ課題の同じ解答を見つけ出したかのように似た姿になる…。それは、自然選択という力がいかに強力であり、いかに繰り返し同じ形態へと生命を収斂させていくかの証なのです。

地中で掘るスペシャリスト:モグラ・ケラ・ケラモドキカミキリに見る「進化の最適解」

【ケラ(Gryllotalpa orientalis )】
出典:iNatiralist – ケラ Gryllotalpa orientalis (pasteurng)

地中という環境は、生物にとって極めて特殊な世界です。光は一切届かず、四方は硬い土壌に囲まれ、移動するたびに土の抵抗が体に圧し掛かります。

この過酷な条件下で生き抜くには、地上とは根本的に異なる体の設計が必要になります。驚くべきことに、哺乳類と昆虫という、進化の道筋が遠く隔たる者同士が、地中生活への適応を極めた結果、よく似た形態を個別に獲得してきました。

ミミズク先生

系統の壁を越えて、環境という試練がいかにして「最適解」を導き出すのか、その具体的な姿を見ていきましょう。

モグラ類:哺乳類が到達した地中適応の完成形

【ヨーロッパモグラ(Talpa europaea )】
出典:iNaturalist – ヨーロッパモグラ Talpa europaea (nekrassov)

モグラ科(Talpidae)の動物たちは、地中生活に特化した哺乳類として最も成功したグループの一つです。その最大の特徴は、スコップのように根本から変形した前足にあります。

掌が外側を向き、巨大な爪を備えたこの構造は、土を効率的に掻き出すために、極限まで最適化されています。19世紀のフランスの博物学者アンリ・ミルヌ=エドワーズは、モグラの骨格を詳細に調べ、胸部の筋肉を支えるために鎖骨と上腕骨が異常なほどに発達していることを解明しました。

この強靭な骨格と、肩甲骨から上腕にかけて発達した筋肉の協調によって、モグラは自分の体重の数百倍もの力で土を押し広げることができます。同時に視覚は無用になり退化して、代わりに触覚と嗅覚を研ぎ澄ませています。

妊娠期間は約4~6週間と短く、数週間で独立できるほど発達した状態で生まれます。生まれてからの成長も驚くほど速く、わずか4週間で自分で食物を探す能力を獲得します。

【アズマモグラ(Mogera imaizumii )】
出典:iNaturalist – アズマモグラ Mogera imaizumii (damonbay)

この哺乳類の基本設計を地中用に作り変えた見事な例は、進化がいかに柔軟であるかを象徴しています。

ケラ(オケラ):昆虫界の地中掘削マシン

【日本のケラ(Gryllotalpa orientalis )】
出典:iNaturalist – ケラ Gryllotalpa orientalis (tejaspm)

「オケラ」の愛称で親しまれるケラ(ケラ科 Gryllotalpidae)は、コオロギの仲間でありながら、完全に地中生活に適応した昆虫です。ケラの前脚は、モグラとは全く異なる「昆虫の体の仕組み」から出発しながら、驚くほど機能的に似た掘削装置を獲得しました。

短く太い前脚の先端には強靭なトゲが並び、円筒形に展開する脚全体が、まさに「生きたシャベル」として機能します。

【ケラ(Gryllotalpa orientalis )】
出典:iNaturalist – ケラ Gryllotalpa orientalis (seemaa)

その体は、ビロード状の毛に覆われた円筒形をしており、このテクスチャが土の抵抗を減らしながらも、前後どちらへも円滑に移動できる設計になっています。昆虫の外骨格という硬い殻をもちながらも、ケラはその柔軟性の中で、地中と地上の両方で活動できる柔軟な生存戦略を確立しました。冬は深さ1メートル付近の地中で越冬し、春に地上に出てきて鳴き、夏に産卵し、その幼虫が夏を越して成虫になるという周期を持っています。

メンフクロウ職員

さらに、職場でカミキリを整理していたら明らかに他と違うカミキリがいたので紹介します。

ケラモドキカミキリ:成虫になっても地中に潜むカミキリムシ

【ケラモドキカミキリ(Hypocephalus armatus )】
出典:iNaturalist – ケラモドキカミキリ Hypocephalus armatus (sapo_galactico)

ブラジルの限定された地域に生息するケラモドキカミキリ(Hypocephalus armatus )は、カミキリムシの仲間とは思えない、まさに「ケラ」にそっくりの姿をした極めて特殊な甲虫です。

短く太い触角や頑丈に盛り上がった胸部、そして掘削に特化した前脚は、他のカミキリムシには見られない地中生活への驚くべき収斂進化の証といえるでしょう。

【ケラモドキカミキリ(Hypocephalus armatus)】
出典:PassionEntomologie ‐ Hypocephalus armatus:
a (very) unusual long-horned beetle(2015年7月2日)

多くのカミキリムシが空を飛び、樹木に卵を産むのに対し、ケラモドキカミキリの成虫は一生のほとんどを地中で過ごします。12月から1月末という限られた出現期間、特に嵐の後の濡れた地面などで見出され、地中では大顎(おおあご)をネジ回しのように使って孔(あな)を掘り進みます。

その掘削手順は非常に精密です。後肢(こうし)で孔の壁を押さえながら体を沈め、鶴嘴(つるはし)のような形の頭部で底を掘り下げ、前肢と中肢を連携させて土を後方へ投げ上げます。

ケラモドキカミキリの後肢の脛節(けいせつ)先端の膨らみは、地中の掘削名人として知られるダイコクコガネと全く同じ形状をしています。異なる種類の甲虫が同じ「掘削の道具」を手に入れた事実は、進化の必然性を物語っています。

【ダイコクコガネ(Copris ochus )】
出典:iNaturalist – ダイコクコガネ Copris ochus (mandukings)

19世紀末のヨーロッパでは、ケラモドキカミキリ1匹につき当時の労働者の年収数年分に相当する「6,000金フラン」という法外な値が付いていました。現代の価値に換算すると約1,500万〜2,000万円にもなり、当時の採集家たちが全財産を投じてまで手に入れようとした「幻の珍虫」だったのです。

ミミズク先生

この当時ほどではありませんが、現在でもケラモドキカミキリの標本はかなり高価なものです。

地中適応に見る3つの進化戦略

地中という「物理的制約」が明確な環境では、生物は限られた選択肢の中から自らの形を選び取ります。モグラ、ケラ、ケラモドキカミキリの3者は、それぞれの体の基本構造(体制)という遠い制約の中で、同じ課題に対して独自の、しかし機能的に相通じた解答を書き上げました。

ミミズク先生

モグラ、ケラ、ケラモドキカミキリは「地中生活に特化」という点は共通していますが、地中を掘り進むスタイルは実は少し違った進化をしています。

  • モグラ型:骨格と筋肉を根本から改造し、強力な力で土を掻き出す「重機」のような進化
  • ケラ型:外骨格をシャベル状に変え、ビロード質の体で滑るように、かつ素早く進む「高速掘削」の進化
  • ケラモドキ型:強靭な大顎と硬い胸部で障害物を粉砕し、道を広げる「破砕掘削」の進化

モグラの骨格改造、ケラの脚の変形、ケラモドキカミキリの顎の強化…。これら3つのアプローチは、すべてが「地中で移動する」という同じ課題に対する、それぞれの系統が見つけた「最適解」なのです。

自然選択という目に見えない力が、数百万年をかけて、無関係な生き物たちを機能的に相似た形へと彫り上げていく。それが、収斔進化の本質そのものなのです。

メンフクロウ職員

他にも、地中生活に適応するために、ミミズにそっくりになってしまったトカゲとヘビも存在します。

ミミズかと思ってしまうほどの姿をしたフロリダミミズトカゲ(Rhineura floridana )とエンバンメクラヘビ(Xenotyphlops grandidieri )👇️

【フロリダミミズトカゲ(Rhineura floridana )】
出典:iNaturalist – Rhineura floridana
【エンバンメクラヘビ(撮影:Dr. Jörn Köhler)】
出典:EDGE『Madagascar blind snake Xenotyphlops grandidieri』

フロリダミミズトカゲとエンバンメクラヘビは分類学的にとても希少な「一科一属一種」の爬虫類です。詳しくはこちら👇️

飼育下のスッポンモドキ

【一科一属一種の生き物:爬虫類編】進化の孤児たちが教える生命の奇跡と危機

乾いた大地が似せた姿:サボテンとトウダイグサ科の多肉植物

【ユーフォルビアの一種 Euphorbia candelabrum】
出典:iNaturalist – Euphorbia candelabrum (a1virginia)

砂漠という過酷な環境は、植物に厳しい選択を迫ります。灼熱の太陽、乏しい降水、激しい蒸散…。

こうした条件下で生き延びるには、水を蓄え、表面積を減らし、身を守る必要があります。驚くべきことに、南北アメリカ大陸に自生するサボテン科(Cactaceae)と、アフリカ・アジア原産のトウダイグサ科(Euphorbiaceae)に属するユーフォルビア属は、地理的に完全に隔離された環境で、ときに区別がつきにくいほど似た姿へと独立して進化しました。

肉厚の茎やトゲだらけの表面、球状や柱状の形は、砂漠という環境が植物に要求した「最適解」であり、収斔進化の最も視覚的にわかりやすい例の一つです。

メンフクロウ職員

​植物たちが過酷な環境を生き抜くために選んだ、共通の「防衛と貯水の知恵」を詳しく見ていきましょう。

サボテン科とトウダイグサ科:見た目はそっくり、中身は別物

【ブリンチュウ(武倫柱 Pachycereus pringlei )】
出典:iNaturalist – ブリンチュウ Pachycereus pringlei (jeanavila)

サボテン科(Cactaceae)は南北アメリカ大陸原産で、約1,500~2,000種が存在し、一方でトウダイグサ科(Euphorbiaceae)のユーフォルビア属(またはトウダイグサ属 Euphorbia )は主にアフリカや中東に分布し、多肉質の種だけで1,000種以上が存在しています。

タヌ山先生

これらは見た目がよく似ていますが、植物学的には全く異なる科に属しており、分類学上の距離は数千万年単位で隔たっています。

​サボテンとユーフォルビアの最も確実な見分け方は「花」と「刺座(しざ)」です。サボテンの特徴は、「刺座(アレオール)」と呼ばれる綿毛のような小さなクッション状の器官から、トゲが束になって生える点です。これは世界中のすべてのサボテンに見られる、サボテン科特有の特徴で、花や新しい枝も同じ場所から発生します。

【様々な棘を持つ Ferocactus 】
出典:WIKIMEDIA COMMONS – Ferocactus1001

一方、トウダイグサ科のトゲ(厳密には「棘=きょく」と呼ぶ場合もあります)は、茎から直接、通常は対になって生えます。また、ユーフォルビアを傷つけると有害な白い乳液が出ますが、サボテンからは通常出ません。

19世紀の博物学者アレクサンダー・フォン・フンボルトは、南米探検中にこの類似性に驚き、これを「自然が異なる大陸で同じ実験を繰り返した例」として記録しました。両者は、

  • 葉を退化させて光合成を茎で行う
  • 水を貯蔵する多肉組織を発達させる
  • 蒸散を防ぐために表面積を最小化する
  • 草食動物から身を守るトゲを持つ

という、砂漠適応の基本戦略を共通して採用したのです。

さらに注目すべきは、両グループの多くの種がCAM(ベンケイソウ型有機酸代謝)※と呼ばれる特殊な光合成を独立に進化させたことです。昼間は気孔を閉じて水分の蒸発を防ぎ、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込む方法で、通常の光合成(C3型)に比べて水の利用効率が極めて高いのです。

ミミズク先生

サボテンとユーフォルビアの、具体的な「似た者同士」の例を見ていきましょう

天を突く柱:柱サボテンとユーフォルビア天を突く柱

【ベンケイチュウ(弁慶柱 Carnegiea gigantea )】
出典:iNaturalist – ベンケイチュウ(弁慶柱) Carnegiea gigantea (seth_cs)

アメリカ南西部の巨大な柱サボテン、サグアロ(弁慶柱、学名Carnegiea gigantea )と、アフリカ南部に生育するユーフォルビア・アンマック(Euphorbia ammak )などの柱状ユーフォルビアは、収斂進化の典型的な例です。

サグアロは高さ12~15メートル、時には20メートル近くに達する巨大なサボテンで、太さは60~90センチメートルに達します。最も特徴的なのは、樹齢75~100年を経てから初めて現れる「腕」と呼ばれる太い横枝で、多い個体では50本以上にもなります。

【ユーフォルビア・アンマック(Euphorbia ammak )】
出典:iNaturalist – Euphorbia ammak (ninjawil)

一方で、エチオピア、ソマリア、イエメンなどに自生する、ユーフォルビア・アンマック(Euphorbia ammak )も、同様に成長し、見た目はそっくりです。両者とも、縦方向に走る「溝(リブ)」を持っており、この構造が極めて重要です。この構造が、水を吸収した時に膨張し、乾燥時に収縮することを可能にしているのです。

まるで蛇腹(じゃばら)のような仕組みで、雨季に大量の水を蓄え、乾季を乗り切ります。大きく成長したサグアロは最大5,000リットルもの水を体内に蓄えることができ、雨が降るとこの溝が広がって体全体が膨らみ、逆に乾季には少しずつ水を使いながら元の幅に戻っていきます。

この柱状形態には多くの適応的意義があります。高さを得ることで周囲の競争者より多くの光を獲得できること、縦の溝が水分貯蔵時の劇的な体積変化を吸収できることに加えて、細長い形状は昼夜の温度変化の影響を軽減し、朝夕は日光を受けやすく、真昼の極熱時には影を作るというラジエーターのような役割を果たしています。

完璧な球形:球状サボテンとユーフォルビア・オベサ

【キンシャチ (Kroenleinia grusonii )】
出典:iNaturalist – キンシャチ (Kroenleinia grusonii) (opuntia)

球状という形態は、体積に対する表面積の比率を最小化する、数学的に最も効率的な形です。この原理を利用して進化したのが、メキシコ原産の球状サボテン、キンシャチ(金鯱 Kroenleinia grusonii )や、南アフリカ原産のユーフォルビア・オベサ(Euphorbia obesa )またの名を「野球ボール植物」です。

【ユーフォルビア・オベサ(Euphorbia obesa ssp. symmetrica )】
出典:iNaturalist – Euphorbia obesa ssp. symmetrica (andrew_hankey)

金鯱は直径1メートル近くになる球体で、黄金色の美しいトゲを持ちます。一方、オベサは野球ボールほどの大きさで、トゲをほとんど持たず、美しい縞模様が特徴です。細部は異なりますが、「球形」という基本設計は完全に一致しています。

  • 球形は砂漠環境において、
  • 水分の蒸散を最小限に抑える
  • 真上からの強い日光を受ける面積を減らし、過熱を防ぐ
  • 地面近くに身を潜めて風による乾燥を防ぐ

といった普遍的な利点を持っています。

現代の植物生理学者がコンピューターシミュレーションで導き出した砂漠での最適形態も、まさにこの球形や柱形であり、自然選択が数学的な最適解を「発見」していたことを裏付けています。ユーフォルビア・オベサは、その希少性と美しさから、19世紀には採集家たちの間で極めて高い価値を持つ植物として扱われました。

サボテン科とトウダイグサ科の比較は、植物が環境の要求に応えてどのように形を変えるかを鮮やかに示しています。葉を捨て、茎を膨らませ、トゲで身を守る戦略は、大陸や系統が違っても砂漠という環境では必然的に選ばれる「答え」なのです。

同じCAM光合成※を何度も独立に進化させ、同じ柱状や球状の形態を導き出した両グループの存在は、進化が決してランダムではなく、物理法則と環境という共通のルールによって強く方向づけられることを、我々に教えてくれるのです。

CAM光合成(ベンケイソウ型有機酸代謝)🌵

CAM光合成(Crassulacean Acid Metabolism)は、乾燥環境に適応した植物の光合成方法で、夜間に気孔を開いてCO₂を取り込み、有機酸として液胞に蓄え、昼間は気孔を閉じたまま蓄えた有機酸からCO₂を放出して光合成を行います。代表的な植物はサボテン科、リュウゼツラン科(アガベ)、ベンケイソウ科、パイナップル、一部のラン(着生ラン)など約38科400属以上に見られ、維管束植物の約6~10%を占めます。

水利用効率はC3植物(C3型光合成=一般的な光合成)の6倍以上、C4植物(C4型光合成=高温乾燥適応型光合成)の3倍以上に達し、最も暑く乾燥した日中に水分喪失を最小化できる利点があります。一方で成長速度は通常遅く、バイオマス生産性はC3・C4植物より低い傾向がありますが、パイナップルやアガベなど農業的に管理された一部のCAM作物は高い生産性を示します。

興味深いのは、CAMが進化史上60回以上独立に進化しており、一部の植物(ツルナ科のMesembryanthemum crystallinumなど)は乾燥ストレス時にC3からCAMへ切り替える「任意型CAM」を持つことです。

参考・引用文献

NCBI – New perspectives on crassulacean acid metabolism biology

Oxford Academic – Exploiting the potential of plants with crassulacean acid metabolism for bioenergy production on marginal lands

NCBI – Engineering crassulacean acid metabolism to improve water-use efficiency

Wiley – CAM photosynthesis: the acid test

海の流線型ボディ:サメ・イルカ・魚竜に共通する形の理由

※Geminiより生成

水の密度は空気の約800倍もあり、その中を高速で移動するには強大な抵抗を克服しなければなりません。この物理的な壁を乗り越えるため、魚類のサメ、哺乳類のイルカ、そして絶滅した爬虫類の魚竜(ぎょりゅう)は、時代や系統を超えて驚くほど似通った体型にたどり着きました。

背びれ、流線型のボディ、三日月型の尾びれ…。この3者が共通して持つ形態は、「水中で速く泳ぐ」という物理的課題に対する、進化が導き出した普遍的な答えなのです。

メンフクロウ職員

水中という過酷な舞台が、異なる生き物たちを同じ「究極のフォルム」へと導いた理由を探っていきましょう。

流線型という物理法則が要求する唯一の答え

ミミズク先生

水中を速く、効率よく泳ぐための最適な形は、生物の種類にかかわらず流体力学によってほぼ決まっており、その答えが「流線型(streamlined body)」です。

流線型とは、水の流れを体の前後で滑らかに分け、後ろ側で起こる乱流や渦をできるだけ小さく抑える形のことです。具体的には、胴体が前方から後方へ向かって滑らかに細くなる紡錘形をしており、水中を進むときに水の流れがスムーズに体の後ろへ流れていきます。

もし体の形がゴツゴツしていたり角ばっていたりすると、体の後ろで水が渦を巻いて、その渦がブレーキのように働いて泳ぎにくくなってしまいます。また、身体の表面がツルツルと滑らかであることで水との摩擦も少なく、より少ない力で速く泳ぐことができます。

このように、流線型は物理法則が要求する唯一の答えであり、魚類、海生爬虫類、海生哺乳類のいずれもが、進化の過程で独立にこの形状へと収斂していったのです。

流線型から外れた個体は泳ぐのに多大なエネルギーを消費するため、自然選択の結果としてこの「最適解」が選ばれ続けてきました。近現代の潜水艦や高速船舶も、この流線型を模倣して設計されており、人間の工学が自然界の「答え」を後追いしている形になっています。

サメ:4億年かけて磨いた軟骨魚類の完成形

【イタチザメ(Galeocerdo cuvier )】
出典:iNaturalist – イタチザメ Galeocerdo cuvier (huntingforparadise)

サメは約4億年前から生存している軟骨魚類で、その長い歴史の中で海洋捕食者としての理想的な形態を完成させました。特徴的な背びれや胸びれは水中での安定性と方向転換を可能にし、三日月型の尾びれ(ヘテロセルカル尾、heterocercal tail)が強力な推進力を生み出します。

サメの皮膚にある小さな歯のような「楯鱗(じゅんりん、placoid scales)」は、水の抵抗を減らす特殊な構造をしており、この微細な構造が水流を整流して抵抗を削減するレーザーのような役割を果たしています。

メンフクロウ職員

わさびを擂り下ろす「鮫肌」ですね!

【電子顕微鏡を通して見た楯鱗】
出典:WIKIMEDIA COMMONS – Denticules cutanés du requin citron Negaprion brevirostris vus au microscope électronique à balayage

アメリカの海洋生物学者ユージニー・クラークは、世界で最初に生きたサメを詳細に研究した科学者の一人です。彼女の数十年にわたる研究によって、サメの遊泳能力が速さ、持久力、敏捷性の完璧なバランスの上に成り立っていることが明らかになりました。

【海底で休むトラフザメ(Stegostoma tigrinum )】
出典:iNaturalist – トラフザメ Stegostoma tigrinum (shashe)

特に注目すべきは、彼女が「眠るサメ」の存在を発見し、サメは常に泳ぎ続けないと呼吸できないという古い通説を覆したことです。

ここで紹介したイタチザメとトラフザメは分類学上珍しい「一科一属一種(単型科)」のサメです。魚類の壮大な世界に関心がある人にはこちらもおすすめ👇️

【一科一属一種の生き物:魚類編】魚類の壮大な世界

イルカ:哺乳類が海に戻って獲得した流線型

【ラプラタカワイルカ(Pontoporia blainvillei )】
出典:iNaturalist – ラプラタカワイルカ Pontoporia blainvillei (jonathanbensimon)

イルカは約5,000万年前に陸から海へ戻った哺乳類の祖先から進化しました。彼らは四肢動物としてのルーツを持ちながら、驚くほどの短期間でサメと類似した流線型ボディを獲得したと考えられています。

この劇的な変化の過程で、前肢はヒレに変わり、後肢は完全に退化し、尾部には水平な尾びれ(flukes)が新たに進化しました。

【マイルカ(Delphinus delphis ssp. delphis )】
出典:iNaturalist – Delphinus delphis ssp. delphis (myworldofbirdphotography)

サメとイルカの最大の違いは、尾びれの動きです。サメと魚竜は垂直な尾びれを左右に振って進みますが、イルカは水平な尾びれを上下に振って推進力を得ます。

これは、哺乳類が陸上での走り方(背骨を上下に曲げる動き)を維持したまま水中へ適応したためです。わずか5,000万年という短い期間でこれほどの変貌を遂げた事実は、環境圧がいかに強力であるかを示しており、収斔進化の凄まじさを物語っています。

体毛はほぼ完全に失われ、皮下には厚い脂肪層が発達して保温と流線型の維持に貢献しています。

魚竜:絶滅した海の爬虫類が示す収斔進化の極致

【イクチオタイタン(Ichthyotitan severnensis )の想像図】
※Geminiより生成

魚竜は、約2億5,000万年前の三畳紀初期から、約9,000万年前の白亜紀後期まで、海を支配していた海生爬虫類です。彼らは陸生爬虫類から進化しましたが、その姿は現代のイルカと見分けがつかないほど洗練された流線型をしていました。

19世紀の古生物学者メアリー・アニングは、イギリス南部のライム・レジスで、多くの魚竜化石を発見しました。この発見によれば、魚竜は背びれや三日月型の尾びれを備えていたことが明らかになり、さらにドイツで発見された化石からは、魚竜が胎生(卵ではなく子を産む)であり、海中生活に完全に特化していたことも判明しています。

魚竜の存在は、環境が同じであれば進化は時空を超えて同じ「答え」を出すことを証明する、最も劇的な例といえるでしょう。爬虫類という全く別の系統から出発しながらも、サメやイルカと驚くほど似た体型に到達した事実は、物理法則がいかに生物の形を規定するかを力強く示しています。

水という密度の高い環境が、時間と系統の壁を超えて、異なるルーツを持つ生き物たちを同じフォルムへと進化させた…。それが収斂進化という現象の本質なのです。

収斂進化に“そっくり”だけれど実は違う進化たち

生物が似ているからといって、そのすべてが収斂進化によって生み出されたわけではありません。進化生物学には、収斂進化と混同されやすいいくつかの現象が存在します。

共通の祖先から受け継いだ形質が残っている場合や、遺伝子が直接移動した場合、あるいは他者を真似ている場合など、その背景にあるメカニズムは多岐にわたります。

メンフクロウ職員

生物が似た姿に進化するものの収斂進化には当たらない例を見ていきましょう。

平行進化:近い親戚が似た道を歩む現象

平行進化(parallel evolution)は、比較的近い共通祖先から分かれた生物どうしが、別々の場所や時代で独立に似た形質を進化させることです。収斂進化との最大の違いは「出発点の近さ」にあります。

収斂進化がサメとイルカのように系統的に遠く離れた生き物の間で起こるのに対し、平行進化はもっと近い系統の種の間で見られます。

アメリカの古生物学者ジョージ・ゲイロード・シンプソンは、1944年の著作『進化の速度と様式(Tempo and Mode in Evolution)』の中で、「平行進化とは、似た遺伝的基盤から出発したために、似た方向へ進化しやすい現象」として定義し、遠い系統が似る収斂進化と厳密に区別しました。

例えば、サンショウウオやイモリの仲間(有尾類)では、約2億年前の共通の先祖から別れた後、別々のグループで独立して「幼形成熟(ネオテニー)」※という進化が起こりました。メキシコの「メキシコサンショウウオ(ウーパールーパー、Ambystoma mexicanum )」や、ヨーロッパの洞窟に住む「ホライモリ(Proteus anguinus )」などがその代表例です。

【メキシコサンショウウオ(Ambystoma mexicanum )】
出典:Wikipedia ‐ Ambystoma mexicanum at Vancouver Aquarium
【ホライモリ(Proteus anguinus )】
出典:iNaturalist – ホライモリ Proteus anguinus (gabrivauda)
幼形成熟(ネオテニー)🐣

幼形成熟(ネオテニー)は、子どもの姿のまま大人になり、繁殖できるようになる進化上のしくみです。代表例は、外鰓を残したまま成長するアホロートルや、一部のイモリ・サンショウウオ類で見られる幼形成熟個体で、同じ種の中でも変態する個体と幼形成熟のままの個体が混在する場合もあります。

安定した湖や池など、水が一年中あり外敵も少ない環境では、変態に使うエネルギーを節約し、早く繁殖に回せるというメリットがあり、南方の安定した水域や高標高の冷たい湖などで幼形成熟へと進化しやすいことが大規模解析から示されています。一方で、水辺の環境が失われたり汚染されたりすると陸に上がれないため、利用できる生息地が限られるというデメリットも指摘されており、アホロートルのように絶滅危惧になる種もあります。

メンフクロウ職員

筆者の家のウーパールーパーは可愛いエラ、なくなっちゃいましたけど…。

タヌ山先生

浅い水深で飼育すると、「上陸準備」しちゃうかもしれませんね

このように、幼形成熟は「発生のタイミング(ヘテロクロニー)」を変えることで、環境に合わせて生活史を調整する戦略として、両生類の進化と多様化を理解するうえで重要なテーマになっています。

【メキシコサンショウウオ※(Ambystoma mexicanum )】
出典:Earth.org ‐ All You Need to Know About the Endangered Axolotl (2024年7月10日)

※アホロートル、ウーパールーパー、メキシコサレマンダーとも呼ばれる

参考・引用文献

Wiley Online Library ‐ The neoteny goldilocks zone: The evolution of obligate neoteny in salamanders (2024年4月8日)

PMC ‐ On the identification of paedomorphic and overwintering larval newts based on gonadal and external traits (2016年5月9日)

Journal of Animal Ecology ‐ Heterochrony in a complex world: disentangling environmental drivers of paedomorphosis in amphibians (2013年11月4日)

全く別の場所で暮らす彼らが同じような特徴を持ったのは、共通の先祖から「甲状腺(こうじょうせん)ホルモンなどで体の成長をコントロールする仕組み」を遺伝的に受け継いでいたためです。もともと同じような「設計図の素材」を持っていたからこそ、別々の系統でも同じ方向への進化が起こりやすかったのです。

ミミズク先生

平行進化と収斂進化はハッキリ特別することが難しい場合もあります。また、DNAの解析により分子系統学上の位置が変わると、平行進化・収斂進化の判断が変わることもあります。

メンフクロウ職員

平行進化と収斂進化の間にはまだ議論の余地があるものも少なくありません。

大まかな違いを以下の表にまとめました。

平行進化収斂進化
生物同士の関係近い親戚同士 遠い他人の関係(全く別のグループ)
先祖の見た目先祖も似たような姿や特徴を持っていた 先祖の姿は全く違っていた 
体の設計図
(遺伝子)
同じ遺伝子や仕組みを使っている 全く別の遺伝子を使って、たまたま同じ形になった 
進化の理由その生物がもともと持っている「進化しやすい方向」に沿った変化厳しい環境で生き残るための「唯一の正解」にたどり着いた変化
例イトヨ(各地の湖で同じようにトゲや鱗を減らした)イルカとサメ(形は似ているが、哺乳類と魚類で全く別物)

相同性:共通祖先から受け継いだ「変わらぬ設計図」

相同性(homology)は、共通祖先から受け継いだ形質が複数の子孫に残っている状態で、収斔進化とは正反対の概念です。これは独立に似た形を獲得したのではなく、もともと似ていたものが受け継がれたことを意味します。

代表的な例は四肢動物の前肢です。人間の腕、コウモリの翼、クジラの胸びれ、モグラの前足などは、外見も機能も大きく異なりますが、骨格の基本配置(上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、中手骨など)は驚くほど共通しています。19世紀の比較解剖学者リチャード・オーウェンはこの相同性の概念を確立し、相同と相似(相似器官)の区別が進化生物学において極めて重要であることを示しました。

現代ではDNA配列の比較により、見た目だけでは判断できなかった「もともと一緒(相同)」と「後から似た(相似)」を正確に区別できるようになっています。例えば、人間とコウモリの前肢の遺伝子を比較すれば、非常に高い相同性が見られることで、両者が遠い共通祖先から受け継いだ相同器官であることが分かります。

遺伝子の水平伝播:種の壁を越えて広がる遺伝情報

遺伝子の水平伝播(horizontal gene transfer, HGT)は、親から子への遺伝とは異なり、種の壁を越えて遺伝子が直接移動する現象です。これにより、進化的に遠い生物が似た形質を持つことがありますが、これは自力で似た形に辿り着く収斂進化ではありません。

この現象を最初に認識し、その深い意義を明らかにしたのが、微生物学者カール・ウーズです。1970年代、ウーズは16S リボソームRNAという、すべての生き物に存在する遺伝子を比較することで、生命の「系統樹」※を新たに作り直しました。

系統樹🌳

系統樹(けいとうじゅ)とは、生き物たちの「家系図」のようなもので、進化の歴史の中で種がどのように分かれてきたのかを樹木のように表した図です。枝の分かれ目が共通の祖先にあたり、枝と枝が近いほど、生物同士が近い親戚関係にあることを示します。

【動物の進化系統樹】
出典:東京薬科大学 ‐ 動物の進化系統樹 山岸 明彦

かつては骨格や見た目の比較が中心でしたが、現在はDNA(遺伝情報)の解析が主流となり、より客観的な関係性を探れるようになりました。この系統樹は生命38億年の壮大な物語を読み解くための地図であり、新しい発見によって今もなお枝葉が更新され続けています。

【分子系統解析の3要素】
出典:松井 求 ‐ 分子系統解析の最前線
【全生物を対象にした系統樹の例】
出典:WIKIMEDIA COMMMONS – Phylogenetic Tree of Life-ja

その過程で、彼は衝撃的な事実に気づきました。細菌や古細菌のゲノムに見られる遺伝子の多くが、種を超えて移動していたのです。ウーズはこれを「水平遺伝子移動」と名付け、これが初期の生命進化においては自然選択よりも重要だった可能性さえあると提唱しました。​

最も重要な現代の例が、細菌の抗生物質耐性です。ある細菌が抗生物質に対する耐性遺伝子を獲得すると、その遺伝子はプラスミドや細菌ウイルスを介して、まったく別の種の細菌に移動することがあります。

このプロセスは、

  1. 接合(conjugation)
  2. 形質転換(transformation)
  3. 形質導入(transduction)

という3つの経路を通じて起こります。この水平伝播は、人間社会における抗生物質の過剰使用により加速しており、医療現場での薬剤耐性菌の蔓延を招いています。

擬態:他の生物に「わざと」似せる戦略

擬態(mimicry)は、ある生物が別の生物や環境に似せることで、捕食者から逃れるなどの利益を得る現象です。これも「似ている」という結果をもたらしますが、その動機と仕組みは収斂進化とは全く異なります。

収斂進化が「物理的環境への独立した適応」であるのに対し、擬態は「他の生き物の目を欺く」という、相互作用を通じた進化なのです。

19世紀の博物学者ヘンリー・ウォルター・ベイツは、1862年にアマゾン探検中に、無害な蝶が毒のある蝶に姿を似せていることを発見しました。この現象は後に「ベイツ型擬態」と呼ばれ、無毒のハエが有毒のハチに似た模様を持つことで、鳥などの捕食者に「危険だ」と誤認させるというものです。

ベイツの洞察は、ダーウィン自身からも称賛を受け、擬態が自然選択によって説明できることを科学的に証明した最初の事例となりました。

【猛毒のハーレクインサンゴヘビ(Micrurus fulvius )】
出典:iNaturalist – Micrurus fulvius (jakescott)
【無毒のスカーレットキングヘビ(Lampropeltis elapsoides )】
出典:iNaturalist – Lampropeltis elapsoides (narumk07)

一方、「ミュラー型擬態」は、毒を持つ種どうしが互いに似た姿になる現象です。複数の有毒種が似た警告色を共有することで、捕食者の学習コストを分担できるという相互利益をもたらします。例えば、中南米のドクチョウの仲間であるヘリコニウス属では、Heliconius erato と Heliconius melpomene という別種のチョウが、ともに有毒であるにもかかわらず、同じ地域ごとに赤と黒を基調としたよく似た翅模様を持つように進化しています。

このように、両種が「共通の危険信号」を発することで、鳥などの捕食者は一度の嫌な経験で二種まとめて学習でき、結果として両方の生存率が高まると考えられています。

このような区別を理解することで、生物の多様性がいかに複雑で、いかに多様なメカニズムによって形作られているかが見えてきます。

ミミズク先生

自然界の「そっくりさん」には、それぞれ異なる物語があるのです。

生き物たちの「そっくり」から学ぶ、これからの環境と私たち

※Perplexityより生成
メンフクロウ職員

さて!タヌ山先生とアライグマさんは収斂進化の結果、似た者同士になったのでしょうか?

タヌ山先生

実はぼくたちも「収斂進化」なんです!

シロフクロウ職員

遠く離れた北米と日本で、同じような姿に進化するなんて不思議ですね〜

タヌ山先生

そうですね(ぼくのほうが可愛いですけどね!)

収斂進化は、環境が生命を形作る力の強さを示すと同時に、バイオテクノロジー、環境保全、さらには宇宙の生命探索まで、現代社会が直面する多くの課題において重要なヒントを与えてくれます。

異なる生物が同じ「最適解」に到達するという事実は、自然界に普遍的な設計原理が存在することを教えてくれるのです。生命が何百万年もかけて導き出した知恵から、私たちが未来のために学べる教訓を整理しましょう。

バイオミメティクス:自然に学ぶ技術革新

※Perplexityより生成

収斂進化によって磨かれた形態は、膨大な試行錯誤の末に到達した「実証済みの最適解」です。この知恵を技術に応用する分野「バイオミメティクス(生物模倣)」が近年注目されています。​

新幹線500系の先頭車両はカワセミのくちばしを模倣し、トンネル突入時の騒音を劇的に削減しました。サメの皮膚にある楯鱗を模した素材は、競泳水着や船体の抵抗削減に活かされています。

生物は限られた資源で最大の効果を得るよう進化しているため、その構造はより効率的な技術開発の鍵となるのです。アメリカのサイエンスライターで「バイオミミクリー」提唱者の ジャニン・ベニュス(Janine Benyus)は、「自然が38億年をかけて最適化してきた『答え』は、人間社会にとって最良の教科書である」と説いています。​

環境変化への警告:進化の速度の限界

しかし、他方で収斂進化が示す最も重要な警告は、「適応には膨大な時間が必要である」という現実です。サメが流線型体を獲得するまで数億年、イルカは5,000万年を要しました。

一方、現代の気候変動は人間活動によって加速し、その速度は自然の進化速度をはるかに上回っています。

フクロオオカミ(タスマニアンタイガー)の絶滅は、この限界を象徴しています。数千年前、気候変動と外来種の導入によって個体数が激減し、19世紀には人間による過度な狩猟により、1936年に最終的に絶滅しました。

生息地の分断化と急速な環境変化が続く現在、地球は第六の大量絶滅期にあるとされており、失われた多様性を取り戻すには、自然界の時間尺度では測り知れない期間が必要となるのです。

進化の必然性:未来を予測する視点

古生物学者サイモン・コンウェイ・モリスは、収斂進化の普遍性から、進化には一定の「予測可能性」が存在すると主張しています。水中なら流線型、地中なら掘削用の前肢というように、環境の物理的制約から導かれる必然的な答えがあるというのです。

この考え方は、系外惑星の生命探索にも応用されています。地球と似た環境の惑星には、地球と似た姿の生命が存在する可能性があるのです。

収斂進化が教えてくれる最も重要なことは、環境と生命が切り離せない関係にあるということです。自然の最適解に学び、地球の循環システムを健全化し、多様な進化の舞台を守り抜くこと…。

それこそが、私たちが今後普遍的に進んでいく道なのかもしれません。

ミミズク先生

まずはあなたの好きなものから、生き物や自然環境について、理解を深め、探索と学びを続けてください。

書籍の紹介

メンフクロウ職員

eco-life-planetのKindle書籍「森の博物館シリーズ」もよろしくお願いします!

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一科一属一種の生き物 【分類学編】: 生命の系統樹で最も細い枝

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ミミズク先生

ブログ記事より少し踏み込んだ内容も追加されています

シロフクロウ職員

おまけコーナーもありますよ〜

タヌ山先生

ゆる~く、分類学の第一歩を踏み出してください

参考・引用文献

遠い親戚なのにそっくり?収斂進化とはどんな現象か

Wikipedia – Convergent evolution

Wikipedia ‐ Ecological niche

Wikipedia ‐ 収斂進化

Wikipedia ‐ Natural selection

国立遺伝学研究所 ‐ 食虫植物の収斂進化をゲノムから探る(2024年6月)

日経サイエンス ‐ まるで異なる動物で意外な共通項が見つかる一方で謎も深まっている(2012年3月)

東北大学 ‐ 葉の形態の収斂進化に関わる遺伝子を発見 育種への応用に期待(2019年12月)

Nature – Convergent evolution collection(2023年6月6日)

PNAS – Convergent evolution of conserved mitochondrial pathways underlies repeated adaptation to extreme environments(2025年6月25日)

UC Berkeley Museum of Paleontology – Richard Owen (1804-1892)

オーストラリアの有袋類と真獣類:別々の大陸で生まれたそっくりさん

Nature Communications – Patterns of ontogenetic evolution across extant marsupials reveal evolutionary convergence(2023年5月10日)

nuture – Emx2 underlies the development and evolution of marsupial gliding membranes(2024年4月24日)

Communications Biology ‐ Ontogenetic origins of cranial convergence between the extinct marsupial thylacine and placental gray wolf(2021年1月8月)

PMC ‐ Widespread cis-regulatory convergence between the extinct Tasmanian tiger and gray wolf(2019年10月29日)

ScienceAdvance ‐ Unearthing the secrets of Australia’s most enigmatic and cryptic mammal, the marsupial mole(2025年1月1日)

Live Science – Tasmanian tiger: Facts about the extinct thylacine(2024年8月30日)

Understanding Evolution – Squirrels and sugar gliders

Wikipedia ‐ Gondwana

地中で掘るスペシャリスト:モグラ・ケラ・ケラモドキカミキリに見る「進化の最適解」

坂口浩平 ‐ 図説世界の昆虫 3 南北アメリカ編 1  p.152,153

PMC ‐ The genome sequence of the European mole, Talpa europaea Linnaeus, 1758(2025年2月14日)

Wikipedia ‐ Hypocephalus armatus

PassionEntomologie ‐ Hypocephalus armatus: a (very) unusual long-horned beetle(2015年7月2日)

Wikipedia ‐ Gryllotalpa gryllotalpa

BioOne – Types and Functions of Mole Cricket Sensilla(2015年6月1日)

National Library of Medicine ‐ Early skeletal development in Talpa europaea, the common European mole(2006年5月)

eLife – Mammalian forelimb evolution is driven by uneven proximal-to-distal morphological diversity(2023年1月26日)

BioOne – Morphology and calling song characteristics in Gryllotalpa major Saussure (Orthoptera: Gryllotalpidae)(2006年6月1日)

サボテン科とトウダイグサ科:見た目はそっくり、中身は別物

PMC ‐ The CAM lineages of planet Earth(2023年9月12日)

PMC ‐ Crassulacean acid metabolism (CAM) at the crossroads: a special issue to honour 50 years of CAM research by Klaus Winter(2023年10月19日)

PMC ‐ Physiology, genomics, and evolutionary aspects of desert plants(2023年5月7日)

Wikipedia ‐ Areole

Wikipedia ‐ Cactus

California State University Stanislaus – Convergent Evolution of Desert Plants from Africa and the Americas

National Library of Medicine ‐ The convergent evolution in plants(2003年)

Wiley Online Library – Evolutionary bursts in Euphorbia (Euphorbiaceae) are linked with photosynthetic pathway(2014年10月10日)

Frontiers in Plant Science – Evolutionary Convergence of C4 Photosynthesis: A Case Study in the Nyctaginaceae(2020年11月2日)

Wikipedia ‐ Euphorbia ammak(2024年12月26日)

Wikipedia ‐ Saguaro, Carnegiea gigantea(2024年改訂)

Ethnoleaflets ‐ Desert Architects: The Geometry of the Saguaro Cactus(2025年11月18日)

海の流線型ボディ:サメ・イルカ・魚竜に共通する形の理由

Oxford Academic – Convergence in Thunniform Anatomy in Lamnid Sharks and Jurassic Ichthyosaurs(2016年10月29日)

PMC ‐ Effects of body plan evolution on the hydrodynamic drag and energy requirements of swimming in ichthyosaurs(2019年3月6日)

Science – Genes lost during the transition from land to water in cetaceans(2019年9月25日)

Wikipedia ‐ Ichthyosauria

Wikipedia ‐ Evolution of cetaceans

Nature – Gliding locomotion of manta rays, killer whales and swordfish near the water surface (2017年3月24日)

Frontiers – On an adaptation of the Reynolds number, applicable to body-caudal-fin aquatic locomotion (2022年9月15日)

Wiley Online Library – Shape of Aquatic Animals and Their Swimming Efficiency(2014年)

Understanding Evolution – How do convergent traits evolve?

収斂進化に“そっくり”だけれど実は違う進化たち

Molecular Ecology – Understanding natural selection and similarity: Convergent, parallel and repeated evolution(2023年9月19日)

Britannica – George Gaylord Simpson

Molecular Biology and Evolution – Horizontal Transfer Shapes the Emergence of Antibiotic Resistance (2023年10月3日)

PMC ‐ Carl Woese’s vision of cellular evolution and the domains of life(2014年1月16日)

Wikipedia ‐ Batesian mimicry

Wikipedia ‐ Müllerian mimicry

Nature Ecology & Evolution – Bates’ many contributions (2025年7月9日)

Encyclopédie de l’Environnement – Mimicry: butterflies of a feather flock together (2024年3月27日)

生き物たちの「そっくり」から学ぶ、これからの環境と私たち

Wikipedia ‐ Janine Benyus

BioLogos – Evolution on Purpose: The Inevitability of Intelligent Life? (2015年10月27日)

Wikipedia ‐ Simon Conway Morris

Australian Geographic – Climate change a major contributor to extinction of the Tasmanian tiger (2018年8月16日)

National Museum of Australia – Extinction of thylacine

Biomimicry Toolbox – Nature’s Unifying Patterns

Atmos – Janine Benyus on Biomimicry and Designing With Life’s Principles (2025年4月22日)

分類学 生き物 自然
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