「滅多に咲かない」「咲かせるのが難しい」とも言われるサクララン(桜蘭:Hoya)ですが、上の写真のように、ちょっと珍しい花が咲きました。今年の春に至っては、「咲きすぎて心配」というくらい次々と咲いています。

なぜ心配かと言うと、「枯れる前に狂ったように咲く」という噂を何度か聞いたことがあるからです。(あくまで噂で、筆者はこれを実際に自分の植物で体験したことはありませんが…)

サクララン(以降、紛らわしいことを承知で「ホヤ」と呼ばせてください)は筆者がかつてコレクションしていた着生植物です。この家に引っ越してきたときに、環境の変化で多くを枯らしてしまい、以降は購入を極力控えて来ました。

手当たり次第に種類を増やしていたので、環境別にそれぞれ管理をするのが大変になってしまったこと、子どもが手のかかる時期だったこと、前の家よりこのタイプの植物に割けるスペースが少なくなってしまったこと…と、言い訳は山程ありますが、今でも好きな植物の一つです。

これまで、感覚と産地情報に頼って育てて来ましたが、この機会にホヤの基本的な情報をまとめておこうと思います。

Hoyaという名前が紛らわしい

「ホヤ」と聞くと普通の人はおそらく海産物の「ホヤ」を想像するのではないでしょうか?しかし、こちらのホヤ(海鞘)、一般的に食用とされる「マボヤ」の学名は「Halocynthia roretzi」といいます。

海産物のホヤって、どんな味なんでしょうね…

マボヤ(海鞘)
出典:Wikipedia『ホヤ』

一方、「HOYA株式会社(HOYA Corporation)」という企業も存在します。こちらは1941年創業の日本の光学機器・ガラスメーカーで、世界約160の拠点と約36000人の従業員を有するグローバル企業です。

本題の「ホヤ」は植物!

今日話題にする「ホヤ」は植物です。

こちらは日本では「サクララン(桜蘭)」、英語圏では「Wax plant(ワックスプラント)」と呼ばれることもあります。

ワックスプラントは、蝋細工のような、花の不思議な質感からそう呼ばれるのでしょうか。
どちらも素敵な愛称ですね。


この花の学名が「Hoya」で、特に「サクララン」と言う時「Hoya carnosa」(最も一般的に出回っているホヤ)を指すこともあります。

上の写真は「Hoya lucardenasiana」という種類だと思います。「Hoya sp.」(ホヤの一種)というラベルで購入しましたが、花が咲いておそらくの種類が特定できました。

ホヤ(サクララン)の種類

ニッチなファンから一般の人まで、世界中で愛されるホヤ(サクララン)は、花や葉の形・色彩、育てやすさや環境適応力など、品種ごとに随分違うので注意が必要です。

ホヤは200種以上あるとされ、新種も時々見つかっています。この種類の数は植物のマニアにとっては「少ない」と感じることもあるかもしれませんね。

まずは一般的に流通しているホヤを見ていきましょう。

ホヤ・カルノーサ(Hoya carnosa)

ホヤ・カルノーサ
出典:Wikipedia『サクララン』

ホヤ・カルノーサは、最も広く流通し、初心者から愛好家まで幅広く支持されている基本種です。肉厚で光沢のある葉と、桜色や白色の小花が球状に集まって咲く姿が特徴です。

日本南部から熱帯アジア、オーストラリアにかけて自生し、耐陰性や順応性が高いことから、室内でも育てやすい品種として定着しています。花は強めの香りがあり、観賞用としてだけでなく、香りを楽しむ目的でも人気があります。

カルノーサの香りは「バニラ」と表現されることもありますが、筆者は「甘いチョコレートの香り」だと感じました。

ホヤ・カーリー(Hoya kerrii/ハートサクララン)

右がホヤ・カーリー
出典:Wikipedia『Hoya kerrii』

ホヤ・カーリーは、ハート型の葉が特徴的で、バレンタインギフトなどにも人気ですね。葉は厚く、つる性でありながらがっちりとしていて、若い株は自立することもあります。

東南アジア原産で、葉の形状から「ラブリープランツ」「ハート・ホヤ」とも呼ばれています。白い花びらと赤紫色の副花冠を持つ、ホヤの中ではこじんまりとした花を咲かせます。

環境によると思うのですが、筆者のホヤ・カーリーは株は育てど、なかなか花が咲きませんでした。花芽がついても咲かずに落ちてしまったり、咲いても小さかったり…

しかし、外国の園芸家の写真を見たら、盛んに咲いている様子が伺えたので、うちには環境が合っていなかったのでしょう。

ホヤ・ベラ(Hoya bella)

ホヤ・ベラ
出典:Wikipedia『Hoya bella』

ホヤ・ベラは、星型の白い花と細長い菱形の葉が特徴の小型種です。「bella=美しい」の名にふさわしく、可憐な花姿と長期間の開花が魅力です。

インド北東部や東南アジア原産で、枝先に次々と花を咲かせる性質があります。みずみずしく清楚な質感で、繊細な美しさです。

この種類は、ハンギング仕立てが多い種類という印象があります。香りも香水調のみずみずしい香りだったような…(自信なし)

ホヤ・プビカリクス(Hoya pubicalyx)

ホヤ・プビカリクス
出典:Wikipedia『Hoya pubicalyx』

ホヤ・プビカリクスは、やや細長い葉と紫色がかった花が特徴的です。葉には産毛があり、成長過程で紫色に変化することもあります。

とても南国っぽい強い香りがあり、特に夜、強く香る印象があります。フィリピン原産で、高い湿度や温暖な環境を好みます。

花は基本的には濃いピンク色で、ボリュームも有り華やかな印象。この種類には濃い紫など別の色の花を咲かせるものもあります。

この種類もハンギング仕立てが人気です。

ホヤはほとんどが樹木などに着生して育ちます。

ホヤ(サクララン)の育て方

ホヤ(サクララン)は品種ごとに葉や花の形、耐寒性や生育スピードなどが異なります。一般的に流通しているホヤはおおむね丈夫で育てやすく、初心者にもおすすめです。
ここでは、手に入りやすいホヤを例に、基本的な育て方や増やし方を整理してみましょう。

栽培環境と日々の管理

ホヤは熱帯アジア原産のつる性植物で、明るい日陰や半日陰を好みます。直射日光は葉焼けの原因になるため、レースカーテン越しの窓際や室内の明るい場所が適しています。

生育適温は15~25℃程度で、5℃を下回ると成長が鈍ります。沖縄以外では、冬場は室内で管理し、寒さから守ることが大切です。

水やりは「土の表面が乾いたらたっぷりと」が基本です。春から夏の成長期は頻度を増やし、冬は控えめにします。

葉水(霧吹き)は乾燥防止や害虫予防に有効です。特に夏場は葉の表裏に水を吹きかけるとよいでしょう。

植え替えと剪定

ホヤは根詰まりを嫌うため、2~3年に1回の植え替えが推奨されます。根が鉢いっぱいになったら、新しい鉢に植え替えましょう。

植え替えの適期は春から夏(4~8月)です。鉢底ネットや軽石を使い、観葉植物用の培養土を利用すると根腐れを防げます。

剪定は、ツルが伸びすぎて見栄えが悪くなったときや、風通しを良くしたいときに行います。花が咲いた後のツルは翌年も花芽をつけるため、切りすぎに注意が必要です。

筆者はほとんどのホヤを水苔に植えています。ハンギングの小さな鉢仕立てにしたり、コルクやヘゴ※に着けたり…楽しみ方はいろいろです!

ヘゴ
木生シダ類の幹を板状に加工した園芸用素材。通気性と保水性に優れ、ホヤなど着生植物の根張りに適する。近年は乱獲による資源減少が問題視されている。沖縄産が主流。

病害虫対策

ホヤは比較的病害虫に強いですが、カイガラムシやすす病などが発生することがあります。葉水や風通しの確保、発生時の早期駆除が予防策となります。

カイガラムシはすぐに駆除しましょう!

(放置すると増えます)

カイガラムシは歯ブラシなどでこすり落とします。放置するとすす病※の原因にもなるため、早めの対処が重要です。

すす病
葉や茎が黒いカビで覆われる植物の病気。主な原因はカイガラムシやアブラムシなど害虫の排泄物に繁殖するカビ。風通しの悪い高温多湿環境で発生しやすい。

カイガラムシ…(悪夢)

増やし方(挿し木・取り木)

ホヤは「挿し木」や「取り木」で比較的簡単に増やすことが可能で、家庭でも気軽に挑戦できます。挿し木の適期は5~9月と言われています。

健康な枝を5~10cmほど切り取り、切り口を1~2日乾燥させてから水はけの良い土や水苔に挿します。明るい日陰で管理し、数週間で発根します。剪定で切ったツルで挑戦してみてください。

発根が確認できるまでは水切れに注意したほうがいいでしょう。根が安定したら通常の管理に切り替えます。

成長の遅い株は注意!株分けはしっかり育った元気な株からにしましょう。

まずは手に入りやすいホヤからどうでしょう

Hoya caudata
Hoya caudata

今回咲いた「ホヤ・カウダータ」は、ちょっとおしゃれな園芸店や、ヤフオクで時々見かけます。充実した株であれば4000円〜くらいの価格帯です。

この種類は、もう少し強い光に当てると、葉が赤くなるのですが、絶妙な光加減が必要で、筆者は臆して挑戦していません。(一度挑戦して枯らしました…)

ホヤ(サクララン)は、安定してしまえばかなり長く楽しめる植物です。筆者のホヤの中には購入してから10年以上の株もいくつかあります。

犯人(犯鳥)

ホヤスレイヤー

セキセイインコのハリー

そんな長年連れ添ったホヤを、最近かじるやつが現れ、何株か被害を受けました。インコを飼っている人は、管理場所にも気をつけましょう!

参考

豊海おさかなミュージアム『そもそもホヤとは何者なのか?」(2021年7月)

女川さかな手帳『【ほや:海鞘】生態や栄養などの魅力を徹底解説!』(2024年9月)

HOYA『企業情報』

HOYA『会社概要』

NHK出版『趣味の園芸 ホヤ(サクララン)の種類(原種、品種)』

engei net『観葉植物 ホヤ』

e-花屋さん『ホヤ(観葉植物)』