カバー画像:「Whistling Thorn (198980231)」— Alastair Rae / Wikimedia Commons / トリミングあり / CC BY-SA 2.0
散歩道のスミレから、熱帯の樹上で育つランの仲間まで、植物とアリはさまざまな関係を結んでいます。アリに種子を運んでもらう植物、葉を食べる昆虫への防御に役立てる植物、体の一部を住まいとして使わせる植物もあります。小さなアリの行動を手がかりに、身近な自然と熱帯雨林に広がる共生のしくみを見ていきましょう。
メンフクロウ職員私が趣味で栽培しているランの仲間には、ふくらんだ偽球茎の中をアリが利用するものもあります。身近に観察できる例から少し遠い熱帯の植物まで、一緒にのぞいてみませんか。


アリと植物を結ぶ「運ぶ・守る・住む」の関係


出典:iNaturalist – アリアカシア Vachellia sphaerocephala(pacorrowild)
多くの植物は、根付いた場所から自力で移動することができません。それでも、種子に小さな付属体を備えたり、花以外の場所に蜜を出したりして、周囲のアリとの関係を通じて生きています。
アリは、植物にとって種子の運び手にも、葉の上を巡回する存在にもなります。さらに熱帯には、植物の内部を住まいとして利用するアリもいます。



まずは、少し複雑に見えるアリと植物の関係を、「運ぶ・守る・住む」という三つの視点で整理してみましょう。
アリと関わる植物は、すべて「アリ植物」なのか
「アリ植物」という言葉からは、アリと深く関わる植物全般を思い浮かべるかもしれません。しかし生態学でアリ植物、英語で myrmecophyte と呼ぶ場合は、アリが住居として利用する空洞や袋状の構造を備えた植物を指すのが一般的です。
一方、カタクリやスミレのようにアリへ種子を運ばせる植物は「アリ散布植物」、アカメガシワのように花以外の場所から蜜を出してアリを呼ぶ植物は「花外蜜腺をもつ植物」として区別されます。どちらもアリと深く関わりますが、それだけで厳密な意味でのアリ植物になるわけではありません。
| 関係 | 植物が提供するもの | アリに見られる行動 | 身近な例・代表例 |
|---|---|---|---|
| 運ぶ | エライオソーム | 種子を巣や周辺へ運ぶことがある | カタクリ、スミレ類、エノコログサ |
| 守る | 花外蜜腺の蜜など | 植食者を追い払ったり、捕食したりすることがある | アカメガシワ、サクラ、カラスノエンドウ |
| 住む | ドマティア、食物体、蜜など | 植物体の一部に巣をつくる | アリノストリデ、セクロピア |
この三つは、植物とアリが人間のように意思を交わして結ぶ契約ではありません。長い進化のなかで、植物の形や成分とアリの行動が結び付き、条件によっては双方に利益が生じる関係が残されてきたものです。



こうした関係は「相利共生」と呼びます。植物とアリの双方に利益が生じる関係ですね。ただし、相利共生だからといって、すべてを「共進化」とは呼びません。互いが相手の進化に影響した証拠があって、初めて共進化です。
種子を運んでもらう——エライオソームとアリ散布



アリによる種子散布は、英語で「myrmecochory」と呼ばれます。
多くのアリ散布植物は、種子にエライオソーム※という小さな付属体を備えています。脂質などを含むこの部分は、アリにとっての食物です。アリはその食物を利用するために種子ごと運ぶことがあり、結果として植物の種子散布につながります。



エライオソームはアリにとって食物で、植物はこれでアリを引き寄せている、と考えて問題ないでしょうか?



はい。ただし、種子本体とエライオソームは区別してください。典型的なアリ散布では、アリはエライオソームを食物として利用し、種子本体を残します。



つまり、典型的なアリ散布では、アリは種子本体ではなく、エライオソームを主に食物として利用するところがポイントなのですね。
アリはエライオソームを利用するために種子を巣やその周辺へ運び、種子本体は巣の外や不要物を置く場所へ出されることがあります。植物にとっては、親株の近くから種子を離し、新しい場所で芽生える機会を得る方法の一つです。
ただし、運ばれた種子が必ず発芽や定着に適した場所へ届くわけではありません。アリの種類、種子の大きさ、運搬先の土壌、ほかの動物による捕食などによって、結果は変わります。日本の暖温帯では、20属のアリ散布植物と19種の種子散布アリが確認されてきました。
エライオソーム🐜🌱
エライオソームは、カタクリ(Erythronium japonicum)やスミレ類(Viola spp.)などの種子に付いた、アリが利用する小さな食物体です。脂質、タンパク質、糖類などを含みますが、その割合や形、大きさは植物によって異なります。
アリはこの部分を手がかりに種子を運び、エライオソームを取り除いて利用します。残った種子は巣の中や外に置かれ、そこで発芽することもあります。
植物にとっては、親株の近くで起こりやすい競争や種子捕食を避け、別の場所へ届く機会になります。ただし、運搬先が必ず生育に適しているとは限りません。
エライオソームには、アリを引き付ける以外の働きもあります。トウゴマ(Ricinus communis)を対象とした研究では、エライオソームを除去した種子で発芽が促進され、その水性抽出物には発芽を抑える作用が認められました。ただし、除去による影響は植物によって異なり、発芽率が変わらない例や、かえって発芽に不利になる例も報告されています。
エライオソームは、アリへの「報酬」にたとえられる構造です。しかし、その役割は食物を提供することだけではありません。種子がどこへ運ばれ、どのような状態で芽生えるかにも関わる、多機能な付属体と考えられています。小さな形や成分の違いにも、植物とアリの多様な関係が表れているのです。


出典:The University of Chicago Press ‐ Seed Dispersal by Ants: A Primer
参考・引用文献
カタクリ——春の妖精が種子に託すもの


出典:iNaturalist – カタクリ Erythronium japonicum(pyological__point)
早春の落葉広葉樹林に咲くカタクリは、地上に姿を見せる期間が短い「スプリング・エフェメラル」※の一つです。薄紫色の繊細な花が注目されがちですが、実は花が終わった後にできる種子には、アリとの重要な関係が隠れています。
スプリング・エフェメラル🌱
スプリング・エフェメラルは、落葉樹林の林床で、早春の短い期間だけ地上に葉や花を出す多年草の仲間です。木々がまだ葉を広げていない時期の光を利用して、光合成、開花、結実を進めます。
木々の葉が茂って林床が暗くなる頃には、地上部を枯らし、地下の球根や地下茎などに栄養を蓄えて休眠します。春にだけ姿を現すように見えることから、「春の妖精」と呼ばれることもあります。
カタクリのほか、ニリンソウ、キクザキイチゲ、アズマイチゲ、セツブンソウなどが代表例として知られます。ただし、地上部がいつ枯れるか、どの植物をスプリング・エフェメラルに含めるかには、研究上の定義の違いがあります。


出典:WIKIMEDIA COMMONS – File:Heloniopsis orientalis 3.JPG(Qwert1234)
参考・引用文献
カタクリの種子にはエライオソームが付き、アリが種子を運ぶことを促します。親株の真下から少し離れた場所へ移動することで、芽生えが一か所に集中することを避けたり、異なる環境へ届いたりする機会が生まれます。


出典:iNaturalist – カタクリ Erythronium japonicum(dhugallindsay)
カタクリは、アリ散布と地域のアリ群集の関係を調べる研究対象にもなってきました。エライオソームの形や大きさ、運び手となるアリの種類によって、種子の行き先は変わり得ます。花が咲く季節だけでなく、花後の地表にも目を向けると、春の森のもう一つの営みが見えてくるでしょう。
スミレ——種子を弾き、アリにも運んでもらう


出典:iNaturalist – コスミレ Viola japonica(yanghooncho)
スミレ類の果実は熟すと裂け、種子を周囲へ弾き飛ばします。地面に落ちた種子にはエライオソームがあり、その後にアリが見つけて運ぶことがあります。
果実が種子を飛ばす自動散布と、アリによる運搬が続けて起こるため、この仕組みは二段階散布、または二次散布と呼ばれます。植物自身の力だけでなく、小さなアリの移動も利用できる点が特徴です。


出典:iNaturalist – スミレ(広義) Viola mandshurica(sergey_stefanov)
石垣のすき間や舗装の割れ目に咲くスミレを見つけると、どこから種子が来たのか気になるかもしれません。すべてをアリ散布だけで説明することはできませんが、アリが種子を移動させることは、スミレが新しい場所へ広がる一つの可能性になります。
エノコログサ——「ねこじゃらし」で見つかった新しい関係


出典:iNaturalist – エノコログサ Setaria viridis(mutolisp)
空き地や道ばたで見かけるエノコログサは、「ねこじゃらし」として親しまれる身近なイネ科植物です。その種子にも、近年、アリ散布に関わる仕組みが見つかりました。
京都大学生態学研究センターの共同研究チームは、エノコログサとアキノエノコログサの種子に、アリによる種子散布に関わるエライオソームがあることを見いだしました。複数の集団を対象とした野外調査と飼育アリによる実験から、この付属体が実際の種子散布に寄与することも確かめられています。


出典:京都大学 ‐ アリによる種子散布共生を、イネ科植物で初めて確認(2025年12月)
上段:トビイロシワアリの巣から運び出された種子.
下段:穂から落下したばかりの新鮮な種子.
黒い矢印:染色により脂質が検出された部位.
この論文は2025年12月16日にオンライン公開され、2026年刊行の Plant Species Biology 第41巻第1号に収録されました。イネ科植物でアリによる種子散布共生を確認した初めての例であり、見慣れた雑草にも、まだ知られていない生態の仕組みがあることを示しています。
花の外で蜜を出す——花外蜜腺とアリによる防御
アリを利用する植物には、種子を運ばせるだけでなく、葉を食べる昆虫への防御にアリの行動を役立てるものもあります。葉、葉柄、托葉、茎など、花以外の場所から蜜を出す器官を、花外蜜腺※と呼びます。
蜜を利用するアリは、植物の上を歩き回ります。その途中で植食者を追い払ったり、捕食したりすることで、結果として植物の食害が減る場合があります。花の蜜が主に送粉者との関係で理解されるのに対し、花外蜜腺は防御と関わることが多い点が特徴です。
ただし、蜜を出せば必ずアリが植物を守るわけではありません。訪れるアリの種類、害虫の種類、季節、周囲にほかの蜜源があるかどうかによって、防御の効果は変わります。
花外蜜腺🌿🐜
花外蜜腺(かがいみつせん)は、葉、葉柄、托葉、茎、つぼみなど、花以外の場所から蜜を分泌する器官です。花の蜜は主に送粉者との関係で知られますが、花外蜜腺の蜜は、受粉に直接関わらない蜜として区別されます。
花外蜜腺から分泌される蜜には、糖類のほか、アミノ酸や脂質などが含まれます。アリは蜜を利用するために植物の上を歩き回り、その途中で葉を食べる昆虫を追い払ったり、捕食したりすることがあります。
このように、ほかの生き物の行動を通じて食害を抑える仕組みは、「間接防御」と呼ばれます。アカメガシワのように、アリが訪れることで防御につながる例はよく研究されています。
ただし、花外蜜腺があれば必ず植物が守られるわけではありません。訪れるアリの種類、害虫の種類、蜜の量、周囲にある別の餌、季節などによって、効果は変わります。アブラムシの甘露を利用するアリが、植物よりアブラムシを守る場合もあります。
花外蜜腺は、アリを呼ぶためだけの器官ではありません。アリ、クモ、ハチなど、さまざまな節足動物との関係を通じて、植物が周囲の環境と関わるための、小さな蜜の窓口ともいえるでしょう。






出典:福岡教育大学 ‐ 花外蜜腺
参考・引用文献
PLOS ONE ‐ Variation in Extrafloral Nectary Productivity Influences the Ant Foraging Activity and Plant Defense(2017年1月)journals.plos
アカメガシワ——葉の成長に合わせて守り方を変える


出典:iNaturalist – アカメガシワ Mallotus japonicus(jobwang)
アカメガシワは、林縁、河川敷、道路脇、公園などで見られる落葉樹です。春から初夏にかけて出る赤みのある新葉が目印で、葉の基部にはアリが訪れる花外蜜腺があります。身近な植物でありながら、アリを利用した防御が詳しく研究されてきました。


出典:岡山理科大学 ‐ アカメガシワ Mallotus japonicus (Thunb.) Muell. Arg.
アカメガシワとアリの関係を長年研究してきた京都大学生態学研究センターの研究チームは、葉の年齢や生育環境によって、防御の重点が変わることを明らかにしました。若い葉では細かな毛や化学物質などによる直接的な防御が重要で、葉が成長すると、花外蜜腺や食物体を通じてアリを誘引する間接的な防御の比重が高まります。
また、林縁・林内と開放地では、アカメガシワが使う防御の組み合わせも異なります。植物は一つの方法だけに頼らず、成長段階や生育場所に応じて、守り方を調整しているのです。
サクラやカラスノエンドウにもある花外蜜腺


出典:重井薬用植物園 ‐ カラスノエンドウ/ヤハズエンドウ (マメ科) Vicia sativa subsp. nigra
花外蜜腺は、特別な熱帯植物だけの特徴ではありません。サクラ類では葉柄の基部、カラスノエンドウでは托葉、イタドリでは節の近くにある托葉鞘などに、アリが訪れる蜜腺が見られます。
サクラを観察するなら、花が散った後に伸びる若い葉の葉柄に注目してみましょう。小さな粒のような蜜腺の周辺に、アリがとどまっていることがあります。カラスノエンドウでは、葉の付け根にある托葉が観察の手がかりです。



ただし、アリが葉の上を歩いているだけでは、花外蜜腺を利用しているとは断定できません。どこに集まるか、口を付けている場所はあるか、ほかの昆虫にどう反応するかまで見ると、観察が深まります。
アリ・植物・アブラムシ——変化する三者の関係


出典:WIKIMEDIA COMMONS ‐ File:Aphis citricola1.jpg(KENPEI)
アリが利用する甘い液体は、花外蜜腺の蜜だけではありません。アブラムシは植物の汁を吸い、糖分を含む甘露を出します。アリは甘露を利用し、アブラムシの天敵を追い払うことがあります。
そのため、同じ植物の上で、植物の花外蜜腺、アブラムシ、アリという三者の関係が生まれます。アリが植食者を減らせば植物に利益が生じる場合がありますが、アリがアブラムシを守れば、植物の吸汁被害が続く可能性もあります。
このような関係は、「アリがいれば植物は守られる」という単純な図式では説明できません。カタクリやスミレは種子の付属体を通じて、アカメガシワやサクラは花外蜜腺を通じて、アリの行動と関わっています。植物は動けなくても、周囲の生き物との関係によって、種子を広げたり食害を減らしたりする機会を得てきました。



次は視野を熱帯へ広げ、アリが暮らす空間「ドマティア」を備えた、「狭義のアリ植物」を見ていきましょう。


熱帯のアリ植物——植物の中でアリが暮らす


出典:iNaturalist – 属 Myrmecodia(hairybee)
身近な草木から視点を熱帯の森へ移すと、アリが一時的に訪れるだけではなく、植物体の一部を巣として利用する例があります。ふくらんだ茎、中空の幹、空洞のある偽球茎、膨らんだトゲなど、アリの住まいとなる構造は植物によってさまざまです。
植物は住居だけでなく、蜜や食物体を提供することもあります。アリは安全な巣を利用しながら、植食者や競争相手の植物を排除する場合があります。ただし、こうした関係は一様ではなく、植物、アリ、周囲の環境の組み合わせごとに異なります。
まずは、狭義のアリ植物を理解する鍵となる「住まい」の構造から見ていきましょう。



前の章で見てきたアリ散布植物や花外蜜腺をもつ植物も、アリと深く関わっています。ただし、それだけで「狭義のアリ植物」と呼ばれるわけではありません。
ここからは、アリが巣として利用できる空洞や袋状の構造、ドマティアを備えた植物のしくみを見ていきましょう。
ドマティア——植物体につくられたアリの住居


出典:iNaturalist – Hydnophytum formicarum(geechartier)
狭義のアリ植物を理解する鍵になるのが、アリなどの小動物が住居として利用する構造、ドマティア(domatia)※です。中空の茎、ふくらんだ茎の内部、袋状になった葉、トゲの内部など、ドマティアができる場所は植物によって異なります。
偶然できた傷や虫食い穴をアリが使う場合とは異なり、アリ植物では、植物の成長過程で比較的安定した空洞や袋状の構造が形成されます。アリがいない場所でも、植物はこうした構造をつくる場合があります。
ただし、ドマティアがあることと、アリから必ず利益を得られることは同じではありません。どのアリが住むか、植物が蜜や食物体も提供するか、周囲にどのような植食者がいるかによって、関係の深さと結果は変わります。
ドマティア🐜🏠
ドマティア(domatia)は、アリやダニなどの小動物が住居として利用する、植物体にできる空洞や袋状の構造です。アリが巣や幼虫を育てる場所として利用するものは、アリのドマティアとも呼ばれます。
偶然できた傷や虫食い穴とは異なり、多くのドマティアは植物の成長にともなって形成されます。ただし、植物がつくる空洞をアリが出入りしやすいように広げたり、開口部を利用したりする例もあります。
形は植物によってさまざまです。アリノストリデ類ではふくらんだ茎の内部、セクロピアでは中空の茎、ランの一部では空洞のある偽球茎、ホイッスリングソーンではふくらんだトゲが、アリの住居になります。葉が袋のように変化して住居となる植物もあります。
植物はアリに住まいを提供し、アリは植食者を追い払ったり、競争相手となるつる植物を排除したりする場合があります。一部の着生植物では、アリが持ち込む有機物に由来する養分を植物が利用する例も知られます。




出典:iNaturalist – Miconia microphysca(botalex)
※ノボタン科(Melastomataceae)ミコニア属の一種。



上のMiconia microphysca の葉身の基部には、左右一対の袋のようなふくらみが形成されます。これがアリのドマティアで、内部は空洞になっていて、アリが巣や幼虫を育てる場所として利用します。
ただし、ドマティアがあれば必ずアリが住み、植物が利益を得るわけではありません。住み着くアリの種類や周囲の環境によって、関係の深さと結果は変わります。
参考・引用文献
- Current Opinion in Plant Biology ‐ Diversity and Development of Domatia: Symbiotic Plant Structures to Host Mutualistic Ants or Mites(2024年12月)
- Annals of Botany ‐ Comparison Between the Anatomical and Morphological Structure of Leaf Blades and Foliar Domatia in the Ant-Plant Hirtella physophora(2008年3月)
- 伊藤蟻植物農園 ‐ アリ植物とは(公開日記載なし)
アリノストリデ類——迷路のような茎をもつ着生植物


出典:iNaturalist – Myrmecodia beccarii(botanistbob)
東南アジアからオーストラリア周辺には、アカネ科のアリノストリデ属 Myrmecodia やアリノスダマシ属 Hydnophytum など、着生性のアリ植物が分布しています。樹木の枝や幹に付いて育ち、ふくらんだ茎の内部には、アリが利用する複雑な空洞があります。



アリノストリデ属 Myrmecodia は基本的に樹木などに付いて育つ着生性のアリ植物です。一方、アリノスダマシ属 Hydnophytum は大半が着生性ですが、地上の栄養の少ない土壌や高地で育つ種、着生・地生の両方で見られる種も知られています。
外見は塊根や多肉質の茎のようですが、ふくらんだ部分は茎に由来し、内部にはアリが利用できる迷路のような空間が形成されています。アリはその内部を移動し、育児を行い、種類によっては有機物をためる場所としても使います。


出典:高知県立牧野植物園 ‐ アリノトリデ [アカネ科] ※写真は断面図 Myrmecodia spp.
樹上に生える着生植物は、地上の土壌から直接養分を得られません。アリノストリデ類の一部では、アリが空洞内へ持ち込んだ有機物に由来する養分を、植物が利用することが示されています。ただし、養分の移動経路や微生物の働きは、植物とアリの組み合わせによって異なります。
アリと暮らすラン——空洞のある偽球茎


出典:iNaturalist – Myrmecophila thomsoniana var. thomsoniana(caymannature)
ラン科にも、アリが内部を利用する植物があります。中南米に分布する Myrmecophila 属や Caularthron 属の一部は、成熟した偽球茎の内部に空洞ができ、アリが巣として利用することがあります。
なかでも Caularthron bilamellatum は、アリ植物の仕組みが詳しく調べられた着生ランです。成熟した偽球茎では、もともと水分を蓄えていた組織の一部が変化して空洞になり、基部のすき間からアリが出入りします。


出典:iNaturalist – Caularthron bilamellatum(stefandominik)
研究チームは、窒素の安定同位体※を用いた野外実験により、アリ由来の窒素が偽球茎の内側からランの組織へ取り込まれることを示しました。さらに2023年の研究では、アリの廃棄物とランの組織の間にいる菌類が、窒素の移動に関わることも実験的に示されました。
安定同位体による栄養の移動の可視化🧪
炭素や窒素には、同じ元素でありながら重さが少し異なる原子があります。このうち、時間がたっても別の元素へ変化しないものを、安定同位体と呼びます。窒素では、主に窒素14と窒素15が使われます。
研究では、窒素15を目印として含ませた餌をアリに与えました。その後、ランの偽球茎や葉を調べ、窒素15が増えているかを測定します。もしアリが持ち込んだ窒素15が植物組織から検出されれば、アリ由来の窒素がランへ移ったことを確かめられます。
Caularthron bilamellatum の野外実験では、窒素15を含む餌を利用したアリが、偽球茎の内部へその窒素を運びました。研究者は、偽球茎の内側だけでなく、植物のほかの組織にも窒素15が取り込まれたことを確認しています。
安定同位体の分析は、目で見ただけでは分からない栄養の移動を追跡する方法です。アリ、菌類、植物の間にある「見えない物質の流れ」を確かめるために役立ちます。
セクロピア——中空の茎と食物体を備える樹木


出典:Springer Nature ‐ Ant-plant sociometry in the Azteca-Cecropia mutualism(2018年12月19日)
(A)若い Cecropia obtusifolia の樹冠。(B)葉柄基部のトリキリウムからミュラー体を集める Azteca constructor。(C)植物に絡み付くつるを攻撃する働きアリ。(D)中空の節間に形成された巣内で暮らす女王、働きアリ、幼虫・蛹。撮影:Peter Marting
中南米の熱帯に分布するセクロピア属 Cecropia には、アリ植物の代表例として知られる種があります。茎の内部には空洞があり、アステカアリ属 Azteca の仲間が巣として利用することがあります。
セクロピアは住居だけでなく、葉柄の付け根近くにミュラー体と呼ばれる食物体をつくります。アリはこの食物体を利用しながら植物の上を巡回し、植食者を攻撃したり、幹や枝に絡み付くつる植物を切ったりすることがあります。
ミュラー体の名は、19世紀にブラジルで生物を研究したドイツの博物学者、フリッツ・ミュラーに由来します。彼の観察は、植物と動物の相互作用を進化の視点で考える初期の研究の一つとして知られています。
ただし、セクロピアとアリの関係も一律ではありません。植物とアリの成長は連動する場合がある一方、住み着くアリの種類や周囲の環境によって、防御の効果は変わります。
ミュラー体🐜🌿
ミュラー体は、アリと密接に関わるセクロピア属 Cecropia の一部がつくる、小さな食物体です。葉柄の付け根にある、毛が密生した「トリキリウム(trichilium)」から生じ、共生するアステカアリ属 Azteca の働きアリが採集して巣へ運びます。
白い粒のように見えるミュラー体には、糖類の一種であるグリコーゲンが豊富に蓄えられています。脂質やたんぱく質も含まれ、主にアリの幼虫を育てるための栄養源になります。植物のセクロピアは、アリに中空の茎を巣として提供するとともに、ミュラー体を食べ物として用意しているのです。
その代わりに、アリは植物上を巡回し、葉を食べる昆虫を攻撃したり、成長の妨げになるつる植物を取り除いたりします。ただし、防衛の程度は、セクロピアやアリの種類、周囲の環境によって異なります。
「食物体」は、植物が動物に与える栄養物の総称です。ミュラー体のほかにも、アカシア類のベルティアン体、アリノスダマシ類などのベッカリアン体、さまざまな植物に見られる真珠体などがあります。すべてのアリ植物がミュラー体をつくるわけではなく、植物ごとに異なる「食べ物の贈り物」が進化してきました。
ミュラー体という名称は、セクロピアとアリの関係を研究したドイツの博物学者、フリッツ・ミュラー(Fritz Müller、1822~1897年)に由来します。



フリッツ・ミュラーは「ミュラー擬態」※でも知られていますね!
(※毒や不快な味をもつ複数の生物が似た警告色を共有することで、捕食者に避けられやすくなる仕組み)
参考・引用文献
ニューヨーク植物園 ‐ Muellerian Bodies:植物学用語集
The Plant Cell ‐ Cecropia peltata Accumulates Starch or Soluble Glycogen by Differentially Regulating Starch Biosynthetic Genes(2013年4月)
Scientific Reports ‐ Ant-plant Sociometry in the Azteca–Cecropia Mutualism(2018年12月)
ホイッスリングソーン——膨らんだトゲにアリが住むアフリカの樹木


出典:iNaturalist – Vachellia drepanolobium(damontighe)
アリの住まいは、茎の内部だけではありません。東アフリカのサバンナに生えるホイッスリングソーン Vachellia drepanolobium では、トゲの基部が大きく膨らみ、その内部をアリが巣として利用します。



アカキア・ドレパノロビウム、フルートアカシアなどの名前で呼ばれることもあります。
この植物は以前、Acacia drepanolobium と呼ばれていました。そのため、現在も「アカシアの仲間」として紹介されることがあります。アリがふくらんだトゲに開けた出入り口へ風が通ると、笛のような音が出ることがあり、英名 whistling thorn の由来とされています。


出典:iNaturalist – Vachellia drepanolobium(damontighe)
植物はアリに住居を与えるだけでなく、花外蜜腺から蜜も提供します。アリは植物の葉を食べる動物や昆虫に対して行動し、植物の防御に関わる場合があります。しかし、住むアリの種類によって、防御の強さや効果は異なります。
この植物と複数のアリの組み合わせは、共生が単純な一対一の関係ではないことを示す重要な研究対象です。ケニア各地の調査では、地域によって樹木を利用するアリの種類や割合が大きく異なり、植物とアリの遺伝的な集団構造も必ずしも一致しませんでした。どの地域でも同じ組み合わせが共進化してきたとは限らないのです。
アリノストリデ類のふくらんだ茎、ランの偽球茎、セクロピアの中空の茎、ホイッスリングソーンのふくらんだトゲは、いずれもアリの住まいになります。同じ「住む」関係でも、植物が提供する構造と、アリが植物へもたらす影響はさまざまです。


奇妙で美しい共生の形。自宅で育てるアリ植物


出典:iNaturalist – Hydnophytum formicarum(maryam_sed)
熱帯の森でアリと関わりながら生きるアリ植物は、ふくらんだ塊茎や中空の茎、独特な葉など、思わず見入ってしまう姿をしています。アリの住居となる構造をもつ植物でも、家庭で育てるためにアリを住まわせる必要はありません。国内で流通する株も、通常はアリが入っていない状態で販売されています。
ただし、「アリ植物」は一つの種類の名前ではなく、さまざまな植物をまとめた呼び方です。見た目の面白さだけで選ぶのではなく、植物の名前、現在の状態、育てられてきた環境を確かめ、自宅で長く世話できる一株を迎えましょう。
最初の一株は、名前と育ち方から選ぶ


出典:iNaturalist – Myrmecodia tuberosa(tomfeild)
国内では、根元がふくらむアリダマ類として、ハイドノフィタム(ヒドノフィツム)・フォルミカルム Hydnophytum formicarum や、ミルメコディア・ツベローサ Myrmecodia tuberosa が比較的知られています。どちらも成長すると、塊茎の内部にアリが利用する空洞が発達します。
初めて育てる場合は、自宅で保てる冬の温度に合い、国内で一定期間栽培され、十分に発根した株を販売者へ相談してみるとよいでしょう。原産地の標高や地域によって必要な温度は異なるため、「低地性」「高地性」といった情報も確認材料になります。
ハイドノフィタム(ヒドノフィツム)属には枝を複数伸ばす種類が多く、光が不足して枝が間のびした場合にも、切り戻して姿を整えやすい傾向があります。一方、ミルメコディア属は枝が少ない種類が多く、形が崩れた後に見栄えを整えるまで時間がかかることがあります。


出典:iNaturalist – Lecanopteris sinuosa(abduelhakim)
塊茎植物以外にも、中空の根茎をもつアリノスシダ Lecanopteris の仲間や、葉の基部が袋状になるディスキディアの仲間など、アリ植物には多様な姿があります。まずは「塊茎を育てたいのか」「シダを楽しみたいのか」「つるを伸ばす植物がよいのか」などから考えると、選択肢を絞りやすくなります。
購入前に、自宅の環境を確認する


出典:iNaturalist – Myrmecophila thomsoniana(caymannature)
国内で観葉植物として流通するアリダマ類の多くは、熱帯・亜熱帯に分布する着生植物です。自生地では樹上で明るい光を受け、根の周りに空気が通る環境で育っています。室内で栽培する際は、特に次の四つを確認してください。
- 冬にも、その植物に必要な温度を保てるか
- 明るい場所を確保できるか
- 夏の強すぎる直射日光を避けられるか
- 根と塊茎の周囲が蒸れないよう、空気を動かせるか
塊茎があると、乾燥に非常に強い植物のように見えるかもしれません。しかし、アリダマ類の多くは休眠する植物ではなく、完全に水を切る管理には向きません。反対に、根の周りがいつまでもぬれて空気が通らない状態も、根や塊茎を傷める原因になります。水やりは「何日に一度」と決めるより、植え込み材の乾き方、季節、株の大きさ、置き場所を見ながら調整することが大切です。



筆者の場合、新しく迎えた植物の調子が思わしくない時は、まずその植物が原産地でどのような環境に育つのかを調べます。
小さな株は手に取りやすい価格でも、塊茎が観賞できる大きさになるまで時間がかかります。大きな株は完成した姿を楽しみやすい反面、輸送や置き場所の変化に反応することもあります。価格だけでなく、置き場所と世話に使える時間も考えて選びましょう。
写真と説明文から、株の状態を見る


通信販売では、商品写真が販売される現物か、現在の状態に近い写真かを確認します。塊茎や茎に、へこんだ部分、不自然にしわが寄った部分、湿ったように見える黒変、広がる変色、深い傷がないかを写真で確認してください。
一方で、葉に傷があることや古い葉が落ちていることだけで、すぐに株が不健康とは限りません。新芽があるか、塊茎と茎に張りがあるか、葉色が極端に悪くないかなど、株全体を見て判断します。根が確認できる場合は、発根の様子や根の傷みも参考になりますが、写真のために無理な植え替えを求める必要はありません。
販売者が、病害虫の有無、葉落ち、傷、処置歴などを率直に記載しているかも大切です。見た目が完璧であることより、現在の状態と栽培上の注意点が正確に説明されていることを重視しましょう。
届いた直後は、開封前後の状態を写真に残し、傷み、水分過多、病害虫の疑いがないかを確認します。すぐに植え替えたり、心配のあまり大量の水を与えたりせず、まずは販売者の案内を確認し、明るさや湿度を急に変えないよう環境へ慣らしてください。
栽培由来と販売者の情報を確認する
できれば、その株が実生、挿し木、株分け、組織培養、導入株のどれに近いかをたずねましょう。国内でどの程度栽培されてきたか、根は十分に出ているか、生育中か、植え替え直後かなどが分かれば、自宅に迎えた後の管理を考えやすくなります。
- 実生:種をまいて育てた株です。発芽から成長するため時間はかかりますが、個体ごとに少しずつ姿が異なる楽しみがあります。
- 挿し木:親株から切り取った枝や茎などを発根させて増やした株です。親株とほぼ同じ性質を受け継ぎます。
- 株分け:大きく育った株を、根や芽が付いた部分ごとに分けて増やす方法です。分けた直後は根の回復に時間が必要な場合があります。
- 組織培養:植物の小さな組織を、無菌の容器内で育てて増やす方法です。病害虫を持ち込みにくく、一度に多くの株を増やせる利点があります。
- 導入株:海外などから国内へ入れられた株、またはその株をもとに流通した植物を指すことが多い言葉です。使われ方に幅があるため、販売者に「いつ、どこから、どのように導入・栽培された株か」を確認すると安心です。
来歴を確認する目的は、株に単純な優劣をつけることではありません。その植物に必要な管理、環境変化への反応、購入後に起こりうる変化を理解するためです。名前、入手・栽培の経緯、現在の状態、基本の管理方法を説明でき、購入後の相談先も示している販売者なら、初めての一株でも安心材料が増えます。
海外通販や海外オークションによる植物の個人輸入は、初心者を含む一般の愛好家にはおすすめしません。海外から植物を日本へ持ち込む場合、原則として、輸出国政府機関が発行する植物検疫証明書を添え、輸入検査を受ける必要があります。土が付着した植物は輸入できず、種類や輸出国によっては、追加の検疫条件や輸入禁止措置が適用される場合もあります。



珍しい一株を迎えたい気持ちは分かりますが、海外からの個人輸入には、検疫などの確認に加え、病害虫を持ち込まないための配慮も必要です。
また、ワシントン条約の規制対象となる植物では、植物検疫とは別に、輸出入の許可や承認が必要になることがあります。輸入可否や必要な手続きは、植物の種類、輸出国、個別の状況で変わるため、必要がある場合は自己判断せず、植物防疫所や関係する公的機関へ事前に確認してください。
家庭で最初の一株を選ぶなら、国内で増殖・順化され、状態と育て方を確認できる株が現実的です。植物イベント、国内の専門店、国内通販などを通じて、信頼できる販売者から迎えるとよいでしょう。
名前と来歴を知り、長く育てられる一株を選ぶ



アリ植物は生態も面白く、見た目も魅力的な種類が多いですが、珍しい形を楽しむためだけに選ぶ植物ではありません。原産地でどのような環境に育ち、どのような生きものと関わってきたのかを知りながら、これから自宅で過ごす時間にも思いを向けて、一株を迎えることが大切です。
良い一株は、必ずしも最も大きい株、最も珍しい株、最も安い株とは限りません。植物の名前、由来、状態、栽培情報を確かめ、自分の環境で無理なく世話できる株を選ぶことが、植物にも育てる人にもよい選択になります。
迎えた後は、塊茎や葉の変化を眺めるだけでなく、「原産地では、どのようなアリや生きものと関わっているのだろう」と想像してみてください。室内で育つ一株から、遠い熱帯林にある生きもの同士の関係が、少しずつ身近に感じられるでしょう。
次は、こうした関係がいつも植物に利益をもたらすとは限らないこと、そして身近な場所でアリと植物の関係を観察する方法を見ていきましょう。


小さなアリを追うと、植物の生き方が見えてくる



ホンゴウソウ科のウエマツソウのように、光合成をしない「菌従属栄養植物」にもエライオソームを持つものが報告されています。


出典:ResearchGate ‐ FIGURE 1 – uploaded by Kenji Suetsugu
Emended description and resurrection of Sciaphila tosaensis and S. megastyla (Triuridaceae)
アリと植物の関係をたどると、植物が動かずに生きながら、周囲の生き物との関係を通じて種子を広げたり、食害を減らしたりする仕組みが見えてきます。カタクリやスミレの種子、アカメガシワの蜜腺、熱帯の植物体にできたアリの住まいは、その手がかりです。
ただし、自然界の共生は、いつでも同じように働くわけではありません。アリの種類、植物の状態、ほかの昆虫、季節や場所によって、植物が得る利益も変わります。



最後に、共生をどのように見ればよいか、そして身近な自然で何を観察すればよいかを整理してみましょう。
共生は、いつも同じ結果を生むわけではない
相利共生とは、異なる種が関わることで、双方に利益が生じる関係です。しかし、すべての個体が、いつでも同じだけ利益を得るという意味ではありません。
アリ散布では、アリが種子を運ばず、その場でエライオソームだけを利用することがあります。種子そのものを食べる、運び手ではなく種子捕食者となるアリもいます。花外蜜腺を訪れるアリでも、蜜を利用しながら植食者を十分に追い払わない場合があります。
花外蜜腺をもつ植物とアリの関係をまとめたメタ分析では、平均すると、アリがいることで葉の食害が減り、植物の繁殖出力が高まる傾向が示されました。ただし、効果の大きさには研究間でばらつきがあり、植物の生活史や調査方法による違いも見られました。
共生は「仲良し」の別名ではありません。利益と負担の釣り合いが、相手や環境によって変わる関係です。だからこそ、アリが「いるか」だけでなく、何をしているのかを見ることが大切になります。
公園や道ばたで、「運ぶ・守る」を探してみよう
アリと植物の関係を知るために、遠くの熱帯雨林へ出かける必要はありません。春にはスミレ類の果実やカラスノエンドウの托葉、花が散った後のサクラの葉柄、初夏から夏にはアカメガシワの葉の基部に目を向けてみましょう。
アリを見つけたら、すぐに共生と決め付けず、どこで立ち止まるかを追います。種子を運んでいるのか、蜜腺に口を付けているのか、アブラムシの周囲に集まっているのか、ほかの昆虫へ反応しているのかを観察すると、関係が少しずつ見えてきます。
記録は難しく考えなくても大丈夫です。写真やメモと一緒に、次の六つを残しておくと、次の季節や翌年と比べられます。
- 観察した年月日
- 場所と周囲の環境
- 天気とおおよその時刻
- 植物の名前、または見た目の特徴
- アリがいた植物の部位
- アリの行動と、近くにいたほかの生き物
環境省の「いきものログ」でも、生きものの写真、確認した日時、場所などの状況を記録することが案内されています。植物やアリの名前が分からなくても、写真、場所、行動を残しておけば、後から図鑑や観察記録と比べる手がかりになります。



観察する時は以下のことに気をつけましょう。
- アリの巣を掘らない。
- 植物を傷付けない。
- 種子や生きものを別の場所へ移さない。
- 私有地や立入禁止の場所へ無断で入らない。
触れずに見て、写真と記録を残すだけでも、十分に豊かな自然観察になります。環境省の「いきものログ」でも、危険な場所へ近づかないこと、生きものを持ち帰らずその場で観察すること、私有地へ無断で立ち入らないことが案内されています。



植物は動けませんが、周囲の生きものと無関係に生きているわけではありません。アリの行動を一つずつ見ていくと、植物が暮らす環境のつながりも見えてきます。



次の散歩では、植物の上で立ち止まるアリを少しだけ追ってみませんか。いつもの景色に、思いがけない関係が見つかるかもしれません。






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参考・引用文献
アリと植物を結ぶ「運ぶ・守る・住む」の関係
- 京都大学 ‐ アリによる種子散布共生を、イネ科植物で初めて確認(2025年12月)
- Plant Species Biology ‐ Ant-mediated seed dispersal in the Poaceae: Evidence of myrmecochory in green foxtail and giant foxtail(2026年)
- JT生命誌研究館 ‐ アカメガシワの柔軟な防御戦略 アリを利用する植物の護身術(2024年12月)
- 日本生態学会誌 ‐ 日本の暖温帯に分布するアリ散布植物(1988年)
- 科学研究費助成事業データベース ‐ 種子散布を通じたアリとカタクリの共生関係の進化について(2001年3月)
- Scientific Reports ‐ Extrafloral Nectary-bearing Plant Mallotus japonicus Uses Different Types of Extrafloral Nectaries to Establish Effective Defense by Ants(2019年6月)
- 日本植物生理学会 ‐ 桜の蜜線と蟻とすす病(2017年2月)
熱帯のアリ植物——植物の中でアリが暮らす
- Annals of Botany ‐ Uptake of Ant-derived Nitrogen in the Myrmecophytic Orchid Caularthron bilamellatum(2012年)
- New Phytologist ‐ Exo- and Endophytic Fungi Enable Rapid Transfer of Nutrients from Ant Waste to Orchid Tissue(2023年1月)
- Scientific Reports ‐ Ant-plant Sociometry in the Azteca–Cecropia Mutualism(2018年12月)
- Frontiers in Ecology and Evolution ‐ Population Genomics and Demographic Sampling of the Ant-plant Vachellia drepanolobium and Its Symbiotic Ants From Sites across Its Range in East Africa(2019年6月)
- Oxford University Herbaria ‐ Myrmecodia Species(2021年)
- New Phytologist ‐ The Ant-plants Myrmecodia and Hydnophytum and the Relationships between Their Morphology, Ant Occupants, Physiology and Ecology(1978年)
- National Botanic Gardens of Ireland ‐ A Revision of the Ant-Plant Genus Hydnophytum (Rubiaceae)(2009年)
- 伊藤蟻植物農園 ‐ アリ植物とは(2020年8月31日)
奇妙で美しい共生の形。自宅で育てるアリ植物
- 伊藤蟻植物農園 ‐ アリ植物の栽培方法
- 伊藤蟻植物農園 ‐ Hydnophytinae(アリダマ)の栽培
- キュー王立植物園 Plants of the World Online ‐ Hydnophytum formicarum
- キュー王立植物園 Plants of the World Online ‐ Myrmecodia tuberosa
- 農林水産省植物防疫所 ‐ よくあるご質問(輸入編)(2025年5月)
- 環境省 ‐ Q&A|ワシントン条約と種の保存法
小さなアリを追うと、植物の生き方が見えてくる
- PLOS ONE ‐ Benefits for Plants in Ant-Plant Protective Mutualisms: A Meta-Analysis(2010年12月)
- Annals of Botany ‐ Non-additive Benefit or Cost? Disentangling the Indirect Effects That Occur When Plants Bearing Extrafloral Nectaries and Honeydew-producing Insects Share Exotic Ant Mutualists(2013年6月)
- Ecological Research ‐ Costs and Constraints in Aphid–Ant Mutualism(2014年5月)
- 環境省 生物多様性センター ‐ いきものログ:授業に活かす
- 環境省 生物多様性センター ‐ 調査詳細:所沢市市民生きもの調査
- Journal of Ecology and Environment ‐ Seed Dispersal by Ants in the Fully Mycoheterotrophic Plant Sciaphila secundiflora(2017年9月)
- Insects ‐ Myrmecophilous Aphid Species Feeding on Mycoheterotrophic Monotropa hypophegea(2024年12月)

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